一般解剖学

系統解剖学



最終更新日: 12/12/27

funalogo.gif (2604 バイト)






funalogo.gif (2604 バイト)

Sense organs(感覚器)Organa sensuum かんかくき

Organ of vision(視覚器)Organum visus (visuale) しかくき Feneis: 350 02

[A15_2_00_000] →(可視光(波長380~800nm)による外界上方を受ける感覚器官。眼球、視神経、副眼器(眼瞼、涙腺、涙器、眼筋)よりなる。視覚は、関与する構造ごとに、①光学的家庭(角膜、前眼房、水晶体、網膜)、②光生理学的過程(杆状体・錐状体外節、色素上皮)、③神経生理学的過程(杆状体・錐状体細胞、双極細胞、水平細胞、無軸索細胞、神経節細胞、視神経)の3過程に分けられる。視神経の線維は視交叉・視索を経て、外側膝状体皮質の細胞にシナプスをなしておわる。解剖学では視神経管を境として末梢側を視覚器、中枢側を脳の一部として扱うが、便宜的にすぎない。発生学的には、網膜と視神経は前脳胞の憩室たる眼杯に由来視、網膜は大脳皮質と、視神経の他の白質神経路とそれぞれ相同である。)

 

右の眼の水平断と眼軸(×4)

Eye and related structures(眼および関係構造)Oculus めおよびかんけいこうぞう Feneis: 350 03 [A15_2_00_001]

Optic nerve(視神経)Nervus opticus ししんけい Feneis: 350 04

[A15_2_04_024] →(視覚を伝える脳神経であり、脳底の視交叉から眼球までの間をいう。視神経をなす神経線維はすべて眼球網膜の神経節細胞層に多極神経細胞から出る神経突起ににほかならない。これらの神経突起は視交叉および視索を単に通過し、間脳の外側膝状体および中脳の上丘などの第1次視覚中枢部位に達してからはじめて、その部位のニューロンに対してシナプスを形成して終末する。眼球後極の鼻側~3.5mmから視交叉に達する神経線維束(直径3~5mm、長さ~55mm)。80~100万本の神経線維を含み、その大部分が網膜神経節細胞の軸索(有髄の上行性線維)で視交叉、視索を経て外側膝状体に達する。少数の無髄線維が含まれ、自律神経性の下行性線維とされるが、詳細は未知である。神経節細胞の軸索は、網膜の最内層(硝子体に最も近い)に神経線維層を形成し、円板(視神経乳頭)に達したのち、強膜篩板の数十個の小孔を貫く。ヒトではこの篩板を通ったのちに線維が有髄化する。眼球の後方5~15mmの地点で、網膜中心動脈が視神経に加わり、下行して円板を経て網膜硝子体面(眼底)に分布する。視神経の内鞘は、眼球の脈絡膜と脳軟膜に、外鞘は強膜と脳硬膜に、それぞれつづいている。内・外鞘の間に鞘間隙があり、クモ膜下腔に相当する。外鞘の最表層部は眼球鞘につづく。)

ヒトの視神経の断面 眼球に比較的近いところ.

ヒトの視神経乳頭部の断面

Intra-ocular part of optic nerve(眼球内部(視神経の))Pars intraocularis n. optici がんきゅうないぶ(ししんけいの) Feneis: 350 08

[A15_2_04_028] →(視神経の眼球内部は視神経のうち眼球内を走る部分。篩板内部、篩板後部、篩板前部に区別される。)

Prelaminar part of optic nerve(篩板前部(視神経の))Pars prelaminaris n. optici intraocularis しばんぜんぶ(ししんけいの) Feneis: 350 11

[A15_2_04_031] →(視神経の篩板前部は視神経のうち強膜篩板のすぐ前方にある眼球内部分。)

Intralaminar part of optic nerve(篩板内部(視神経の))Pars intralaminaris n. optici intraocularis しばんないぶ(ししんけいの) Feneis: 350 10

[A15_2_04_030] →(視神経の篩板内部は視神経のうち強膜篩板を貫いている眼球内部分。)

Postlaminar part of optic nerve(篩板後部(視神経の))Pars postlaminaris n. optici intraocularis しばんこうぶ(ししんけいの) Feneis: 350 09

[A15_2_04_029] →(視神経の篩板後部は眼球内視神経のうちで強膜篩板のすぐ後方にある眼球内部分。)

Orbital part of optic nerve(眼窩部(視神経の))Pars orbitalis n. optici がんかぶ(ししんけいの) Feneis: 350 07

[A15_2_04_027] →(視神経の眼窩部は視神経のうちで眼球と視神経管との間すなわち眼窩内の長さ約3cmの部分。中心窩は、われわれが物体を注視したとき、その物体の像が結像するところで、網膜はここで著しい特殊化を示す。「すりばち」の底にあたる直径約500μmの領域においては、杆状体は存在せず、錐状体・杆状体層は錐状体のみで構成され、しかも錐状体は他の部位と異なって細く長くなり(直径1~1.5μm、長さ約75μm)、1mm2あたり約15万個とはなはだ密に配列する。したがって錐状体の内側端をつらぬる外境界層は、「すりばち」の底に向かいあうように内方に向かって丘のように隆起している。一方、光の入射経路にあたる神経線維層から外網状層までのすべての層は、中心窩の周辺部に移転しており、「すりばち」の底では光が直接錐状体に達するようになっている。つまり、2点の識別と色の認知を行う錐状体が細く長くなって、狭い領域にはなだは密に配列していることと、光の入射経路にあって光の直進を妨げとなる諸構造が周囲によけているというこの特殊化は、中心窩における最も鋭敏な2点の識別と色の認知を可能にするものである。)

Part in canal; Part of optic nerve in canal(管内部;視神経管部)Pars canalis n. optici かんないぶ;ししんけいかんぶ Feneis: 350 06

[A15_2_04_026] →(視神経管部は視神経のうち視神経管の中を通っている部分。)

Intracranial part of optic nerve(視神経の頭蓋内部)Pars intracranialis n. optici ししんけいのとうがいないぶ;ししんけいのずがいないぶ Feneis: 350 05

[A15_2_04_025] →(視神経の頭蓋内部は視神経のうち視神経管と視交叉の間にある部分。)

Outer sheath of optic nerve; External sheath of optic neve (dura mater)(視神経外鞘(硬膜))Vagina externa n. optici ししんけいがいしょう(こうまく) Feneis: 350 12

[A15_2_04_032] →(視神経外鞘は眼球へいたるまでの視神経に伴う硬膜鞘。(Feneis))

Inner sheath of optic nerve (pia-arachnoid mater)(視神経内鞘(軟膜とクモ膜))Vagina interna n. optici ししんけいないしょう(なんまくとくもまく) Feneis: 350 13

[A15_2_04_033] →(視神経内鞘は視神経の眼球にいたるまでを取り囲む、軟膜およびクモ膜の被膜。(Feneis))

Subarachnoid space of optic nerve; Leptomeningeal space of optic nerve(鞘間隙;クモ膜下腔鞘間隙;軟膜腔(視神経の))Spatium intervaginale subarachnoidale nervus optici; Spatium leptomeningeum nervus optici しょうかんげき;くもまくかくうしょうかんげき;なんまくくう(ししんけいの) Feneis: 350 14

[A15_2_04_034] →(視神経の鞘間隙は視神経内鞘と視神経外鞘の間の間隙。脳硬膜とクモ膜の間に相当する。眼球鞘と強膜の間にある強膜外鞘(Tenon隙)と混同されることがある。)

Eyeball(眼球)Bulbus oculi がんきゅう Feneis: 350 15

[A15_2_01_001] →(眼球は名前のように球状(直径約25mm・体積約8cm3)で、視覚器の主要部をなす。眼窩脂肪体、眼筋筋膜、眼球鞘などに包まれて眼窩中にあり、前方からは眼瞼により保護されている。また眼筋の働きにより球関節に似た自由度の高い体軸性運動を行う。眼球の内部には前方に眼房水、後方に硝子体が満ちて、12~22mmHgの内圧が保たれる。眼球の形状を規定するため、前極、後極、赤道、経線、外眼球軸(前・後極を結ぶ)、内眼球軸、視軸などを用いる。眼球軸は角膜と水晶体前・後面の曲率中心を通る軸で、網膜面では中心窩と円板の中間を通る。したがって水晶体後面の屈曲率中心と中心窩を結ぶ視軸とは一致しない。眼球壁は組織発生的に、①眼球線維膜(強膜、角膜)、②眼球血管膜(脈絡膜、毛様体筋、虹彩支質、角膜内皮、胎児期の瞳孔膜)、③眼球内膜(網膜視部、毛様体・虹彩色素上皮層)の3層よりなる。①と②は中胚葉、③は神経外胚葉に由来する。内部の水晶体は体表外胚葉、硝子体は中胚葉由来であり、眼瞼・眼球膜、角膜上皮は皮膚の表皮の続きである。)

眼球(右)の前半部を後方からみる(×3)

右の眼球の断面(×5)

Anterior pole of eyeball(前極(眼球の))Polus anterior bulbi oculi ぜんきょく(がんきゅうの) Feneis: 350 16

[A15_2_01_002] →(眼球の前極は角膜の頂点。)

Posterior pole of eyeball(後極(眼球の))Polus posterior bulbi oculi こうきょく(がんきゅうの) Feneis: 350 17

[A15_2_01_003] →(眼球の後極は視神経出口の外側で前極に対応するところ。)

Equator of eyeball(赤道(眼球の))Equator bulbi oculi せきどう(がんきゅうの) Feneis: 350 18

[A15_2_01_004] →(眼球の赤道は前極と後極の中間で、最大周のところ。)

Meridians(経線(眼球の))Meridiani bulbi oculi けいせん(がんきゅうの) Feneis: 350 19

[A15_2_01_005] →(眼球の経線は前極と後極とをむすぶ赤道に垂直な半円。)

External axis of eyeball(外眼球軸;眼球外軸)Axis externus bulbi oculi がいがんきゅうじく;がんきゅうがいじく Feneis: 350 20

[A15_2_01_006] →(外眼球軸は前極と後極をむすぶ線。)

Internal axis of eyeball(内眼球軸;眼球内軸)Axis internus bulbi oculi ないがんきゅうじく;がんきゅうないじく Feneis: 350 21

[A15_2_01_007] →(内眼球軸は外眼球軸上で角膜後面と網膜内面までの距離。)

Optic axis; Axis bulbi(視軸;眼球軸)Axis opticus しじく;がんきゅうじく Feneis: 350 22

[A15_2_01_008] →(角膜、レンズおよび硝子体の曲率中点を通る線。網膜上で中心窩と視神経乳頭間を通る。 (Feneis))

Anterior segment of eyeball(眼球前区)Segmentum anerius bulbi oculi がんきゅうぜんく [A15_2_01_009]

Posterior segment of eyeball(眼球後区)Segmentum posterius bulbi oculi がんきゅうこうく [A15_2_01_010]

Optic vesicle(眼胞)Vesicula optica がんほう

[A15_2_01_010_1] →(眼球発生の鍵となる2つの現象が第4週の初めに起こる。まず最初に間脳の膨出として眼胞が発生する。眼胞の形の部分は眼茎とよばえる。次に眼胞の誘導により体表外胚葉が肥厚した水晶体プラコード(水晶体板)となり、胚内部に向かって落ち込んで水晶体胞が発生する。)

Optic cap(眼杯)Cupula optica がんぱい

[A15_2_01_010_2] →(水晶体が内部に向かって沈んでいくにつれて、眼胞は水晶体胞をうけいれてへこみ、二重の壁をもった眼杯となる。眼杯の下面で生じた陥入が眼柄に向かって伸びて眼杯裂となる。)

Fibrous layer of eyeball(眼球線維膜;眼球外膜)Tunica fibrosa bulbi がんきゅうせんいまく;がんきゅうがいまく Feneis: 350 23

[A15_2_02_001] →(眼球線維膜は角膜と強膜の総称。後方の視神経外鞘を経て脳硬膜につづく。眼球外膜ともいう。)

Sclera(強膜)Sclera きょうまく Feneis: 350 24

[A15_2_02_002] →(眼球の形状を保つ強靱な膠原線維組織層。角膜となっている前部6分の1を除いた部分。前方では隔膜固有質に、後方では篩板から視神経外鞘を経て脳硬膜に、それぞれつづいている。強膜と角膜を合わせて眼球線維膜という。強膜の厚さは眼球後極で~1.0mm、前部で~0.6mm、赤道で~0.4mmである。視神経線維束を通す篩板は後極の内側3.5mm、視神経乳頭の直後方にあたる。視神経は~数十本の掌側としてこれを通る。渦静脈、長・短毛様体動脈および神経が強膜を貫く。強膜はは外から内へ、①強膜上皮、②強膜固有質、③強膜褐色板の3沿うよりなる。虹彩角膜角に沿って強膜固有質が内方へ皮厚し(強膜距)毛様体筋腱により貫かれる。この部の直前に輪状に走る強膜静脈洞(Schlemmn管)があり、眼房水は虹彩角膜間隙(Fontana腔)からこれを通って渦静脈に排出される。角膜縁をとり膜浅い強膜溝の深層にこれらの構造がある。眼球前部の強膜上板毛細血管網に富み、その炎症性変化を臨床的に「網膜充血」という。強膜前部は眼球結膜、後部は眼球鞘(Tenon鞘)によりおおわれる。内面は脈絡外隙を間に脈絡外板に接する。)

Scleral sulcus; Sulcus sclerae(強膜溝)Sulcus sclerae きょうまくこう Feneis: 350 25

[A15_2_02_003] →(強膜溝は角膜と強膜の間の浅いみぞ。角膜が強く弯曲するため生ず。)

Trabecular tissue; Trabecular meshwork(小柱網;櫛状靱帯;虹彩角膜角櫛状靱帯(強膜の))Reticulum trabeculare sclerae しょうちゅうもう;しつじょうじんたい;こうさいかうまくかくしつじょうじんたい(きょうまくの) Feneis: 350 27

[A15_2_02_004] →(虹彩角膜角櫛状靱帯と虹彩角膜角隙をより的確に表すために“小柱網”が用いられる。虹彩支質に移行する後方部をブドウ膜部、強膜棘の内側から角膜内皮に移行する前方部を強膜部という。)

Corneoscleral part of sclera(角膜強膜部(強膜の))Pars corneoscleralis sclerae かくまくきょうまくぶ(きょうまくの) Feneis: 350 28

[A15_2_02_005] →(小柱網の角膜強膜部は小柱網の前部で、強膜の静脈洞、強膜棘、角膜の後限界膜の間にある部分。)

Uveal part of sclera(虹彩部;ブドウ膜部(強膜の))Pars uvealis sclerae こうさいぶ;ぶどうまくぶ(きょうまくの) Feneis: 350 29

