一般解剖学

系統解剖学



最終更新日: 12/05/29

funalogo.gif (2604 バイト)













funalogo.gif (2604 バイト)

Nervous system(神経系)Systema nervosum

Central nervous system(中枢神経系;神経系中枢部) Systema nervosum centrale

Brain(脳)Encephalon のう Feneis: 274 14

[A14_1_03_001] →(脳は3つの基本的な部分から構成されている。すなわち、1対の大脳半球、脳幹および小脳である。1対の大きな大脳半球は脳胞の最前端部の終脳から発生する。脳幹は4つの部分からなりたつ。すなわち、①間脳diencephalon、②中脳mesencephalon、③後脳telencephalon(橋と小脳)、④髄脳myelencephalon(延髄)である。脳幹の最も前部にあたる間脳は前脳(つまり、終脳)と最も密接した関係をもつ。後脳と髄脳は一緒になって菱脳を構成する。小脳は後脳の菱脳唇とよばれる第四脳室の前縁部の外胚葉性肥厚部から発達してくる。)

脳の正中断面 (細部についてはなお図410を参照のこと)

脳底

Rhombencephalon; Hindbrain(菱脳)Rhombencephalon りょうのう Feneis: 274 16

[A14_1_03_002] →(「菱形」を意味するギリシャ語のrhombosと、encephalonを結合したものである。 菱脳は3個の脳胞(前脳、中脳、菱脳)のうちの最尾側のもので、脊髄の頭側につづき頭側半の後脳(橋と小脳)と尾側半の髄脳(=延髄)の2区分される。菱脳の発生において特異なことは、第4週の終わりごろ(第12段階)から蓋板が非常に薄くなるとともに左右にはなはだ広くなるところである。この広く薄くなった蓋板を菱脳蓋という。菱脳蓋の幅は菱脳の中央部(後脳と菱脳の移行部)で最も広く、それより頭側および尾側で次第に狭くなり、菱脳蓋は全体として頭尾方向に細長い菱形となる。頭側の中脳との境界のくびれ(菱脳峡)は第4週の中頃(第11段階)から認められる。蓋板の変化に応じて、はじめ菱脳室の左右の壁をなしていた翼板と基板は、次第に外方に倒れていき、結局、菱脳室の底をつくることになり、全体として菱形窩とよばれる。こうなると底板は菱形窩の正中部を頭尾方向に走る正中溝となり、翼板と基板を境する境界溝は、同名の溝として、正中溝の外側で凸面を外方に向けた弓形をなして頭尾方向に走るようになる。このようにして菱脳室は腹背に扁平で、頭尾に長く、左右に広い菱形の腔となり、第四脳室とよばれる。菱脳蓋は外から間葉組織によって裏打ちされて第四脳室脈絡組織となる。翼板と基板では胚芽層・外套層・縁帯の分化がおこり、外套層は神経細胞で充たされる。このれらの神経細胞は脊髄におけるようなひとつづきの灰白柱をつくらず、いくつかの灰白質塊に断裂する。このような灰白質塊(神経細胞の集団)を神経核という。翼板からは知覚性の、基板からは運動性の脳神経核が生ずるが、これらの配列には整然とした規則性がみられる。基板においては、内側から外側に向かって、①頭部体節由来の骨格筋を支配する体運動核群(M1)、②鰓弓由来の骨格筋を支配する特殊内臓運動核群(M2)、③内臓の平滑筋や腺を支配する一般内臓運動核群(M3)が分化し、翼板においては、同様に①内臓からの求心線維を受け入れる一般内臓知覚核(S1)、②鰓弓領域に発する味覚線維を受け取る特殊内臓知覚核(S2)、③頭顔部の皮膚からの知覚線維を受け取る体知覚核(S3)と④内耳からの求心線維を受ける特殊体知覚核(S4)が分化する。基板および翼板からは、以上の諸核をつくるもののほかに、多数の神経細胞が発生する。これは特別の細胞集団をつくることなく、外套層の中に散在し、これらの神経突起は同側性および交叉性に上行・下行して、脳および脊髄の下腔bに達する。このようにして特定の神経核以外の部分では、外套層は交錯する神経線維の間に神経細胞が散在する状態となり、網様体と名づけられる。また交叉性神経線維はすべて底板の縁帯は交叉線維に満たされて著しく肥厚し、正中縫線となる。翼板と蓋板の移行部を菱脳唇という。後脳の菱脳唇は巨大に発育して小脳を形成する。髄脳は菱脳唇は多数の神経細胞を生ずるが、これらは縁帯の中を腹内方に遊走し、基板の縁帯の中に大きい神経核をつくる。頭側部から生じた神経細胞は後脳の腹側部に橋核、尾側部から生じたものは髄脳の腹側部にオリーブ核を形成する。)

脳底を示す. 視索および島はこれらを被う前頭葉および側頭葉の部分を取り去って剖出してある.

