一般解剖学

系統解剖学



最終更新日: 12/05/14

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Ossa; Systema skeletale(骨、骨格系)Bones 

Skeleton thoracis(胸郭骨)Thoracic skeleton きょうかくこつ [A02.3.00.001] Feneis: 006 01

胸郭は12個の胸椎、12対の肋骨および1個の胸骨からできている。

Costae [I-XII](肋骨、第一肋骨~第十二肋骨)Ribs [I-XII] ろくこつ、だいいちろくこつ~だいいちにろくこつ [A02.3.01.001] Feneis: 006 02

 肋骨という名前は、骨質からなる肋硬骨と軟骨質からなる肋軟骨の総称である。肋骨は扁平長骨で、12対あり、後方で胸椎と連結して胸郭を構成する。軟骨性骨として発生するが、前方の小部分が肋軟骨として軟骨のまま残る。第一~七肋骨は前端が胸骨外側縁と連結しているが、第八から十二肋骨は胸骨に達していない。前者が真肋、後者が仮肋である。仮肋のうち第八~第十肋骨では、肋軟骨が上位の肋軟骨と結合して肋骨弓を形成する。第十一・第十二肋骨は自由端で終わる(浮遊肋骨)。肋骨は後上方から前下方へ向かい、胸骨近くで角をなし、上方へ向かう。第一・第二肋骨では肋軟骨との境界部で、他の肋骨では肋軟骨部で曲がっている。長さは第一肋骨~第七肋骨まで増加し、第八肋骨以下では減少する。胸椎体と連結する膨大した部分が肋骨頭で、肋骨頭関節面がある。第二~第十肋骨では水平に走る肋骨頭稜によって、上位胸椎体の下肋骨窩に対する上方の小さな関節面と、各肋骨と同順位の胸椎体の上肋骨窩に対する下方の大きな関節面とが区別される。第一・第十一・第十二肋骨では、肋骨と同順位の胸椎体とのみ連結するので、肋骨頭関節面は単一な平面である。肋骨体に続く前後にやや扁平な部分がが肋骨頚で、各肋骨と同順位の胸椎横突起の前面に位置している。鋭い上縁が肋骨頚稜で、後面は粗面をなす。外側端後部外面の膨隆した部分が肋骨結節で肋骨体との境をなす。肋骨結節には、各肋骨と同順位の胸椎横突起に対する下内側部の肋骨結節関節面と、外側部の靱帯が付着する隆起とがある。肋骨結節に続く扁平な部分が肋骨体で、上縁は丸く下縁は鋭い。肋骨結節の外側で、前後にやや厚く後面が粗面をなし、肋骨がやや強く弯曲する部分が肋骨角である。第一肋骨の肋骨角は肋骨結節の所にあるが、第二肋骨以下下方の肋骨ほど、肋骨角は肋骨結節の外側方に位置するようになる。肋骨体内面下部で、肋骨頚から前方に走る溝が肋骨溝で、肋間神経・肋間動静脈が入る。溝は前端近くで不明瞭となる。肋骨体の前端は被厚し、断端は楕円形の凹面として終わる。肋骨は内側方へ屈曲するとともに、長軸のまわりで上縁が内側方向へねじれている。第三から第十肋骨は上述の一般的形態を示すが、第一・第二・第十一・第十二肋骨はやや変形を示す。第一肋骨は最も短く、上下に扁平なため幅が最も広い。肋骨角に相当する部分は肋骨結節に一致し、ここで弯曲が最も強い。上面の中央内縁に近い部分の小隆起が前斜角筋結節で、この前方にある浅い陥凹が鎖骨下静脈溝、後方の浅い陥凹が鎖骨下動脈溝である。第二肋骨の上面中央外側部の粗面が前鋸筋粗面である。 

Costae verae [I-VII](真肋、第一肋骨~第七肋骨)True ribs [I-VII] しんろく、だいいちろくこつ~だいななろくこつ [A02.3.01.002] Feneis: 006 03

 第一から第七までの肋骨を真肋という。その肋軟骨がすべて胸骨と直接結合するからである。 

Costae spuriae [VIII-XII](仮肋、第八肋骨~第十二肋骨)False ribs [VIII-XII] かろく、だいはちろくこつ~だいいちにろくこつ [A02.3.01.003] Feneis: 006 04

