by 船戸和弥

片山正輝

 

funalogo.gif (2604 バイト)

 

更新日: 12/05/28

矢状断面での大大脳静脈

上図の番号もしくはラベルをクリックしてください。  

静脈系

 

01: Great cerebral vein 大大脳静脈 (V. magna cerebri) Galen, Vein of

 ガレン大静脈ともよばれる。大大脳静脈は脳梁膨大部の下方で、両側の内大脳静脈が合流して始まり、脳梁膨大部の近くで後方および上方に走行し、大脳鎌と小脳テントの結合部の前方に流し直静脈洞となる。大大脳静脈の全長は平均12mm(範囲8~25mm)と短いが、非常に重要である。大大脳静脈には、1対の脳底内大脳静脈、1対の内大脳静脈、1対の脳底内大脳静脈、1対の脳底静脈、1対の後頭静脈および1対の後脳梁静脈が注ぎ込む。ローマ在住のギリシャの医師Claudius Galen (130-201 ?)による。

 大大脳静脈はもっとも静脈が集中する場所の一つであるだけでなく、周辺に多くの動脈も存在することより手術操作に際しては慎重でなければならない。同部に発生するvein of Galen aneuysmに大して静脈洞交会を経由するtranstorcular embolizationも手術に変わる方法として行われている。


02: Internal cerebral veins 内大脳静脈 (Vv. internae cerebri)

 内大脳静脈は、第三脳室蓋板の脈絡組織内(第三脳室脈絡組織)の正中線近くを走る。この静脈は、室間孔の部位から視床の上内側面を後方に走り、中脳蓋の吻側部のクモ膜下層内で、左右の内大脳静脈が合流して代々脳静脈になる。内大脳静脈には、左右それぞれに次の静脈がはいってくる。すなわち①視床線条体静脈、②脈絡叢静脈、③透明中隔静脈、④視床上部静脈、⑤側脳室静脈である。


03: Anterior vein of septum pellucidum 前透明中隔静脈;透明中隔前静脈 (V. anterior septi pellucidi)

 前透明中隔静脈は前頭葉髄質、脳梁膝など流入域から透明中隔をへて視床線条体静脈へ。


04: Posterior vein of septum pellucidum 後透明中隔静脈;透明中隔後静脈 (V. posterior septi pellucidi)

 後透明中隔静脈は側脳室蓋から起こり、多くは内大脳静脈にそそぐ。


05: V. posterior corporis callosi; V. dorsalis corporis callosi (背側脳梁静脈;後脳梁静脈;脳梁の後静脈;脳梁の背側静脈 Posterior vein of corpus callosum; Dorsal vein of corpus callosum)

 背側脳梁静脈は脳梁上面から血液を集め、後方に走って大大脳静脈に注ぐ静脈。後脳梁静脈は脳梁後部の下から血液を集め、後方に走って大大脳静脈に注ぐ静脈。脳外科領域では背側脳梁静脈と後脳梁静脈を同義語として扱われている模様なのでここでは併記している。


06: Posterior vein of corpus callosum; Dorsal vein of corpus callosum 背側脳梁静脈;後脳梁静脈;脳梁の後静脈;脳梁の背側静脈 (V. posterior corporis callosi; V. dorsalis corporis callosi)

 背側脳梁静脈は脳梁上面から血液を集め、後方に走って大大脳静脈に注ぐ静脈。後脳梁静脈は脳梁後部の下から血液を集め、後方に走って大大脳静脈に注ぐ静脈。脳外科領域では背側脳梁静脈と後脳梁静脈を同義語として扱われている模様なのでここでは併記している。


07: Pontine veins 橋静脈 (Vv. pontis)

 橋静脈は橋の表面を横走する数本の静脈で錐体静脈に注ぐ。前内側橋静脈、前外側橋静脈、横橋静脈、外側橋静脈からなる。


08: Veins of medulla oblongata 延髄静脈 (Vv. medullae oblongatae)