[A15_2_02_006] →(小柱網のブドウ膜部は小柱網の後部で強膜突起・毛様体・虹彩前面の間の部分。血管に富む眼球の中膜、虹彩、毛様体及び脈絡膜で構成される。)

Scleral spur(強膜輪;強膜距)Calcar sclerae きょうまくりん;きょうまくきょ

[A15_2_02_007] →(強膜距は強膜角膜連結部内面にみられる輪状の強膜隆起で、横断切片でみると強膜静脈洞深部に鈎形に見える。比較的硬く、毛様体筋の経線状線維の起始となっている。)

Scleral venous sinus(強膜静脈洞)Sinus venosus sclerae きょうまくじょうみゃくどうSchlemm, Canal of Feneis: 350 30

[A12_3_06_109] →(シュレム管とも呼ばれる。強膜静脈洞は眼球の前眼房を取り囲む血管構造。内側は虹彩角膜角櫛状靱帯により境される。中断もしくは重複することあり。前眼房から眼房水を受け入れる。Schlemm, Friedrich (1795-1858) ドイツの解剖学者1830年に角膜と強膜の間にある環状小静洞について記載("Arteriarum capitis superficialium icon nova", Berolini, J.W. Boike)。)

Episcleral layer(強膜上板)Lamina episcleralis きょうまくじょうばん Feneis: 350 31

[A15_2_02_008] →(強膜上板は胸膜外側面と眼球鞘との間にある繊細で可動性のある結合組織層。)

Substantia propria of sclerae(強膜固有質)Substantia propria sclerae きょうまくこゆうしつ Feneis: 350 32

[A15_2_02_009] →(強膜固有質は少量の弾性線維の混じった、交織膠原線維性結合線維よりなる。)

Lamina fusca sclerae(強膜褐色板)Lamina fusca sclerae きょうまくかっしょくばん Feneis: 350 33

[A15_2_02_010] →(強膜褐色板は強膜とその内側につづく脈絡膜との間の疎性結合組織の層。混在する色素含有細胞で黄褐色の概観を示す。)

Lamina cribrosa of sclera; Lamina cribosa of optic nerve(強膜篩板;篩状板)Lamina cribrosa sclerae; Area cribrosa sclerae きょうまくしばん;しじょうばん Feneis: 350 34

[A15_2_02_011] →(強膜篩板は網膜から視神経が強膜を貫く部分。 ①強膜の後極近く(後極の内側下側)で視神経が強膜を貫く部分。強膜は篩状になりその孔を多数の束に分かれた視神経が通る。[医学書院医学大辞典:澤田元] ②網膜の神経節細胞から出る軸索は、眼球を出る直前で眼内神経前篩状板部分で、ミエリンに包まれないまま星状細胞により束状に分割される。眼圧上昇を伴う緑内障では、ここで視神経維脱落が生じてカッピングを示すので篩状構造が眼底鏡でみえる。また、脳圧亢進で起きるうっ血乳頭では篩状板で軸索が絞扼され、軸索流障害の結果変性したミトコンドリアなどの細胞内小器官が滞留して軸索が拡張し乳頭表面は挙上する。[医学書院医学大辞典:清澤源弘])

Cornea(角膜)Cornea かくまく Feneis: 352 01

[A15_2_02_012] →(角膜は眼球前方部の透明部分。厚さ約1mm、直径10~12mmの前弯した楕円形の膜で、角膜頂、角膜縁、前および後面を区別する。弯曲度は前面(曲率半径約7.8mm)よりも後面の方が強い。前面は光学的に縦径線が横径線に比してやや強く弯曲し、正視眼ではこの差は水晶体弯曲度の逆の関係により補正されるている。角膜の特徴として、角膜血管が入る辺縁部以外ではまったく血管が存在しない。組織学的に5層が区別される。①角膜上皮、②前境界板(Bowman膜)、③角膜固有質、④後境界板(Descement膜)、⑤角膜内皮)

角膜の横断(×100)

ヒトの角膜上皮の横断(×500)

角膜の上皮細胞を分離したもの×700

角膜の固定結合組織細胞 金染色をほどこした角膜小体

家兎の角膜の基礎神経叢 金染色

ヒトの角膜と虹彩と毛様体

Conjunctival ring(結膜輪)Anulus conjunctivae けつまくりん Feneis: 352 02

[A15_2_02_013] →(結膜輪は結膜と角膜辺縁の接合部の幅の狭い輪で結膜上皮から角膜上皮への移行部。)

Corneoscleral junction; Corneal limbus(角膜縁)Limbus corneae; Margo corneae かくまくえん Feneis: 350 26, 352 03

[A15_2_02_014] →(角膜縁は角膜の強膜への移行縁で強膜のへこんだ境界縁。)

Corneal vertex(角膜頂)Vertex corneae かくまくちょう Feneis: 352 04

[A15_2_02_015] →(角膜頂は角膜頂点。角膜前面のもっとも突出したところ。)

Anterior surface of cornea(前面(角膜の))Facies anterior corneae ぜんめん(かくまくの) Feneis: 352 05

[A15_2_02_016] →(角膜の前面は空気に接する角膜前面。)

Posterior surface of cornea(後面(角膜の))Facies posterior corneae こうめん(かくまくの) Feneis: 352 06

[A15_2_02_017] →(角膜の後面は前眼房に接する角膜後面。)

Corneal epithelium; Anterior corneal epithelium(角膜上皮;前角膜上皮)Epithelium anterius corneae かくまくじょうひ;ぜんかくまくじょうひ Feneis: 352 07

[A15_2_02_018] →(角膜上皮は角膜縁で眼球結膜につづく重層扁平上皮、結膜と同様に角化しない。無数の知覚神経終末(三叉神経の枝)に含み、刺激に対し鋭敏で、角膜反射をおこす。厚さ~60μm。)

Anterior limiting lamina of cornea(前境界板;外境界板;外境界膜;ボウマン膜(角膜の))Lamina limitans anterior; Lamina limitans externa ぜんきょうかいばん;がいきょうかいばんぼうまんまく(かくまくの)Bowman's membrane; Reichert's membrane Feneis: 352 08

[A15_2_02_019] →(ボウマン膜とも呼ばれる。前境界板は角膜上皮と角膜固有質の間の層で、角膜固有質が特殊化したものとされる。表層部は結膜下組織につづく。~10μm。シュワルベ輪ともよばれる。英国の外科医Sir William Bowman (1816-1892)によって記載された。)

Substantia propria of cornea(角膜固有質)Substantia propria corneae かくまくこゆうしつ Feneis: 352 09

[A15_2_02_020] →(角膜固有質は直線的な膠原線維束からなる厚さ10μmの層が方向を変えて積み重なる。線維間と層間隙は酸性粘液多糖体と組織液に満たされている。固有質は胸膜の続きであり、眼球線維膜の前方部に相当する。)

Posterior limiting lamina of cornea(後境界板;後境界膜;内境界板;デスメの膜;(角膜の))Lamina limitans posterior; Lamina limitans interna こうきょうかいばん;こうきょうかいまく;ないきょうかいばん;でめすのまく(かくまくの)Descemet's membrane Feneis: 352 10

[A15_2_02_021] →(デスメー膜ともよばれる。後境界板は多糖体を含む無構造の~10μmの層。電顕的には固有質につづく細線維層と、角膜内皮の基底膜とに分けられる。1758年。パリの外科医・解剖学者Jean Descemet (1732-1810)が最初に記載したとされるが、イギリスデは同国の外科医Bebedict Duddelが第一発見者とされている。)

Endothelium of anterior chamber of eyeball(角膜内皮;後角膜上皮)Epithelium posterius corneae かくまくないひ;こうかくまくじょうひ Feneis: 352 11

[A15_2_02_022] →(角膜内皮は単層の中皮(中胚葉性上皮)で、虹彩角膜角の内皮を経て、虹彩内皮につづく。眼球血管膜の前方部に相当する。)

Vascular layer of eyeball(眼球血管膜;ブドウ膜;眼球中膜)Tunica vasculosa bulbi; Uvea がんきゅうけっかんまく;ぶどうまく;がんきゅうちゅうまく Feneis: 352 12

[A15_2_03_001] →(脈絡膜、毛様体(網膜毛様体部を除く)、虹彩内皮および支質、角膜内皮、小柱網などの総称。眼球中膜、ブドウ膜と同義にも用いられる。)

Choroid(脈絡膜)Choroidea; Chorioidea みゃくらくまく Feneis: 352 13

[A15_2_03_002] →(脈絡膜は網膜視部の外側に接してこれを包んでおり、内側から外側に向かって、①基底膜、②脈絡毛細血管板、③血管板、④脈絡上板の4層に分けられる。)

脈絡膜の渦静脈(Arnold)×2 a 視神経,h 強膜の後部,c 毛様体筋(渦静脈の前方へのつづきをなす部分を被っている), d 虹彩,1 渦静脈の幹, 2 虹彩動脈

脈絡膜の動脈(Arnold)×2 a 視神経,c 毛様体筋,d 虹彩, h 強膜の後部,1脈絡膜動脈,2 虹彩動脈,3 毛様体小枝

毛細血管板 注入による平面標本

ヒトの脈絡膜 横断

子供の眼の脈絡膜と虹彩の血管(Arnold)内面からみる.×10

Suprachoroid lamina of sclera(脈絡上板(強膜の))Lamina suprachoroidea みゃくらくじょうばん(きょうまくの) Feneis: 352 14

[A15_2_03_003] →(脈絡膜の脈絡上板は特に色素細胞に富む薄い層である。脈絡膜を強膜から剥がすと、脈絡上板の一部は強膜側に残る。この部分を強膜褐色板という。)

Perichoroidal space(脈絡外隙)Spatium perichoroideum みゃくらくがいげき Feneis: 352 15

[A15_2_03_004] →(脈絡外隙は脈絡上板中にある一部はリンパ路に属する間隙系。この中を網様体神経、長および渦静脈が通る。)

Vascular lamina of choroid(血管板(脈絡膜の))Lamina vasculosa けっかんばん(みゃくらくまくの)Haller's layer; Sattler's layer Feneis: 352 16

[A15_2_03_005] →(脈絡膜の血管板は大小さまざまの動脈および静脈を含む厚い層で、血管と血管の間の空間は色素細胞によって密に埋められている。ここに入る動脈は短後毛様体動脈と長後毛様体動脈とが主なものであり、静脈は4本の渦静脈にまとまって赤道部の4カ所で強膜を貫いて外に出る。)

Capillary lamina of choroid(脈絡毛細管板(脈絡膜の))Lamina choroidocapillaris みゃくらくもうさいかんばん(みゃくらくまくの) Feneis: 352 17

[A15_2_03_006] →(脈絡膜の脈絡毛細管板は網膜の外面に沿って平面的に広がるはなはだ密な毛細血管の網工であるが、その厚さは厚いところでも約10μmに過ぎない。網膜色素上皮および網膜の光受容細胞は、この毛細血管網からしみ出した血漿成分によって栄養されている。したがって、なんらかの原因で網膜が脈絡膜から剥離すると、剥離した部分は直ちに視覚を失い。視野の中では暗黒領域となる。)

Basal lamina of choroid(基底板;基底膜(脈絡膜の))Lamina basalis choroideae きていばん;きていまく(みゃくらくまくの)Bruch's membrane Feneis: 352 18

[A15_2_03_007] →(脈絡膜の基底板はブルッフ膜Bruch's membraneとも呼ばれ、HE染色では桃色に染まった細い線として認められる。基底板はこれまで網膜色素上皮の基底膜と考えられていたが、電顕によって①網膜色素上皮の基底板、②脈絡膜の毛細血管の網膜側の基底板、および③両者の間を埋める詳細な膠原線維と弾性の網工、の3層からできていることが明らかになった。ブルッフBruch, Karl Wilhelm Ludwig(1819-1884)ドイツの解剖学者で眼の脈絡膜の最外部のブルーフ膜を記述("Untersuchungen zur Kentniss des Kornigen Pigments des Wirbelthiere in physiogischer u. pathologischer Hinsicht", 1844))

Choroid blood vessels(脈絡膜血管)Vasa sanguinea choroideae みゃくらくもうけっかん [A15_2_03_008]

Ciliary body(毛様体)Corpus ciliare もうようたい Feneis: 352 19

[A15_2_03_009] →(毛様体は虹彩支質と脈絡膜の移行部に生後発生する平滑筋(毛様体筋)の束により生じる肥厚部である。経線断面では全体として三角形の断面をもち、3頂点がそれぞれ網膜鋸状縁、虹彩基部、毛様体突起にあたる。毛様体突起には毛様体小帯が結合し、水晶体に連絡する。眼球を赤道面で切断し、その前半分を後ろから観察すると水晶体を一周する毛様体を一眺することができる。鋸状縁につづく、①毛様体輪(幅~3mm)と、②放射状に配列する約70個の毛様体突起とヒダよりなる毛様体間が区別される。輪部には細い経線方向に走る稜線が認められ、これが集中して毛様体突起(長さ2mm、幅1mm、高さ0.5mm)をつくる。)

Corona ciliaris(毛様体冠)Corona ciliaris もうようたいかん Feneis: 352 20

[A15_2_03_010] →(毛様体冠は毛様体突起の占める輪状の帯。毛様体冠の内面には経線方向に走る70~80本の細長い毛様体突起が眼球内腔に突出している。)

Ciliary processes(毛様体突起;大突起(毛様体の))Processus ciliares; Processus majores もうようたいとっき;だいとっき(もうようたいの) Feneis: 352 21

[A15_2_03_011] →(毛様体突起は放射状に配列し、毛細血管に富むヒダ。70~80本あり、幅0.1~0.2mm、高さ1mm、厚さ2~3mmである。この上皮が眼房水を産出する。)

1個の毛様体突起をその長軸に対して直角の面で切ったところ(Schwalbe)

Ciliary plicae(毛様体ヒダ;小突起(毛様体の))Plicae ciliares; Processus minores もうようたいひだ;しょうとっき(もうようたいの) Feneis: 352 22

[A15_2_03_012] →(毛様体ヒダは毛様体冠部にある丈の低いヒダ。一部は毛様体突起間にもある。)

Orbiculus ciliaris(毛様体輪)Orbiculus ciliaris もうようたいりん Feneis: 352 23

[A15_2_03_013] →(毛様体輪は毛様体冠と鋸状縁の間にある輪状帯。毛様体ヒダがある。(Feneis))

Ciliary muscle(毛様体筋)Musculus ciliaris もうようたいきん Feneis: 352 24

[A15_2_03_014] →(眼の遠近調節accommodation(ピント合わせ)はの仕組みは、近いものを見るときには、毛様体筋が収縮して毛様小体がゆるみ(毛様小体の付着部が前の方に引かれるため)、水晶体が自身の弾性によって膨らみ(球形に近付き)、屈折率を増す。長時間にわたって細かい字を読んだ時の眼の疲労は、主に毛様体筋の疲労である。)