 偽肋とも呼ばれる。肋軟骨が他の肋軟骨を介してはじめて胸骨と結合する第8以下の肋骨を仮骨という。第8肋骨が胸骨に達することがあり、また第10肋骨は遊離していることことの方が多い。肋骨とは肋硬骨と肋軟骨の総称であるが、これを狭義に解釈して肋硬骨だけを肋骨ということもある。 

Costae fluctantes [XI-XII](浮遊肋、第十一肋骨~第十二肋骨)Floating ribs [XI-XII] ふゆうろく、だいいちいちろくこつ~だいちにろくこつ [A02.3.01.004] Feneis: 006 05

 第十一、十二の肋軟骨は短く、ただその肋骨の末端を被うのみである。この2肋骨は胸骨に達せず、遊離して終わるから浮遊肋という。 

Cartilago costalis(肋軟骨)Costal cartilage ろくなんこつ [A02.3.01.005] Feneis: 006 06

 上位7対の肋骨を胸骨側面に結びつけているのが硝子軟骨性の肋軟骨である。さらに第7肋軟骨の角一部は下方で第8~10番肋軟骨に順に接続する。浮遊肋(第11肋骨~第12肋骨)の肋軟骨は腹壁の筋に付着する。肋軟骨のおかげで、胸郭の弾力性と可動性はかなりのものとなる。老人で肋軟骨が硬くなるのは、肋軟骨表層から石灰化が進むためである。

Costa(肋硬骨)Rib ろくこうこつ [A02.3.02.001] Feneis: 006 07

 肋軟骨に対比して骨部分をいう。肋硬骨は肋骨頭、肋骨頚、肋骨体の3部からなる。

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Caput costae(肋骨頭)Head of rib ろくこつとう [A02.3.02.002] Feneis: 006 08

 肋骨頭は肋硬骨の後端のふくらみで、ここには胸椎椎体(の肋骨窩)と関節する関節面(肋骨頭関節面)がある。この関節面は第2~10肋骨ではクサビ状の立体形をしている。肋骨頭から3cm足らず離れたところに肋骨結節という楕円形の高まりが後方に突出している。この結節の表面には胸椎の横突起(の横突肋骨窩)と関節する関節面(肋骨結節関節面)がる。

Facies articularis capitis costae(肋骨頭関節面)Articular facet of head of rib ろくこつとうかんせつめん [A02.3.02.003] Feneis: 006 09

 肋骨頭関節面及び肋骨結節関節面はそれぞれ胸椎と連接する。

Crista capitis costae(肋骨頭稜)Crest of head of rib ろくこつとうりょう [A02.3.02.004] Feneis: 006 10

 肋骨頭関節面は第1,第11,第12の3肋骨では単一な平面であるが、その他では水平位に走る肋骨頭稜により上下2部に分かれ、隣あう2個の椎体の下および上肋骨窩と関節する。

Collum costae(肋骨頚)Neck of rib ろくこつけい [A02.3.02.005] Feneis: 006 11

 肋骨頚は肋骨頭と肋骨結節の間の短い部分である。

Crista colli costae(肋骨頚稜)Crest of neck of rib ろくこつけいりょう [A02.3.02.006] Feneis: 006 12

 肋骨頚の上縁にある鋭い稜。

Corpus costae(肋骨体)Body of rib ろくこつたい [A02.3.02.007] Feneis: 006 13

 肋骨体は肋骨結節よりも前外側方の残りの長い骨部である。

Tuberculum costae(肋骨結節)Tubercle of rib ろくこつけっせつ [A02.3.02.008] Feneis: 006 14

 肋骨結節は肋骨頚の外側端の部分に外方に膨れた部分である。

Facies articularis tuberculi costae(肋骨結節関節面)Articular facet of tubercle of rib ろくこつけっせつかんせつめん [A02.3.02.009] Feneis: 006 15

 胸椎横突起との関節面。

Angulus costae(肋骨角)Angle of rib ろくこつかく [A02.3.02.010] Feneis: 006 16

 肋硬骨を後上方から見ると、肋骨結節の外側方数㎝のところに弯曲の方向が急に変わる部分がある。この部分は肋骨の後面に多少なりとも角ばった突出をつくるので肋骨角とよばれる。