 延髄静脈は延髄から血液を集める静脈で、前脊髄静脈や錐体静脈に注ぐ。前内側延髄静脈、前外側延髄静脈、横延髄静脈、背側延髄静脈、後内側延髄静脈が含まれる。


09: Vein of lateral recess of fourth ventricle 第四脳室外側陥凹静脈 (V. reccessus lateralis ventriculi quarti)

 第四脳室外側陥凹静脈は小脳扁桃より発生し、第四脳室外側陥凹の後下方に位置し、片葉flocculusの下方の前下方に走行し、錐体静脈または直接上および下錐体静脈洞に還流する。実際には外側裂内を走行するのではなく、片葉近傍の小脳延髄裂を走行するので、小脳延髄裂静脈vein of cerebellomedullary fissureと呼ばれている。


10: Superior vein of vermis 上虫部静脈;虫部上静脈;上小脳虫部静脈 (V. superior vermis)

 上虫部静脈は小脳虫部の上方部分とそれに隣接する小脳よりの還流をうけ、大大脳静脈vein of Galenに注ぐ。大大脳静脈に還流する前に、小脳中心前静脈よりも鮮明に造影される場合が多く、また側面像においては小脳中心前静脈の前方より大大脳静脈に流入する。


11: Inferior vein of vermis 下虫部静脈;虫部下静脈;下小脳虫部静脈 (V. inferior vermis)

 下虫部静脈は天幕静脈洞還流群でもっとも重要な静脈で、小脳虫部下部、その近傍の小脳半球と小脳扁桃部分を還流する。この静脈は左右対をなして正中部を走行し、静脈洞交会、横静脈洞あるいは直静脈洞に、直接又は天幕静脈洞tentorial sinusを介して観入する。稀に、この静脈が走行中に相互に吻合し、1本の下虫部静脈となることがある。


12: Inferior veins of cerebellar hemisphere 下小脳半球静脈 (Vv. inferiores cerebelli)

 下小脳半球静脈は小脳半球の下部の血液を還流し、上方に走行し、おもに横静脈洞に直接または天幕静脈洞tentorial sinusを介して流入する。この静脈は小脳後下面の上内側面で最も発達しており、それらは静脈交会洞、天幕静脈洞、または下虫部静脈に合流している。


13: Precentral cerebellar vein 小脳中心前静脈 (V. precentralis cerebelli)

 小脳中心前静脈は中脳背面と小脳前面で、小舌lingulaと中心小葉の間にある小脳中心前裂内を走行し、その近傍より血液を受ける。この裂内では第四脳室上部(屋根)と平行して前方に走行し、その後、下丘の下縁で後上方に転じ、虫部山頂の前に出て、さらに上方に走行し、大大脳静脈槽にはいり、大大脳静脈に合流する。


14: Petrosal vein 錐体静脈;岩様部静脈 (V. petrosa)

 錐体静脈は小脳脳幹部前面(錐体面)における最大の静脈で、小脳半球の前面又は外側部にある静脈群のほとんどの静脈群より血流を受けている。長さは2~2.5cmで、片葉flocculus近傍より三叉神経の背側にそって前上方に走行し、上または下錐体静脈洞に還流する。

 後頭下開頭による小脳橋角部腫瘍の際に遭遇することが多く、腫瘍の後方に隠れて存在するため、損傷する危険性があり、注意が必要である。また三叉神経を圧迫し、三叉神経痛の責任血管となることがある。


15: Pontomesencephalic vein 橋中脳静脈 (V. pontomesencephalica)

 前橋中脳静脈は視床下部、視交叉、視索、漏斗からの静脈が集合して視交叉槽の天寿を形成する部分から始まり、正中近傍を後走し脚間窩に至り、脚間窩の最深部付近を走行する。そして、橋腹側正中の前面を下行し、延髄前面に向かう。この前橋中脳静脈の特徴的な走行は①視交叉槽の天井、②脚間窩の位置、③橋および延髄前面正中を同定する上で重要である。

 


   
SEO [PR] !uO z[y[WJ Cu