Meridional fibres of ciliary muscle(経線状線維;経線線維(毛様体筋の);ブリュッケの筋)Fibrae meridionales Musculusciliaris けいせんじょうせんい;けいせんせんい(もうようたいきんの)Bücke's muscle Feneis: 352 25

[A15_2_03_015] →(ブリュッケ筋とも呼ばれる。毛様体筋のうちの経線状に走る平滑筋線維。筋の大部分を占める。前方、後境界板のところは虹彩角膜角櫛状靱帯へ、後方は脈絡膜へつく。眼球の毛様体内部に含まれる。オーストラリアの生理学者Ernest W. von Bruecke (1819-1892)の名を冠する。この筋はアイルランドの外科医Sir Philip Crampton (1777-1892)の名を冠する。この筋はアイルランドの外科医Sir Philip Crampton (1777-1858)のなをとってCrampton's muscleとも呼ばれる。なお、毛様体の輪状平滑筋はミュラー筋(Mueller's muscle)と呼ばれている。)

Longitudinal fibres of ciliary muscle(縦走線維(毛様体筋の))Fibrae longitudinales musculusciliaris じゅうそうせんい(もうようたいきんの)Bücke's muscle Feneis: 352 25

[A15_2_03_016] →(ブルッケ筋とも呼ばれる。毛様体筋の縦走線維は経線方向に走る線維で、筋の大部分を占める。前方、後境界板のところは虹彩角膜角櫛状靱帯へ、後方は脈絡膜へつく。Brucke, Ernst Wilhelm Ritter von(1819-1892)ドイツ人生理学者、ウィーン大学教授。音声学("Grundzuge der Physiologie u. Systematik der sprachlaute fur Linguisten u. Taubstummenlehrer" 1856).眼底検査の先駆的業績(1845年)を残したほか生理学的に物理学的、化学的研究法を導入して近代生理学の領域をいろげた人。毛様体筋のブルッケ筋などを記述。)

Radial fibres of ciliary muscle(放線状線維(毛様体筋の))Fibrae radiales Musculusciliaris ほうせんじょうせんい(もようたいきんの)Rouget's muscle Feneis: 352 27

[A15_2_03_017] →(ルージュ筋ともよばれる。毛様体筋の放線状線維は経線状線維と輪状線維の中間に位置し、経線線維とおなじところからおこり、輪状線維と交錯しながら後内方に放射状に走る。Rouget, Charles Marie Benjamin(1824-1904)フランスの生理学者。毛細管の研究で有名。ルージュ細胞(毛細血管壁の収縮性細胞)を記述("Sur le contractilite des capillaries sanguins.", C.R.Acad. Sci. (Paris), 1879, 88, 916-918)、眼のルージュ筋も記述。)

Circular fibres of ciliary muscle(輪状線維(毛様体筋の))Fibrae circulares Musculusciliaris りんじょうせんい(もうようたいきんの)Müller's muscles Feneis: 352 26

[A15_2_03_018] →(ミュラー筋ともいう。眼球の毛様体内部にある輪状に走る平滑筋線維。ドイツの解剖学者Heinrich Franz Mueller (1820-1864)によって報告された。経線方向に走る平滑筋線維はブリュッケ筋Brucke's muscleという。)

Basal lamina of ciliary body(基底板(毛様体の))Lamina basalis corporis ciliaris きていばん(もうようたいの) Feneis: 352 28

[A15_2_03_019] →(毛様体の基底板は脈絡膜の基底板のつづき。色素上皮に接す。)

Iris(虹彩)Iris こうさい Feneis: 354 01

[A15_2_03_020] →(虹彩は、前頭面に位置し、眼の血管層の前方部分をつくる隔膜で、色に個人差のある円板。中央に開口部(瞳孔)があり、直径は約10~12mm。前眼房の後境界で、その縁は毛様体へ移行する。周囲辺縁は強膜岬角に付着している。瞳孔をかたちづくるあたかもカメラの絞りのような器官で、虹彩内皮、虹彩支質、虹彩筋、虹彩色素上皮層より構成され、血管に富む。虹彩の脈管と神経はは虹彩の動脈としては毛様体縁に沿う大虹彩動脈輪、瞳孔縁に沿う大虹彩動脈輪、瞳孔縁に沿う小虹彩動脈輪、両者を放射状につなぐ小動脈があり、長後毛様体動脈、前毛様体動脈、脈絡膜毛細血管叢より供給される。静脈血はこれらに伴う静脈のほか、渦静脈に流入する。虹彩の神経支配として長毛様体神経(三叉神経由来の体知覚性神経)と短毛様体神経(毛様体神経節由来の自律神経)があり、後者には動眼神経副核由来の節前線維から興奮を受けて伝達する節細胞の軸索すなわち副交感神経節後線維と、内頚動脈神経叢を経て毛様体神経節に達し、節内でそれに合流する胸部交感神経核由来の交感神経節後線維が含まれる。瞳孔括約筋は副交感神経、散大筋は交感神経の支配を受ける。)

虹彩の前面 角膜は取りさつてある(x3)

ヒトの虹彩の後面に近い層の一部 色素を脱色してある.

虹彩と脈絡膜の血管 前からみる.×2.5(Arnold)

Pupillary margin of iris(瞳孔縁(虹彩の))Margo pupillaris iridis どうこうえん(こうさいの) Feneis: 354 02

[A15_2_03_021] →(虹彩の瞳孔を囲む縁。(Feneis))

Ciliary margin of iris(毛様体縁(虹彩の))Margo ciliaris iridis もうようたいえん(こうさいの) Feneis: 354 03

[A15_2_03_022] →(虹彩の毛様体縁は虹彩の外縁。毛様体および虹彩角膜角へ固定される。)

Anterior surface of iris(前面(虹彩の))Facies anterior iridis ぜんめん(こうさいの) Feneis: 354 04

[A15_2_03_023] →(前眼房へ対する面。(Feneis))

Posterior surface of iris(後面(虹彩の))Facies posterior iridis こうめん(こうさいの) Feneis: 354 05

[A15_2_03_024] →(虹彩の後面は後眼房へ対する面。)

Outer border of iris(大虹彩輪;外虹彩輪)Anulus iridis major だいこうさいりん;がいこうさいりん Feneis: 354 06

[A15_2_03_025] →(虹彩の毛様体部。外側で、幅広く、粗大な構築で小虹彩輪とは区別される部分。(Feneis))

Inner border of iris(小虹彩輪;内虹彩輪)Anulus iridis minor しょうこうさいりん;ないこうさいりん Feneis: 354 07

[A15_2_03_026] →(虹彩の瞳孔部。狭く、密な構築で大虹彩輪とは区物される部分。(Feneis))

Folds of iris(虹彩ヒダ)Plicae iridis; Rugae iridis こうさいひだ Feneis: 354 08

[A15_2_03_027] →(虹彩前面の瞳孔縁周囲にあるヒダ。瞳孔縁に浅い鋸歯状構造をつくる。(Feneis))

Pupil(瞳孔)Pupilla どうこう Feneis: 354 09

[A15_2_03_028] →(瞳孔は虹彩の中心にある瞳孔縁に囲まれた孔。ほぼ円形の開口。角膜、前眼房を通過した光が、ここを経て水晶体、硝子体、そして網膜に達する。瞳孔の直径は明るさにより両側性に変化し(瞳孔反射)、明所では~1.0mm(縮瞳)、暗所では~8.0mm(散瞳)ぐらいである。入射光の強さおよびみえるものまでの距離に応じてその径を変えることが出来る。不交感神経遮断剤(アトロピンなど)や交感神経刺激剤(アドレナリンなど)の点眼により持続的散大が可能で、眼科学的に広く応用されている。瞳孔は胎生期には虹彩内皮のつづきである瞳孔膜によりとじられているが、妊娠末期にこれが消失する。眼胞から眼杯が形成される過程で脈絡裂閉鎖が不完全な場合、いろいろの程度に虹彩瞳孔縁の欠損が残り、これを虹彩披裂(Coloboma iridis)という。虹彩筋は輪走する瞳孔括約筋と、放射状の瞳孔散大筋がある。虹彩筋はすべて色素上皮細胞より分化する神経外胚葉由来の筋上皮組織である。)

Stroma of iris(虹彩支質)Stroma iridis こうさいしひつ Feneis: 354 12

[A15_2_03_031] →(虹彩支質は色素を持つ結合組織細胞の混じった、血管に富む基質。前および後部は線維が多く、中間部は少ない。(Feneis))

Sphincter pupillae; Sphincter muscle of pupil(瞳孔括約筋)Musculus sphincter pupillae どうこうかつやくきん Feneis: 354 10

[A15_2_03_029] →(瞳孔括約筋はラセン状に走る筋線維よりなる網工。その長軸は、散大した瞳孔では瞳孔縁とほぼ平衡である。神経支配は動眼神経中の副交感性線維。瞳孔に近い色素上皮層前面に束をつくるのみならず、一部は瞳孔縁から後面にまで及んでいる。)

瞳孔括約筋と同じく散大筋,ウマの虹彩を漂白して放射状方向に切ったもの×70 (R. Miyake, Verh. phys.-med. Ges. Würzburg,1901) 左方が瞳孔の側,右方が毛様体の側

瞳孔括約筋(s)と瞳孔散大筋(D)の関係を示す模型図(Miyakeによる) v1, v2はsとDの間のつながり, aは支質内へ伸び出した部分.

Dilator pupillae muscle(瞳孔散大筋)Musculus dilator pupillae どうこうさんだいきん Feneis: 354 11

[A15_2_03_030] →(放射状に走るうすい平滑筋線維層。神経支配は頚動脈神経叢からの交感神経。(Feneis))

Pigmented epithelium of iris(色素上皮[虹彩])Epithelium pigmentosum iridis しきそじょうひ[こうさい] Feneis: 354 13

[A15_2_03_032] →(虹彩色素上皮は瞳孔縁で互いに移行する2層の色素上皮で、毛様体縁で毛様体色素上皮つづく。眼杯すなわち眼球内膜の周辺部に相当し、網膜虹彩部ともいう。虹彩色素上皮層の細胞は特異な細胞で、核のあるレベルを境としてそれより後方、すなわち自由表面側の細胞質は大量のメラニン顆粒を含み、単層立方上皮様の配列を示すが、核よりも前方、すなわち基底側の細胞質はメラニン顆粒を含まず、細長い紡錘形の突起となり、虹彩支質と色素上皮層の接着面に平行に、虹彩のつけねから瞳孔縁に向かって走る。これが瞳孔散大筋そのものである。)

Pectinate ligament of iridocorneal angle(虹彩角膜角櫛状靱帯;小柱網;櫛状靱帯(強膜の))Ligamentum pectinatum anguli iridocornealis こうさいかくまくかくしつじょうじんたい;しょうちゅうもう;しつじょうじんたい(きょうまくの) Feneis: 350 27

[A15_2_03_032_1] →(虹彩角膜角櫛状靱帯と虹彩角膜角隙をより的確に表すために“小柱網”が用いられる。虹彩支質に移行する後方部をブドウ膜部、強膜棘の内側から角膜内皮に移行する前方部を強膜部という。)

Spaces of iridocorneal angle(虹彩角膜角隙)Spatia anguli iridocornealis こうさいかくまくかくげきFontana, Spaces of Feneis: 354 14

[A15_2_03_033] →(フォンタナ腔ともよばれる。虹彩角膜角(前眼房の外側隅)にみられる疎性結合組織の網工。虹彩角膜角櫛状靱帯の線移管の隙間。ここを通って眼房水が強膜静脈洞へ入る。イタリアのFelice Fontana (1720-1805)イタリアの生理学者。フォンタナ管(虹彩、角膜、強膜の接合点の毛細管を記述。彼の論文は物理・化学・生理学的領域にわたるものが多く、この時代の傑出した医学者のひとりであった。)

Major circulus arteriosus of iris; Major arterial circle of iris(大虹彩動脈輪)Circulus arteriosus iridis major だいこうさいどうみゃくりん Feneis: 354 15

[A15_2_03_034] →(大虹彩動脈輪は長および短後毛様体動脈管の吻合による輪状の血管系。放射状に枝がでる。)

Minor circulus arteriosus of iris; Minor arterial circle of iris(小虹彩動脈輪)Circulus arteriosus iridis minor しょうこうさいどうみゃくりん Feneis: 354 16

[A15_2_03_035] →(大虹彩動脈輪の車軸状枝の吻合により、瞳孔縁近くに出来る輪状血管系。(Feneis))

Pupillary membrane(瞳孔膜)Membrana pupillaris どうこうまく Feneis: 354 17

[A15_2_03_036] →(発生途上の水晶体は周囲を小量の間葉細胞を伴う毛細血管も腕包まれている。この間葉性皮膜を水晶体血管膜(Ttunica vasculosa lentis)という。水晶体の前面では、この水晶体血管膜は瞳孔縁を越えて瞳孔の中に伸びる眼杯の間葉性被膜とひとつづきとなって瞳孔を閉ざす。この瞳孔を閉ざす薄い間葉組織を瞳孔膜という。胎生の中期において、虹彩の発育につれて後眼房が形成されると、道硬膜は虹彩の瞳孔縁から水晶体の前面に広がる薄い膜となりやがて完全に消失する。瞳孔膜の消失によって前眼房と後眼房が連続する。)

Inner layer of eyeball(眼球内膜;眼球感覚膜)Tunica interna bulbi がんきゅうないまく;がんきゅうかんかくまく Feneis: 354 18

[A15_2_04_001] →(眼球内膜は網膜視部および盲部の総称。前脳胞の憩室として発生する眼杯(眼胞)に由来するので脳壁に相同である。)

 

杆状体と錐状体の横断 ヒトの網膜をその面に平行に切った標本

網膜の放線線維をクローム銀染色によってしめす ネコ(G. Retzus 1894)

網膜の内面における視神経線維の放散 網膜の内面からみる.(v. Michel)

ある哺孔動物の網膜の横断 クローム銀染色(Cajal) a 杆状体, d 錐状体, e 杆状体と連絡する双極性細胞,f錐状体に連絡する双極性細胞,r 杆状体に連絡する双趣性細胞の内方突起の分枝, r2 同じく錐状体に連絡するものの分枝. 9, h, i, j, k 神経細胞の突起が内網状層のいろいろな深さのところで分枝している.x 杆状体線維とこれに連絡する双極性細胞との接触, Z 錐状体線維と双極性細胞との接触, s 遠心性神経線維,t ミュレル細胞(放線線維)

杆状体視網胞と錐状体視細胞 模型図(M. Schultze)×700

杆状体と錐状体から外側膝状体までの刺激伝導をしめす模型図(Cajal) a 錐状体, b 杆状体, c, d 双趣性細胞, e 神経細胞,f 遠心性細胞,9 アマクリン細胞,h 網膜にはじまる神経線維の自由終末分枝, j この神経細胞の樹状突起がそこに到来する視覚刺激をうけとる.r 遠心性視神経線維の起始をなす細胞.

