一般解剖学

系統解剖学



最終更新日: 12/06/01

funalogo.gif (2604 バイト)













funalogo.gif (2604 バイト)

Nervous system(神経系)Systema nervosum

Central nervous system(中枢神経系;神経系中枢部) Systema nervosum centrale

Mesencephalon; Midbrain(中脳)Mesencephalon ちゅうのう Feneis: 286 27

[A14_1_03_005] →(中脳は「中央」を意味するギリシャ語の接頭詞mesoと、「脳」を意味するencephalonを結合したもの。中脳、橋、延髄を合わせて脳幹と呼ぶが、これは頭蓋底の大後頭孔の所から上方に向かい、大脳半球の基底面にまで伸びる楔形の構造である。中脳は狭義の脳幹の最上方部で、上方に間脳、下方に橋との間の中脳水道を囲む比較的上下に短い構造を指す。間脳との境は厳密には不明確であるが、背側に後交連の後部、腹側に乳頭体の後方を通る面で境される。下方は背側に下丘の後方と腹側の橋の前方を通る面で比較的明確に境される。外形を見ると背側に蓋板によって形成された4個の隆起があり上方の一対を上丘、下方の一対を下丘という。上丘および下丘からは上外側に線維束を出し、それぞれ上丘腕および下丘腕として間脳につづく。腹側には大脳脚がみられ、その間に多数の小血管が通る後有孔質の間の細い溝を大脳脚内側溝とよび、ここから動眼神経の根がでる。断面では背側部は蓋板で包まれ、(視蓋とも呼ばれる)上丘および下丘を形成し、その腹側端はほぼ中脳水道の中央部を通る面で区切られる。これより腹側を広義の大脳脚というが、これはさらに中脳被蓋と狭義の大脳脚にわけられる。中脳では固有の細胞集団と線維束があり、細胞群としては中脳水道を取り囲む中心灰白質が三叉神経中脳路および核によって外側を包まれ、腹側正中部には上方に動眼神経核、下方に滑車神経核が存在する。また上方の動眼神経核の腹外側に赤核があり、さらに腹側に大脳脚の背側面を覆って黒質が存在する。正中腹側端部の大脳脚にはさまれた部位には脚間核がある。中脳に出入りする線維束で著明なものは中心灰白質内には腹外側部に背側縦束があり、赤核の背側および背外側方に中心被蓋路がある。さらに上丘中央から下丘の高さで正中部に強い線維の交叉がみられる。これらの交叉は被蓋交叉および上小脳脚交叉で、被蓋交叉の背側部は多くは上丘および上小脳脚交叉で、被蓋交叉の背側部は多くは上丘および被蓋からの下行線維から成り、腹側部は赤核からの下行線維から成る。また上小脳脚交叉は小脳核から赤核および視床へ投射する線維の交叉部である。)

 

External features(表面の形状(中脳の))Morphologia externa ひょうめんのけいじょう(ちゅうのうの) [A14_1_03_005_1]

Interpeduncular fossa(脚間窩)Fossa interpeduncularis きゃくかんか Feneis: 286 32

[A14_1_06_001] →(脚間窩は左右の大脳脚間にある中脳後表面上の深い凹みで底面は出入りする小血管の為に多数の小孔を有する後有孔質によって形成される。)

Posterior perforated substance(後有孔質;脚間穿孔質)Substantia perforata posterior; Substantia perforata interruralis こうゆうこうしつ;きゃくかんせんこうしつ Feneis: 286 33

[A14_1_06_002] →(後有孔質は脚間窩の孔のあいた底面。孔は多数の血管によるもの。)

Oculomotor sulcus(動眼神経溝)Sulcus nervi oculomotorii どうがんしんけいこう Feneis: 286 31 [A14_1_06_003]

Cerebral peduncle(大脳脚[広義の])Pedunculus cerebri だいのうきゃく[こうぎの] Feneis: 286 28

[A14_1_06_004] →(広義の大脳脚は中脳の腹側部で、背側の中脳蓋(四丘体)および中心灰白質背側部を除いた中脳水道水平中央断面より腹側の部分を総称する。さらにこれは背側の中脳被蓋と狭義の大脳脚に分かれる。中脳被蓋には著明な構造物として、動眼神経核群、中脳網様体、赤核、黒質、内側毛帯などが存在する。もともとは全脳と後脳を連結するやや細くなった首状部分である中脳の両半分の部分をさす名称であったが、その後、様々な意味で用いられるようになった。Crus cerebriとよばれる皮質投射線維の大きな束のみをさしたり、これに被蓋を加えたものをさしたりするが、後者の方が好ましい、脚底にある黒質は被蓋とcrus cerebriとを境する構造とみなされている。)

Cerebral crus(大脳脚[狭義の])Crus cerebri だいのうきゃく[きょうぎの] Feneis: 286 29

[A14_1_06_005] →(狭義の大脳脚は大脳皮質の第Ⅴ層の細胞から出て内包を経て橋以下の部位へ投射する下行線維によって構成されている。これらは大脳脚の外側方より側頭橋路、頭頂延髄路、頭頂脊髄路、中心前回脊髄路、中心前回延髄路、中心前回被蓋路、中心前回橋路および前頭橋路と並ぶ。運動領皮質の中心前回から出たものは中央約2/5の位置を占め、その部の外側方から内側方に順に脊髄の下部から上部さらに脳幹脳神経核へ投射する線維が局在的に並ぶ。)

Lateral groove of midbrain(中脳外側溝)Sulcus lateralis mesencephali ちゅうのうがいそくこう [A14_1_06_006]

Tegmentum of midbrain(中脳被蓋)Tegmentum mesencephali ちゅうのうひがい Feneis: 288 10

[A14_1_06_007] →(中脳被蓋は黒質から中脳水道にまでのびる中脳の大部分で動眼神経核、滑車神経核の他に網様体、赤核および多くの小さな細胞集団を含む。)

Trigone of lateral lemniscus(外側毛帯三角;毛帯三角;絨帯三角)Trigonum lemnisci lateralis がいそくもうたいさんかく;もうたいさんかく;じゅうたいさんかく Feneis: 288 18

[A14_1_06_008] →(外側毛帯三角は被蓋の側面近くに存在し、外部構造の主部を形成している。蓋板、上小脳脚および大脳脚との間の三角部。その線維のあいだの細胞群は、聴覚路でのいくつかの介在核の1つである外側毛帯核を形成する。)

Superior cerebellar peduncle(上小脳脚;結合腕)Pedunculus cerebellaris superior; Brachium conjunctivum じょうしょうのうきゃく;けつごうわん Feneis: 288 19

[A14_1_06_009] →(上小脳脚(結合腕Brachium conjunctivum)は主として小脳を出る線維からなる。その主体をなす線維は小脳視床路と小脳赤核路である。これらは主として歯状核から出て、腹内側方に進んで深部に入り、中脳下半で大部分交叉し、上小脳脚交叉(結合腕交叉)を作り、反対側の中脳被蓋を上行し、一部は赤核に終わるが(小脳赤核路)、一部はさらに視床の前外側腹側核に至る(小脳視床路)。なお上小脳脚の表面を前脊髄小脳路が逆行して小脳に入り、主としてその前葉に分布する。また鈎状束は室頂核から出て大部分交叉し、上小脳脚の背外側をへて鈎状に曲がり、下小脳脚内側部の上部に来て前庭神経各核にならびに橋、延髄の網様体内側部に分布する。)

Frenulum of superior medullary vellum(上髄帆小帯;前髄帆小帯)Frenulum veli medullaris superioris; Frenulum veli medullaris anterioris じょうずいはんしょうたい;ぜんずいはんしょうたい Feneis: 284 03

[A14_1_06_010] →(上髄帆小帯は四丘体間にある縦溝から、上髄帆までの小帯。)

Tectal plate; Quadrigeminal plate(蓋板;四丘体板;四丘板)Lamina tecti; Lamina quadrigemina がいばん;しきゅうたいばん;しきゅうばん Feneis: 288 13 [A14_1_06_011]

Brachium of inferior colliculus(下丘腕)Brachium colliculi inferioris かきゅうわん Feneis: 290 20; 296 26

[A14_1_06_012] →(下丘腕は下丘の外側にのびる隆起で、下丘と内側膝状体をつなぐ。上行性聴覚路の大部分を形成する。)

Brachium of superior colliculus(上丘腕)Brachium colliculi superioris じょうきゅうわん Feneis: 290 23; 296 28

[A14_1_06_013] →(上丘腕は上丘と外側膝状体とを連絡する視索線維束。)

Inferior colliculus(下丘)Colliculus inferior かきゅう Feneis: 288 14

[A14_1_06_014] →(下丘は中脳蓋を形成する卵形の二対の隆起(四丘体)のうち下方の一対をいう。外側毛帯からの神経を受け、下丘腕を経て視床の内側膝状体に至る神経を出す。聴覚系の中脳における中継核で、細胞構築および機能的に中心核、外側核および周囲核の三つの核からなる。下丘核は外側毛帯を介して蝸牛神経核および台形体核から線維を受け、下丘腕を通って両側性に視床の内側膝状体へ線維を送る。)

Superior colliculus; Optic tectum(上丘;視蓋)Colliculus superior; *Tectum opticum じょうきゅう;しがい Feneis: 288 15

[A14_1_06_015] →(上丘は中脳蓋つまり四丘体の前半分を形成するあまり高くない隆起であり、大脳皮質と同様に層構造を示す。上丘の層は灰白質と白質とが表面から内部に向かって次のごとく交互に配列する。①帯層(主として線維よりなる)、②灰白層(浅灰白質)、③視神経層(浅白質層)、および④毛帯層で、これは中間部と深部の灰白質および白質を形成する。上丘浅層は主に網膜および皮質視覚野からの線維を受け、視野における物体の動きの探知に関係する。上丘深層は多様な入力(つまり、体性感覚系および聴覚系、運動活動に関わるニューロン、網様体の各領域)を受け、脳幹網様体と同様の解剖学的、生理学的特質を持つ。上丘の浅層と深層は、形態学的にも線維連絡の上からも、さらに生化学的にも線維連絡の上からも異なるが、空間的な整合性に関しては互いに密接に関連する。浅層からの投射線維は主に視覚関連核に至る。一方、中間層及び深層からの線維は頭部、眼球運動に関わる広い領域に投射される。上丘を反射中枢とする定位反射(指向反射)とは、視野に入った興味を引く対象物が視野の中心に来るように、頭と眼球を動かす反射である。)

Internal features(内部の特徴(中脳の))Morphologia interna ないぶのとくちょう(ちゅうのうの) [A14_1_06_015_1]

皮質延髄路と皮質脊髄路が中脳の横断面において占める位置(ObersteinerおよびMingazziniによる) Aq 中脳水道;Brpq 下丘腕;Cgm 内側膝状体;F 腹側被蓋交叉ventrale Haubenkreuzang(Forel);Fcop 後交連からの線維束;Flp 内側縦束;Lm内側毛帯;M背側(噴水状)被蓋交叉 dorsale(fontaineartige) Haubenkreuzung(Meynert);Nga 上丘の白質と灰白質;Ntg 赤核;N III動眼神経核;Pcm乳頭体脚Pedunculus corporis mamillaris;pl黒核の網様突起Processus reticularis nuclei nigri; Pp 大脳脚;Qa 上丘;Sns黒核(黒質);zc緻密帯=“黒色部”(Spatz);zr網様帯=“赤色部”(Spatz);1 前頭小脳路および小脳前頭路frontocerebellare und  cerebellofrontale Bahn;2 前頭橋核路 Tractus corticopontinus frontalis(Arnold);3 皮質延髄路および皮質脊髄路; 4 後頭側頭橋核路Tractus corticopontinus occipitotemporalis (Türck);5 Zone des Lemniscus(毛帯の部分);6 中間層Stratum intermedium;7Pes lemniscus superficialis(浅毛帯足).