Myelencephalon; Medulla oblongata; Bulb(髄脳;延髄;脊髄球)Myelencephalon; Medulla oblongata; Bulb ずいのう;えんずい;せきずいきゅう Feneis: 274 17

[A14_1_03_003] →(脳幹の最下部に位置し、直接脊髄に連続する。錐体交叉の下部境界から上にのびて橋に至る。Mylencephalonは、「脊髄」を意味するギリシャ語のmyelosと、「脳」を意味するencephalonを結合してつくられた言葉で、脳の中で一番脊髄側にある部分を指す。Medulla oblongataという語は、元来脊髄の吻側への延長部、すなわち脳全体を指す言葉であったが、後に脳のなかで脊髄に隣接した領域だけを指すようになった。延髄は、脊髄に比べやや膨らんでいるので、bulus「球」とよばれることがある。 脳幹の最尾部で尾方は第一頚神経の根を境として、脊髄に、吻側は橋に移行する。①外表面:外表面には脊髄の前正中裂、前外側溝、後外側溝および後正中溝につづく溝がみられる。前正中裂と前外側溝との間の隆まりは(延髄)錐体ととよばれ、錐体路に相当する。錐体交叉は前正中裂を横切って走る線維として外表面からも認められる。前外側溝と後外側溝との間には背側と腹側に隆起がある。腹側の楕円形の隆起はオリーブで、中にはオリーブ核がある。背側の隆起は灰白結節で、三叉神経脊髄路と脊髄路核に相当する。後中間溝と後外側溝の間には楔状束核と薄束核に一致して、外側には楔状束結節と内側には薄束結節とがみられる。さらに上外方には下小脳脚が存在する。②横断面:脊髄との移行部の高さでは、中心管の背側には後索核(楔状束核と薄束核)がある。これらの核からの線維は内弓状線維となり腹内側に向かい交叉する(これを毛帯交叉とよぶ)。交叉後は錐体の背側に集まり内側毛帯を形成する。一方、腹側では錐体交叉をした線維が背外側の側索に入るのがみられる。オリーブ核の高さでは、一般に延髄背側部には基板および翼板由来の脳神経核が配列されている。内側から外側にかけて体性運動性の舌下神経核、一般内臓遠心性迷走神経背側核(内側核)と唾液核がある。同じく基板由来の特殊内臓遠心性の舌咽、迷走、副神経の疑核は腹外方に位置している。さらに、これらの外側には翼板由来の一般内臓感覚性の迷走神経背側核(外側核)、特殊内臓感覚性の孤束と孤束核があり、一般体性感覚性の三叉神経脊髄路核は延髄の最も外側に位置している。その他、副楔状束核が楔状束核の外側に、介在核が舌下神経核の外側にある。これらの神経核の腹側には網様体とよばれる。ここには縫線核がある。延髄背側部で縫線の両側には内側縦束が通り、その腹側には三角形の内側毛帯がある。腹側部には錐体とその背側から外側にオリーブ核がある。なお第四脳室底の中心灰白質の内側部を背側縦束が通る。延髄も上・下行性伝導路を通過させる。また、延髄には第8~12脳神経の諸核、呼吸中枢、循環中枢などが存在し、これらへの圧力(ヘルニア、頭蓋内圧亢進、などによるもの)は昏睡と死をまねく。延髄とはいうのは脊髄の延長部という意味で名づけられたらしい。このラテン名を最初に使ったのはハイステルLorenz Heister(1740)であるが、橋と脊髄の間の部位に限局して使いだしたのはハレルAlbrecht von Haller(1750)である。延髄はその膨らんだ感じから球とも呼ばれる。 延髄の発生 development of the medulla oblongata:菱脳の尾側半である菱脳は全体として延髄となる。 延髄の頭側約3分2は菱脳窩の尾側半を形成し、舌咽、迷走、副および舌下神経の諸核を生ずる。尾側約3分1の範囲では、内腔は第四脳室の形成に参加せず、狭い裂隙状の中心管として脊髄中心管につづく。この範囲では発生様式も内部構造も脊髄に類似するが、特別な者として翼板から後索核(薄束核と楔状束核)が生ずる。この核は脊髄後索に接続する中継核で、この核から出る神経線維は腹内方に走り、底板の縁帯で交叉した後、正中線の両側を上行する著明な線維束(内側毛帯)をつくり、視床に達する。 翼板と蓋板の移行部である菱脳唇から発生した細胞は腹内方に遊走して、基板の縁帯の中にはなはだ大きい神経核(オリーブ核)を形成する。この核から出る神経線維も基板の縁帯において交叉し、反対側の小脳に達する。このおうに底伴音縁帯は交叉線維で満たされて厚くなり正中縫線となる。 延髄においても上行および下行線維は、はじめは縁帯を通っている。しかし発生が進んで上行およびとくに下行線維が増えると、これらは外套層にも親友するようになる。また上述のように外套層の中には横走線維も多くなるので、はじめ比較的明瞭であった灰白質と白質の区別は次第に不明瞭となる。 胎生4ヶ月において延髄の腹側面で正中線の両側に接する部位の縁帯は、大脳皮質からの下行線維(錐体路線維)によって埋められ、これを延髄錐体と言うが、これは大脳皮質に属するもので、延髄固有の構造物ではない。)

