三叉神経[Ⅴ]

 

 三叉神経は脳神経のなかで最も大きな神経である。知覚性の部分は延髄、橋、頚髄上部にわたってみられる縦に長い三叉神経脊髄路核と橋の被蓋にある三叉神経主知覚核の両方から起こり、橋の外側縁から脳の外へでる。この部分は太いので大部と呼ばれる。これに対して運動性の部分は小部といわれ、橋の被蓋にある三叉神経運動核から起こり、大部と並んで走行する。大部は側頭骨の錐体にある三叉神経圧痕圧痕というくぼみに半月神経節をつくり、ここから眼神経、上顎神経、下顎神経の3本の大きな枝に分かれる。三叉神経の名称はこれによる。なお半月神経節は脊髄神経節と相同のものである。小部は半月神経節に参加せず、その傍らを通り、下顎神経に合流する。大部は顔面の知覚を司り、小部は咀嚼筋の運動を司る。

 

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三叉神経の主要構成成分は次の2つである。

 

1)前頭部、顔面、鼻腔および口腔の粘膜、歯、脳硬膜の痛覚・温度覚・触覚と歯、歯根膜、硬口蓋、顎関節、咀嚼筋の固有感覚の情報を伝える一般体性求心性線維。

 

2)咀嚼筋(側頭筋、咬筋、外側翼突筋、内側翼突筋)、顎二腹筋の前腹部分、顎舌骨筋、鼓膜張筋・口蓋帆張筋への特殊内臓性遠心性線維。

 三叉神経は第一鰓弓の神経であって、鰓弓運動性および鰓弓感覚性の要素を含む。運動性要素(特殊内臓性遠心性)は側頭筋、咬筋、内側および外側翼突筋、鼓膜張筋、口蓋帆張筋、顎舌骨筋、顎二腹筋前腹を支配する。これらのニューロンの細胞体は三叉神経運動核(咀嚼核)として、橋の背臥位側部に位置する。感覚根(大部)は運動根(小部)よりもはるかに大きく(運動根線維:約9,000本、感覚根線維:約140,000本)、橋の外表と三叉神経節(半月神経節)のあいだを走る。三歳sン蛍雪は側頭骨岩様部の錐体の先端部上にあり、二枚の硬膜のあいだに包まれているから、硬膜がついたままの頭蓋では外からはみえない。

 三叉神経根には三叉神経節の近くではproximal part(緻密部compact part)と遠位部(網様部)が区別される。運動根は三叉神経節の下面を横切って下顎神経に加わる。

 三叉神経の感覚線維(一般体性入力性)は三叉神経節と「三叉神経中脳路核の偽単極細胞」から起こる。三叉神経には3本の主枝がある。そのうち、眼神経と上顎神経は鰓裂前枝であり、下顎神経は鰓裂後枝である。

 

①眼神経(V1)

 眼神経は三叉神経のうちで最も小さな枝で、上眼窩裂を通り、頭蓋腔の外に出て、涙腺神経、前頭神経、鼻毛様体神経に分枝する。前頭部、眼、鼻を感覚性に支配する。

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②上顎神経(V2)

 上顎神経は正円孔を貫いて翼口蓋窩へ入り、硬膜枝、頬骨神経、眼窩下神経、上歯槽神経、翼口蓋神経に分枝する。上顎部、上顎の歯、上唇の粘膜、頬粘膜、口蓋粘膜、上顎洞などを感覚性に支配する。

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③下顎神経(V3)

 下顎神経は、三叉神経の中で最も大きな枝で、運動性の小部も合わせて卵円孔を貫き、側頭下窩に現れ、硬膜枝、咀嚼筋枝(運動性線維)、頬神経、耳介側頭神経、下歯槽神経、舌神経に分枝する。舌、下顎部、下顎の歯、下唇の粘膜、頬粘膜の一部、外耳の一部を感覚性に支配するほか、咀嚼筋などを支配する運動性線維をも含む。