Retina(網膜)Retina もうまく Feneis: 354 19

[A15_2_04_002] →(網膜は大きく分けて、網膜視部、網膜毛様体部、網膜虹彩部の3つの部分からなる。視覚部分は、視光線を受ける生理的部分で、色素部と神経部の2つの部分かなる。光刺激を受容して神経興奮に変換し、上位中枢へ情報として伝達する主要な視覚器構成成分である。前脳胞の一部分として発生する眼杯は視室腔をはさむ内・外2枚の壁をもち、分化して眼球内膜となるが、網膜の構造はすべてこの2層よりなる内膜に属し、脳壁に相同である。内膜は視神経乳頭から瞳孔縁まで眼球内面の前域をおおうが、網膜の構造はすべてこの2層よりなる内膜に属し、脳壁に相同である。内膜は視神経乳頭から瞳孔縁まで眼球内面の前域をおおうが、機能と構造の異なる網膜視部、網膜毛様体部、網膜虹彩部が区別され、後二部分は合わせて網膜盲部という。視部と毛様体部の境界が鋸状縁である。盲部では内膜の2板がともに比較的単純な上皮構造を保ち、虹彩後上皮と毛様体色素上皮・色素上皮となる。視部では外板から網膜色素部、内板から網膜神経部が分化する。中心部で0.4mm、鋸状縁で0.1mmの厚さをもつ。)

Nonvisual retina(網膜盲部;盲部(網膜の))Pars caeca retinae もうまくもうぶ;もうぶ(もうまくの) [A15_2_04_003]

Iridial part; Irdic part of retina(網膜虹彩部)Pars iridica retinae もうまくこうさいぶ Feneis: 354 28

[A15_2_04_005] →(網膜虹彩部は虹彩の後面を縁どる上皮層で、網膜毛様体部と同様に、自由表面を互いに向かい合わせた2層の上皮細胞からできている。虹彩支質に接する前面の上皮は眼杯外板に由来する虹彩色相上皮層であり、後眼房に向かう後面の上皮は眼杯内板に由来するもので、狭義の網膜虹彩部と呼ばれ、これは瞳孔縁のところで反転して前者に移行する。虹彩色素上皮層の細胞は特異な細胞で、核のあるレベルを境としてそれより後方、すなわち自由表面側の細胞質は大量のメラニン顆粒を含み、単層立方上皮様の配列を示すが、核よりも前方、すなわち基底側の細胞質はメラニン顆粒を含まず、細長い紡錘形の突起となり、虹彩支質と色素上皮層の接着面に平行に、虹彩のつけねから瞳孔縁に向かって走る。これが瞳孔散大筋そのものである。網膜虹彩部(狭義)は丈の高い単層上皮であるが、細胞体が大量のメラニン顆粒でみたされているので、通常の標本では、細胞内の構造はもとより細胞境界さえも識別することはできない。後眼房に向かうこの上皮細胞の基底面はPAS反応要請の基底膜で裏打ちされている。)

Ciliary part of retina(網膜毛様体部)Pars ciliaris retinae もうまくもうようたいぶ Feneis: 354 27

[A15_2_04_004] →(網膜毛様体部は自由表面を互いに向かい合わせた2層の上皮細胞からできている。外層は眼球外板に由来し、網膜色素上皮層に直接つづくもので、毛様体色素上衣層と呼ばれ、大量のメラニン顆粒を含む単層円柱上皮である。これと外側を囲む血管層の間にはブルッフ膜につづく基底膜が存在する。内層は眼杯内板に由来するもので、毛様体上皮とも呼ばれる単層円柱内し立方上皮である。細胞はメラニン顆粒を含む、胞体はHE染色では明るい桃色に染まる。後眼房に向かうこの細胞の表面は、発生過程からあきらかなように、自由表面ではなくて基底面であり、基底膜に相当する内境界膜で裏打ちされている。この内境界膜に小帯線維が付着する。毛様体上皮は眼房水を分泌するものと考えられている。)

Ora serrata retinae(鋸状縁(網膜の))Ora serrata retinae きょじょうえん(もうまくの) Feneis: 354 26

[A15_2_04_006] →(網膜の鋸状縁は網膜視部と毛様体部との間の鋸歯状の境界。)

Optic part of retina(網膜視部;視部(網膜の))Pars optica retinae もうまくしぶ;しぶ(もうまくの) Feneis: 354 20

[A15_2_04_007] →(網膜視部はHE染色標本でみると、内側から外側へ向かって規則正しい10層の層構造を示す。)

ヒトの網膜視部の横断(黄斑外周部) 右方の図は網膜の主要な3つのニューロンの形態と配列を模型的にしめすものである.S:アマクリン細胞Spongioblast.

Optic disc; Optic disk; Optic papilla(視神経円板;視神経乳頭;視束乳頭)Discus nervi optici; Papilla fasciculi optici ししんけいえんばん;ししんけいにゅうとう;しそくにゅうとう Feneis: 356 01

[A15_2_04_019] →(マリオット盲点Mariotte's bind spotとも呼ばれる。眼底における視神経のはじまり。黄斑の約3~4mm内側、直径約1.6mm。 視神経円板は視細胞を欠くため、視野においては盲点blind spotとなる。これをマリオット盲点という。生体において、検眼鏡でみると、視神経円板はピンク色を呈し、中央の凹みは白くみえる。フランスの物理学者Edem Mariotte (1620-1684)の視野実験によって発見された。)

Depression of optic disc; Physiologica cup(円板陥凹;乳頭陥凹;視床乳頭陥凹)Excavatio disci; Excavatio papillae fasciculi optici えんばんかんおう;にゅうとうかんおう;ししょうにゅうとうかんおう Feneis: 356 02

[A15_2_04_020] →(視神経円板の中央はやや凹み、円板陥凹といい、ここから網膜の中心動脈が出る。)

Macula of retina(黄斑(網膜の))Macula lutea おうはん(もうまくの) Feneis: 356 03

[A15_2_04_021] →(黄斑は網膜の感受性の高い部位にみられる直径3~5mmの視力の鋭い網膜の卵円形の中心部分。網膜神経部のうち光感覚層と光受容細胞核周囲部の集合である外顆粒層のみが皮厚し、とくに中心窩(直径1.5mm)では他の層がまったく存在しない。中心窩には~2500個の中心窩錐状体が発達しており、視軸を通る入射光を最も有効に受容することができる。黄斑の色調は錐体状に含まれる視物質(アイオドプシン)の色であるという。黄斑以外の部分は新鮮網膜では、杆状体視物質(ロドプシン)により紫赤色に見える。)

Fovea centralis in macula(中心窩(黄斑の))Fovea centralis ちゅうしんか(おうはんの) Feneis: 356 04

[A15_2_04_022] →(中心窩は血管のない黄斑の中心にあるくぼみ。網膜上部層の減少により生ず。最も分解能のよいところ。直径約1~2mm。黄斑はものを最も明瞭に見ることができる部で、とくに中心窩は視力が最も良く、ここでいる視力を中心視力という。)

ヒトの中心窩を通る断面

Foveola(中心小窩)Foveola ちゅうしんしょうか Feneis: 356 05

[A15_2_04_023] →(中心小窩は中心窩中最も薄いところ。網膜成分のうちほとんど錐状体細胞のみで構成される。直径約0.2~0.4mm。この中に2,500個の錐状体細胞がある。)

Pigmented layer of retina(色素層;色素上皮層(網膜の);網膜色素上皮層)Stratum pigmentosa retinae しきそそう;しきそじょう;ひそう(もうまくの);もうまくしきそじょうひそう Feneis: 354 21

[A15_2_04_008] →(網膜の色素上皮層はメラニン顆粒をもつ色素細胞からなる単層立方上皮である。基底面は、Bruch膜を介して脈絡膜毛細血管板に接し、表面からは長い鼻絨毛を出して視室腔の対岸の杆状体・錐状体細胞の外節に接する。色素細胞は、食作用をもち、光り受容の役を終えて更新される杆状体・錐状体細胞外節の円板膜をさかんに貪食分解する。)

ヒトの網膜色素上皮層 平面標本

ヒトの網膜色素上皮層の細胞 側面からみる.睡毛状の長い突起と,色素を欠く頂と帽子状の部分がみられる.核は示されていない.(M. Schultze)

Pigmented layer of iris(虹彩色素上皮層;虹彩色素層)Stratum pigmenti iridis こうさいしきそじょうひそうこうさいしきそそう

[A15_2_04_008_1] →(網膜虹彩部は虹彩の後面を縁どる上皮層で、網膜毛様体部と同様に、自由表面を互いに向かい合わせた2層の上衣細胞からできている。虹彩支質に接する前面の上皮は眼杯外板に由来する虹彩色素上皮層であり、後眼房に向かう後面の上皮は眼杯内板に由来するもので、狭義の網膜虹彩部と呼ばれ、これは瞳孔縁のところで反転して虹彩色素上皮に移行する。虹彩色素上皮層の細胞は特異な細胞で、核のあるレベルを境としてそれより後方、すなわち自由表面側の細胞質は大量のメラニン顆粒を含み、単層立方上皮様配列を示すが、核よりも前方、すなわち基底側細胞質はメラニン顆粒を含まず、細長い紡錘形の突起となり、虹彩支質と色素上皮層の接着面に平行に、虹彩のつけねから瞳孔縁に向かって走る。これが瞳孔散大筋そのものである。)

Pigmented layer of ciliary body(毛様体色素上皮層;毛様体色素層)Stratum pigmenti corporis ciliaris もうようたいしきそじょうひそう;もうようたいしきそそう

[A15_2_04_008_2] →(網膜毛様体部は自由表面を向かい合わせた2層の上皮細胞から出来ている。外層は眼球外板に由来し、網膜色素上皮層に直接続くもので、毛様体色素上皮層と呼ばれ、大量のメラニン顆粒を含む単層円柱上皮である。これと外側を囲む血管層の間にはブルッフ膜につづく基底膜が存在する。内層は眼杯内板に由来するもので、毛様体上皮とも呼ばれる単層円柱ないし立方上皮である。細胞はメラニン顆粒を含まず、細胞体はHE染色では明るい桃色に染まる。後眼房に向かうこの細胞の表面は、発生過程から明らかなように、自由表面ではなくて基底面であり、基底膜に相当する内境界膜で裏打ちされている。おの内境界膜に小帯線維が付着する。毛様体上皮は眼房水を分泌するものと考えられているが、その分泌の機序はまだよくわかっていない。)

Pigmented layer of retina(網膜色素上皮層)Stratum pigmenti retinae もうまくしきそじょうひそう

[A15_2_04_008_3] →(網膜色素上皮層は粗大なメラニン顆粒を大量に含む単層円柱上皮細胞からなる。この上皮細胞は基底面を脈絡膜の基底板(ブルッフ膜)に置き、自由表面を錐状体・杆状体層に向け、自由表面には多数の名が細い微絨毛様の突起をそなえている。細胞相互は自由表面の近くに存在する接着装置によって固く結合している。メラニン顆粒は核の存在するレベルから細胞表面にかけてはなはだ密に存在し、微絨毛様突起の中にも多数みられるが、細胞の基底部には比較的すくない。微絨毛様突起は指状あるいは板状を呈し、長いもの(5~7μm)と短いもの(3~4μm)とがあり、長いものは対向する杆状体の外節の間に侵入し、短いものは錐状体の外節の先端部を囲んでいる。網膜色素上皮細胞は、古くなって脱落した錐状体や杆状体の外節の先端部を、食作用によって細胞体内に取り込み分解することによって、外節の亢進に関与し、視覚機能の維持に重要な役割をになっている。)

Neural layer of retina(神経層(網膜の))Stratum nervosum retinae しんけいそう(もうまくの) Feneis: 354 22

[A15_2_04_009] →(網膜の神経層は視室腔面から硝子体へ向かって、1.光感覚層、2.外境界層、3.外顆粒層、4.外網状層、5.内顆粒層、6.内網状層、7.視神経細胞層、8.神経線維層、9.内境界層を区別する。)

Layer of inner and outer segments of retina(視細胞層;内節および外節の層(網膜の))Stratum segmentorum externorum et internorum retinae しさいぼうそう;ないせつおよびがいせつのそう(もうまくの)

[A15_2_04_010] →(網膜の外境界層の外方にある層で、視細胞の杆状体・錐状体とそれの内節・外節を含む。杆状体。錐状体の尖端は色素層に向き合っている。)

Outer limiting layer of retina(外境界層;外境界膜(網膜の))Stratum limitans externum retinae がいきょうかいそう;がいきょうかいまく(もうまくの)

[A15_2_04_011] →(網膜の外境界層は錐状体・杆状体層と外顆粒層を境する著明な細線である。電顕によると、これは網膜の支持細胞であるミュラー細胞Muller cellのの自由表面に相当する部位であり、ミュラー細胞はここで高度に発達した接着装置をもって錐状体細胞および杆状体細胞と結合している。この接着装置の位置が揃っているので、貢献では光を強く屈折する1本の細線にみえるのである。この外境界層は発生学的に見ると、脳室の一部である視室を含む眼杯内板の自由表面に相当する。したがって、錐状体および杆状体は脳室を囲む脳の自由表面から脳室の中に突出した構造物に他ならない。)

Outer nuclear layer of retina(外顆粒層(網膜の))Stratum nucleare externum retinae がいかりゅうそう(もうまくの)

[A15_2_04_012] →(網膜の外顆粒層は錐状体細胞および杆状体細胞の核を含む細胞体が密集している層である。核の周囲の細胞質は狭く、光顕ではほとんど認められず、電顕によっても細胞小器官に乏しい細胞質の薄層としてみとめられるのみである。錐状体細胞の核はやや大きく、外境界膜の近くに存在し、杆状体細胞の核は小さく、外顆粒層全体にわたって密に存在する。核より内方では細胞質は1本の細い神経線維様の突起となって外網状層に入り、ここで錐状体細胞小足および杆状体細胞小球と呼ばれる膨大部を作って終わる。この突起を錐状体線維および杆状体線維という。)

Outer plexiform layer of retina(外網状層(網膜の))Stratum plexiforme externum retinae がいもうじょうそう(もうまくの)

[A15_2_04_013] →(網膜の外網状層は視覚伝導路の第1ニューロンである錘状体細胞および杆状体細胞と第2ニューロンである双極神経細胞がシナプス結合を行う層で、外側半は錐状体線維および杆状体線維により、内側半は双極神経細胞の末梢性突起によってみたされている。錘状体細胞小足はやや大きく、扁平な円錐形で、光顕でも本層の中央部に1列に並んだ小点として認められるが、杆状体細胞は小さくて光顕では識別できない。これらと双極神経細胞の突起との間のシナプス結合は複雑かつ特異的である。)