中脳と上丘の横断面I(その高さについては図459参照) 動眼神経核,黒核がみえる. 有髄神経線維は黒,神経細胞は赤.

中脳と上丘の横断面II(その高さについては図459参照) 動眼神経核,内側膝状体がみえる. 有髄神経線維は黒,神経細胞は赤.

Cerebral peduncle(大脳脚[広義の])Pedunculus cerebri だいのうきゃく[こうぎの] Feneis: 286 28

[A14_1_06_004] →(広義の大脳脚は中脳の腹側部で、背側の中脳蓋(四丘体)および中心灰白質背側部を除いた中脳水道水平中央断面より腹側の部分を総称する。さらにこれは背側の中脳被蓋と狭義の大脳脚に分かれる。中脳被蓋には著明な構造物として、動眼神経核群、中脳網様体、赤核、黒質、内側毛帯などが存在する。)

Base of peduncle(大脳脚底;脚底)Basis pedunculi; Basis pedunculi cerebralis だいのうきゃくてい;きゃくてい Feneis: 288 01

[A14_1_06_101] →(狭義の大脳脚を指す。大脳脚の前部と同義語である。)

Cerebral crus; Anterior part (cerebral crus, basis pedunculi)(大脳脚[狭義の];腹側部;前部(大脳脚の))Crus cerebri; Pars ventralis (anterior) だいのうきゃく[きょうぎの] Feneis: 286 29

[A14_1_06_005] →(狭義の大脳脚は大脳皮質の第Ⅴ層の細胞から出て内包を経て橋以下の部位へ投射する下行線維によって構成されている。これらは大脳脚の外側方より側頭橋路、頭頂延髄路、頭頂脊髄路、中心前回脊髄路、中心前回延髄路、中心前回被蓋路、中心前回橋路および前頭橋路と並ぶ。運動領皮質の中心前回から出たものは中央約2/5の位置を占め、その部の外側方から内側方に順に脊髄の下部から上部さらに脳幹脳神経核へ投射する線維が局在的に並ぶ。)

Pyramidal tract(錐体路)Tractus pyramidalis すいたいろ

[A14_1_06_102] →(錐体路本来の定義に従えば、起始領域、終枝部位に関係なく延髄の錐体(pyramis)を通るすべての神経線維群をいう。鳥類以下には見られず、哺乳類とくにヒトでよく発達しており意識的運動を司る。これらの大部分の線維は大脳皮質からおこり脊髄におわる皮質脊髄線維(または路)からなるが、若干の線維は錐体の経過中またはそれよりも前方のレベルでの神経路から離れて脳幹にある反対側の運動性の脳神経核および付近の毛様体(皮質網様体線維)におわる。これらの皮質核線維とよばれるものは厳密には錐体路に含まれないが、しばしば両者(皮質脊髄線維と皮質核線維)を一緒にして錐体路とよばれる。錐体路の起始細胞は、昔からの考えによれば起始細胞は、運動領皮質(4野)の第5層の巨大錐体細胞(Betz)で、その経路は、終脳の内包、中脳の大脳脚、橋の橋縦束、さらに延髄の錐体を下行し、脊髄前角にいたる有髄線維の集まりの長下行路である。その経路中、橋核、脳幹の網様体や運動核、またおそらく大脳基底核などに一部側枝を与え、延髄下端で大部分(91~97%)の線維が交叉し(これを錐体交叉という)これらは対側の脊髄側索(錐体側索路、外側皮質脊髄路)を下るが、小部分はそのまま同側の前索(錐体前索路、前皮質脊髄路)を下行する。しかし、錐体路の大脳皮質の起始領野をみれば、運動領(4野)のみでなく知覚領や連合領を含む他の領野まで包括される。起始ニューロンもBetzの巨大細胞のみならず、第5層に、みられる中型・小型の錐体細胞も証明されている。さらに脊髄の終枝部位についても前角の運動ニューロンに直接おわるものは動物による実験的研究で判明した限りではむしろ少なく、大部分は中間帯や後核基部におわり、介在ニューロンを介して運動ニューロンに影響を与えると思われる(間接皮質運動路)。錐体路の起始・終枝の問題だけでなく、錐体を構成する軸索には、古典的な錐体路以外の錐体外路系の線維も少量ながら含まれており、厳密には、延髄の錐体を通る線維群(錐体路)とそれ以外の運動系(錐体外路)とに分けることはむずかしい。)

Corticospinal fibres: Corticospinal tract(皮質脊髄線維;皮質脊髄路)Fibrae corticospinales; Tractus corticospinalis ひしつせきずいせんい;ひしつせきずいろ Feneis: 288 02

[A14_1_06_103] →(①皮質脊髄線維(皮質脊髄路)は大脳皮質の一次運動野(中心前回の中央部と上部)から起こり、内包に向かって集まり、内包の後脚を通って下行する。内包では、上肢に対する線維は線維は後脚の前部を、下肢に対する線維は後部を走る。ついで、大脳脚に入り、その中央2/3部を下行し、橋・延髄に至る。延髄では、その下部の腹側中央部にあつまり、錐体(実際はその一部)を形成する。それで皮質脊髄線維は錐体路ともいわれる。延髄の下端(大後頭孔のすぐ上方)で、線維は反対側に交叉して錐体交叉をつくる。錐体をつくる下行性線維の大部分は錐体交叉で反対側に交叉し、脊髄側索を外側皮質脊髄路(錐体前索路)として下行する。交叉する線維の割合は個人差が大きい。また、約75%の人で交叉する割合が左右非対称で、左側の錐体路の方が交叉する割合が大きい。外側皮質脊髄路の線維は脊髄を下行しつつ、脊髄灰白質に入り、前角の運動ニューロンに接属する。前角の運動ニューロンに直接に終わる線維と、介在ニューロンを経て関節に連絡するものとがある。前皮質脊髄路の線維は脊髄を下行し、前交連を通って交叉し、反対側に終わるが、一部は非交叉性で同側に終わる。このように皮質脊髄路は大脳皮質からおこり、脊髄前角に達し、その運動ニューロンへ運動指令を伝え、骨格筋の運動を起こさせる。延髄の錐体を通る伝導路のうちで、中心前回の一次運動野から起こる線維は約40%で、頭頂葉とくに中心後回や傍中心小葉などから起こる線維が約30%、前頭葉の運動前野などから発する線維が約30%を占めるといわれる。頭頂葉から発する線維は後索核や脊髄後角の膠様質などに達し、知覚性インパルスの流入に対して調整的な働きをするともいわれる。 ②皮質脊髄路は皮質から脊髄への線維束複合で脊髄内を下行し外側皮質脊髄路および全皮質脊髄路を形成する線維は大脳皮質第5層の錐体細胞から発したもので、中心前運動野(Brodmannの4野)、運動前野(6野)と少数ながら中心後回からも出ている。4野の起始細胞はBetzの巨大錐体細胞である。ここからの繊維は内包を下行し大脳脚の中央1/3を通り橋腹側部を経て脊髄腹側に錐体として現れる。さらに下行する際大部分の繊維は錐体交叉で反対側に移り脊髄側索の背側半を外側皮質脊髄路となって下行し脊髄全長の灰白質中間帯の介在ニューロンに分布する。体肢に関係する脊髄膨大部では特に手や手指、足や足指の運動に関わる体肢筋を支配する運動ニューロンに直接連絡している。錐体交叉で反対側に移らない少数の繊維は前皮質脊髄路となって同側の脊髄前索を下行し前角の内側半の介在ニューロンに終止する。皮質脊髄路線維がその起始皮質またはその下方で障害されると反対側の体運動に支障を生じ、特に腕や足で深刻となり筋力低下、痙攣が起こる。Babinskiの徴候このような片麻痺の状態に起因する)

Corticonuclear fibres(皮質核線維)Fibrae corticonucleares ひしつかくせんい Feneis: 288 03

[A14_1_06_104] →(皮質核線維(皮質延髄路)は大脳皮質の一次運動野(中心前回の下1/3部)から起こり、内方に向かって集まり、その膝を通って大脳脚に入り、その内側部を下行する。線維は脳神経の運動核(動眼神経核・滑車神経核・外転神経核・三叉神経運動核・顔面神経核・疑核・舌下神経核)に終わる。線維は大部分反対側に交叉するが、一部は非交叉性で同側の運動核終わる。直接に運動核に終わる線維のほかに、毛様体にある介在ニューロンを経て運動核のニューロンに接続するものも多い。運動核の運動ニューロンは、それぞれ脳神経として頭頚部の筋(眼筋・表情筋・咀嚼筋・咽頭後頭の筋・舌筋)を支配する。)

Corticopontine fibres; Corticopontine tract(皮質橋核路;皮質橋路;皮質橋線維)Tractus corticopontinus ひしつきょうせんい;ひしつきょうかくろ;ひしつきょうろ Feneis: 288 04

[A14_1_06_105] →(皮質橋核路は錐体路と併走しつつ下行し、しだいに橋核に終わる。これに接続する橋小脳路は大部分交叉して橋を横走し(横橋線維)、主として反対側の中小脳脚を通って小脳皮質に終わる。とくに橋核の内側ないし背内側部は橋虫部へ、外側部は小脳半球へ投射する。)

Frontopontine fibres(前頭橋線維;前頭橋核線維)Fibrae frontopontinae ぜんとうきょうせんい;ぜんとうきょうかくせんい Feneis: 288 06

[A14_1_06_106] →(前頭橋核線維は大脳脚の内側1/6のところにある。前頭葉と橋をむすぶ線維。)

Occipitopontine fibres; Occipitopontne tract(後頭橋線維;後頭橋核線維;後頭橋路)Fibrae occipitopontinae; Tructus occipitopontinus こうとうきょうかくせんい;こうとうきょうかくせんい;こうとうきょうろ

[A14_1_06_107] →(頭頂、後頭および側頭橋線維で、頭頂葉、後頭葉および側頭葉をなどから出て内方を通って下行し、大脳脚をへて同側の橋核終わる。)

Parietopontine fibres(頭頂橋線維;頭頂葉橋線維)Fibrae parietopontinae とうちょうきょうせんい;とうちょうようきょうせんい

[A14_1_06_108] →(頭頂、後頭および側頭橋線維で、頭頂葉、後頭葉および側頭葉をなどから出て内方を通って下行し、大脳脚をへて同側の橋核に終わる。)

Temporopontine fibres(側頭橋線維;側頭橋路)Fibrae temporopontinae そくとうきょうかくせんい;そくとうきょうろ Feneis: 314 25