Metencephalon; Pons and cerebellum(後脳;橋と小脳)Metencephalon; Pons et cerebellum こうのう;きょうとしょうのう Feneis: 280 01

[A14_1_03_004] →(「後ろ」を意味するギリシャ語の接頭詞とmetaと、「脳」を意味するencephalonを結合して作られた言葉である。 Metencephalonは小脳と橋を意味する。しかし、hindbrainは後脳と延髄、すなわち菱脳の意味で用いられることがおおい。また、Hinterhirnは橋と同義に用いられていることがある。小脳は表面に細かなヒダを多数備えた、後頭葉直下に位置するような脳部分であって、平衡感覚・筋緊張調節・筋活動強調などに関係している。橋は中脳と延髄の間に位置し、第四脳室を隔てて小脳と向き合う環形にある。多種の上行性あるいは構成伝導路が橋を通り抜けるが、第5~7脳神経(三叉神経・外転神経・顔面神経)の諸核も橋内部に存在している。)

Pons(橋)Pons きょうVarolius, Pons of Feneis: 280 02

[A14_1_03_004_1] →(Ponsとは、橋(ハシ)という意味である。腹側から見ると左右の小脳半球の間に架かった太鼓橋の様に見えるところから橋という名前が付けられた。比較解剖学的には、橋が延髄から区別されるのは哺乳類に限られ、橋は人類で最もよく発達している。後脳の腹側部にあたる。すなわち、小脳の腹側に位置しており、延髄と中脳の間に介在する。橋の腹側面は横走する幅広い神経線維束(横橋線維)によっておおわれる。この神経線維束はさらに橋の外側面において、橋と小脳を連結する中小脳脚を形成しており、左右の小脳半球の間にかかる「橋」のようにみえる。橋は既にユースタキウスEustachius (1524-1574)の図に載っているというが、この図は1714年まで出版されなかったので、Ponsという名称は、このような外見に基づいて、イタリアの解剖学者であり外科医でもあったC.Varolio (1543-1573)が用いたものである(ヴォロイオ橋)。橋は横断面では橋腹側部または橋底部と橋背部または橋被蓋とに区分される。両者の境界は橋被蓋の腹側部を上行する内側毛帯の腹側縁にあたる。橋底部の神経線維群には、上記の横橋線維のほかに、橋底部の中心部を縦走する橋縦束があり、神経細胞としては橋縦束を取り囲んで橋核が存在する。橋縦束の線維はその大部分が大脳皮質からの下行神経線維であり、橋核に連絡する皮質橋核路を含む。橋核は大脳皮質からおこる求心性神経線維のほか、小脳核や上丘からおこる求心性神経線維を受けることが知られている。橋核からおこる遠心性神経線維は横橋線維、ついで中小脳脚を形成して、主として反対側の小脳半球の皮質に連絡する。また、その際、小脳核、とくに歯状核に側枝を送る可能性が大きい。このように、橋縦束・橋核・橋横線維は大脳皮質や小脳半球など、系統発生的に新しい部位との関係が深く、哺乳動物ではじめて出現する構造であって、高等な哺乳類において良好な発育を示す。 一方、橋被蓋は系統発生的に古い構造であり、脳幹網様体の基本構造を示す部位がもっとも広い領域を占める。脳神経核としては、三叉神経核(主感覚核・脊髄路核・中脳路核・運動核)・顔面神経核・内耳神経核(蝸牛神経核と前庭神経核)が存在する。また、橋被蓋の外側部を上行する外側毛帯、および橋被蓋の腹側部を横走する台形体の線維は聴覚路を形成する神経線維群であり、聴覚神経路の中継核として、外側毛帯核および台形体核が存在する。その他の線維群としては、第四脳室底の腹側において正中線背側部の両側を内側縦束が縦走し、上小脳脚が第四脳室蓋の外側部を形成している。また、神経細胞群としては、橋被蓋の背外側部に青斑核が、上小脳脚の周辺部には結合腕傍核が存在する。)

Cerebellum(小脳)Cerebellum しょうのう Feneis:

[A14_1_07_001] →(小脳は後頭葉の下方で橋の背側胃位置する。頭蓋腔では後頭蓋窩に納まっており、すぐ下には大(後頭)後が位置する。このため、頭蓋内圧亢進が起こると大後頭孔からはみ出すこともある(大孔ヘルニア)。 橋の後ろに位置する脳の一部分。表面に多くの溝をもつ独特の外観を示す。左右の小脳半球、正中の虫部、そして脳幹に接するように位置する片葉小節葉からなる。この区分は、系統発生からみた原小脳・古小脳・新小脳の区分にほぼ一致する。(イラスト解剖学))