Inner nuclear layer of retina(双極細胞層;内顆粒層(網膜の))Stratum nucleare internum retinae そうきょくさいぼうそう;ないかりゅうそう(もうまくの)

[A15_2_04_014] →(網膜の内顆粒層は双極神経細胞の核が密集している層であるが、本層にはこの他に水平細胞、無軸索細胞およびミュラー細胞の細胞体が含まれる。双極細胞は内顆粒層の主成分をなす小形の紡錘形の神経細胞で、末梢性突起によって錘状体細胞小足および杆状体細胞小球と接続し、虫垂性突起によって内網状層において視神経細胞と接続する。末梢性突起と中枢性突起の出発部以外では、細胞質ははなはだ薄く、細胞小器官に乏しい。したがって光顕で細胞質を識別することはほとんど不可能である。水平細胞は内顆粒層の最外側部にほぼ1列に並んでいる扁平な神経細胞で、光の入射する方向に対してほぼ直角な面に放散する多数の突起を外網状層に出し、多数の錘状体細胞小足および杆状体細胞小足とシナプスを作っている。水平細胞は視神経および双極神経細胞の間の横を連絡を行うものである。無軸索細胞はアマクリン細胞Amacrine cellともよばれ、内顆粒層の最内側部ほぼ1列に並んでいる、ずんぐりした形の神経細胞で、その核は双極神経細胞の核より大きく、核膜は一側で深い切り込みを作っている。この細胞は多数の突起を内網状層に送り、ここで双極神経細胞と視神経細胞の間のシナプスにははなはだ複雑な様式で参加し、内網状層の中の横の連絡を行っている。)

Inner plexiform layer of retina(内網状層(網膜の))Stratum plexiforme internum retinae ないもうじょうそう(もうまくの)

[A15_2_04_015] →(網膜の内網状層は双極神経細胞の中枢性突起と視神経細胞の樹状突起ならびに無軸索細胞の突起からなる層で、これらは本層の中で複雑な接続関係を構築している。)

Ganglionic layer of retina(視神経細胞層;神経節細胞層(網膜の))Stratum ganglionicum retinae ししんけいさいぼうそう;しんけいせつさいぼうそう(もうまくの) Feneis: 354 25

[A15_2_04_016] →(網膜の神経節細胞層は視神経細胞の胞体が存在する層である。視神経細胞は中心窩の周囲では小さく、数層に重なって密に存在し、HE染色標本ではその胞体を識別することは困難であるが、中心窩から遠ざかるにつれて急に数が少なくなるとともに胞体が大きくなり、明らかに胞体が認められるようになる。視神経細胞は視神経細胞層に細胞体を置く多極性神経細胞で、しばしば神経節細胞と呼ばれる。この細胞は内網状層内に広がる多数の樹状突起によって双極神経細胞から視覚興奮を受け取り、これを内包に伸びる1本の軸索によって間脳の外側膝状体および中脳の上丘に伝達する。この軸索が視神経線維である。)

Layer of nerve fibres of retina; Nerve fibers layer(神経線維層(網膜の))Stratum neurofibrum retinae しんけいせんい(もうまくの)

[A15_2_04_017] →(網膜の神経線維層は視神経細胞の軸索(視神経線維)よりなる層である。視神経線維は本層に入ると網膜の内面に平行に向きを変え、網膜のすべての領域から視神経乳頭に向かって集約するしたがって本層は網膜の辺縁部では薄いが、視神経乳頭に近づくにつれて厚くなる。)

Inner limiting layer of retina(内境界層;内境界膜(網膜の))Stratum limitans internum retinae ないきょうかいそう;ないきょうかいまく(もうまくの)

[A15_2_04_018] →(網膜の内境界層はHE染色標本では網膜の内面を縁取る著明な細線として認められるものであるが、電顕によると網膜に特有の支持細胞であるミュラー細胞の扇状に拡大した末端部(これを小足または足板という)が横につらなったものであることが明らかとなった。内境界層は、発生の経過から明らかなように、狭義の網膜の基底面にあたり、網膜はミュラー細胞の小足を裏打ちする基底板を介して硝子体に接しているのである。ミュラー細胞は神経膠性細胞性の支持細胞で、光の入射する方向に一致して狭義の網膜の全層を貫く細長い細胞で、その核は内顆粒層に位置している。網膜の内境界膜と外境界膜はこの細胞の基底側端と自由表面側端によって作られている。ミュラー細胞は細長い胞体の側面からはなはだ多数の細胞質性の突起を出し、これによって視細胞および神経細胞の間の空間を埋めつくし、これらの細胞を栄養支持している。また自由表面からは錐状体および杆状体の内節の間に微絨毛を出している。ただし、HE染色標本ではこの細胞の小足以外の形態を識別することは不可能である。網膜にはミュラー細胞の他に通常の星状膠細胞も散在性にみられる。これらは視神経乳頭の近くの神経線維層の中に特に多数存在する。)

Retinal blood vessels(網膜血管)Vasa sanguinea retinae もうまくけっかん Feneis: 356 06

[A15_2_04_035] →(視神経乳頭より鋸状縁まで、網膜視部前面に分布する動静脈。眼底血管ともいう。網膜神経部に毛細血管網をつくるが、後面に近い光感覚層と色素層は脈絡膜毛細血管板で養われる。網膜動脈は内頚動脈の終末枝の一つであり、脳を養う動脈に相同である。中枢神経系の動脈病変(とくに動脈硬化など)が眼底鏡検査により発見されるようになり、眼底の血管所見は眼科学的に重要視されている。)

ヒトの網膜の血管(E. JägerおよびLeber) amとvmは黄斑動静脈,1 上外側網膜静脈,2 上内側網膜静脈,3 上外側網膜動脈,4 上内側網膜動脈,5 下内側網膜動脈,6 内側網膜動脈,7 内側網膜静脈,8 下内側網膜動脈,9 下外側網膜動脈,10 下外側網膜静脈,11 下内側網膜静脈.

眼の血管の模型図(Leber) 水平断,動脈は既静脈は黒.a, a 脈絡膜動脈;b 虹彩動脈;c, c' 毛様体小枝;d, d' 結膜小枝;e, e' 網膜中心動静脈;f 視神経の柔膜鞘の血管;g 同じく硬膜鞘の血管;h 渦静脈;i 小脈絡膜静脈;k, k 視神経にゆく脈絡膜動脈の枝;l 脈絡膜の血管と視神経の血管との吻合;m 脈絡膜の毛細管板;n, n 強膜上を走る動脈と静脈;o 逆行する枝;p 大虹彩動脈輪の横断;p 虹彩の血管;r 毛様体突起とその血管;s 虹彩と毛様体から渦静脈に注ぐ枝.そのすぐ下方で毛様体筋からの枝をうけている;t毛様体筋からの前毛様体静脈の枝;u シュレムの強膜静脈洞.その結合についてはLeberの原著とは少し変えて描いてある.v 角膜の辺縁係蹄網;w 結膜小枝.

Central retinal artery, intraocular part(網膜中心動脈(眼球内部の))Arteria centralis retinae pars intraocularis もうまくちゅうしんどうみゃく(がんきゅうないぶの)

[A12_2_06_026] →(眼球内部の網膜中心動脈は視神経と網膜の内層とに分布しこれらに栄養を与える。網膜中心動脈は眼球の約1cm後方で下側から視神経に進入し、その内部を前進して視神経円板に達する。視神経円板の円板陥凹から網膜に出て上・下に分岐し、それぞれがさらに内側(鼻側)と外側(耳側)の2枝に分かれる。したがって、上外側動脈・上内側動脈・下外側動脈・下内側動脈の4本に分かれる。ほかに内側と外側とに向かって水平に走る小枝もある。とくに外側に向かって小枝を黄斑動脈という。黄斑には上下からも多くの小枝が集まるが、内部に分布する血管は少ない。とくに中心窩は血管を欠き、栄養は脈絡膜の血管から受ける。網膜中心動脈およびその分岐は終動脈である。このために、閉塞すると視神経・網膜に虚血性変化が容易に起こる。)

Vascular circle of optic nerve(視神経血管輪;視束血管輪)Circulus vasculosus nervi optici; Circulus vasculosus fasciculi optici ししんけいけっかんりん;しそくけっかんりん Feneis: 356 07

[A15_2_04_036] →(視神経の神経血管輪は視神経周囲にあり強膜を貫通する血管輪。)

Superior temporal retinal arteriole(上外側動脈;上網膜外側動脈)Arteriola temporalis retinae superior じょうがいそくどうみゃく;じょうもうまくがいそくどうみゃく Feneis: 356 08 [A15_2_04_037]
Inferior temporal retinal arteriole(下外側動脈;下外側網膜動脈)Arteriola temporalis retinae inferior かがいそくどうみゃく;かがいそくもうまくどうみゃく Feneis: 356 09 [A15_2_04_038]
Superior nasal retinal arteriole(上内側動脈;上網膜鼻側動脈;上内側網膜動脈)Arteriola nasalis retinae superior じょうないそくどうみゃく;じょうもうまくびそくどうみゃく;じょうないそくもうまくどうみゃく Feneis: 356 10 [A15_2_04_039]
Inferior nasal retinal arteriole(下内側動脈;下網膜鼻側動脈;下内側網膜動脈)Arteriola nasalis retinae inferior かないそくどうみゃく;かもうまくびそくどうみゃく;かないそくもうまくどうみゃく Feneis: 356 11 [A15_2_04_040]
Superior macular arteriole(上黄斑動脈)Arteriola macularis superior じょうおうはんどうみゃく Feneis: 356 12 [A15_2_04_041]
Inferior macular arteriole(下黄斑動脈)Arteriola macularis inferior かおうはんどうみゃく Feneis: 356 13 [A15_2_04_042]
Medial retinal arteriole(網膜内側動脈)Arteriola medialis retinae もうまくないそくどうみゃく [A15_2_04_042_1]
Middle macular arteriole(中黄斑動脈)Arteriola macularis media ちゅうおうはんどうみゃく Feneis: 356 14

[A15_2_04_043] →(中黄斑動脈は視神経円板の直内側の網膜部へいたる小枝。)

Central retinal vein, intraocular part(網膜中心静脈(眼球内部の))Vena centralis retinae, pars intraocularis もうまくちゅうしんじょうみゃく(がんきゅうないぶの)

[A12_3_06_113] →(眼球内部の網膜中心静脈の眼底における走行は動脈と似ているが、動脈は静脈よりも通常では硝子体側を走る。静脈は動脈と比較して25%ほど太い。)

Superior temporal retinal venule(上外側静脈;上網膜外側静脈)Venula temporalis retinae superior じょうがいそくじょうみゃく;じょうもうまくがいそくじょうみゃく Feneis: 356 08 [A15_2_04_044]
Inferior temporal retinal venule(下外側静脈;下外側網膜静脈)Venula temporalis retinae inferior かがいそくじょうみゃく;かがいそくもうまくじょうみゃく Feneis: 356 09 [A15_2_04_045]
Superior nasal retinal venule(上内側静脈;上鼻側網膜静脈;上内側網膜静脈)Venula nasalis retinae superior じょうないそくじょうみゃく;じょうびそくもうまくじょうみゃく;じょうないそくもうまくじょうみゃく Feneis: 356 10 [A15_2_04_046]
Inferior nasal retinal venule(下内側静脈;下鼻側網膜静脈;下内側網膜静脈)Venula nasalis retinae inferior かないそくじょうみゃく;かびそくもうまくじょうみゃく;かないそくもうまくじょうみゃく Feneis: 356 11 [A15_2_04_047]
Superior macular venule(上黄斑静脈)Venula macularis superior じょうおうはんじょうみゃく Feneis: 356 12 [A15_2_04_048]
Inferior macular venule(下黄斑静脈)Venula macularis inferior かおうはんじょうみゃく Feneis: 356 13 [A15_2_04_049]
Middle macular venule(網膜内側静脈;中黄斑静脈)Venula macularis media もうまくないそくじょうみゃく;ちゅうおうはんじょうみゃく Feneis: 356 14

[A15_2_04_050] →(視神経円板の直内側の網膜部へいたる小枝。(Feneis))

Middle macular venule(中黄斑静脈)Venula macularis media ちゅうおうはんじょうみゃく [A15_2_04_050_1]

Chambers of eyball(眼房)Camerae bulbi oculi がんぼう Feneis: 356 14a

[A15_2_06_001] →(眼房は角膜と水晶体および毛様体との間にある腔を眼房という。眼房は虹彩によって前後2つの腔に分けられ、前方にある腔を前眼房、後方にある腔を後眼房という。)

後眼房陥凹と小帯隙陥凹 大突起の前端部を通る1断面(Retzius,1894の原図にもとついて描く)

Aqueous humor(眼房水;房水)Humor aquosus がんぼうすい;ぼうすい Feneis: 356 17, 358 02

[A15_2_06_002] →(眼房水は単に房水ともいい、毛様体上皮より分泌される弱アルカリ性の漿液。小帯隙、後および前眼房を潤したのち、虹彩角膜角隙を経て強膜静脈洞に流入する。主に前毛様体静脈に吸収されると推定される。)

Anterior chamber of eyeball(前眼房(眼球の))Camera anterior bulbi oculi ぜんがんぼう(がんきゅうの) Feneis: 356 15

[A15_2_06_003] →(眼球の前眼房は前方の角膜内皮と後方の虹彩内皮および水晶体前面瞳孔部との間の凸-凹レンズ形の間隙。周縁は虹彩角膜角(小柱網)、中央部は瞳孔縁を経て後眼房に交通枝、150~190mm3の眼房水にみたされ、一定の眼圧(20~22mmHg)が保たれている。前眼房では、角膜に接する前部は体表に近く温度が低いのに対して、後部は温度が高い。このように前眼房内では前部と後部との間に温度差があるので、眼房水は体流によって循環する。組織発生学的には脈絡膜の組織間隙がとくに発達したものである。病理学的原因により眼圧が以上に更新する症状を緑内障(glaucoma)という。)

Iridocorneal angle(虹彩角膜角)Angulus iridocornealis こうさいかくまくかく Feneis: 356 16

[A15_2_06_004] →(虹彩角膜角は虹彩角膜角櫛状靱帯を有し、この靱帯の隙間を通って眼房水は強膜静脈洞へ入る。)

Posterior chamber of eyeball(後眼房(眼球の))Camera posterior bulbi oculi こうがんぼう(がんきゅうの) Feneis: 358 01