Sulcus costae(肋骨溝)Costal groove ろくこつこう [A02.3.02.011] Feneis: 006 17

 肋骨溝は肋骨体の内面を見ると、下縁に沿って浅い溝が長く走っていて肋間神経や肋間動静脈が走るところである。肋骨溝は肋骨体の前端に近づくにつれてますます浅くなり、不明瞭になってしまう。また肋骨溝は肋骨頚の部分までたどることができる。

Crista costae(肋骨稜)Crest of body of rib ろくこつりょう [A02.3.02.012]

(Costa cervicalis; Costa colli)(頚肋骨、頚肋)Cervical rib けいろくこつ、けいろく [A02.3.02.013] Feneis: 006 22

 第7頚椎の横突起の形成が不完全で、肋骨原基が不完全に癒合していると、この原基から生じる部分は明らかに椎骨とは区別することができる。肋骨原基が独立して(癒合しないで)残っていると、頚肋が生じる。頚肋は通常両側性に現れる。一側にだけにみられる場合には右側よりも左側に多い。横突起は頚椎によっては2分していることがある。第7頚椎では前結節が欠けていることが多い。

Costa prima [I](第一肋骨)First rib [I] だいいちろくこつ [A02.3.02.014]

 第1肋骨は強い弓状の弯曲を示すが、ねじれがほとんどないので、上下に扁平である。肋骨頚は細いが、肋骨体は幅広い。第1肋骨での上面と下面の区別は他の肋骨ほど容易ではない。しかし上面では肋骨体の中央で内側知覚に小さな突出物(前斜角筋が付くところ)があり、この小突出物のすぐうしろには、肋骨体を斜めに横切る幅1cm弱の浅い溝(肋骨下動脈が接するための溝)が見える。小突出物の前方にも更に幅の広い溝(鎖骨顆上脈が接するためのくぼみ)があるが、その輪郭ははっきりしないことが多い。第1肋骨の肋骨頭関節面もクサビ形でなく、丸い凸面を示す。また第1肋骨ではその弯曲が急に変わる点(すなわち他の肋骨での肋骨角に相当する部分)が肋骨結節に一致している。

Tuberculum musculi scaleni anterioris(前斜角筋結節)Scalene tubercle ぜんしゃかくきんけっせつ [A02.3.02.015] Feneis: 006 18

 「リスフラン結節」とも呼ばれる。前斜角筋結節は第一肋骨の上面中央で内縁に近くにある前斜角筋を停止部する小さな隆起である。Lisfranc, Jacques (1790-1847)フランスの外科医。

Sulcus arteriae subclaviae(鎖骨下動脈溝)Groove for subclavian artery さこつかどうみゃくこう [A02.3.02.016] Feneis: 006 19

 鎖骨下動脈溝は前斜角筋結節を挟んでその後にある。

Sulcus venae subclaviae(鎖骨下静脈溝)Groove for subclavian vein さこつかじょうみゃくこう [A02.3.02.017] Feneis: 006 20

 鎖骨下静脈口は前斜角筋結節を挟んでその後に鎖骨下動脈溝(鎖骨下動脈が乗る)があり、その前には鎖骨下静脈溝がある。

Costa secunda [II](第二肋骨)Second rib [II] だいにろくこつ [A02.3.02.018]

 第2肋骨は第1肋骨と第3肋骨との中間形を示している。ただ肋骨溝に相当する溝が上面にも現れる。

Tuberositas musculi serrati anterioris(前鋸筋粗面)Tuberosity for serratus anterior ぜんきょきんそめん [A02.3.02.019] Feneis: 006 21

 第二肋骨の前鋸筋の起始となる粗面。

(Costa lumbalis)(腰肋骨)Lumbar rib ようろくこつ [A02.3.02.020]