[A14_1_06_109] →(頭頂、後頭および側頭橋線維で、頭頂葉、後頭葉および側頭葉をなどから出て内方を通って下行し、大脳脚をへて同側の橋核終わる。)

Corticoreticular fibres(皮質網様体線維;皮質網様体路)Fibrae corticoreticulares ひしつもうようたいせんい;ひしつもうようたいろ Feneis: 288 23

[A14_1_06_110] →(下位脳幹に投射する皮質網様体路は主として大脳皮質の運動野、前運動野および体性知覚野より起こる。線維は皮質脊髄線維と共に下行し、種々の高さで伝導路からわかれて、網様体路に入る。大部分の線維はかなり限局した2箇所、すなわち延髄と橋に入る。延髄ではこの線維は巨大細胞性網様核に終わる。皮質網様体路線維わずかに対側性優位であるが両側性に分布している。皮質遠心性線維を受ける網様体の領域からは①長い上行・下行投射線維、②小脳への投射線維、③脳神経核への投射などが出ている。)

Substantia nigra(黒質;黒核)Substantia nigra; Nucleus niger こくしつ;こくかくSoemmering's substance Feneis: 288 07

[A14_1_06_111] →(黒質は中脳被蓋腹側部の核で大脳脚の背側に接して存在する。ヒトの黒質の神経細胞は顆粒状のメラニン色素を豊富に含有するため、黒質は全体として肉眼的に黒くみえる。黒質には背側の緻密部と腹側の網様部が区分される。緻密部が神経細胞に富むのに対し、網様部では神経細胞の密度は粗で、細い神経線維に富む。したがて、前者は黒色部、後者は赤色部とよばれることがある。黒質からおこる遠心性神経線維としては、緻密部からおこり線条体に分布する黒質線条体線維、網様部から起こり視床のとくに内側腹側核(VM)に分布する黒質視床線維、および網様部からおこり上丘の中間灰白質に分布する黒質上丘線維などが主なものである。また、黒質に分布する求心性神経線維の起始としては、線条体・淡蒼球・視床下核(Luys体)が主なものである。これらのほか、前頭葉皮質・背側縫線核・扁桃体中心核・外側手綱核なども報告されているが不確実である。黒質は中枢神経系のうちでドーパミンとGABAの含有量が高い部位として知られる。ドーパミンは線条体に神経線維を送る黒質緻密部の神経細胞に主として含まれ、またGABAは線条体よりおこり黒質網様体に至る神経線維の軸索終末に主として含まれる。黒質に見られる線維はまたは11個のアミノ酸が連絡したペプチドとしてのP物質(SP)も含む。黒質は脳において最も高濃度にP物質を有する部位で、この物質は黒質の緻密部および緻密部内の神経終末に凝集している。網様部はまたエンケファリン作働性線維および終末も有する。尾状核および被殻の樹状突起の棘突起に含むニューロンから起こる線条体黒質線維はGABA、P物質、エンケファリンを含む。これらの線維は同様の伝達物質を有する線条体淡蒼球線維を出すニューロンとは異なる細胞集団から起こる。黒質はパーキンソン病(振戦麻痺)の原因となっている代謝障害に緻密に関係しており、Huntington舞踏病および異常な不随意運動や筋緊張の変化を特徴とする他のタイプの運動障害にも関与しているようである。パーキンソン病では黒質から線条体へのドーパミンの輸送および合成が極度に傷害される。Huntington舞踏病では線条体のドーパミンは正常であるがGABAは著明に減少している。)

Compact part of substantia nigra(緻密部;緻密帯;黒色部(黒質の))Pars compacta; Zona compacta; Pars nigra ちみつぶ;ちみつたい;こくしょくぶ(こくしつの) Feneis: 288 08

[A14_1_06_112] →(黒質の緻密部は色素をもつ大型の細胞が多数存在する。緻密部の細胞は高濃度のドーパミンを含有して、線条体(尾状核と被殻)におけるドーパミンの主な源泉とされる。ドーパミンに対する高い特異性を持つ抗体を用いた免疫組織化学的研究から、霊長類の緻密部および腹側被蓋野におけるドーパミン含有細胞の性質に関する詳細な情報が示された。ほとんどすべてのドーパミン含有細胞が緻密部で見られた。黒質上部では大型のドーパミン含有細胞が腹内側域に存在しており、黒質の下方では独特なドーパミン含有細胞柱が腹側の緻密部に広がっている。腹側被蓋野におけるドーパミン含有細胞の大部分がコレシストキニン(CCK)ペプチドを同時に持つ。ドーパミンおよびコレシストキニンの両者を持つニューロンは線条体、側坐核、扁桃核および前頭前野皮質に投射する。)

Lateral part of substantia nigra(外側部(黒質の))Pars lateralis substantiae nigrae がいそくぶ(こくしつの) [A14_1_06_113]

Reticular part of substantia nigra(網様部;網様帯;赤色部(黒質の))Pars reticularis; Zona reticularis; Pars rubra もうようぶ;せきしょくぶ(こくしつの) Feneis: 288 09

[A14_1_06_114] →(黒質の網様部は大脳脚に近く、細胞の少ない部分である。GABA(γ-アミノ酪酸)の合成に用いられる酵素のグルタミン酸脱水素酵素(GAD)は黒質網様部に高濃度に含まれる。齧歯類では黒質網様部ニューロンの約90%がGAD免疫反応陽性細胞である。サルにおいては、より少ないGABA陽性ニューロンが主に黒質網様部の外側部に存在する。GABA陽性の終末は黒質網様部全域に見られる。黒質網様部にはセロトニン(5-HT)線維および終末も含まれている。背側縫線核がセロトニン作働性神経路の主要な起源である。この核を刺激すると黒質の個々のニューロンの自発活動が抑制される。)

Retrorubral part of substantia nigra(赤核後部(黒質の))Pars retrorubralis substantiae nigrae せきかくこうぶ(こくしつの)

[A14_1_06_115]

Tegmentum of midbrain; Mesencephaic tegmentum(中脳被蓋)Tegmentum mesencephali ちゅうのうひがい Feneis: 288 10

[A14_1_06_007] →(中脳被蓋は黒質と中脳水道との間の部分。動眼神経核、滑車神経核の他に網様体、赤核および多くの小さな細胞集団を含む。)

White matter of midbrain tegmentum; White substance of midbrain tegmentum(白質(中脳被蓋の))Substantia alba tegmenti mesencephali はくしつ(ちゅうのうひがいの) [A14_1_06_201]

Central tegmental tract(中心被蓋路;中心被蓋束)Tractus tegmentalis centralis ちゅうしんひがいろ

[A14_1_05_325] →(中心被蓋路は赤核尾端からオリーブ核頭端にかけて網様体のほぼ中央部を縦走する線維束である。大部分の線維は小細胞性赤核におこり、同側の主オリーブ核におわる、とされている。線維束をその形状や位置で命名する場合には一般にfasciculusを用い、起始と終止で命名する場合にはtractusを用いることが多い。Tractus rubroolivarisはFasciculus tegmentalis centralisの主要な構成要素であるが、おそらく上行性の線維も含まれていると考えられる。小細胞性赤核を破壊してナウタ法でみると、大細胞性網様体にも終止性変性線維が認められる。これを赤核網様体路と呼ぶこともある。)

Rubro-olivary fibres(赤核オリーブ核線維;赤核オリーブ線維)Fibrae ruboolivares せきかくおりーぶかくせんい;せきかくおりーぶせんい

[A14_1_05_326] →(赤核オリーブ路線維は赤核の小細胞部から起こり、同側を中心被蓋路の一部となって下行枝主オリーブ核に終わる神経線維。)

Cerebello-olivary fibres(小脳オリーブ核線維;小脳オリーブ核路)Fibrae cerebelloolivares しょうのうおりーぶかくせんい;しょうのうおりーぶかくろ

[A14_1_05_328] →(小脳オリーブ核線維は小脳諸核から起こり上小脳脚を通った後、交叉して対側に移り中心被蓋路に合流して下行する。起始に対応して主・副オリーブ核に終わる。すなわち前部・後部の核からの線維は背側・内側の副オリーブ核に、内側核からは内側副オリーブ核に外側核からは主オリーブ核に終わる。)

Mesencephalic corticonuclear fibres(中脳の皮質核線維;中脳皮質核線維)Fibrae corticonucleares mesencephali ちゅうのうのひしつかくせんい;ちゅうのうひしつかくせんい

[A14_1_06_202] →(中脳皮質核線維は大脳皮質運動領から中脳の運動核(動眼神経核、滑車神経核)に投射する神経線維。投射された情報は隣接する核に中継される。)

Hypothalamospinal fibres(視床下部脊髄線維)Fibrae hypothalamospinales ししょうかぶせきずいせんい

[A14_1_06_203] →(視床下部脊髄線維は室傍核および視床下部の後部・外側部領域より起こり、同側脳幹の腹外側部を通り脊髄の側索にはいり中間外側核に終わる線維。)

Lateral lemniscus(外側毛帯)Lemniscus lateralis がいそくもうたい Feneis: 290 13

[A14_1_06_204] →(外側毛帯は中脳まで上行し、大部分の線維が下丘に終わる。背側および腹側蝸牛神経核からの線維は、背側、中間および腹側聴条として対側に向かい、多くは対側の台形体背側核におわるが一部はそのまま上行する。この上行する線維と同側の台形体背側核から出て上行する線維が一緒になって外側毛帯を形成する。外側毛帯は橋の高さで内側毛帯(系)の背外側の位置を占めて上行し、大部分は下丘に終わるが、一部は途中下丘のすぐ腹側に存在する外側毛帯核におわる。)

Tectopontine tract(視蓋橋路;視蓋橋核路)Tractus tectopontinus しがいきょうろ;しがいきょうかくろ

[A14_1_06_205] →(視蓋橋核路は上丘から起こる線維束。外側毛帯内側部に沿って同側を下行し、中脳被蓋外側層で終わる線維を出し、さらに腹側橋灰白質の外側部に達する。)

Lateral tectobulbar tract(外側視蓋延髄路)Tractus tectobulbaris lateralis がいそくしがいえんずいろ [A14_1_06_206]