[A15_2_06_005] →(眼球の後眼房は前方は虹彩後面、後方は硝子体全面、外周は毛様体上皮面より境される水晶体を杆状にとりまく腔。毛様体小帯がこの腔を横切り、毛様体上皮から分泌される眼房水で満たされている。)

Postremal chamber of eyeball; Vitreous chamber(硝子体眼房)Camera postrema bulbi oculi; ; Camera vitreum しょうしたいがんぼう Feneis: 358 03

[A15_2_06_006] →(硝子体眼房は英独書では、単に硝子体とするものが多い。前方は硝子体後面および後眼房、後外方は網膜視部により境され、硝子体により占められる腔。硝子体は薄い硝子体被膜に包まれた無色透明のゼリー状の硝子体液と、直径から150Åの細線維を含む硝子体支質にわけられる。液は水、グルコース、ヒアルロン酸、アスコルビン三、Na、Pなどを含み、細線維は特殊な膠原線維(ボトレイン)である。屈折率は1.334)

Retrozonular space(小帯後隙;毛様小帯後隙)Spatium retrozonulare しょうたいこうげき;もうようしょうたいこうげき

[A15_2_06_007] →(毛様小帯後隙は眼球で硝子体のまで毛様小帯の後ろの空間。)

 

Vitreous body(硝子体)Corpus vitreum しょうしたい Feneis: 358 04

[A15_2_06_008] →(硝子体は薄い硝子体被膜に包まれた無色透明のゼリー状の硝子体液と、はなはだ微細な膠原線維様の細線維が豊富に含まれている。硝子体は網膜盲部である毛様体上皮とは直接接しておらず、両者の間には後眼房が介在する。眼房から眼杯が形成されて生じる硝子体眼房にとりこまれた間葉組織が、水晶体と虹彩・網様体により封じ込められたものである。本来虹彩支質を経て脈絡膜につづき、眼球血管膜の一環をなしていた。胎生期には網膜中心動脈の終末枝(硝子体動脈)が視神経乳頭から硝子体眼房の中心を貫いて水晶体被膜に達しその発生をになうが、妊娠末期に閉鎖吸収される。)

成人の硝子体線維

Hyaloid artery(硝子体動脈)Arteria hyoloidea しょうしたいどうみゃく Feneis: 358 05

[A15_2_06_009] →(硝子体動脈は眼動脈の枝で、眼杯茎裂および硝子体腔の中軸部を貫いて水晶体胞の後面に達する動脈を硝子体動脈という。この動脈は本来水晶体胞を養うもので、その末端は水晶体動脈となって分岐して、水晶体胞後面で水晶体血管膜の毛細血管網につながっている。やがてこの動脈が硝子体腔に侵入する部位から眼杯内板を養う枝が出る。胎生後期になると硝子体腔の中軸部を貫いた本来の硝子体動脈は退化・消失し、眼杯内板(網膜)に分布する枝のみが残って網膜中心動脈とよばれるようになる。)

Hyaloid canal(硝子体管)Canalis hyoloideus しょうしたいかんCloquet's canal; Stiling's canal Feneis: 358 06

[A15_2_06_010] →(硝子体管は眼杯内板と水晶体胞で囲まれた硝子体腔は発生が進むにつれて拡大し、眼杯内板(網膜)から分泌されると考えられている無syくと梅井のゼリー様の物質(硝子体)で満たされている。この際、硝子体腔の中軸部を貫いている硝子体動脈のまわりに狭い空間を残す。この空間を硝子体管という。硝子体動脈が退化・消失した後も、この管はある器官存続する。)

Hyaloid fossa(硝子体窩)Fossa hyoloidea しょうしたいか Feneis: 358 07

[A15_2_06_011] →(硝子体窩は水晶体後面の凸面に対する硝子体前面の浅い陥凹。)

Vitreous membrane; Hyaloid membrane(硝子体膜)Membrana vitrea しょうしたいまく Feneis: 358 08

[A15_2_06_012] →(硝子体膜は硝子体の皮質にある細かい膠質線維の圧縮されたもの。以前は硝子体の周辺で被膜を形成するものとされていた。)

Vitreous stroma(硝子体支質)Stroma vitreum しょうしたいししつ Feneis: 358 09

[A15_2_06_013] →(硝子体支質は硝子体構造の繊細な枠組みで、硝子体体液の中に埋まっている、あるいは閉じこめられている。)

Vitreous humor(硝子体液)Humor vitreus しょうしたいえき Feneis: 358 09a

[A15_2_06_014] →(硝子体液は硝子体の液体成分。しばしば誤って硝子体と硝子体液を同じものとみなしてしまう。)

Lens(水晶体)Lens すいしょうたい Feneis: 358 10

[A15_2_05_001] →(水晶体は虹彩の後方、硝子体の前方に位置し、双凸面レンズ構造をもつ。赤道直径約9mm、水晶体軸(前、後極を結ぶ直線)3.7~4.4mm、前面弯曲度から8mm、後面弯曲度~6mm、屈折率1.36(中央部)~1.42(辺縁部)。水晶体は無色透明な水晶体包(前面で厚く、後面で薄い粘液多糖体層で、水晶体上皮の基底膜が発達したもの)におおわれる水晶体質よりなる。水晶体質はより軟らかい上皮と硬い核に分かれやすく、胎児では雌で水晶体包に切れ目をいれるとはじけるように裂ける。生体では前、後極から発する数本の水晶体放線がわずかに認められ、胎児では前後両面放線がわずかに認められ、胎児では前後両面に、たがいに120°に交わる3本の放線(前面逆Y字、後面正Y字形)を示す。水晶体の構成要素は水晶体線維で、発生初期の単層の水晶体胞の後壁の細胞のみが著しく長大化したものである。前面に層単層の水晶体上皮は水晶体胞前壁の原型を保つ。赤道より後面にいくにしたがい長細い六角形の水晶体線維の束へと移行する。胎児期の放線は水晶体線維束の付着点をなす中隔に一致し、前極からおこる線維は後面の赤道近くの最寄りの放線に、前面赤道近くの中隔よりおこる線維は後極へ向かう。水晶体線維は緊密かつ生前と配列するが、微絨毛を出して細い細胞管腔を確保し、水および代謝物質の移送路を形成する。生体の水晶体には血管の神経の分布が認められない。胎児の水晶体包は硝子体動脈により養われるが、妊娠末期に道動脈が閉鎖する。老年者では前後面の弯曲度が減って扁平となり、黄白色を帯びる傾向にある。この変化が進行したものを白内障cataractという。全体の25%を占める水晶体蛋白はα-およびβ-クリスタリンと不溶性アルブモイドよりなり、そのほかにグルタチン、ビタミンCなどが含まれる。)

水晶体の固定の様子を前方からみる 角膜とその近くの強膜および虹彩の部分を取り除いてある(×3)

 

いろいろな年令のヒトの水晶体を側方から見たところ(Quain) a 新生児, b 成人, . c 老人. 3 図とも前面を左にむけてある.

ヒトの水晶体の赤道部における水晶体線維

家兎の水晶体縁を通る経線方向の断面(Babuchin)

成人の水晶体の赤道面での断面(C. Rabl)

胎児と新生児において水晶体線維の走行と水晶体星の配列を示す模型図×7(Quainより) 図641は後面から,図642は前面から,図643は側面からみたところ.cは3図とも水晶体星の中心ならびに水晶体の前後極を示す.1から6までの数字は等しい間隔をもつ6本の水晶体線維を示し,それらの走行は3図を合せてみるとよく理解できる.

Lens substance(水晶体質)Substantia lentis すいしょうたいしつ Feneis: 358 11

[A15_2_05_002] →(水晶体質は水晶体上皮下にあり、水晶体核および皮質よりなる。屈折率約1.44-1.55。)

Cortex of lens; Lens cortex(水晶体皮質)Cortex lentis すいしょうたいひしつ Feneis: 358 12

[A15_2_05_003] →(高い含水量のため、やわらかい外層部。明確な境目なしに核へ移行する。(Feneis))

Nucleus of lens; Lens nucleus(水晶体核)Nucleus lentis すいしょうたいかく Feneis: 358 13

[A15_2_05_004] →(水分に乏しく、固い部分。(Feneis))

Lens fibres(水晶体線維)Fibrae lentis すいしょうたいせんい Feneis: 358 14

[A15_2_05_005] →(水晶体線維は水晶体上皮に相当する線維。細胞性の水晶体を形成し、直径2.5~12μm、長さ10mmに達す。)

Lens epithelium(水晶体上皮)Epithelium lentis すいしょうたいじょうひ Feneis: 358 15

[A15_2_05_006] →(水晶体上皮は水晶体前面にあり、水晶体赤道にまで達する上皮。発生学的には水晶体小胞の前壁上皮に由来する。)

Capsule of lens(水晶体包;水晶体被膜)Capsula lentis すいしょうたいほう;すいしょうたいひまく Feneis: 358 16

[A15_2_05_007] →(水晶体包は透明な15μmまでの厚さの被膜。上皮も含めて水晶体全面を被う。前極では後極よりも厚い。)

Anterior pole of lens(前極(水晶体の))Polus anterior lentis ぜんきょく(すいしょうたいの) Feneis: 358 17 [A15_2_05_008]

Posterior pole of lens(後極(水晶体の))Polus posterior lentis こうきょく(すいしょうたいの) Feneis: 358 18 [A15_2_05_009]

Anterior surface of lens(前面(水晶体の))Facies anterior lentis ぜんめん(すいしょうたいの) Feneis: 358 19

[A15_2_05_010] →(水晶体の前面は曲率半径8.3~10のゆるやかな面。)

Posterior surface of lens(後面(水晶体の))Facies posterior lentis こうめん(すいしょうたいの) Feneis: 358 20

[A15_2_05_011] →(水晶体の後面は曲率半径約6.5mmのつよくまがった面。)

Axis of lens(水晶体軸)Axis lentis すいしょうたいじく Feneis: 358 21

[A15_2_05_012] →(水晶体軸は水晶体の前・後極をむすんだ線。)

Equator of lens(水晶体赤道)Equator lentis すいしょうたいせきどう Feneis: 358 22 [A15_2_05_013]

Radii of lens(水晶体放線;水晶体星放線)Radii lentiium; Raddii stellarum lentis すいしょうたいほうせん;すいしょうたいせいほうせん Feneis: 358 23

[A15_2_05_014] →(3本に分かれた星状の縫合線。若年者にみられる。(Feneis))

Ciliary zonule(毛様体小帯;水晶体小帯)Zonula ciliaris; Apparatus suspensorius lentis もうようたいしょうたい;すいしょうたいしょうたいZinn, Zonule of Feneis: 358 24

[A15_2_05_015] →(チン小帯ともよばれる。水晶体被膜を毛様体突起に固定する索で、個々の線維を小帯線維という。毛様体突起の比較的後部よりおこる線維は、水晶体赤道の前方に、前方よりおこるものは、後方に付着する。したがって一部線維が交叉する。小帯線維の間に残る小帯隙を経て、後眼房から前眼房へ眼房水が移動する。ドイツの解剖学者Johann Gottifried Zinn (1727-1759)による。)

成人の水晶体小帯 経線状に切断(G. Retzius,1894)

Zonular fibres; Zonular fibers; Suspensory ligament of lens(小帯線維;水晶体の支持靱帯)Fibrae zonulares しょうたいせんい;すいしょうたいのしじじんたい Feneis: 358 25

[A15_2_05_016] →(赤道および前、後面へつく懸垂線維。反対側では毛様体の基底板へつく。(Feneis))

Zonular spaces(小帯隙)Spatia zonularia しょうたいげきHannover's canal, spaces; Petit, Canal of, Spaces of Feneis: 358 26

[A15_2_05_017] →(小帯線維間の眼房水の通る隙間。(Feneis))

Accessory visual structures(副眼器;副眼構造;眼球付属器)Structurae oculi accessoriae; Organa oculi accessoria ふくがんき;ふくがんこうぞう;がんきゅうふぞくき Feneis: 360 01

[A15_2_07_001] →(副眼器は視覚器のうち眼球および視神経の働きを助ける全ての器官。眼筋、涙腺と涙器、眼瞼、結膜、眉などをいう。これらを個別にあげて「副眼器」の用語を用いない英独書が多い。)

 

Extra-ocular muscles; Extrinsic muscles of eyeball(外眼筋;眼筋)Musculi externi bulbi oculi がいがんきん;がんきん

[A04_1_01_001] →(眼筋には、上眼瞼挙筋、上直筋、下直筋、内側直筋、下斜筋(以上は動眼神経支配)、上斜筋(滑車神経支配)、外側直筋(外転神経支配)がある。この7筋をとくに外眼筋とよび、毛様体筋および虹彩筋(内眼筋、いずれも自律神経支配)から区別することがある。他に眼窩筋(下眼窩裂にまたがる平滑筋)がある。)

両側の眼窩内の諸筋を上方からみる(9/10) 左側では上眼瞼挙筋の大部分が切除してある.