 第1腰椎の肋骨突起が発達して腰肋骨となる。

Sternum(胸骨)Sternum きょうこつ [A02.3.03.001] Feneis: 006 23>

 胸郭前壁正中部にある縦長の偏平骨で、胸骨柄、胸骨体、剣状突起からなる。胸骨柄は最も側頭にあり、不整六角形を呈す。上縁正中部の浅い陥凹部が頚切痕で、この外側下方で斜め上方に向かう浅い陥凹部が、鎖骨関節面に対する鎖骨切痕である。鎖骨切痕は下方では左右の幅が尾側ほど狭くなり、下縁で胸骨体と軟骨結合によって連結している。胸骨体は縦長の長方形を呈し、下方でやや幅が広い。内面は比較的平滑であるが、外面は分節的に発生した名残として、横走する隆起線が肋骨切痕に対応して数本認められる。胸骨柄と胸骨体の外側縁の浅い陥凹部が、第1~第7肋軟骨に対する肋骨切痕である。第1肋骨切痕は鎖骨切痕の下方にあり、第2肋骨切痕は胸骨柄と胸骨体との連結部で両方にまたがっている。第3肋骨切痕以下は胸骨体にあるが、第5肋骨切痕以下では下方ほど間隔が狭くなる。第7肋骨切痕は剣状突起上端部に接している。剣状突起は胸骨体下縁に接する細長い小部で、一部が軟骨で、形は不定である。胸骨柄と胸骨体(胸骨柄結合)および胸骨体と剣状突起(胸骨瞼結合)の軟骨結合部は、年齢とともに骨化する。胸骨柄結合部は前方にやや突出し、胸骨角をなす。頚切痕外側部で時に見られる小骨が胸上骨である。ギリシャ語のsternon(男性の胸)に由来する。

Manubrium sterni(胸骨柄)Manubrium of sternum きょうこつへい [A02.3.03.002] Feneis: 006 24

 胸骨柄は胸骨の上1/4を占める部分で、その上縁の左右両端には小刀で角を落としたような切れ込み(鎖骨切痕)があり、ここに鎖骨と連結するための関節面が見える。左右の鎖骨切痕に挟まれた部分の上縁も浅い切れ込みになっている(頚切痕)。また胸骨柄の側面で鎖骨切痕のすぐ下には第1肋骨が接するための切れ込みがある。胸骨柄と胸骨体とが結合する(胸骨剣結合)部位は前方に突出して、後方に開く鈍角すなわち胸骨角を作る。

Incisura clavicularis(鎖骨切痕)Clavicular notch さこつせっこん [A02.3.03.003] Feneis: 006 25

 鎖骨切痕は頚切痕の両側には外上方に向く大きな切痕であって、鎖骨に対する関節面を有する。

Incisura jugularis(胸骨の頚切痕)Jugular notch of sternum きょうこつのけいせっこん [A02.3.03.004] Feneis: 006 26

 頚切痕は左右の鎖骨切痕に挟まれた部分の上縁にある浅い切れ込みである。頚切痕は鎖骨間靱帯を容れる。

Angulus sterni(胸骨角)Sternal angle きょうこつかく [A02.3.03.005] Feneis: 006 27

 ルイ角ともよばれる。胸骨柄と胸骨体が結合するところは、前方に角張って突出するもので、この突出そのものを胸骨角と呼ぶ。この結合部の側面にある切痕は第2肋軟骨が関節する場所である。すなわち胸骨角は皮膚の上からでも横走する隆起として容易に触れることができるので、生体で第2肋骨を定めるのに胸骨角が最良の目印になるのである(生体では第1肋骨は鎖骨の下に隠れているので、ほとんどふれられない。したがって第2肋骨の同定が肋骨番号を定めるうえにきわめて重要である)。立位では第4~第5腰椎レベルにあり、この高さの想定平面を胸骨角平面という。この角は虚弱体質ではより小さい。フランスの内科医Pierre Charles Louis (1787-1872)の名を冠する。

Corpus sterni(胸骨体)Body of sternum きょうこつたい [A02.3.03.006] Feneis: 006 31

 胸骨柄の下端は胸骨体と結合する。この結合部はかなり長期間軟骨性の結合のままで経過し、ここが骨性の結合となるのは成年以後に成ってからである。したがって若い個体の晒した骨では胸骨柄と胸骨体が分離してしまっている。胸骨体は胸骨柄の約3倍の長さの長方形の部分で、その幅は下方にいくにしたがって徐々に広くなるが、下端では急に狭まっている。その前面は後面に比べればやや凸面に近い。側面は肋軟骨と関節するための6対の切痕がある。