Mesencephalon; Midbrain(中脳)Mesencephalon ちゅうのう Feneis: 286 27

[A14_1_03_005] →(中脳は「中央」を意味するギリシャ語の接頭詞mesoと、「脳」を意味するencephalonを結合したもの。中脳、橋、延髄を合わせて脳幹と呼ぶが、これは頭蓋底の大後頭孔の所から上方に向かい、大脳半球の基底面にまで伸びる楔形の構造である。中脳は狭義の脳幹の最上方部で、上方に間脳、下方に橋との間の中脳水道を囲む比較的上下に短い構造を指す。間脳との境は厳密には不明確であるが、背側に後交連の後部、腹側に乳頭体の後方を通る面で境される。下方は背側に下丘の後方と腹側の橋の前方を通る面で比較的明確に境される。外形を見ると背側に蓋板によって形成された4個の隆起があり上方の一対を上丘、下方の一対を下丘という。上丘および下丘からは上外側に線維束を出し、それぞれ上丘腕および下丘腕として間脳につづく。腹側には大脳脚がみられ、その間に多数の小血管が通る後有孔質の間の細い溝を大脳脚内側溝とよび、ここから動眼神経の根がでる。断面では背側部は蓋板で包まれ、(視蓋とも呼ばれる)上丘および下丘を形成し、その腹側端はほぼ中脳水道の中央部を通る面で区切られる。これより腹側を広義の大脳脚というが、これはさらに中脳被蓋と狭義の大脳脚にわけられる。中脳では固有の細胞集団と線維束があり、細胞群としては中脳水道を取り囲む中心灰白質が三叉神経中脳路および核によって外側を包まれ、腹側正中部には上方に動眼神経核、下方に滑車神経核が存在する。また上方の動眼神経核の腹外側に赤核があり、さらに腹側に大脳脚の背側面を覆って黒質が存在する。正中腹側端部の大脳脚にはさまれた部位には脚間核がある。中脳に出入りする線維束で著明なものは中心灰白質内には腹外側部に背側縦束があり、赤核の背側および背外側方に中心被蓋路がある。さらに上丘中央から下丘の高さで正中部に強い線維の交叉がみられる。これらの交叉は被蓋交叉および上小脳脚交叉で、被蓋交叉の背側部は多くは上丘および上小脳脚交叉で、被蓋交叉の背側部は多くは上丘および被蓋からの下行線維から成り、腹側部は赤核からの下行線維から成る。また上小脳脚交叉は小脳核から赤核および視床へ投射する線維の交叉部である。)

中脳の横断面.(5/4)

中脳,間脳および尾状核,上方よりみる.(1/1)

Prosencephalon; Forebrain(前脳;前脳胞)Prosencephalon ぜんのう;ぜんのうほう Feneis: 292 01

[A14_1_03_006] →(終脳と間脳である。前神経孔が閉鎖すると、前脳は菱脳や中脳と大略同じ様な構造をとる。この時期の前脳は横断面で見ると外側壁は厚く、蓋板と底板は薄い。外側面からは眼柄が出ており、その先端には眼杯が付いている。発生が進んで半球胞ができていくると前脳は特異な形を呈するようになる。胚子が頂殿長12mmにまで成長すると、前脳に大脳半球を認めることができるようになる。半球胞の尾側は半球茎と呼ばれ間脳に続いているが、背吻側部では終脳間脳溝によって大脳半球と間脳が隔てられている。内吻側部では半球胞は終脳正中部に移行している。前神経孔は大脳半球原基の吻側で閉鎖する。第三脳室の前壁は室間孔より吻側にあるから終脳正中部の一部とみなすことができる。終脳最終部とよばれる。広義の第三脳室は第三脳室終脳部と狭義の第三脳室からなる。)

Diencephalon(間脳)Diencephalon かんのう Feneis: 292 02

[A14_1_03_007] →(間脳は「間」を意味するギリシャ語の接頭詞diaと、「脳」を意味するencephalonを結合したもの。間脳は中脳の前方で第三脳室を取り囲んだ領域をいう。背側方は側脳室におおわれ、背外側は分界条によって尾状核と境され、外側を内方によって取り囲まれている。前方は室間孔まで伸び、後方は後交連と乳頭体の後方を結ぶ線で中脳被蓋に移行する。間脳はさらに背側視床、視床下部、腹側視床および視床上部に分かれる。背側視床はこれらのうちもっとも大きな部位を占め左右を視床間橋(中間質)によって結ばれる。背側視床と視床上部とを視床脳とよぶことがある。 間脳の発生development of the diencephalon:間脳は間脳胞から発生する。胎生第4週のおわりころにおける脳の原基は、前脳胞・中脳胞・菱脳胞の3脳胞が確立し、前脳胞ではその外側壁の前腹側部から外方に向かって大きい眼胞が膨出している。第5週に入ると(第14段階)、この眼胞の出発部の前背側にあたる部分の外側壁が前外方、ついで背外方に向かって膨出し、左右1対の半球胞を形成する。左右の半球胞を連ねる前脳胞の前背側端部を終脳正中部という。終脳正中部と半球胞とが終脳を形成し、これまでの前脳胞の大部分を占める領域は、これ以降、間脳胞と呼ばれる。 間脳胞ははじめ頭尾(前後)方向に長い管であり、その内腔は間脳室(後に第三脳室)とよばれる。陥凹胞においても、中脳以下の神経管の各部におけると同じく、実質的な神経細胞の形成は左右の外側壁においてのみおこり、背側壁(蓋板)と腹側壁(底板)においては著明な肥厚は見られない。蓋板は単層立方上皮となり、外側から間葉組織によって裏打ちされて、第三脳室脈絡組織となる。 肥厚・増大していく間脳の外側壁の内面には一過性に前後に走る3本の浅い溝(背側から腹側へ1.間脳背側溝、2.間脳中間溝、3.間脳腹側溝)がみとめられ、これによって外側壁は1.視床上部、2.背側視床、3.腹側視床、4.視床下部の4部に区画される。その後の発育において背側視床と腹側視床がとくに高度に発育し、両者が合一して強大な視床を形成する。胚芽層から生じた多数の神経[芽]細胞は外套層および縁帯の各所に集合して前核・内側核・中心核・腹側核・外側核・視床枕核などの視床核を形成する。 視床上部はヒトでははなはだ退化的で、これに属する構造物としては、間脳の後端部における松果体、手綱および手綱三角のみである。松果体は胎生第7週において間脳の蓋板の後端正中部から背後方に向かって生ずる1個の中空の膨出として発生する。 視床下部は間脳の外側壁および腹側壁を埋め、およそ8個に大別される神経核を形成する。 間脳胞の内腔である間脳室は、はじめは円形に近い横断面を示すが、外側壁の発育につれて上下方向に広く左右方向に狭い空間となり、ついには正中矢状断面に一致した左右の幅の非常に狭い裂隙状の腔となる。この間脳室とその前端につづくごく狭い終脳正中部の内腔を合わせて第三脳室という。)