左の眼窩内の諸筋を左側からみる(9/10)

Orbitalis; Orbital muscle; Orbitalis muscle(眼窩筋)Musculus orbitalis がんかきんMueller's muscles Feneis: 360 03

[A15_2_07_009] →(ミュラー筋ともよばれる。眼球の毛様体内部にある輪状に走る平滑筋線維。ドイツの解剖学者Heinrich Franz Mueller (1820-1864)によって報告された。経線方向に走る平滑筋線維はブリュッケ筋Brucke's muscleという。)

Superior rectus muscle(上直筋;上眼球直筋)Musculus rectus superior; Musculus retus bulbi superior じょうちょくきん;じょうがんきゅうちょくきん Feneis: 360 04

[A15_2_07_010] →(上直筋は、眼球の上部を斜め外側に進んで眼球の周囲に達し、そこで角膜縁の後方約7-8mmの胸膜に停止腱が放射上に胸膜組織と絡まるように停止する。目の動き:視線を外側かつ上方に向ける。)

Inferior rectus muscle(下直筋;下眼球直筋)Musculus rectus inferior; Musculus rectus bulbi inferior かちょくきん;かがんきゅうちょくきん Feneis: 360 05

[A15_2_07_011] →(下直筋は眼球下部で上直筋と同じ方向性をもち、眼球下部の周囲に角膜縁の後方約6mmの胸膜に放射状に停止する。目の動き:視線を外側かつ下方に向ける。)

Medial rectus muscle(内側直筋;内側眼球直筋)Musculus rectus medialis; Musculus rectus bulbi medialis ないそくちょくきん;ないそくがんきゅうちょくきん Feneis: 360 06

[A15_2_07_012] →(内側直筋は眼球の鼻側および耳側を走り、その停止腱は角膜縁の後方約6mmの強膜に放射状に停止する。目の動き:視線を内側に向ける。)

Lateral rectus muscle(外側直筋;外側眼球直筋)Musculus rectus lateralis; Musculus rectus bulbi lateralis がいそくちょくきん;がいそくがんきゅうちょくきん Feneis: 360 07

[A15_2_07_013] →(外側直筋は眼球の鼻側および耳側を走り、その停止腱は角膜縁の後方約6mmの強膜に放射状に停止する。目の動き:視線を外側に向ける。)

Check ligament of lateral rectus muscles(外側直筋制動靱帯;外側直筋腱膜)Lacertus musculi recti lateralis bulbi がいそくちょくきんせいどうじんたい;がいそくちょくきんけんまく Feneis: 360 08

[A15_2_07_014] →(大翼近くにある外側直筋の起始腱。(Feneis))

Common tendinous ring of extra-ocular muscles; Common annular tendon(総腱輪(外眼筋の))Anulus tendineus communis そうけんりん(がいがんきんの)Zinn, Anulus of Feneis: 360 09

[A15_2_07_015] →(眼筋の4つの直筋群(内側直筋、外側直筋、上直筋、下直筋)は眼窩の後端から起こる。筋の起始腱は全体として視神経管のまわりで輪、すなわち総腱輪をつくる。各直筋は総腱輪から、それぞれ、眼窩の4壁(内側壁・外側壁・上壁・下壁)に沿って前進し、眼球の前半部(赤道より前方)につく。)

Superior oblique muscle(上斜筋;上眼球斜筋)Musculus obliquus superior; Musculus obliquus bulbi superior じょうしゃきん;じょうがんきゅうしゃきん Feneis: 360 10

[A15_2_07_016] →(上斜筋は眼窩傍結合組織すなわち視神経鞘と(おもに)蝶形骨体の結合組織である総腱輪の内側から起こる。上斜筋は眼窩錐体の内側直近の上を前方に走行する。眼球の縁で上斜筋の丸みのある腱は結合組織性の吊り索(滑車)を通過し鋭角で後方に曲がる。さらに上斜筋の腱は上直筋の下でこれと交差し眼球上後側頭部の強膜に停止する。目の動き:視線を内側かつ下方に向ける。)

Trochlea of superior oblique(滑車(上斜筋の))Trochlea (Musculi obliqui superioris bulbi) かっしゃ(じょうしゃきんの) Feneis: 360 11

[A15_2_07_017] →(上斜筋の滑車は線維軟骨よりなる短い、まがった管。このなかを上斜筋の腱が通る。内側眼窩壁についている(滑車棘)。(Feneis))

Tendon sheath of superior oblique; Tendinous sheath of superior oblique(上斜筋腱鞘;上斜筋鞘;上斜筋の滑液鞘)Vagina tendinis musculi obliqui superioris bulbi じょうしゃきんけんしょう;じょうしゃきんしょう;じょうしゃきんのかつえきしょう Feneis: 102 01, 360 12

[A15_2_07_018] →(上斜筋腱鞘は滑車部にある上斜筋の腱をいれる腱鞘)

Inferior oblique muscle(下斜筋;下眼球斜筋)Musculus obliquus inferior; Musculus obliquus bulbi inferior かしゃきん;かがんきゅうしゃきん Feneis: 360 13

[A15_2_07_019] →(下斜筋は眼窩口内側縁の後方の上顎骨に存在する前涙嚢稜から起こり眼窩下縁と並行に走る。下斜筋は停止部近くで扇のように後方へ放射状に広がり眼球の下後側頭部眼球赤道の強膜に停止する。目の動き:視線を内側かつ上方に向ける。)

Levator palpebrae superioris muscle(上眼瞼挙筋)Musculus levator palpebrae superioris じょうがんけんきょきん Feneis: 360 14

[A15_2_07_020] →(上眼瞼挙筋は視神経管の縁の総腱輪の外側で視神経鞘から起こり、眼窩上壁のすぐ下で前頭神経の下を通り上眼瞼にいく。上眼瞼挙筋の腱は分離して上眼瞼挙筋浅板と上眼瞼挙筋深板に分かれる。前者は上眼瞼中を縁に向かって進み、後者は上瞼板筋の平滑筋細胞を伴って上眼瞼の瞼板に付く。下瞼板筋は下眼瞼板と下結膜円蓋の間の下眼瞼に存在する平滑筋層である。)

ヒトの眼瞼と眼球前方部の中央矢状断 ×4(H. Virchowによる) A. a. 上瞼板動脈弓;A. i. 上眼瞼挙筋の深板;A. s. 同じく浅板;C. b. 眼球結膜;C. T. i., C. T. s. 眼球被膜;Fo. 上結膜円蓋;Fr. 前頭骨の骨膜;L. 上眼瞼挙筋;M. 上顎骨の骨膜;N. 前頭神経;Ob. 下斜筋;0. c.,0. i. 眼輪筋;0. m. 眼輪筋の辺縁部;0. P. i.,0. P. s. 眼輪筋の眼瞼部;O. t. i., O. t. s. 眼輪筋;Per. 眼窩骨膜;P. s. 下斜筋の鞘;Re. i., Re. s. 眼窩脂肪体. R. i. 下直筋の腱;R. s. 上直筋の腱;S. i., S. s. 眼窩隔膜;Sc, 強膜;T. i. 下眼瞼板;T. s. 上眼瞼板;V. 下斜筋の鞘.

上下の眼瞼板(右) 後方(内側)からみる.上眼瞼の縁に瞼板腺の開口が多数の点としてみられる.

左の眼窩の眼瞼板・上眼瞼挙筋の腱・上および下斜筋を前から剖出してある(9/10)

Superficial layer of levator palpebrae superioris(浅板(上眼瞼挙筋の))Lamina superficialis Musculuslevatoris palpebrae せんばん(じょうがんけんきょきんの) Feneis: 360 15

[A15_2_07_021] →(上眼瞼挙筋の上の板。瞼と眼輪筋の間を通り、上眼瞼の皮膚に終わる。この板は幅広いので、外側では眼窩壁まで達する。(Feneis))

Deep layer of levator palpebrae superioris(深板(上眼瞼挙筋の))Lamina profunda Musculuslevatoris palpebrae superioris しんばん(じょうがんけんきょきんの) Feneis: 360 16

[A15_2_07_022] →(瞼板の上縁および前表面へつく。(Feneis))

Orbital fasciae(眼窩筋膜)Fasciae orbitales がんかきんまく Feneis: 360 17 [A15_2_07_022_1]

Periorbita(眼窩骨膜)Periorbita がんかこつまく Feneis: 360 18

[A15_2_07_002] →(眼窩の壁をつくる骨を被う骨膜は眼窩骨膜といわれ、骨との結合はゆるく、頭蓋下面の骨膜につづく。また上顎窩裂や視神経管では頭蓋腔の脳硬膜に連なる。)

Orbital septum; Palpebral fascia(眼窩隔膜;眼瞼筋膜)Septum orbitale がんかかくまく;がんけんきんまく Feneis: 360 19

[A15_2_07_003] →(眼窩隔膜は眼窩の中の脂肪が前へ飛び出してくるのを防ぐ結合組織性の仕切りである。顔面骨膜と眼窩骨膜から線維を受け、眼窩口をせばめるとともに眼窩縁と上・下瞼板を結合している弁状の線維組織。とくに内眼角と外眼角でこれが発達し、内側、外側眼瞼靱帯という。前者は涙嚢を固定している。眼窩を経て顔面や頭皮へ向かう脈管神経は眼窩隔膜を貫く。)

Muscular fasciae of eyeball(眼筋筋膜;筋膜(眼球の))Fasciae musculares bulbi がんきんきんまく;きんまく(がんきゅうの) Feneis: 360 20

[A15_2_07_008] →(眼筋筋膜は6本の眼筋の腱および腹膜を被う眼球鞘の嚢。眼瞼筋膜のうち、上斜筋膜の延長部は上眼瞼挙筋に、下斜筋膜の延長部は下瞼板に付着する。内および外側直筋膜の延長部は、それぞれ涙骨と頬骨に付着し、内・外側抑制靱帯または内・ガイソクしたいと呼ばれる。)

左の眼窩の眼窩隔膜を前方からみる.(9/10)

Fascial sheath of eyeball(眼球鞘;テノン嚢)Vagina bulbi; Capsula bulbi がんきゅうしょう;てのんのうTenon's capsule Feneis: 360 21

[A15_2_07_004] →(テノン鞘ともいう。眼球後面にある線維膜で後方部は視神経外鞘の周囲をおおって視神経管に達し、前方は赤道を越えて各眼筋停止部から眼筋筋膜に移行する。眼球鞘眼球との間には両者の間の強膜外隙(Tenon隙)を関節腔とする球状関節が形成され、滑らかな眼球運動を助けている。眼筋筋膜のうち、上斜筋膜の延長部は下瞼板に付着する。内および外側直筋膜の延長部は、それぞれ涙骨と頬骨に付着し、内・外側抑制靱帯または内・外側支帯とよばれる。眼球下面では、眼球鞘が肥厚し、とくに眼球懸架靱帯とよばれることがある。フランスの病理学者で眼科医のJaques Rene Tenon (1724-1816)の名を冠する。1806年に記載されている。)

眼球被膜(テノン被膜) 左の眼窩のものを眼球をとり除いて示す.(9/10)

Suspensory ligament of eyeball(眼球提靱帯;眼球提索)Ligamentum suspensorium bulbi がんきゅうていじんたい;がんきゅうていさくLockwood's ligament

[A15_2_07_005] →(ロックウッド靱帯ともいう。眼球内の、目を支持する眼球被包の下方の肥厚。外側・内側眼窩縁間にのび、外側・内側頰靱帯を含む。)

Episcleral space(強膜外隙)Spatium episclerale きょうまくがいげき Feneis: 360 22

[A15_2_07_006] →(強膜外鞘は眼球と眼球鞘の間にある長いやわらかい結合組織線維のまじった隙間で滑らかな眼球運動を助けている。)

Retrobulbar fat; Orbital fat body(眼窩脂肪体)Corpus adiposum orbitae がんかしぼうたい Feneis: 360 23

[A15_2_07_007] →(眼球は眼窩のなかで眼筋・血管・神経などとともに脂肪組織内に埋まっている。この脂肪組織を眼窩脂肪体という。)

Eyebrow(眉)Supercilium まゆ Feneis: 362 01

[A15_2_07_023] →(眉はほぼ眼窩上縁に沿う弓状の皮膚の高まりを眉といい、その表面の毛を眉毛という。しかし「眉」を両方に用いることが多い。)

Eyelids(眼瞼;マブタ)Palpebrae がんけん;まぶた Feneis: 362 02

[A15_2_07_024] →(眼瞼(まぶた)は、上・下2枚よりなる眼の蓋で、眼球前面を外傷からまもる。上眼瞼が下眼瞼より大きく上眼瞼挙筋をもつので可動範囲が大きい。眼瞼が開いているとき、その空間を眼瞼裂といい、まじりと目頭の上・下移行部を外・内側眼瞼交連という。外側眼瞼交連はより鋭角的で、眼球結膜面に密接している。内側眼瞼交連は鼻方へ数mm引き寄せられている。そのために生じる上・下眼瞼と眼球結膜との間の三角錐形の空間を皮膚の小島(涙丘)が満たし、その周辺を涙湖という。前眼瞼縁に睫毛がある。①眼瞼の構造は眼瞼前面から後面へ向かい皮膚、皮下組織、眼輪筋、瞼板、瞼板腺、結膜などの構造があり、上眼瞼には、上眼瞼挙筋腱が加わる。皮膚は全身中ここが最も薄く、後眼瞼縁で眼瞼結膜に移行する。皮下組織は脂肪が少ない。上の前眼瞼縁に平行な上眼瞼溝が著しい物を二重まぶた、溝がないかあっても上野皮膚に覆い隠されている物を一重まぶたという。めがしらの上眼瞼の皮膚が内側交連を越えてつくるヒダを蒙古ヒダ(瞼鼻ヒダ)といい、日本人などモンゴロイド人種の特徴とされる。②瞼板は楕円形の密線維結合組織板。上瞼板は、幅25mm、縦径10mm、下瞼板は幅25mm、縦径5mm。前縁は厚く直線的、後縁は薄く眼窩中隔を介して眼窩骨膜につづく。③瞼板筋は上眼瞼挙筋腱から上瞼板筋(Muller筋)が分かれ、瞼板上縁に付着する。下結膜円蓋下結合組織または下直筋から弱い下瞼板筋が分かれ、ともに交感神経支配の平滑筋で眼瞼裂の開き具合に関係すると考えられる。眼瞼を固く閉じるときには、眼輪筋の働きも重要である。瞬目(マバタキ)blinking, nictitationは眼輪筋の眼瞼部の収縮によって起こる運動で、1分間に約10~25回みられる。)

右眼の眼瞼の瞼板腺 後面(結膜面)からみる.(×4) 腺の内容をスダンIIIで染めてある.

上眼瞼の結膜の断面 瞼板部の上部.(H. Virchow)

下眼瞼の結膜の断面(H. Virchow) C 毛細管, E 上皮, P 形質細胞.