Medial lemniscus(内側毛帯)Lemniscus medialis ないそくもうたい Feneis: 290 14

[A14_1_06_207] →(延髄の後索(薄束および楔状束)を通過する伝導路は圧覚と触覚や固有知覚の興奮を後索核(薄束核および楔状束核)や視床を経て大脳皮質に伝達する神経路である。薄束核および楔状束核から起こる二次ニューロンは延髄視床路(内側毛帯)となり正中縫線近く延髄の中心を通り上行する。橋にはいると外側に広がり、橋核の背側縁を越えて上行する扁平な帯になる。中脳内では、黒質の背側縁を越えて赤核で外側に移る。内側膝状体まで内側を通り視床の後腹側核に入り、そこで終わる。視床を出た第3ニューロンの線維は、上行して大脳皮質におもむく。内側毛帯系は脊髄から上行する識別性感覚路の最初の一環を形成するのは後根を通って入ってくる太い有髄神経の枝であり、後索を上行する。後索を上行するこれらの神経線維は身体部位対応配列を示す。すなわち、仙骨神経根や腰神経塊を通って入ってくる上行枝は後索の内側部を占めて薄束を形成する。一方、頚神経根を通って入ってくる上行枝は後索の外側部を占めて楔状束を形成する。また、胸神経根を通って入ってくる少数の上行枝は、薄束と楔状束との間に位置する。薄束と楔状束は、延髄の尾側端でそれぞれ対応する神経核、すなわち、薄束核と[内側]楔状束核に終止する。ある後根が支配する皮膚領域は、同時にその後根の上下の後根からも支配されている。このように一定の皮膚領域を支配する隣接後根の神経線維群は、後根から後索、さらに後索核へと向かう経過のうちに、一つの神経束にまとまる。このような集束の結果として、隣接する皮節(dermatome)間の重なり合いは解消されるのであるが(一つの皮節からの情報を伝道する神経線維が集合して一つにまとまる)、後索で最初にみられたような層構造は次第に不明瞭になる。薄束核の背側部と[内側]楔状束核の背側部にはニューロンが幾つかの小群をつくって分布する。超す悪を上行する神経線維の中で、四肢の遠位部を支配するものがこれらのニューロン小群に終止して身体部位対応配列を示す。後索核の腹側部と吻側部では身体部位対応配列はあまり精細でない。後索には後核固有核から起こる内在性神経線維も含まれている。これらの内在性神経線維は後索核の腹側部と吻側部に終止する。その他、後側索(側索後部)を上行する神経線維は両側の後索核の腹側部と吻側部、およびZ群(group Z)に終止する。Z群は薄束核の吻側端に位置するニューロン群であり、下肢の筋からの入力を視床に中継する。上枝からの固有感覚性入力を中継するのは外側楔状束核である。この核から起こる投射神経線維は主として下小脳脚を通って小脳へ入る。後索核の腹側部と吻側部から起こる投射神経線維は、後索核背側部(ニューロンの小群の集合から成る)から起こる投射神経線維に比べて、分布範囲が広い。すなわち、前者も後者も反対側の視床へ向かうのであるが、前者はさらに小脳や下オリーブ核に投射し、脊髄の後角へ向かうものもある。薄束核と[内側]楔状束核からは内弓状線維が起こり、正中部で交叉してのち、内側毛帯を形成して上行し、視床の後外側腹側核、後核群、内側膝状体大細胞部、および不確帯に終止する。後索核から後外側腹側核への投射は”核と殻(core-and-shell)”の様式を示す。すなわち、後索核背側部から起こる皮膚感覚の投射線維は後外側腹側核の中心部(すなわちcoreの部分)に終止し、後索核腹側部と吻側部から起こる固有感覚の投射線維は後外側腹側核の辺縁部(すわなち、shellの部分)に終止する。内側毛帯線維は後外側腹側核において一連の平行な層板をなして終止する。これらの層板は核のcoreの部分とshellの部分を通じて前後方向に伸びており、それぞれの層板が身体の特定の部位に対応している。また、各層板の前後軸に沿って、種々の感覚要素に対応する投射線維の終末が次々と配列分布する。)

Trigeminal lemniscus(三叉神経毛帯)Lemniscus trigeminalis さんさしんけいもうたい Feneis: 290 16

[A14_1_06_208] →(解剖学用語としては、三叉神経脊髄路核、三叉神経主知覚核におこり視床におわる伝導路をいうが、三叉神経主知覚核の腹側2/3におこり交叉して視床に上行する線維束のみを指す場合がある。三叉神経視床路は主に脊髄路核の下部と中間部の第Ⅰおよび第Ⅳ層細胞から起こる。これらの細胞の軸索は網様体中を腹内側方に向かい、正中線で交叉して対側の内側毛帯のすぐ近くをこれに沿って走り、視床の後内側腹側核の細胞に選択的に終わる。)

Medial longitudinal fasciculus(内側縦束)Fasciculus longitudinalis medialis ないそくじゅうそく Feneis: 288 24

[A14_1_06_209] →(前索の後部には脳幹のいろいろなレベルにある種々な神経核からでる複雑な下行線維束がある。この複雑な神経線維束は内側縦束として知られている。この神経束の脊髄部は同じ名称で呼ばれる脳幹にある伝導路の一部にすぎない。内側縦束の上行線維は主として前庭神経内側核および上核から起こり、同側性および対側性に主として外眼筋支配の神経核(外転、滑車、動眼神経核)に投射する。内側核からの上行線維は主に交叉をし、両側の外転神経核と左右の動眼神経核に非対称性に終わるが、滑車神経核へは対側性に投射する。上核の中心部にある大形細胞は非交叉性上行線維を内側縦束に出し、これは滑車神経核および動眼神経核に終わる。同核の周辺部にある周辺部にある小型細胞は交叉性の腹側被蓋束(内側縦束の外側にある)を経て動眼神経核に投射するが、これは主として対側の上直筋を支配する細胞に作用する。生理学的には、前庭神経核から外眼筋支配核から外眼筋支配核への上行性投射のうち、交叉性線維は促進的に働くが、肥厚性線維は抑制的に働く。内側縦束にはこのほかに、左右の外転神経核の間にある神経細胞から起こり、交叉して上行し、動眼神経核の内側直筋支配部に終わる明瞭な線維が含まれる。この経路は一方の外転神経核の活動を対側の動眼神経核内側直筋支配部へ連絡する物で、外側視の場合に、外側直筋が収縮すると同時に対側の内側直筋が共同して収縮するための神経機構を形成している。内側縦束の上行線維の一部は、動眼神経核を回ってCajal間質核に終わる。これは内側縦束内にうまっている小さい神経細胞群である。前庭神経内側核は対側性に間質核へ投射するが、上核は同側性に終わる。前庭神経二次線維は両側性に視床の中継核へ投射し、その数は中等度で、後外側腹側核に終止する。前庭からの入力を受ける視床の細胞は体性感覚情報にも対応するが、これは視床には特定の前庭感覚中継核がないことを示唆している。)

Mesencephalic tract of trigeminal nerve(三叉神経中脳路)Tractus mesencephalicus nervi trigemini さんさしんけいちゅうのうろ Feneis: 288 26

[A14_1_06_210] →(三叉神経中脳路は中脳中心灰白質に沿って位置し、単一の知覚神経からなり、その起点の細胞は三叉神経中脳路核の細胞体からの主な突起は鎌状をした三叉神経中脳路を作り、これは三叉神経運動核の高さまで下行し、側副枝を運動核に送るが、大部分は運動根の一部として脳外に出る。)

Posterior longitudinal fasciculus; Dorsal longitudinal fasciculus(後縦束;背側縦束)Fasciculus longitudinalis posterior; Fasciculus longitudinalis dorsalis こうじゅうそく;はいそくじゅうそく Feneis: 288 25

[A14_1_06_211] →(背側縦束は中脳から延髄にかけて中心灰白質の腹内側部にみれれる小さい神経線維束で、細い有髄線維を含む。上行性および下行性の比較的短い神経線維の連鎖であり、吻側では視床下部の室周線維に連絡する。自律性または内臓性情報の中枢伝導系の一つとされる。)

Rubronuclear tract(赤核核路)Tractus rubronuclearis せきかくかくろ [A14_1_06_212]

Rubrospinal tract(赤核脊髄路)Tractus rubrospinalis せきかくせきずいろ Feneis: 290 10

[A14_1_06_213] →(赤核脊髄路はモナコフ束ともよばれる。この伝導路の線維は、中脳被蓋の中心部にある卵円形の細胞集団である赤核からおこる。赤核は普通、吻側の小細胞群と尾側の大細胞群に分けられ、それらは動物によって大きさに差がある。赤核脊髄路は赤核の大細胞部から起こる。赤核脊髄路の線維は腹側被蓋交叉で完全に交叉し、脊髄各髄節を側索の皮質脊髄路の前側および一部それと混在して下行する。赤核脊髄路の線維は体部位局在性に構成されており、核の特定の部分の細胞はきめられた脊髄のレベルに選択的に投射する。頚髄へ投射する線維は赤核の背側および背内側部からおこり、一方腰仙髄に投射する線維は赤核の腹側および腹外側から起こる。胸髄は赤核の中間部から起こる線維を受ける。赤核脊髄路は①脊髄全長を下行する、②第Ⅴ層の外側半分、第Ⅵ層、および第Ⅶ層の背側部および中央部に終止する。赤核は大脳皮質と小脳から線維を受ける。“運動野”皮質からの皮質赤核路線維は赤核の小細胞部には両側性に、大細胞部には同側性に投射する。これらの投射線維はその起始終止とも体部位局在性に配列する。このシナプス結合を通して、皮質赤核路と赤核脊髄路とは共同して体部位局在性に配列した非錐体外路系伝導路として大脳皮質運動領と特定の脊髄レベルの間に存在する。赤核のあらゆる部分が上小脳脚を経てくる交叉性の小脳遠心線維を受ける。歯状核からの線維は赤核の前1/3に投射し、中位核(ヒトの球状核と栓状核に相当する)からの線維は体部位局在的に小脳皮質の部分と赤核の大細胞部とを関係づけている。赤核の細胞を刺激すると対側の屈筋のα運動ニューロンに興奮性シナプス後電位が発生し、また、伸筋のα運動ニューロンに抑制的シナプス後電位が発生する。赤核脊髄路の最も重要な機能は屈筋群の筋緊張の制御に関与することである。 Monakow, Constantin von (1853-1930) スイスの神経学者。大脳皮質の機能局在を明示し(Die Lolcalisation in Grosshirn u. der Abbau der Funktion durch kortical Herde, 1914)、モナコフ束(赤核脊髄路)を記述(Der rote Kern, die Haube u. die Regio hypothalamica bei einigen Saeugetieren und beim Menschen, Arb. Hirnanat. Inst. Zuerich, 1909, 3, 51-267; 1910, 4, 103-225)。)

Rubro-olivary tract(赤核オリーブ核路;赤核オリーブ路)Tractus rubroolivaris せきかくおりーぶかくろ;せきかくおりーぶろ

[A14_1_06_214] →(赤核の小細胞部から非交叉性の線維束が中心被蓋路に入り、オリーブ核主核の背側板に終わる。これを赤核オリーブ路といい、小脳へのフィールドバック系の一部をなす。)

Spinal lemniscus; Anterolateral tracts; Anterolateral system(脊髄毛帯;前外側路;前外側系)Lemniscus spinalis; Tractus anterolaterales せきずいもうたい;ぜんがいそくろ;ぜんがいそくけい Feneis: 290 15

[A14_1_06_215] →(脊髄毛帯は後索核におこり視床におわる線維束を内側毛帯(狭義)とよぶが、橋頭側半のレベルから先は、この内側毛帯に脊髄視床路と三叉神経視床路とが合流して上行する。この複合体をも内側毛帯(広義)とよぶところから、脊髄視床路を脊髄毛帯、三叉神経視床路を三叉神経毛帯と呼ぶことがある。)