Processus xiphoideus(剣状突起)Xiphoid process けんじょうとっき [A02.3.03.007] Feneis: 006 32

 剣状突起は胸骨体の下端に続く薄い扁平な突起で、成人でもその大部分は軟骨でできており、これが完全に骨化するのは老人になってからである。したがって晒した骨で剣状突起が観察できるのは老人の骨に限られる。

Incisurae costales(肋骨切痕)Costal notches ろくこつせっこん [A02.3.03.008] Feneis: 006 33

 肋骨切痕は胸骨柄と胸骨体の外側縁に7対の肋骨切痕がある。

(Ossa suprasternalia)(胸上骨)Suprasternal bones きょうじょうこつ [A02.3.03.009] Feneis: 006 34

 頚切痕の両側の上方への隆起部が胸骨から独立した小さい胸上骨になることがある。

Vertebrae thoracicae [TI-TXII](胸椎、第一胸椎~第十二胸椎)Thoracic vertebrae [T I-T XII] きょうつい、だいいちきょうつい~だいいちにきょうつい [A02.2.03.001] Feneis: 002 24

 頚椎につづく12個の椎骨で、椎体は下位のほど大きい。また、椎体の高さは頚椎より高く、腰椎より低い。椎体の外側面後部には肋骨頭に対する関節窩、すんわち、肋骨窩があり、第二~第九胸椎では椎体の上縁と下縁にそれぞれ半円形の上肋骨窩、下肋骨窩がある。第一~第九胸椎では互いに隣り合う胸椎の下および上肋骨窩が1個の関節窩を作り、一個の肋骨頭と関節する。第一胸椎には半円形の下肋骨窩があり、第十胸椎では上関節窩だけが存在する。また、第十一境地では椎体の上縁に、第十二胸椎では椎体のほぼ中央に1個の円形の肋骨窩がある。胸椎の椎孔はほぼ円形をしており、頚椎の椎孔に比してかなり小さい。横突起は第八胸椎でもっとも大きく、これより上位または下位の胸椎では、第八肋骨から遠ざかるほど小さくなる。第一~第十胸椎では横突起の尖端の前面に円形の関節面があり、横突肋骨窩という。第十一および第十二胸椎の横突起には横突肋骨窩はみられない。境地の棘突起は三角柱のような形をしていて、第1胸椎から第八胸椎までは下位になるほど傾斜が強くなる。しかし、その後は次第に傾斜が弱まり、第十二胸椎ではほとんど水平である。

Cavea thoracis(胸郭)Thoracic cage きょうかく [A02.3.04.001] Feneis: 006 35

 胸郭は脊柱(胸椎)、肋骨及び胸骨の3者で構成され、それらによって囲まれた腔即ち胸郭の内腔を胸腔という。この腔と、内臓系の胸膜腔とは、まったく別のものであるから注意のこと。胸郭を前面から見ると下縁が左右ともに、下方へ凸弯している。これを肋骨弓という。

 左右の肋骨弓の間にできる角を胸骨下角といい、約70゜である。胸椎、肋骨、胸骨が構成する骨格を胸郭という場合と、この骨格が構成する体幹の部分を胸郭という場合とがある。胸郭(骨格)の前壁は胸骨、肋軟骨、肋骨の前端部からなり、側壁は肋骨体、後壁は肋骨の後端部と胸椎からなる。これらの囲まれた内腔が胸腔である。胸郭は上方が狭く、前後に圧平された樽状を呈し、前後径より左右径が大きい。

 第7肋骨の胸骨への付着部と、第9または第10胸椎をまわる部分が最もふくらんでいる。ただし、新生児の胸郭は底面が広い円錐形である。脊柱の両側では肋骨が後方より突出しているので、胸腔の横断面は腎臓形を呈している。脊柱の両側では肋骨が後方へ弯曲している。このためにできる縦方向の溝が肺溝で、肺の後端が入る。下位肋骨の肋骨角ほど外方にあるため、肺溝は下方ほど幅が広い。胸郭の背面で、極遠きと横突起の間に深い縦溝、横突起と肋骨角の間に浅い立て溝がある。