Telencephalon(終脳)Telencephalon しゅうのう Feneis: 302 01

[A14_1_03_008] →(「末端」を意味するギリシャ語のtelosとencephlonを結合した言葉である。Encephalonは、「~の中に」という意味のギリシャ語の接頭詞enと、「頭」を意味するギリシャ語であるkephaleを一緒にしてつくられたもので、「頭の中にあるもの」、すなわち「脳」を指す。Telencephalonは、脳の末端部という意味である。 終脳は最高次機能の中枢であり、人脳で著しい発達を示す。大脳半球と基底核を合わせたものが終脳であるが、後者は粗大運動性の領域で大脳皮質に覆われた位置を占める(脳を切断しないと観察できない)。左右の大脳半球はこれに対し非常に大きな構造で、大脳縦裂を相互の境界とし、かつ外見上での脳の大部分を占めている。大脳半球の外表面には大脳回と呼ばれる曲がりくねった高まり、大脳回1つ1つの境をなす大脳溝と呼ばれる浅い溝(深いものは・・・裂と呼ぶ)が認められる。大脳回・溝の多くは人脳に共通するが、しかしそれのまったく同じ配列パターンがみられることは、たとえ同一個体の左右の大脳半球を比較した場合でも、また他人同士の脳を比較した場合でも、決してない。中心溝と大脳外側溝を使い大脳半球を4領域(前頭葉:中心溝より前、頭頂葉:中心溝より後、頭頂後頭溝と大脳外側溝をつなぐ仮想腺まで、側頭葉:大脳外側溝より下、後頭葉:頭頂後頭溝と大脳外側溝をつなぐ仮想線より後)に分けることができる。これら4区分のそれぞれ、固有の特殊中枢がある。たとえば前頭葉の中心前回(中心溝のすぐ前に位置)は随意運動司令センターであり、前頭葉の前端部、すなわち前頭極は人格の座(これの損傷が人格変化を招く)とされる。脳の下面(基底面に同じ)でも終脳の広がりが見られる。すなわち、複数の眼窩回やそれらに接近する嗅神経(味覚を伝える神経)などに注意されたい。左右の視神経は互いに近づき視神経交叉を示した後に、再び左右の視索に分かれ後方へ向かう。側頭葉の一部である海馬傍回と、これの特徴的突出部分をなす鈎も脳の基底面で認められる。脳の水平断面では左右の大脳半球が表層の灰白質すなわち皮質(神経細胞体が集まる部分)と深層の白質(有髄神経線維の密集部分)からなることがわかる。左右の半球皮質をつなぐ神経線維を交連線維と呼ぶが、これの大集合体が脳梁にほかならない。同一半球内で葉間、あるいは脳回間をつなぐ長短様々の神経線維が連合線維であり、大脳半球皮質とそれ胃が引中枢神経部分とをつなぐ(皮質より下行、あるいは皮質に向かい上行する)神経線維が投射線維である。投射線維の集合体、すなわち内包を前脚・膝(中間部に当たる部分)・後脚に区分するが、膝のすぐ外側に基底核の一部(淡蒼球・前障など)が位置している。大脳半球表面について前述の4区画(葉)のほかに、さらに1~2の区画を設けることがある。大脳外側溝を押し広げると、その奥に島と呼ばれる高まりが現れるが、これを第5番目の葉としてよい。人脳の島がどのような機能を営むかについては、不明な点が多い。島を覆う位置にある、前頭・頭頂・側頭の各葉の大部分(大脳外側溝沿い)は弁蓋と呼ばれる。第6番目の葉は辺縁系に属するもので、これには帯状回、海馬傍回、歯状回なが含まれる。 終脳の発生development of the telencephalon: 終脳は前脳胞の前端部の背外側壁が外包、ついで背外方にふくろ状に流出することによって発生をはじめる。おの左右1対のふくろを半球胞といい、両者を連ねる前脳胞の前端部を終脳正中部という。半球胞の内腔である側脳室と収納性中部の内腔である終脳室無対部を連ねる溝が室間孔である。 胎生2ヶ月の中頃から半球胞の中ごろから半球胞の腹側壁において盛んな細胞増殖がおこり、この部分は側脳室に向かって丘状に隆起する。