Spinothalamic fibres(脊髄視床線維)Fibrae spinothalamicae せきずいししょうせんい

[A14_1_04_138] →(脊髄視床線維は後角のかなり広い範囲から起こる。その領域はまだ確定されていないが、おそらくⅠ・Ⅵ・Ⅶ層より起こると思われる。これらの線維の大部分はその起始部よりも1ないし数節頭側のレベルで白前交連を通って正中線で交叉し、反対側の前側索(前索と側索の境界部)を外側脊髄視床路(痛覚、温度覚)および前脊髄視床路(触覚)として上行する。両神経路共にそれを構成する神経線維に身体部位対応的配列がみられる。前脊髄視床路線維の中には延髄網様体や延髄外側網様核に終止するものがある。その他の線維はほぼオリーブ核尾側端のレベルで外側脊髄視床路に加わる。外側脊髄視床路は痛覚受容に関与しており、脊髄では前脊髄視床路の背外側方に位置している。脊髄視床線維の多くが脳幹網様体に終止する。橋と中脳の境界レベルでは、残りの脊髄視床線維が内側毛帯に加わる。したがって後索系、内側毛帯、脊髄視床路を併せて、“毛帯系”という。)

Spinoreticular fibres(脊髄網様体線維)Fibrae spinoreticulares せきずいもうようたいせんい

[A14_1_04_139] →(後柱に局在する一部のニューロンが軸索を前側索に出し、それらが上行して脳幹網様体の広い領域に分布している。脊髄網様体線維はの多くは延髄に終止し、同側性であるが、橋まで上行する線維は少なく、両側性に連絡するものが多い。)

Spinomesencephalic fibres(脊髄中脳線維)Fibrae spinomesencephalicae せきずいちゅうのうすいどうしゅういせんい

[A14_1_04_140] →(脊髄中脳線維は脊髄毛帯に含まれて中脳に終わる神経線維の総称。視蓋脊髄線維から上丘線維・水道周囲脊髄線維の深層に続き水道周囲灰白質に終わる。)

Spinotectal fibres(脊髄視蓋線維)Fibrae spinotectales せきずいしがいせんい

[A14_1_04_141] →(脊髄視蓋線維は脊髄後核の神経細胞から起こり、前交連で対側に移り前外側索を上行して上丘深層に終わる。)

Spinoperiaqueductal fibres(脊髄中脳水道周囲灰白質線維;脊髄中脳中心灰白質線維)Fibrae spinoperiaqueductales せきずいちゅうのうすいどうしゅういかいはくしつせんい;せきずいちゅうのうちゅうしんかいはくしつせんい

[A14_1_04_142] →(脊髄中脳水道周囲線維は脊髄後角の神経細胞から起こり、対側の前外側索を上行して中脳の水道周囲灰白質に終わる神経線維。下行性痛覚抑制路を含む。)

Spinohypothalamic fibres(脊髄視床下部線維)Fibrae spinohypothalamicae せきずいししょうかぶせんい

[A14_1_04_143] →(脊髄視床下部線維は脊髄灰白質から起こり、前外側索の一部として上行し視床下部に終わる神経線維。)

Superior cerebellar peduncle(上小脳脚;結合腕)Pedunculus cerebellaris superior; Brachium conjunctivum じょうしょうのうきゃく;けつごうわん Feneis: 288 19

[A14_1_06_216] →(上小脳脚(結合腕Brachium conjunctivum)は主として小脳を出る線維からなる。その主体をなす線維は小脳視床路と小脳赤核路である。これらは主として歯状核から出て、腹内側方に進んで深部に入り、中脳下半で大部分交叉し、上小脳脚交叉(結合腕交叉)を作り、反対側の中脳被蓋を上行し、一部は赤核に終わるが(小脳赤核路)、一部はさらに視床の前外側腹側核に至る(小脳視床路)。なお上小脳脚の表面を前脊髄小脳路が逆行して小脳に入り、主としてその前葉に分布する。また鈎状束は室頂核から出て大部分交叉し、上小脳脚の背外側をへて鈎状に曲がり、下小脳脚内側部の上部に来て前庭神経各核にならびに橋、延髄の網様体内側部に分布する。)

Decussation of superior cerebellar peduncles(上小脳脚交叉;結合腕交叉;小脳大脳脚交叉;大被蓋交叉)Decussatio pedunculorum cerebellarium superiorum; Decussatio crurum cerebellocerebralium じょうしょうのうきゃくこうさ;けつごうわんこうさ;しょうのうだいのうきゃくこうさ;だいひがいこうさWernekink's decussation Feneis: 290 08

[A14_1_06_217] →(上小脳脚は小脳核から出て初めは表面を走るが、下丘の高さで奥に入り交叉して一部は対側の赤核に終わり、一部は視床に至る。この交叉を上小脳脚交叉という。)

Tectobulbar tract(視蓋延髄路)Tractus tectobulbaris しがいえんずいろ Feneis: 290 11

[A14_1_06_218] →(視蓋延髄路は上丘から両側性に中脳網様体や反対側の橋および延髄網様体に終わる線維が出る。これらを一括して視蓋延髄路または線維とよぶ。この神経路に伴行して下行し、橋核、脳神経の背側核とくに眼筋支配の核に終末している。このことから眼球運動の反射に密接な関連をもつとみられる。)

Tectopontine tract(視蓋橋路;視蓋橋核路)Tractus tectopontinus しがいきょうろ;しがいきょうかくろ

[A14_1_06_219] →(視蓋橋核路は上丘から起こる線維束。外側網体内側部に沿って同側を下行し、中脳被蓋外側層で終わる線維を出し、さらに腹側橋灰白質の外側部に達する。)

Tectospinal tract(視蓋脊髄路)Tractus tectospinalis しがいせきずいろHeld's bundle Feneis: 290 12

[A14_1_04_112] →(視蓋脊髄路の線維は主として視覚の中継核としてはたらく複雑な構造である上丘の深層からおこる。この経路の線維は中脳水道周囲灰白質で前内側に移行し、内側縦束の前方で背側被蓋交叉において交叉する。上部脳幹においてこの経路は内側縦束の内側で内側縫線近傍を下行し、延髄レベルで視蓋脊髄繊維は内側縦束に組み込まれる。)

Pretecto-olivary fibres(視蓋前域オリーブ核線維;視蓋前域オリーブ線維)Fibrae pretectoolivares しがいぜんいきおりーぶかくせんい;しがいぜんいきおりーぶせんい

[A14_1_05_306] →(視蓋前核から同側の内側副オリーブ核に投射する神経線維。)

Tecto-olivary fibres(視蓋オリーブ核線維;視蓋オリーブ線維)Fibrae tectoolivares しがいおりーぶかくせんい;しがいおりーぶせんい

[A14_1_05_307] →(視蓋オリーブ核線維は中脳上丘深層からおこり、対側の副オリーブ核内側に終わる神経線維。)

Tegmental ducussations(被蓋交叉)Decussationes tegmentales ひがいこうさ Feneis: 290 07 [A14_1_06_220]

Posterior tegmental decussation; Dorsal tegmental decussation(背側被蓋交叉;後被蓋交叉)Decussatio tegmentalis posterior はいそくひがいこうさ;こうひがいこうさMeynert's decussation

[A14_1_06_221] →(上丘の深部にある細胞から起こる視蓋脊髄路が、中心灰白質のまわりを前内側方へ走り背側被蓋交叉で交叉する。)

Anterior tegmental decussation; Ventral tegmental decussation(前被蓋交叉;腹側被蓋交叉)Decussatio tegmentalis anterior ぜんひがいこうさ;ふくそくひがいこうさForel, Decussation of

[A14_1_06_222] →(赤核脊髄路の線維は腹側被蓋交叉で完全に交叉し、脊髄各髄節を側索の皮質脊髄路の前側および一部とそれと混在して下行する。)

Corticomesencephalic fibres(皮質中脳線維)Fibrae corticomesencephalicae ひしつちゅうのうせんい

[A14_1_06_223] →(皮質中脳線維は大脳皮質から起こり中脳の諸構造(被蓋、中脳蓋、黒質など)に終わる線維。)

Grey matter of midbrain tegmentum; Grey substance of midbrain tegmentum; Gray matter of midbrain tegmentum; Gray substance of midbrain tegmentum(灰白質(中脳被蓋の))Substantia grisea tegmenti mesencephali かいはくしつ(ちゅうのうひがいの) [A14_1_06_301]

Nucleus of oculomotor nerve(動眼神経核)Nucleus nervi oculomotorii どうがんしんけいかく Feneis: 288 28

[A14_1_06_302] →(動眼神経核は第三脳神経、すなわち、動眼神経の起始核であり、動眼神経運動神経細胞の集合である。中脳被蓋の正中線背側部の両側に存在し、中脳中心灰白質の腹方に位置する。動眼神経核の尾側端は滑車神経核の吻側端とほとんど連続しており、動眼神経核の吻側端は中脳の最吻側レベルに達する。動眼神経運動神経細胞はそれぞれの筋支配に対応して局在配列する。すなわち、下直筋支配細胞は核の背側部、内直筋支配細胞は核の腹側部、下斜筋支配細胞は前2者の中間部、上直筋支配細胞は内側部に位置し、それぞれ脳幹の長軸に平行な左右一対の細胞柱を形成する。これらのうち、上直筋支配細胞柱だけは反対側の筋を支配するが、その他は同側の筋を支配する。また、上眼瞼挙筋を支配する細胞柱は正中部に位置し、不対であって、動眼神経核の尾側1/3のレベルにのみ存在する(尾側正中核)。以上の他、副核(Edinger-Westphal核)および正中核(Perlia核)を含めて動眼神経核群とされることがおおい。)

動眼神経核と滑車神経核を背方に投影して見たもの (Edingerより)

Accessory nuclei of oculomotor nerve(動眼神経副核;副起始核(動眼神経の);エディンガー・ウェストファール核)Nuclei accessorii nervi olulomotorii どうがんしんけいふくかく;ふくきしかく(どうがんしんけいの);えでぃんがー・うぇすとふぁーるかくEdinger-Westphal nucleus Feneis: 288 29

[A14_1_06_303] →(動眼神経副核はエディンガー・ウェストファール核ともよばれる。動眼神経核のうちの副交感性の部で縮瞳に関与する。動眼神経副核として分類されるのは動眼神経核に密接な関係をもつ3つの核である。これはCajal間質核、後交連核(Darkschewitsch核)および後交連核群である。間質核は中脳上部で内側縦束の線維の間およびその外側にある多極細胞の小集団である。この核は前庭神経上核および内側核、視蓋前域、前頭眼野、室頂核からの線維を受ける。この間質核からの線維は後交連の腹側で交叉し、動眼神経核群のうち腹側細胞柱を除くすべての体制細胞柱に分布する。間質核はさらに両側の滑車神経核、同側の前庭神経内側核および脊髄(間質核脊髄路)に投射する。この核は遅い眼球の回転と垂直運動および追跡眼球運動に関係する。この核はまた頭部の働きと姿勢の制御にも関わっている。Darkschewitsch核は動眼神経核群の体性核の背外側で中心灰白質の腹外側縁の内部にある小型細胞からなる。この核からの線維は後交連核に投射するが、動眼新計画群や下位脳幹部には投射しない。後交連核は後交連線維と密接に関与する細胞集団である。この核は中心灰白質の背外側および背側に位置し、視蓋前域および視床後部の核群と連絡する。サルにおける実験から、後交連線維を正中で切断しても瞳孔の対光反射はそこなわれないが、Cajal間質核からの交連線維および後交連核を傷つけると両眼眼瞼の抗体や眼球の垂直方向への運動障害が引き起こされることが示されている。  ドイツのLudwig Edinger (1855-1918)と、オーストラリアのAlexander Karl Otto Westphal (1833-1890)という2人の神経学者の名前を冠している。)