 吸気時に肋骨は、肋骨頭と肋骨結節とを結ぶ線を軸に挙上するので、前後径、左右径とも大きくなる。下位肋骨は斜径が強いため、肋骨窩部が強く前方に押し出される。第1胸椎、第1肋骨、胸骨柄上縁で囲まれる部分が胸郭上口で、後縁より前縁が下方にあり、男性より女性で傾斜が強い。また、胸骨柄上縁は第2胸椎下縁に位置する。第12胸椎、第12肋骨、第11肋骨尖端、肋骨弓、剣状突起の連なる部分が胸郭下口で、横隔膜によってふさがれている。第7・第8・第9・第10肋軟骨が連結し、胸骨体と剣状突起の境界部にいたる前下縁が肋骨弓で、左右の肋骨弓が剣状突起のところで合して、約70度の角度をなす部分が胸骨下角である。おのおのの上下の肋骨間の隙間が肋間隙で、11個ある。最下の2個は前方に開いている。第7および第8肋間隙が最も長く広いが、上下に行くにしたがって短く狭くなる。1個の肋間隙では、後方より前方で広く、肋骨体と肋軟骨の境界部で最も広いが、前方に行くにしたがって再び狭くなる。胸椎と肋骨との間には肋椎関節があり、この関係は更に肋骨頭関節と肋横突関節との2つに分けられる。そしてこの両関節を結ぶ線として上下の方向に回転運動が行われる。これがいわゆる胸式呼吸運動である。上位7対の肋軟骨はおのおの別々に胸骨との間に胸肋関節を営むがⅧ~Ⅹ(Ⅸ)の肋軟骨は胸骨とは直接のつながりがなく、それぞれ直ぐ上の肋軟骨とくっついていて、結局Ⅶ肋軟骨を介して直接に胸骨につながる。しかし(Ⅹ)、ⅩⅠ、ⅩⅡの肋骨は非常に短くて胸骨とは全く関係がない。なおⅤあるいはⅥ~Ⅸの肋軟骨は隣り合う2つの肋軟骨が半関節で結ばれていて(軟骨管関節)、上下のものがくっついている。

 胸郭はほぼ円錐形のカゴのようなもので、その中に胸腔という広い空間を包み、肺や心臓を容れる。胸郭上口からは頚部の内臓、血管、神経が入り、胸郭下口には横隔膜が張っていて、胸腔と腹腔を境する。また肋間隙には肋間筋および肋間の血管や神経がある。胸郭の前下端すなわち胸郭下口の前縁ではⅧ~Ⅹの肋軟骨が合して、左右それぞれ弓状のカーブをえがくので、肋骨弓といわれ、左右の肋骨弓が胸骨の下端で合してなす角度は約70°で、そこを胸骨下角という。胸骨の体と柄が結合するところは前に突き出ており、身体の表面から触れることができる。ここを胸骨角と名付け、ちょうど第二胸骨関節の高さに相当するので、肋骨の高さを決めるとき目印になる。胸郭の後面をみると、肋骨が前外方に方向を変えるところは急に曲がるので、肋骨角といわれる。

 胸郭の内面では助骨角に相当するところが凹んでおり、肺の後縁を容れる。この部分は胸郭全体からみると大きな溝をなすので肺溝と呼ばれる。胸郭を構成する脊椎(胸椎)は全体として、生理的に軽い胸部弯曲になっているが、これがひどくなったものは脊椎後弯症といわれる。胸郭の形は人と四足動物とで大きな違いがある。その原因は人間が立って歩くようになったためと考えられる。すなわち人の胸郭は平たく、肋骨が脊柱よりも後ろに張り出しており、従って身体の重みを支える脊柱は胸郭の中心に近いところを通るようになっている。しかるに四足動物の胸郭は腹背径の方が左右径よりも大きく、また助骨角の角度が鋭くない。そして肋骨は脊柱よりも背方に飛び出るようなことはなく、脊柱が胸郭の最背部(つまり一番上)にあって、胸郭を吊っているような形になっている。人の脊柱を家の柱に例えると、四足動物は梁に相当する。

 体重を支える脊柱が人では身体の中心部に近い所を通っており、しかも胸郭の前後径が短いことは立って歩くときに安定がよいことになる。このことは脊柱の位置と胸郭の前後径について、テコの原理を当てはめると簡単に理解できる。