Superior eyelid; Upper eyelid(上眼瞼;ウワマブタ)Palpebra superior じょうがんけん;うわまぶた Feneis: 362 03 [A15_2_07_025]

Inferior eyelid; Lower eyelid(下眼瞼;シタマブタ)Palpebra inferior かがんけん;したまぶた Feneis: 362 04 [A15_2_07_026]

Anterior surface of eyelid(眼瞼前面;眼瞼皮膚面)Facies anterior palpebrae; Facies cutanea palpebrae がんけんぜんめん;がんけんひふめん Feneis: 362 05 [A15_2_07_027]

Palpebronasal fold; Medial canthic fold(瞼鼻ヒダ;蒙古ヒダ)Plica palpebronasalis けんびひだ;もうこひだ Feneis: 362 06

[A15_2_07_028] →(眼瞼ヒダは蒙古ヒダ。外側鼻壁へ上眼瞼の被いがつづいたもの。内眼角を隠す。)

Posterior surface of eyelid(眼瞼後面;眼瞼結膜面)Facies posterior palpebrae; Facies conjunctivalis palpebrae がんけんこうめん;がんけんけつまくめん Feneis: 362 07

[A15_2_07_029] →(眼瞼後面は杯細胞の混在する結膜上皮で被われる。)

Palpebral fissure(眼瞼裂;眼裂)Rima palpebrarum がんけんれつ;がんれつ Feneis: 362 08

[A15_2_07_030] →(眼瞼裂は上下眼瞼縁の間。)

左の眼瞼裂 目を閉じたところ(×1)

左の眼瞼裂 目を開いたところ(×1)

Lateral palpebral commissure(外側眼瞼交連)Commissura lateralis palpebrarum がいそくがんけんこうれん Feneis: 362 09

[A15_2_07_031] →(外側眼瞼交連は外眼角部での上眼瞼の下限瞼への移行。)

Medial palpebral commissure(内側眼瞼交連)Commissura medialis palpebrarum ないそくがんけんこうれん Feneis: 362 10

[A15_2_07_032] →(内側眼瞼交連は内眼角部での上眼瞼の下眼瞼への移行。)

Lateral angle of eye(外眼角;メジリ)Angulus oculi lateralis; Angulus oculi temporalis がいがんかく;めじり Feneis: 362 11

[A15_2_07_033] →(眼裂の外側端でもある。(Feneis))

Medial angle of eye(内眼角;メガシラ)Angulus oculi medialis; Angulus oculi nasalis ないがんかく;めがしら Feneis: 362 12

[A15_2_07_034] →(内眼角は眼裂の内側端でもある。まるく弯出し涙湖をなす。)

Anterior palpebral margin(前眼瞼縁)Limbus anterior palpebrae ぜんがんけんえん Feneis: 362 13

[A15_2_07_035] →(前眼瞼縁は眼瞼皮膚に対する眼瞼縁。)

Posterior palpebral margin(後眼瞼縁)Limbus posterior palpebrae こうがんけんえん Feneis: 362 14

[A15_2_07_036] →(結膜に対する眼瞼縁。(Feneis))

Eyelash(睫毛;マツゲ)Cilia しょうもう;まつげ Feneis: 362 15

[A15_2_07_037] →(前眼瞼縁に近く。3~4列生える。(Feneis))

Superior tarsus(上瞼板)Tarsus superior じょうけんばん Feneis: 362 16

[A15_2_07_038] →(上瞼板は高さ約10mmあり、皿状に曲がっている。かたい縺れた膠原線維性の結合組織よりなる。瞼板腺を含む。上眼瞼を広く反転できるのは、ここに上眼板があるからである。とくに日本人では、眼輪筋と瞼板との間に疎性結合組織と脂肪組織があって内輪筋と瞼板とはゆるく結合するので、眼瞼を反転しやすい。上瞼板と皮膚との結合が粗であると一重瞼であるが、結合が密でつよいと二重瞼となる。)

Inferior tarsus(下瞼板)Tarsus inferior かけんばん Feneis: 362 17

[A15_2_07_039] →(下瞼板は高さ約5mmあり、皿状に曲がっている。かたい縺れた膠原線維性の結合組織よりなる。瞼板腺を含む。(Feneis))

Medial palpebral ligament(内側眼瞼靱帯)Ligamentum palpebrale mediale ないそくがんけんじんたい Feneis: 362 18

[A15_2_07_041] →(内側眼瞼交連と内側眼窩壁との間の結合組織性結合。涙腺窩の直前にある。(Feneis))

Lateral palpebral raphe(外側眼瞼縫線)Raphe palpebralis lateralis がいそくがんけんほうせん Feneis: 362 19

[A15_2_07_041_1] →(外眼筋の外側部分の中にみられる幅の狭い線維帯で、上下眼瞼の間を行き交う結合組織線維からなる。)

Lateral palpebral ligament(外側眼瞼靱帯)Ligamentum palpebrale laterale がいそくがんけんじんたい Feneis: 362 20

[A15_2_07_040] →(外側眼瞼靱帯は眼窩隔膜後方で、外側眼瞼交連外側眼窩壁へむすぶ靱帯。)

Tarsal glands(瞼板腺;マイボーム腺)Glandulae tarsales がんけんせん;まいぼーむせんMeibomian glands Feneis: 362 21

[A15_2_07_042] →(マイボーム腺ともよばれる。上・下瞼板に埋没している皮脂腺で、結膜の間に、上眼瞼に30~40、下眼瞼に20~30個の多房状腺があり、後眼瞼縁に導管口が開く。特殊化した皮脂腺で眼瞼縁を保護し、結膜面をうるおす涙の露出を防ぐ。眼瞼を反転すると平行に並んだ真珠首飾り状の腺体を結膜を透かしてみることができる。瞼板腺の急性化膿性炎症を内麦粒腫、慢性化膿性炎症を霰粒種という。ドイツの解剖学者Heinrich Meibom (1638-1700)によって、1666年に記載された。が、第一発見者は、Casserius (1609)であるという。)

Ciliary glands; Moll gland(睫毛腺;モル腺)Glandulae ciliares しょうもうせん;もるせんMoll's glands Feneis: 364 06

[A15_2_07_043] →(モル腺ともよばれる。眼瞼縁にあるアポクリン腺。睫毛の毛包または眼瞼縁へ開口する。オランダの眼科医Jacob Antonius Moll (1832-1914)によって記載された。)

Sebaceous glands of eyelids(脂腺(眼瞼の))Glandulae sebeceae しせん(がんけんの)Zeis, Glands of Feneis: 364 07

[A15_2_07_044] →(ツァイス腺とも呼ばれる。睫毛の毛包へ開口する小さい皮脂腺。アポクリン線管の一種である睫毛線(モル腺Moll's glands)とは異なる。この腺の急性化膿性炎症がいわゆるモノモライ(外麦粒腫)である。ドイツの眼科医Eduard Zeis (1807-1868)によって報告された。)

Superior tarsal muscle(上瞼板筋)Musculus tarsalis superior じょうけんばんきんMueller's muscles Feneis: 362 22

[A15_2_07_045] →(ミュラー筋ともよばれる。上瞼板筋は眼球の毛様体内部にある輪状に走る平滑筋線維。上眼瞼挙筋腱膜の浅板。眼輪筋の眼瞼部(睫毛筋)の後面と上眼瞼皮下に終わる。ドイツの解剖学者Heinrich Franz Mueller (1820-1864)によって報告された。経線方向に走る平滑筋線維はブリュッケ筋Brucke's muscleという。)

Inferior tarsal muscle(下瞼板筋)Musculus tarsalis inferior かけんばんきん Feneis: 362 23

[A15_2_07_046] →(下瞼板筋は下結膜円蓋と下瞼板の間にある平滑筋。)

Conjunctiva(結膜)Tunica conjunctiva けつまく Feneis: 362 24

[A15_2_07_047] →(結膜は上・下眼瞼の内面(眼瞼結膜)と眼球前面(眼球結膜)をおおう粘膜である。眼球結膜は厚く不透明で血管に富み、表面に多数の乳頭をもつ。後眼瞼縁で結膜は眼瞼線分泌間の上皮にめがしらの半月ヒダの結膜は涙湖の底をつくり、涙点、涙管を経て鼻涙管粘膜上皮につづく。上眼瞼外側核の円蓋には6~12本の涙腺管が開く。上・下の結膜円蓋を経て、眼瞼結膜が眼球結膜に移行する。眼球結膜はゆるやかに強膜表面をおおい、薄く透明で乳頭を欠き血管分布に乏しく結膜輪で角膜上皮に移行する。円蓋の結膜には小形の杆状胞状腺(結膜腺、クラウゼ線)がある。)

Plica semilunaris conjunctivae(結膜半月ヒダ)Plica semilunaris conjunctivae けつまくはんげつひだ Feneis: 362 25

[A15_2_07_048] →(結膜半月ヒダは眼瞼結膜によってつくられる内眼角における上および下結膜円蓋の間の結合ヒダ。 多くの動物にみられる結膜粘膜にひだ。通常急速時には部分的に目の背部に隠れるが、鳥類にみられるように、角膜を清掃するためのウインク様の動作をすると、広がって角膜の一部または全体を覆う。)

結膜半月ヒダと涙丘 1婦人のものを水平断 (H. Virchowによる) B 眼球結膜,P 半月ヒダ,Ga 管状腺,Gs脂腺,J リンパ性浸潤,C 涙丘

Lacrimal caruncle(涙丘)Caruncula lacrimalis るいきゅう Feneis: 362 26

[A15_2_07_049] →(涙丘はめがしらにある米粒大の隆起。その周辺の陥凹部を涙湖という。組織学的には皮膚に似ている。)

Bulbar conjunctiva(眼球結膜)Tunica conjunctiva bulbi がんきゅうけっせつ Feneis: 364 01

[A15_2_07_050] →(眼球結膜は結膜のうち眼球を被う部分。杯細胞に乏しい角化していない重層扁平上皮である。固有層は疎で細胞に乏しく弾性線維を含む。)

Palpebral conjunctiva(眼瞼結膜)Tunica conjunctiva palpebrarum がんけんけつまく Feneis: 364 02

[A15_2_07_051] →(眼瞼結膜は眼瞼後面を被う結膜である。杯細胞をもつ2層または重層の円柱上皮で被われ、血管に富む疎性の固有層を伴う。)

Superior conjunctival fornix(上結膜円蓋)Fornix conjunctivae superior じょうけつまくえんがい Feneis: 364 03

[A15_2_07_052] →(眼球結膜が上眼瞼の上後方で、眼瞼結膜へと折り変えるところ。(Feneis))

Inferior conjunctival fornix(下結膜円蓋)Fornix conjunctivae inferior かけつまくえんがい Feneis: 364 04

[A15_2_07_053] →(眼球結膜が下眼瞼後方で、眼瞼結膜へと折り変えるところ。(Feneis))

Conjunctival sac(結膜嚢)Saccus conjunctivalis けつまくのう Feneis: 364 05

[A15_2_07_054] →(結膜嚢は眼瞼結膜と眼球結膜の間の間隙。上・下方はそれぞれ結膜円蓋であり、涙の薄層により閉ざされている。)

Conjunctival glands(結膜腺)Glandulae conjunctivales けつまくせん Feneis: 364 08

[A15_2_07_055] →(結膜腺は結膜円蓋にある副涙腺。)

Lacrimal apparatus; lacrimal organ(涙器)Apparatus lacrimalis るいき Feneis: 364 09

[A15_2_07_056] →(涙器は涙腺、涙湖、涙小管、涙嚢、鼻涙管からなる。「なみだ」は角膜上皮を正常に保つために不可欠のもので、もしなんらかの原因で涙の分泌が止まると、角膜上皮は速やかに乾燥して白濁し、その眼は視力を失う。)

右側の涙器

Lacrimal gland(涙腺)Glandula lacrimalis るいせん Feneis: 364 10

[A15_2_07_057] →(涙腺は眼窩上壁の前外側部に存在する扁平な小指頭大の線で、6~12本の導管によって上結膜円蓋の外側部に開口する。腺は漿液性の管状胞腺で、分泌部は比較的広い腺腔を囲む1層の円柱上皮よりなる。導線ははじめ単層立方上皮、太くなると2層の円柱上皮よりなる。涙腺には線条導管や介在導管はみられない。)

ヒトの涙腺の切片

Orbital part of lacrimal gland(眼窩部(涙腺の))Pars orbitalis (Glandulae lacrimalis) がんかぶ(るいせんの) Feneis: 364 11

[A15_2_07_058] →(涙腺は二つの部分からなり、比較的小さい下の部分(涙腺の眼瞼部)が、上眼瞼挙筋の腱膜よりも表層にあり、大きい上の部分(涙腺の眼窩部)はこの上眼瞼挙筋の腱膜の裏側(下層)に存在する。)

Palpebral part of lacrimal gland(眼瞼部(涙腺の))Pars palpebralis (Glandulae lacrimalis) がんけんぶ(るいせんの) Feneis: 364 12

[A15_2_07_059] →(上眼瞼挙筋の腱の下にある小さい部分。(Feneis))

Excretory ducts of lacrimal gland(排出管(涙腺の))Ductuli excretorii Glandulae lacrimalis はいしゅつかん(るいせんの) Feneis: 364 13

[A15_2_07_060] →(涙腺の排出管は6~14本ある排出管。上結膜円蓋へ開く。)

Accessory lacrimal glands(副涙腺)Glandulae lacrimales accessoriae ふくるいせんKrause, Glands of; Wolfring, Glands of Feneis: 364 14

[A15_2_07_061] →(副涙腺は付加的に散在する涙腺。とくに上結膜円蓋近くに多い。)

Lacrimal pathway(涙河)Rivus lacrimalis るいか Feneis: 364 15

[A15_2_07_062] →(涙河は閉じた眼瞼縁と眼球の間の溝。)

Lacus lacrimalis; Lacrimal lake(涙湖)Lacus lacrimalis るいこ Feneis: 364 16

[A15_2_07_063] →(涙湖は内眼角における涙丘周囲の間隙。)

Lacrimal papilla(涙乳頭)Papilla lacrimalis るいにゅうとう Feneis: 364 17

[A15_2_07_064] →(上および下眼瞼の内縁の内側にある小さな円錐状の高まり。尖端に涙点がある。(Feneis))

Lacrimal punctum(涙点)Punctum lacrimale; Punctum lacrimale inferius et superius るいてん Feneis: 364 18

[A15_2_07_065] →(涙点は上および下眼瞼縁の内側交連の近くにある涙管の細く丸い涙排出系の始まりの開口部。)

Lacrimal canaliculus; Lacrimal ducts(涙小管)Canaliculus lacrimalis るいしょうかん Feneis: 364 19

[A15_2_07_066] →(涙小管は内側眼瞼交連付近の上下の各眼瞼辺縁にある涙点から始まり、内側に横走し他側の涙小管とともに涙嚢に流れ込む曲がったそれぞれ1cm程度の管。)

Ampulla of lacrimal canaliculus(涙小管膨大)Ampulla canaliculi lacrimalis るいしょうかんぼうだい Feneis: 364 20

[A15_2_07_067] →(涙小管膨大は小管のまがり目で、わずかに膨大した部分。)

Lacrimal sac(涙嚢)Saccus lacrimalis るいのう Feneis: 364 21

[A15_2_07_068] →(涙嚢は涙嚢窩中にあり、長さ約1.5cm、幅約0.5cm。下は直接鼻涙管へ移行する。(Feneis))

Fornix of lacrimal sac(涙嚢円蓋)Fornix sacci lacrimalis るいのうえんがいMaier, Sinus of Feneis: 364 22

[A15_2_07_069] →(涙嚢円蓋は涙嚢の上方の円天井様の腔。)

Nasolacrimal duct; Lacrimal ducts(鼻涙管)Ductus nasolacrimalis びるいかん Feneis: 364 23

[A15_2_07_070] →(鼻涙管は涙嚢より直接に始まり、1.2~2.4cmの長さで、鼻涙管中を通り、下鼻道前上部に開く通路で涙を鼻腔に運ぶ管。その扁平になった管腔はところどころに繊毛をもった2層から重層の円柱上皮ににより被われる。)

Lacrimal fold(鼻涙管ヒダ)Plica lacrimalis びるいかんひだHasner's valve Feneis: 364 24

[A15_2_07_071] →(ハスネル弁ともよばれる。外鼻孔から3~3.5cm後方、下鼻道にある鼻涙管開口部の粘膜ヒダ。チェコスロバキアの眼科医 Joseph von Hasner (1819-1892)の名を冠するが、他にもBianchi's valveなど多くの呼称がある。)

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