Visceral nuclei; Autonomic nuclei(自律神経核;内臓性核)Nuclei viscerales; Nuclei autonomici じりつしんけいかく;ないぞうせいかく

[A14_1_06_304] →(内臓性核は上方で連なっている2つの明らかな核群よりなる。左右のEdinger-Westphal核は上方では正中線の背側で合一し、前正中核の内臓性細胞と一続きになる。前正中核の細胞は上部の外側体性細胞柱間の縫線内にある。Edinger-Westphal核および前正中核の両者からは非交叉性の副交感神経節前線維が出て、体性線維と共に走って網様体神経節に至る。内臓性核はこれまで毛様体神経節に至る副交感神経節前線維のみを投射すると考えられてきたが、最近の逆行性軸索輸送法を用いた研究により下位脳幹や脊髄にも投射するすることが明らかにされた。いわゆるPerlia正中核は正中核群に属し、特に輻輳に関与すると思われてきた。しかしヒトおよびサルの脳でこの核を同定することは非常に困難であり、その機能は未だ不明である。動眼神経の根線維は多くの小線維束に分かれて腹側に走り、そのうちのあるものは赤核を貫く。この細根は集まりそして脚間窩から脳幹の外に出る。)

Anterior medial nucleus visceral nucleus; Ventral medial visceral nucleus(前内側核;腹内側核;前正中核)Nucleus anteromedialis accessorii nervi oculomotorii; Nucleus visceralis anteromedialis; Nucleus visceralis dorsalis ぜんないそくかく;ふくないそくかく;ぜんせいちゅうかく

[A14_1_06_305] →(左右のEdinger-Westphal核は上方では正中線の背側で合一し、前正中核の内臓性細胞と一続きになる。前正中核の細胞は上部の外側体性細胞柱間の縫線内にある。Edinger-Westphal核および前正中核の両者からは非交叉性の副交感神経節前線維が出て、体性線維と共に走って網様体神経節に至る。内臓性核はこれまで毛様体神経節に至る副交感神経節前線維のみを投射すると考えられてきたが、最近の逆行性軸索輸送法を用いた研究により下位脳幹や脊髄にも投射するすることが明らかにされた。)

Posterior nucleus of accessory oculomotor nuclei; ; Dorsal nucleus of accessory oculomotor nuclei; Dorsal visceral nucleus; Posterior visceral nucleus; Posterior accessory nucleus of optic tract(背側核;後核(動眼神経副核の))Nucleus dorsalis accessorii nervi oculomotorii; Nucleus posterior accessorii tracti optici はいそくかく;こうかく(どうがんしんけいふくかくの) [A14_1_06_306]

Interstitial nucleus(間質核;カハール間質核)Nucleus interstitialis かんしつかく;かはーるかんしつかくCajal's interstial nucleus Feneis: 290 01

[A14_1_06_307] →(間質核は内側縦束の傍らにあり、比較的大きい多極性の細胞からなる。この核から出る線維は後交連を通って正中線で交叉し、動眼神経核、滑車神経核、前庭神経内側核などとシナプス結合する。これらの線維が障害されると垂直方向の眼球麻痺が起こる。)

Central precommissural nucleus(中心交連前核;中心前交連核)Nucleus precommissuralis centalis ちゅうしんこうれんぜんかく;ちゅうしんぜんこうれんかく [A14_1_06_308]

Nucleus of posterior commissure(後交連核;ダルクシュエヴィチ核)Nucleus commissurae posterioris こうこうれんかくDarkschewitsch, Nucleus of

[A14_1_06_309] →(後交連核はダルクシュヴィッチ核ともよばれている。後交連核は動眼神経核群の体性核の背外側で中心灰白質の腹外側縁の内部にある小形細胞から成る。この核からの線維は後交連核群に投射するが、動眼神経核群や下位脳幹部には投射しない。ダルクシュヴィッチDarkshevitch, Liverius Osipovich (Dark-cehwitschy)(1858-1925) ロシアの神経学者。中脳のダルクシュヴィチ核、ダルクシュヴィッチ線維を記載。)

Ventral subdivision of nucleus of posterior commissure(腹側部;腹側下部(後交連核の))Pars ventralis nuclei commissurae posterioris ふくそくぶ;ふくそくかぶ(こうこうれんかくの) [A14_1_06_310]

Interstitial subdivision of nucleus of posterior commissure(間質部(後交連核の))Pars interstitialis nuclei commissurae posterioris かんしつぶ(こうこうれんかくの)  [A14_1_06_311]

Dorsal subdivision of nucleus of posterior commissure(背側部(後交連核の))Pars dorsalis nuclei commissurae posterioris はいそくぶ(こうこうれんかくの)Gudden, von Gudden's ganglion  [A14_1_06_312]

Interpeduncular nucleus(脚間核)Nucleus interpeduncularis きゃくかんかく Feneis: 288 31

[A14_1_06_313] →(脚間核は脚間窩の背側にある。この核は手綱核からの投射を反屈束を経由し受けている。多くのコリン作働性線維が脚間核に終止する。反屈束の線維のうちで脚間核を通過するものは上中心核、背側被蓋核および中脳中心灰白質に達している。背側被蓋核はまた乳頭体被蓋路を通して乳頭体からも線維を受け、中脳中心灰白質の腹内側にある小さな線維束である背側縦束と密接に関係している。これらの神経路は辺縁系に関連した信号を中脳の諸核に伝えている複雑な神経路の一部を構成しており、内臓や行動機能に関係する。)

Accessory nuclei of optic tract(副視索核群;副視索核;視索副核;視索副核群)Nuclei accessorii tractus optici ふくしさくかくぐん;ふくしさくかく;しさくふくかく;しさくふくそくかくぐん;ふくしさくかくぐん

[A14_1_06_314] →(視索副核は中脳に行く視神経に沿って存在する神経細胞体の小群で、後核、内側核、外側核にわけられている(終核ともよばれる)。視索沿いのこれらの核の連結は網膜スリップに関係する副視覚系になっている。)

Posterior nucleus of accessory nuclei of optic tract; Dorsal accessory nucleus of optic tract(後核;背側核(視索副核の))Nucleus accessorius posterior tractus optici こうかく;はいそくかく(しさくふくかくの)  [A14_1_06_315]

Lateral accessory nucleus of optic tract(外側核(視索副核の);視索外側副核)Nucleus accessorius lateralis tractus optici がいそくかく(しさくふくかくの);しさくがいそくふくかく  [A14_1_06_316]

Medial nucleus; Medial accessory nucleus of optic tract(内側核;内側終止核;副視索内側核(視索副核の))Nucleus accessorius; Nucleus terminalis medialis; Medial terminal nucleus ないそくかく;ないそくしゅうしかく;ふくしさくないそくかく(しさくふくかくの)  [A14_1_06_317]

Lateroposterior tegmental nucleus; Laterodorsal tegmental nucleus(後外側被蓋核;背外側被蓋核)Nucleus tegmentalis posterolateralis こうがいそくひがいかく;はいがいそくひがいかく  [A14_1_06_318]

Mesencephalic nucleus of trigeminal nerve(三叉神経中脳路核;三叉神経中脳核)Nucleus mesencephalicus nervi trigeminalis さんさしんけいちゅうのうろかく;さんさしんけいちゅうのうかく Feneis: 288 27, 280 30

[A14_1_05_409] →(三叉神経中脳路核は三叉神経運動核の下端より少し下方の高さから中脳上端部に至る。非常に細長く延びた核で、橋の高さでは第四脳室の腹外側核の近くにあり、中脳では中心灰白質の外側縁にある。これは脊髄神経節の細胞に似た、少数の大きい偽単極細胞からなる。その突起は三叉神経中脳路を作りつつ下行し、三叉神経運動核に突起を出したのち運動根に加わり、主として咀嚼筋に分布し、その固有知覚を伝え、咬む力の調節に関与している。また中脳路核上部には外眼筋などからの固有知覚が伝えられるという。中脳路核から高次の中枢への連絡については不明である。)

Nucleus of trochlear nerve; Trochlear nucleus(滑車神経核)Nucleus nervi trochlearis かっしゃしんけいかく Feneis: 288 30

[A14_1_06_319] →(滑車神経核は下丘の高さで、中心灰白質の腹内側にあり、動眼神経核の直接尾方延長部にあたる。これは動眼神経主核と同様に多極性の大細胞からなり、これから出る根線維は中心灰白質の外側部を背側方でやや下方に走り、下丘の下で完全交叉をおこない(滑車神経交叉)、脳を出る。なお滑車神経核の背側で中心灰白質中には背側被蓋核が認められ、また内側縦束の腹側には腹側被蓋核が区別される。)

Parabigeminal nucleus(二丘傍核;二丘傍体核;二丘体傍核)Nucleus parabigeminalis にきゅうぼうかく;にきゅうぼうたいかく;にきゅうたいぼうかく

[A14_1_06_320] →(二丘傍核は中脳外側の脊髄視床路線維束の中にある細胞体群で、下丘の腹外側で下丘と交通する。中脳外側に位置するこの小さな卵円形の核はコリン作働性ニューロンを含み、上丘の浅層から多くの線維を受け、視野局在を有する。一側の二丘傍核からの投射線維は両側の上丘浅層に達しており、その投射には局在性が認められる。光刺激に対し一貫して速やかに応答する二丘傍核の細胞は、動いているか、また静止している光の点により活動化され、上丘浅層の細胞と似た大きさの受容野を有する。二丘傍核は上丘と友に視覚情報処理の機能を果たす。)

Periaqueductal grey substance; Central grey substance(中脳中心灰白質;中脳水道周囲灰白質)Substantia grisea centralis; 088, 100 ちゅうのうちゅうしんかいはくしつ;ちゅうのうすいどうしゅういかいはくしつ Feneis: 288 11

[A14_1_06_321] →(中脳中心灰白質は中脳水道を取り囲み密集する比較的小型の細胞からなり、機能的には均一ではない。この領域はこれまで中枢の鎮痛機構、発生、生殖行動の制御、攻撃行動、上方注視機構と深く関係するとされてきた。この中脳中心灰白質は視床下部、脳幹毛様体、縫線核、青斑核および脊髄からの入力を受け、これらの多くはさらに中脳中心灰白質からの相互の投射を受ける。中脳中心灰白質のニューロンはエンケファリン、P物質、コレシストキニン、ニューロテンシン、セロトニン、ダイノルフィン、ソマトスタチンに対して免疫反応陽性であり、ひとつのニューロンがしばしば複数のニューロペプチドを有する。中脳中心灰白質の腹外側部は、刺激による鎮痛に関して最も効果的な部位と思われる。中脳中心灰白質の腹側部へのモルヒネの微量注入により著明な鎮痛を引き起こすことが齧歯類動物において認められている。)