[臨床]胸郭への外傷も、ことに交通事故などでしばしば起こる。小児の場合には肋骨に男性があるので肋骨骨折はまれである。成人の場合は肋骨骨折が抵抗性の弱い肋骨角の部位に起きやすい。しかし第1および第2肋骨は鎖骨と大胸筋とで保護されており、第11および第12肋骨もそれらの浮動性のために傷つくことは稀である。強い衝突事故などでは数多くの肋骨が折れることがある。右か左の片側だけに肋骨骨折が起きる場合でも、肋骨角付近と前方の肋骨肋軟骨境界付近との2カ所で、肋骨が折れることがあり、これは動揺胸を来す。もしも胸骨の両側での肋骨骨折が起これば胸骨が動揺することになる。いずれの場合でも胸壁の安定性が失われ、遊離した胸郭部分が吸気のときは引き込まれて呼気の時は突出するという奇妙な動きを示すようになる。肋骨骨折の危険な合併症として、肺あるいは上腹部内臓(特に肝臓あるいは脾臓)の損傷が挙げられる。

 

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Cavitas thoracis(胸腔)Thoracic cavity きょうくう [A02.3.04.002] Feneis: 152 06

 胸郭に包まれた円錐形の内腔が全体が胸腔である。胸腔と腹腔をしきるのは横隔膜である。胸腔内には左右の胸膜腔と縦隔が入る。胸膜腔は人つながりの壁側胸膜と臓側胸膜によって囲まれた腔である。壁側胸膜は胸壁の内部をおおい、臓側胸膜は肺を包む。縦隔内には心膜腔があり、これは心臓を包んでいる。胸腔と胸膜腔を混同しないように注意しよう。胸腔というのは、胸郭に囲まれる空間である。その下口は横隔膜によって遮らえているが、上口は開放性で頚部に開いている。胸膜腔とは、壁側胸膜とその続きである肺胸膜によって囲まれる閉じた空間であって、その内部に存在するのは少量の液(漿液serous fluid)だけである。肺は胸腔の中にあるけれども、胸膜腔の外にある。胸腔の中には心臓によって囲まれる心膜腔という閉じた袋もあり、これらに介在して胸部内臓や大血管などが胸腔内に詰まっているわけである。

Apertura thoracis superior(胸郭上口)Superior thoracic aperture きょうかくじょうこう [A02.3.04.003] Feneis: 006 36

 胸腔の上方への出口は胸郭上口と呼ばれ、第1胸椎体・第1肋骨・胸骨柄上縁で形成されている。全体として前下りに傾斜し、肋骨上縁は第2胸椎体の下縁(男性の場合で、女性の場合もう少し低い)に層とする。

Apertura thoracis inferior(胸郭下口)Inferior thoracic aperture きょうかくかこう [A02.3.04.004] Feneis: 006 37

 胸郭下口は胸郭上口よりはるかに大きく不規則な形で、第12胸椎体・第12肋骨・第11肋骨尖端。肋骨弓および剣状突起下端を連ねる線が境となり、前と後で高く、両側でもっとも低い。

Sulcus pulmonalis(肺溝)Pulmonary groove はいこう [A02.3.04.005] Feneis: 006 38

 脊柱の両側では、肋骨が後方に弯曲してその外面に肋骨角をつくるので、内面では肺の後縁を容れる肺溝ができる。肋骨角の位置は下位の肋骨ほど外方にずれているので、肺溝も下方ほど広くなる。

Arcus costalis(肋骨弓)Costal margin ろくこつきゅう [A02.3.04.006] Feneis: 006 39

 肋骨弓は第7~10肋軟骨の前部が連結して作る弓状線である。

Spatium intercostale(肋間隙)Intercostal space ろくかんげき [A02.3.04.007] Feneis: 006 40

 肋間隙は各肋骨間の狭い間隙で、11個あるが、最下の2個は前方で開いている。第7および第8肋間隙がもっとも長くかつ広く、これにより上または下に行くに下が手次第に狭くなる。また各肋間隙はみな後端から前方に至るにしたがって広くなり、肋硬骨と肋軟骨との境で最も広く、それから前方は再び急に狭くなる。肋間隙は外、内および最内肋間筋と内、外肋間膜でみたされる。

Angulus infrasternalis(胸骨下角)Infrasternal angle きょうこつかかく [A02.3.04.008] Feneis: 006 41

 左右の肋骨弓は剣状突起の上端の両側で合して約70°~80°の胸骨下角を作る。

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