これを大脳核球(広義の線条体)という。大脳核球はその後急速に大きくなり、半球胞の腹側ないし腹外側壁のほぼ全体を形成し、室間孔の前方から半球胞の後端付近にまで達する著明な高まりとなる。大脳核丘以外の部分では半球胞の壁は比較的薄い状態を保ち、外套と呼ばれる。 半球胞は発生の進行につれて急速に増大していくが、この際、外套および側脳室の拡大が大脳核丘の増大よりもずっと早いので、やがて外套および側脳室が、大脳核丘を前・上・後および後下方から包むようになる。これは半球胞の前・上・後および後下方への増大に対応するものであり、その結果、前頭葉・頭頂葉・後頭葉および側頭葉が形成される 。外套は外方に向かっても増大するが、大脳核丘の外方への発育がこれに及ばないので、大脳核球の存在する半球胞の基底部が次第に陥没する。このようにして大脳半球外側面の腹側中央部に生ずる凹みを大脳外側窩といい、その底をなす部分を島という。発生が進み外套の発育が高度になるにつれて、島はいよいよ深く大脳半球の表面から陥没し、大脳外側窩は前下方から後上方に走る大脳外側溝となる。 胎生5ヶ月のおわりごろから外套の発育に部位的不平等が生じ、発育の緩やかな部分は速やかに発育する部分からとり残されて次第に深く陥没して溝となる。最も早期に出現するのは鳥距溝・頭頂後頭溝・帯状溝などであり、中心溝がこれにつづく。胎生7ヶ月に入ると半球の増大に連れてこれらの溝は深くなり、さらに中心前溝・中心後溝などの多くの溝が出現し、溝と溝の間の部分は隆起して大脳回となる。胎生7ヶ月のおわりになると大脳半球外側面の基本形がほぼ完成する。このようにして非常に広い面積を獲得した外套の表層部には胚芽層から遊走してきた神経芽細胞によって大脳皮質と呼ばれる特別の灰白質が形成される。大脳皮質に出入りする神経線維は、皮質と胚芽層の間を埋め、ここに広大な白質を形成する。 総数140億に達するといわれる神経細胞からなる広大な大脳皮質が形成されるにつれて、大脳皮質から出て視床およびそれ以下の脳脊髄の各部へいく下行線維が著しく増加する。これらの線維は外套と大脳核丘の移行部から大脳核丘に進入し、これを斜め腹内方に向かって貫通して、室間孔の後縁のところで間脳の前端部に進入する。視床経由で大脳皮質に達する大量の上行線維も、この道を逆行する。この大脳丘核を貫通する強大な線維群を内包といい、大脳核丘はこれによって側脳室に隆起している背内側部と、島の内側にあたる腹外側部に分割される。前者を尾状核、後者をレンズ核の被殻という。大脳皮質の発育について左右の大脳半球を連ねる交連線維が生ずる。これらは左右の大脳半球が実質的につづいている唯一の場所である終脳室無対部の前壁に集中してくる。したがってこの部分は肥厚して交連板とよばれる。最初に出現する交連線維は左右の嗅脳を連ねるもので、交連板の腹側端を通り、前交連を形成する。前頭葉・頭頂葉・後頭葉および側頭葉が形成されるにつれて、これらの部分からの交連線維は交連板の背側部を埋め、交連板を背方、ついで後方に向かって著しく増大する

Brain stem(脳幹)Truncus encephali のうかん Feneis: 274 15

[A14_1_03_009] →(TAで脳幹は髄脳(延髄)、橋、中脳を脳幹と定義している。かつては、脳を運ぶ際に脳幹をもって運んでいた、脳幹は、脳の柄のような部分という意味で付けられた。日本の神経解剖の教科書では間脳を含める場合や間脳と大脳核を含めて脳幹と称している場合が多いので注意をようする。)

脳幹と脳神経とを示す.島および前頭葉の一部が残されている. 外側かつ下方からみる.

脳幹,四丘体付近,菱形窩 図418の標本から3対の小脳脚を切って,小脳を取り去ってある.