Peripeduncular nucleus of mesencephalon(脚周囲核(中脳の))Nucleus peripeduncularis きゃくしゅういかく(ちゅうのうの)

[A14_1_06_322] →(黒質の外側部には脚周囲核の小形細胞があり、大脳脚の背側縁を覆っている。)

Red nucleus(赤核)Nucleus ruber せきかく Feneis: 290 03

[A14_1_06_323] →(赤核は中脳被蓋では最も明瞭な部分で、網様体のほぼ中央にあり、桃黄色を呈し、周囲を上小脳脚線維で囲まれている。赤核全体として卵円形で、横断面は円形を呈し、上丘の下端から間脳の下部まで広がる。細胞学的には後方の大細胞部と前方の小細胞部によりなる。赤核の細胞の間には主として上小脳脚からの有髄線維の細い束が存在する。動眼神経根の一部が脚間窩に至る途中で赤核を貫く。赤核の求心性線維は主として小脳核および大脳皮質からくる。これらの線維は体部的局在性をもって赤核に終止する。上小脳脚の線維は中脳下部で完全に交叉し、対側の赤核およびその周囲に至る。小脳歯状核からの側枝は対側赤核の上1/3部に終止し、一方、栓状核(前中位核)および球状核(後中位核)からの線維は赤核の下2/3部に体部位的局在性をもって終わる。この連絡は小脳の傍虫部皮質と赤核大細胞部をつなぎ、さらに赤核から脊髄へ体部位的局在性に投射する。これには上小脳脚交叉および赤核脊髄路の交叉の2つの交叉が含まれる。赤核の大細胞部からの体部位的局在投射は主に頚髄と腰髄に終わる。皮質赤核線維は中心前回や前運動野から起こり、ともに両側の赤核小細胞部に体部位的局在性をもって終止する。大脳皮質6野の内側部(補足運動野)からの投射線維は対側の赤核大細胞部に終わる。中心前回の運動野から赤核大細胞部に終止する線維は同側性で、赤核運動路の体部位的局在性をもつ起始に対応する。これらの皮質赤核線維は体部位的局在性をもち、赤核脊髄路(交叉性)と共に運動野皮質から脊髄へインパルスを伝える経路の一部をなす。赤核からの下行性遠心路は腹側被蓋交叉で交叉し、①小脳の中位核、②三叉神経主知覚核および脊髄路核、③顔面神経核の一部、④いくつかの延髄の中継核および⑤脊髄に投射する。また赤核の小細胞部からの非交叉性の線維束が中心被蓋路に入り、オリーブ核主核の背側板に終わる。これを赤核オリーブ路といい、小脳へのフィードバック系の一部をなす。赤核からの視床への投射はない。)

Magnocellular part of red nucleus(大細胞部(赤核の))Pars magnocellularis nuclei ventricularis lateralis だいさいぼうぶ(せきかくの) Feneis: 290 05

[A14_1_06_324] →(赤核の大細胞部は赤核の中でも尾側にある大細胞部。赤核脊髄路をなす線維の大部はこの部よりでる。)

Parvocellular part of red nucleus(小細胞部(赤核の))Pars parvocellularis nuclei rubri しょうさいぼうぶ(せきかくの) Feneis: 290 04

[A14_1_06_325] →(赤核の小細胞部は赤核の大部分を占める小細胞部。赤核脊髄路の形成に関与する。)

Posteromedial part of red nucleus; Dorsomedial part of red nucleus(後内側部;背側内側部(赤核の))Pars posteromedialis nuclei rubri; Pars dorsomedialis こうないそくぶ;はいそくないそくぶ(せきかくの)  [A14_1_06_326]

Reticular formation(網様体(中脳被蓋の))Formatio reticularis tegmentum mesencephali もうようたい(ちゅうのうひがいの)

[A14_1_06_327] →(中脳網様体は橋におけるほど広くない。赤核は網様体の一部ではあるが、通常は網様体といえば赤核を除いてその背側および外側の部分をさす。ここには①楔状核、②楔状下核および③脚橋被蓋核の3つの主な網様核が認められる。)

Sagulum nucleus(外被核)Nucleus saguli; Sagulum がいひかく

[A14_1_06_328] →(外側毛帯と下丘尾側の中脳外側面との間ある細胞体群で、聴覚に関係する核。)

Subbrachial nucleus(結合腕下核)Nucleus subbrachialis けつごうわんかかくTsai, Tegmental area of  [A14_1_06_329]

Anterior tegmental nuclei of midbrain; Ventral tegmental nuclei of midbrain(前被蓋核;腹側被蓋核(中脳の))Nuclei tegmentales anterior mesencephali ぜんひがいかく;ふくそくひがいかく(ちゅうのうの) Feneis: 290 02a

[A14_1_06_330] →(中脳の腹側被蓋核は三叉神経運動核の高さで内側縦束の腹側で縫線の外側に位置する。これは上中心核の前方への延長と思われる。)

Interfascicular nucleus of tegmentum of midbrain(束間核(中脳被蓋の))Nucleus interfascicularis tegmentalis そくかんかく(ちゅうのうひがいの)  [A14_1_06_331]

Parabrachial pigmented nucleus(色素含有性結合腕傍核;色素性傍腕核;色素性結合腕傍核)Nucleus pigmentosus parabrachialis しきそがんゆうせいけつごうわんぼうかく;しきそせいぼうわんかく;しきそせいけつごうぼうわんかく  [A14_1_06_332]

Paranigral nucleus(黒質傍核)Nucleus paranigralis こくしつぼうかく

[A14_1_06_333] →(黒質傍核は中脳腹内側部にある小細胞群で、黒質内側面と脚間核との間にある。)

Cuneiform nucleus(楔状核)Nucleus cuneiformis けつじょうかく

[A14_1_06_334] →(楔状核と楔状下核は視蓋の腹側で脚橋被蓋核の背側にあり、上方に広がる。中心被蓋路の線維はこれらの核の内側を走る。)

Subcuneiform nucleus(楔状下核)Nucleus subcuneiformis けつじょうかかく

[A14_1_06_335] →(楔状核と楔状下核は視蓋の腹側で脚橋被蓋核の背側にあり、上方に広がる。中心被蓋路の線維はこれらの核の内側を走る。)

Pedunculopontine tegmental nucleus(脚橋被蓋核)Nucleus tegmentalis pedunculopontinus きゃくきょうひがいかく

[A14_1_06_336] →(脚橋被蓋核は下丘の腹側で被蓋外側部にある。この核内を上小脳脚線維が腹内側に向かい通過し、交叉する。この核は多種の入力を、①大脳皮質、②淡蒼球内節および③黒質網様部から受ける。脚橋被蓋核の緻密部の細胞は強いコリン作働性であるが周辺の細胞は他の神経伝達物質を有する。この核のコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)に対する免疫反応陽性細胞は視床に投射し、あるものは黒質緻密部に投射する。この核は刺激により歩行運動が誘発される部位に存在する。この部位は“運動中枢”と呼ばれる。)

Compact part of pedunculopontine tegmental nucleus; Compact subnucleus of pedunculopontine tegmental nucleus(緻密部(脚橋被蓋核の))Pars compacta nuclei tegmentalis pedunculopontinus ちみつぶ(きゃくきょうひがいかくの)  [A14_1_06_337]

Dissipated part of pedunculopontine tegmental nucleus; Dissipated subnucleus of pedunculopntine tegmental nucleus(消散部;消失下核(脚橋被蓋核の))Pars dissipata nuclei tegmentalis pedunculopontinus しょうさんぶ;しょうしつかかく(きゃくきょうひがいかくの)  [A14_1_06_338]

 

Raphe nuclei of tegmentum of midbrain(縫線核;縫線核群(中脳被蓋の))Nuclei raphes in mesencephale ほうせんかく;ほうせんかくぐん(ちゅうのうひがいの) Feneis: 278 26 [A14_1_06_401]

Posterior raphe nucleus; Dorsal raphe nucleus(後縫線核;背側縫線核)Nucleus raphes posterior pontis mesencephali こうほうせんかく;はいそくほうせんかく

[A14_1_05_604] →(背側縫線核は滑車神経核の背内側および中間を占める中心灰白質中にあり、主に小型の細胞からなり、これまで滑車神経上核とよばれていた。背側縫線核と背側被蓋核は互いに接近しているが、背側縫線核の細胞のみがセロトニン(5-HT)およびコレシストキニン(CCK)を合成して輸送している。)

Inferior linear nucleus(下線状核)Nucleus linearis inferioris かせんじょうかく  [A14_1_06_402]

Intermediate linear nucleus(尾側線状核;中間線状核)Nucleus linearis intermedius ちゅうかんせんじょうかく;ちゅうかんちょくせんかく  [A14_1_06_403]

Superior linear nucleus(吻側線状核;上線状核)Nucleus linearis superior ふんそくせんじょうかく;じょうせんじょうかく  [A14_1_06_404]

 

Aqueduct of midbrain; Cerebral aqueduct(中脳水道;脳水道)Aqueductus mesencephali; Aqueductus cerebri ちゅうのうすいどう;のうすいどうSylvius, Aqueduct of Feneis: 288 20

[A14_1_06_501] →(中脳水道はシルビウス水道ともよばれる。中脳では脳室系は細い管となり、間脳の第三脳室と菱脳の第四脳室とを結合する。これを中脳水道と称し、横断面は円形または底辺を背側に向けた角のとれた三角形をなし、中心灰白質によってかこまれる。その存在については古くから知られていたが、フランスの解剖学者Jacobus Sylvius (1478-1555)の著書(1555年)で初めて説明がなされた。)

Opening of aqueduct of midbrain; Opening of cerebral aqueduct(中脳水道口)Apertura aqueductus cerebri mesencephali ちゅうのうすいどうこう  [A14_1_06_502]

 

Tectum of midbrain(中脳蓋;四丘体板;蓋板)Tectum mesencephali ちゅうのうがい Feneis: 288 12

[A14_1_06_601] →(中脳蓋は中脳水道が通り、屋根状になった脳背側部。上丘と下丘が含まれる。)

Tectal plate; Quadrigeminal plate(蓋板;四丘体板)Lamina tecti; Lamina quadrigemina がいばん;しきゅうたいばん Feneis: 288 13

[A14_1_06_011]

Inferior colliculus(下丘)Colliculus inferior かきゅう Feneis: 288 14

[A14_1_06_014] →(下丘は中脳蓋を形成する卵形の二対の隆起(四丘体)のうち下方の一対をいう。外側毛帯からの神経を受け、下丘腕を経て視床の内側膝状体に至る神経を出す。聴覚系の中脳における中継核で、細胞構築および機能的に中心核、外側核および周囲核の三つの核からなる。下丘核は外側毛帯を介して蝸牛神経核および台形体核から線維を受け、下丘腕を通って両側性に視床の内側膝状体へ線維を送る。)

Nuclei of inferior colliculus(下丘核)Nuclei colliculi inferioris かきゅうかく

[A14_1_06_602] →(下丘核は外側毛帯を介して蝸牛神経核および台形体核から線維を受け、下丘腕を通って両側性に視床の内側膝状体へ線維を送る)

Central nucleus of inferior colliculus(中心核(下丘の))Nucleus centralis colliculi inferioris ちゅうしんかく(かきゅうの)

[A14_1_06_603] →(下丘の中心核はニッスルおよび髄鞘染色標本ではかなり均一にみえる。ゴルジ標本では、大型の細胞からなる小さい背内側部と中型および小型細胞からなり著明な層構造を示すより大きな腹外側部の2部に区別できる。腹外側部におけるこれらの層は不完全ながら大部分がほぼ同心円状の重なり合ったたまねぎの殻状の配列を示す。それぞれの層の厚さはこれを形成している紡錘細胞および双房細胞の樹状突起の分枝の広がりにより決定される。これらの双は中心核におけるニューロンの周波数局在の基礎をなす。個々の層は周波数曲線に対応している。この中心核では多くのGABA作働性ニューロンが認められる。下丘中心核の腹外側部からの遠心性線維は下丘腕を経由して内側膝状体腹側の層構造を示す部に達する。中心核の背側部および中心周囲核からの線維は内側膝状体の背側部に至る。つまり、大脳皮質聴覚領野からの投射線維を受けている中心核背側部および中心周囲核は、結局インパルスを二次聴覚領皮質に返している。内側膝状体の腹側部からの投射線維は聴放線を経由して周波数局在的に皮質の一次聴覚領野に達している。)

External nucleus of inferior colliculus(外核;外側核(下丘の))Nucleus externus colliculi inferioris; Nucleus lateralis colliculi inferioris がいかく;がいそくかく(かきゅうの)

[A14_1_06_604] →(外下丘核は中心周囲核の腹側、外側に位置し、下丘に出入りする線維がこの核を横切っている。下丘は聴覚の中継核として働き、外側毛帯からの信号を視床の内側膝状体に伝える。中心核の背内側部および腹外側部は共に外側毛帯からの上行性線維を受ける。このうち腹外側部に到達した線維はこの部に見られるそれぞれの層に沿って走行し、その部位の下丘ニューロンにシナプス結合する。背内側部は対側下丘の背内側部からの交連線維および両側の大脳皮質聴覚領からの線維を受けている。)

Pericentral nucleus of inferior colliculus(中心周囲核(下丘の))Nucleus pericentralis colliculi inferioris ちゅうしんしゅういかく(かきゅの)

[A14_1_06_605] →(中心周囲核は密集する細胞からなる薄い層状の核で中心核の二つの主部(背内側部と腹外側部)におおいかぶさるようにして下丘の背面および後面に広がっている。この核は有棘樹状突起神経細胞と無棘樹状突起細胞からなる。無棘の大型細胞は下丘腕に軸索を送っている。中心周囲核は両側の皮質聴覚領野からの入力および外側毛帯背側核からの上行性投射線維を受け、この中心周囲核の細胞は層に平行して走行する投射線維を中心核に送っている。)

Superior colliculus(上丘)Colliculus superior じょうきゅう Feneis: 288 15

[A14_1_06_015] →(上丘は中脳蓋の前半を形成するあまり高くない隆起であり、大脳皮質と同様に層構造を示す。上丘の層は灰白質と白質とが表面から内部に向かって次のごとく交互に配列する。①帯層(主として線維よりなる)、②灰白層(浅灰白質)、③視神経層(浅白質層)、および④毛帯層で、これは中間部と深部の灰白質および白質を形成する。上丘浅層は主に網膜および皮質視覚野からの線維を受け、視野における物体の動きの探知に関係する。上丘深層は多様な入力(つまり、体性感覚系および聴覚系、運動活動に関わるニューロン、網様体の各領域)を受け、脳幹網様体と同様の解剖学的、生理学的特質を持つ。上丘の浅層と深層は、形態学的にも線維連絡の上からも、さらに生化学的にも線維連絡の上からも異なるが、空間的な整合性に関しては互いに密接に関連する。浅層からの投射線維は主に視覚関連核に至る。一方、中間層及び深層からの線維は頭部、眼球運動に関わる広い領域に投射される。上丘を反射中枢とする定位反射(指向反射)とは、視野に入った興味を引く対象物が視野の中心に来るように、頭と眼球を動かす反射である。)

Zonal layer of superior colliculus; Layer I of superior colliculus(帯状層;帯層;第Ⅰ層(上丘の))Stratum zonale colliculi superioris; Lamina colliculi superioris I たいじょうそう;たいそう;だい1そう(じょうきゅうの)

[A14_1_06_606] →(上丘の表面にある白質層で大脳皮質から来た線維のごく一部が終わる。)

Superficial grey layer of superior colliculus; Layer II of superior colliculus; superficial gray layer of superior colliculus(浅灰白層;第Ⅱ層(上丘の))Stratum griseum superficiale colliculi superioris; Lamina colliculi superioris II せんかいはくそう;だい2そう(じょうきゅうの)

[A14_1_06_607] →(上丘の浅灰白層は視神経線維をはじめ脊髄・視索線維や橋・視蓋線維が主に終わるところで、局所回路ニューロン(local circuit neuron)と思われる細胞も多数存在する。)

Optic layer of superior colliculus; Layer III of superior coliculus(視神経層;視層;第Ⅲ層;浅白層;浅白質層(上丘の))Stratum opticum colliculi superioris; Lamina colliculi superioris III ししんけいそう;だい3そう;せんはくそう;せんはくしつそう(じょうきゅうの)

[A14_1_06_608] →(上丘の視神経層は視神経線維や膝状体-視蓋線維からなる。)

Intermediate grey layer of superior colliculus; Layer IV of superior coliculus; Intermediate gray layer of superior colliculus(中間灰白層;第Ⅳ層(上丘の))Stratum griseum intermedium colliculi superioris; Lamina colliculi superioris IV ちゅうかんかいはくそう;だい4そう(じょうきゅうの)

[A14_1_06_609] →(上丘の中間灰白層と中間白層は知覚と聴覚に関係し、脊髄視蓋路および三叉神経脊髄路の遠心路、外側毛帯、下丘からの線維などの一部が中間白層に入り、これをへて中間灰白層に入って終わる。)

Intermediate white layer of superior colliculus; Layer V of superior coliculus(中間白層;毛帯層;第Ⅴ層(上丘の))Stratum medullare intermedium colliculi superioris; Lamina colliculi superioris V ちゅうかんはくそう;もうたいそう;だい5そう(じょうきゅうの)

[A14_1_06_610] →(上丘の中間白層は毛帯層ともよばれ中間灰白層と深灰白層の間にある線維層。)

Deep grey layer of superior colliculus; Layer VI of superior colliculus; Deep gray layer of superior colliculus; Layer VI of superior colliculus(深灰白層;第Ⅵ層(上丘の))Stratum griseum profundum colliculi superioris; Lamina colliculi superioris VI しんかいはくそう;だい6そう(じょうきゅうの)

[A14_1_06_611] →(上丘の深灰白層は視蓋遠心路は主にこの層の細胞からおこる。)

Deep white layer of superior colliculus; Layer VII of superior coliculus(深白層;Ⅶ層(上丘の))Stratum medullare profundum colliculi superioris; Lamina colliculi superioris VII しんはくそう;だい7そう(じょうきゅうの)

[A14_1_06_612] →(上丘の深白層は視蓋遠心性線維をはじめ両側視蓋を結ぶ交連線維からなる。)

Brachium of inferior colliculus(下丘腕)Brachium colliculi inferioris かきゅうわん Feneis: 290 20

[A14_1_06_012] →(下丘腕は下丘の外側にのびる隆起で、下丘と内側膝状体をつなぐ。上行性聴覚路の大部分を形成する。)

Brachium of superior colliculus(上丘腕)Brachium colliculi superioris じょうきゅうわん Feneis: 290 23

[A14_1_06_013] →(上丘腕は上丘と外側膝状体とを連絡する視索線維束。)

Commissure of inferior colliculus(下丘交連)Commissura colliculi inferioris かきゅうこうれん Feneis: 290 21

[A14_1_06_613] →(下丘交連は左右の下丘をつなぐ部分。外側毛帯の線維もここを通り反対側へいたる。)

Commissure of superior colliculus(上丘交連)Commissura colliculi superioris じょうきゅうこうれん Feneis: 290 24

[A14_1_06_614] →(上丘交連は左右の上丘の間にある神経線維で対称部位や非対称部位を連絡する。被蓋外部からの線維をも含む。)

Decussation of trochlear nerve fibres(滑車神経交叉)Decussatio fibratum nervorum trochlearium かっしゃしんけいこうさ Feneis: 290 25, 316 14

[A14_1_06_615] →(滑車神経交叉は中脳下丘の高さにある滑車神経核から起こる線維が、常に反対側の眼筋を支配する滑車神経線維の交叉。)

 

Reticular nuclei of mesencephalon(網様核(中脳の);中脳網様核)Nuclei reticulares in mesencephale もうようかく(ちゅうのうの);ちゅうのうもうようかく

[A14_1_06_701] →(中脳網様体は橋におけるほど広くはない。赤核は網様体の一部ではあるが、通常は網様体と言えば赤核を除いてその背側および外側の部分をさす。ここに楔状核、楔状下核および脚橋被蓋核の3つの主な網様核が認められる。)

Cuneiform nucleus(楔状核)Nucleus cuneiformis けつじょうかく

[A14_1_06_334] →(楔状核と楔状下核は視蓋の腹側で脚橋被蓋核の背側にあり、上方に広がる。中心被蓋路の線維はこれらの核の内側を走る。脚間核は小細胞からなり、正中線で脚間窩の背側にある。この核は反屈側を経てきた手綱核からの線維を受ける。)

Subcuneiform nucleus(楔状下核)Nucleus subcuneiformis けつじょうかかく

[A14_1_06_335]

Pedunculopontine tegmental nucleus(脚橋被蓋核)Nucleus tegmentalis pedunculopontinus きゃくきょうひがいかく

[A14_1_06_336] →(脚橋被蓋核は下丘の腹側で被蓋外側部にある。この核内を上小脳脚線維が腹内側に向かい通過し、交叉する。この核は多種の入力を①大脳皮質、②淡蒼球内節および③黒質網様部から受ける。脚橋被蓋核の緻密部の細胞は強いコリン作働性であるが周辺の細胞は他の伝達物質を有する。この核のコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)に対する免疫反応陽性細胞は視床に投射し、あるものは黒質緻密部に投射する。この核はしげきにより歩行運動が誘発される部位に存在する。この部位は「運動中枢」と呼ばれる。)

Compact part of pedunculopontine tegmental nucleus; Compact subnucleus of pedunculopontine tegmental nucleus(緻密部(脚橋被蓋核の))Pars compacta nuclei tegmentalis pedunculopontinus ちみつぶ(きゃくきょうひがいかくの)  [A14_1_06_337]

Dissipated part of pedunculopontine tegmental nucleus; Dissipated subnucleus of pedunculopntine tegmental nucleus(消散部;消失下核(脚橋被蓋核の))Pars dissipata nuclei tegmentalis pedunculopontinus しょうしさんぶ;しょうしつかかく(きゃくきょうひがいかくの)  [A14_1_06_338]

Parapeduncular nucleus(脚傍核)Nucleus parapeduncularis きゃくぼうかく  [A14_1_06_702]

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