Myelencephalon; Medulla oblongata; Bulb(髄脳;延髄;脊髄球)Myelencephalon; Medulla oblongata; Bulbus ずいのう;えんずい;せきずいきゅう Feneis: 274 17

[A14_1_03_003] →(髄脳(延髄)は脳幹の最尾部で尾方は第一頚神経の根を境として、脊髄に、吻側は橋に移行する。①外表面:外表面には脊髄の前正中裂、前外側溝、後外側溝および後正中溝につづく溝がみられる。前正中裂と前外側溝との間の隆まりは(延髄)錐体とよばれ、錐体路に相当する。錐体交叉は前正中裂を横切って走る線維として外表面からも認められる。前外側溝と後外側溝との間には背側と腹側に隆起がある。腹側の楕円形の隆起はオリーブで、中にはオリーブ核がある。背側の隆起は灰白結節で、三叉神経脊髄路と脊髄路核に相当する。後中間溝と後外側溝の間には楔状束核と薄束核に一致して、外側には楔状束結節と内側には薄束結節とがみられる。さらに上外方には下小脳脚が存在する。②横断面:脊髄との移行部の高さでは、中心管の背側には後索核(楔状束核と薄束核)がある。これらの核からの線維は内弓状線維となり腹内側に向かい交叉する(これを毛帯交叉とよぶ)。交叉後は錐体の背側に集まり内側毛帯を形成する。一方、腹側では錐体交叉をした線維が背外側の側索に入るのがみられる。オリーブ核の高さでは、一般に延髄背側部には基板および翼板由来の脳神経核が配列されている。内側から外側にかけて体性運動性の舌下神経核、一般内臓遠心性迷走神経背側核(内側核)と唾液核がある。同じく基板由来の特殊内臓遠心性の舌咽、迷走、副神経の疑核は腹外方に位置している。さらに、これらの外側には翼板由来の一般内臓感覚性の迷走神経背側核(外側核)、特殊内臓感覚性の孤束と孤束核があり、一般体性感覚性の三叉神経脊髄路核は延髄の最も外側に位置している。その他、副楔状束核が楔状束核の外側に、介在核が舌下神経核の外側にある。これらの神経核の腹側には網様体とよばれる。ここには縫線核がある。延髄背側部で縫線の両側には内側縦束が通り、その腹側には三角形の内側毛帯がある。腹側部には錐体とその背側から外側にオリーブ核がある。なお第四脳室底の中心灰白質の内側部を背側縦束が通る。延髄も上・下行性伝導路を通過させる。また、延髄には第8~12脳神経の諸核、呼吸中枢、循環中枢などが存在し、これらへの圧力(ヘルニア、頭蓋内圧亢進、などによるもの)は昏睡と死をまねく。延髄とはいうのは脊髄の延長部という意味で名づけられたらしい。このラテン名を最初に使ったのはハイステルLorenz Heister(1740)であるが、橋と脊髄の間の部位に限局して使いだしたのはハレルAlbrecht von Haller(1750)である。延髄はその膨らんだ感じから球とも呼ばれる。)

Pons(橋)Pons きょうVarolius, Pons of Feneis: 280 02

[A14_1_03_010] →(Ponsとは、橋(ハシ)という意味である。腹側から見ると左右の小脳半球の間に架かった太鼓橋の様に見えるところから橋という名前が付けられた。比較解剖学的には、橋が延髄から区別されるのは哺乳類に限られ、橋は人類で最もよく発達している。後脳の腹側部にあたる。すなわち、小脳の腹側に位置しており、延髄と中脳の間に介在する。橋の腹側面は横走する幅広い神経線維束(横橋線維)によっておおわれる。この神経線維束はさらに橋の外側面において、橋と小脳を連結する中小脳脚を形成しており、左右の小脳半球の間にかかる「橋」のようにみえる。橋は既にユースタキウスEustachius (1524-1574)の図に載っているというが、この図は1714年まで出版されなかったので、Ponsという名称は、このような外見に基づいて、イタリアの解剖学者であり外科医でもあったC.Varolio (1543-1573)が用いたものである(ヴォロイオ橋)。橋は横断面では橋腹側部または橋底部と橋背部または橋被蓋とに区分される。両者の境界は橋被蓋の腹側部を上行する内側毛帯の腹側縁にあたる。橋底部の神経線維群には、上記の横橋線維のほかに、橋底部の中心部を縦走する橋縦束があり、神経細胞としては橋縦束を取り囲んで橋核が存在する。橋縦束の線維はその大部分が大脳皮質からの下行神経線維であり、橋核に連絡する皮質橋核路を含む。橋核は大脳皮質からおこる求心性神経線維のほか、小脳核や上丘からおこる求心性神経線維を受けることが知られている。橋核からおこる遠心性神経線維は横橋線維、ついで中小脳脚を形成して、主として反対側の小脳半球の皮質に連絡する。また、その際、小脳核、とくに歯状核に側枝を送る可能性が大きい。このように、橋縦束・橋核・橋横線維は大脳皮質や小脳半球など、系統発生的に新しい部位との関係が深く、哺乳動物ではじめて出現する構造であって、高等な哺乳類において良好な発育を示す。 一方、橋被蓋は系統発生的に古い構造であり、脳幹網様体の基本構造を示す部位がもっとも広い領域を占める。脳神経核としては、三叉神経核(主感覚核・脊髄路核・中脳路核・運動核)・顔面神経核・内耳神経核(蝸牛神経核と前庭神経核)が存在する。また、橋被蓋の外側部を上行する外側毛帯、および橋被蓋の腹側部を横走する台形体の線維は聴覚路を形成する神経線維群であり、聴覚神経路の中継核として、外側毛帯核および台形体核が存在する。その他の線維群としては、第四脳室底の腹側において正中線背側部の両側を内側縦束が縦走し、上小脳脚が第四脳室蓋の外側部を形成している。また、神経細胞群としては、橋被蓋の背外側部に青斑核が、上小脳脚の周辺部には結合腕傍核が存在する。)

Midbrain(中脳)Mesencephalon ちゅうのう Feneis: 286 27

[A14_1_03_005] →(「中央」を意味するギリシャ語の接頭詞diaと、「脳」を意味するencephalonを結合したもの。中脳、橋、延髄を合わせて脳幹と呼ぶが、これは頭蓋底の大後頭孔の所から上方に向かい、大脳半球の基底面にまで伸びる楔形の構造である。中脳は狭義の脳幹の最上方部で、上方に間脳、下方に橋との間の中脳水道を囲む比較的上下に短い構造を指す。間脳との境は厳密には不明確であるが、背側に後交連の後部、腹側に乳頭体の後方を通る面で境される。下方は背側に下丘の後方と腹側の橋の前方を通る面で比較的明確に境される。外形を見ると背側に蓋板によって形成された4個の隆起があり上方の一対を上丘、下方の一対を下丘という。上丘および下丘からは上外側に線維束を出し、それぞれ上丘腕および下丘腕として間脳につづく。腹側には大脳脚がみられ、その間に多数の小血管が通る後有孔質の間の細い溝を大脳脚内側溝とよび、ここから動眼神経の根がでる。断面では背側部は蓋板で包まれ、(視蓋とも呼ばれる)上丘および下丘を形成し、その腹側端はほぼ中脳水道の中央部を通る面で区切られる。これより腹側を広義の大脳脚というが、これはさらに中脳被蓋と狭義の大脳脚にわけられる。中脳では固有の細胞集団と線維束があり、細胞群としては中脳水道を取り囲む中心灰白質が三叉神経中脳路および核によって外側を包まれ、腹側正中部には上方に動眼神経核、下方に滑車神経核が存在する。また上方の動眼神経核の腹外側に赤核があり、さらに腹側に大脳脚の背側面をおおって黒質が存在する。正中腹側端部の大脳脚にはさまれた部位には脚間核がある。中脳に出入りする線維束で著明なものは中心灰白質内には腹外側部に背側縦束があり、赤核の背側および背外側方に中心被蓋路がある。さらに上丘中央から下丘の高さで正中部に強い線維の交叉がみられる。これらの交叉は被蓋交叉および上小脳脚交叉で、被蓋交叉の背側部は多くは上丘および上小脳脚交叉で、被蓋交叉の背側部は多くは上丘および被蓋からの下行線維から成り、腹側部は赤核からの下行線維から成る。また上小脳脚交叉は小脳核から赤核および視床へ投射する線維の交叉部である。 中脳の発生 development of the mesencephalon:中脳は中脳胞から発生するが、菱脳胞との境界のくびれ(菱脳峡)は第4週の中頃(第11段階)から明らかになる。 中脳胞の背外側壁をなす翼板は背外方に増大し、蓋板とともに中脳室の背側をおおう板状の隆起を形成する。これを四丘板という。発生がすすむと、まずその正中部に頭尾方向に走る溝が生じ、次いで四丘板の中央部に左右に走るくぼみが生じ、結局、四丘板は4個の半球状の高まりに分割される。頭側の1対を上丘、尾側の1対を下丘という。 上丘では胚芽層で生じた神経[芽]細胞は表面に向かって遊走していき、表面に平行な三つの層をつくってならび、一種の皮質様構造を形成する。これらの神経層の間および内・外には上丘に出入りする神経線維の層ができる。下丘では神経[芽]細胞は下丘の内部を占め、全体として単一の下丘核を形成する。 中脳胞の腹外側壁をなす基板からは、体運動核群(M1)に属するものとして動眼および滑車神経核が、一般内臓運動核群(M3)に属する者として動眼神経副核が生ずる。 翼板および基板から生ずる神経細胞は、以上のほかにもはなはだ多く、これらは中脳室の腹側ないし腹外側に網様体(中脳被蓋)を形成する。底板の縁帯は交叉線維で埋められ、ここに正中縫線が成立する。両側の網様体の中央部には赤核、腹外側縁には黒質という大きな灰白質塊が形成されるが、これらの起源については一般に翼板由来であると考えられている。 中脳の内腔である中脳室は、はじめは比較的広く、中脳の中軸部を頭尾方向に貫いているが、四丘体および中脳被蓋の発育につれて次第に狭小となり、四丘体と中脳被蓋の移行部で中脳の正中部を貫く細い中脳水道となる。 黒質の腹外側に位置する縁帯は、胎生4ヶ月頃から、大脳皮質からの下行線維によって満たされ、ここに強大な下行線維野(狭義の大脳脚)が成立する。)

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