 三叉神経の3本の主枝の分布領域にはほとんど重なり合いはない。なお、三叉神経には咀嚼筋、顎関節、外眼筋などの固有受容器からの線維も含まれている。

 

A.三叉神経節

 三叉神経節の感覚ニューロンは末梢の支配領域に対応して配列されている。眼神経を出す細胞体は内側に、下顎神経を出す細胞細胞体は外側に、上顎神経を出す細胞体は両者の間に位置する。3本の主枝は神経節の尖端で分かれてただちに頭蓋を去る。眼神経は上眼窩裂、上顎神経は正円孔、下顎神経は卵円孔を通る。

 

B.三叉神経中脳路核

 紡錘筋や歯からの固有感覚性インパルスはいわゆる中脳路核によって伝達される。この核の細胞は中枢神経系内にありながらその形が脊髄神経節の細胞に類似している点で特徴的である。中脳路核は中枢神経系内に残留した脊髄神経節とみることができる。中脳路核の細胞の軸索の中には三叉神経運動核でシナプス結合するものがある。

「その他の軸索は同側の脳幹背外側を下行して脊髄まで達し、おそらく介在ニューロンを介して、脳神経運動核や頚筋支配運動ニューロンに連絡する。脳幹を下行するこれらの軸索群をProbstの神経路という。また、上丘や小脳に達する軸索があるとする報告もあるが、ヒトではその存在は疑わしい。」

 

C.その他の三叉神経核群

 

①三叉神経の感覚核群

 末梢からくる一次三叉神経線維は延髄と脊髄の移行部から橋にわたって広汎に拡がる三叉神経感覚核群でシナプス結合する。感覚根を通って脳幹に入るこれらの感覚線維はまず上行枝と下行枝に分岐する。太い線維は細い線維に比べて通常短く、核の最頭側部でシナプス結合する。そのほかの線維はときには脊髄まで下行してLissauerの辺縁帯にはいる。三叉神経感覚核群は大きく分けて二つの核から成る。

 

②三叉神経主感覚核

 三叉神経主感覚核は橋において三叉神経紺野線維束の外側に位置する卵円形の核である。三叉神経根の上行枝は、太い求心性線維として、この核でシナプス結合する。この核は頭顔部領域からの主として触覚および圧覚入力を受ける。

 

③三叉神経脊髄路核

 この核は主感覚核の尾側に続いて脊髄にまで達し、脊髄では膠様質に連続する。脊髄路核はさらに吻側核、中間核、尾側核に区分される。三叉神経根の下行枝は脊髄路核と平衡に走る長い線維線維束を形成する。これが三叉神経脊髄路である。三叉神経脊髄路には明確な身体部位対応配列がみられ、眼神経線維は最腹側、下顎神経線維は背側、上顎神経は前2者の中間に位置する。これらの線維は脊髄路核のニューロンとシナプス結合して、頭顔部領域からの痛覚、温度覚、圧覚を伝達する。痛覚線維は主として尾側核に終止する。

 

④三叉神経運動核(咀嚼筋)

 これは鰓弓運動核のうちで最頭側に位置する核である。橋において主感覚核の内側に位置し、大形多極性細胞を含む。

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D.三叉神経核群への求心性線維

 三叉神経根のほかに、舌咽神経、迷走神経、顔面神経および第1から第4頚神経からの後索線維などがシナプス結合する。大脳皮質、とくに一次体性感覚野から、感覚核への投射がある。運動核も(大脳)皮質核線維を介して直接ないし間接に大脳皮質からの投射を受ける。他の脳神経からの入力は脳幹網様体を介して三叉神経核群に達する。

 

E.三叉神経核群からの遠心性線維

 三叉神経核群からの遠心性線維は視床、小脳、脳幹網様体でシナプス結合する。脊髄路核からの遠心性線維は大部分が正中線で交叉して内側毛帯に加わり、ともに視床に達する。

 主感覚核からは交叉性上行性線維と非交叉性上行線維(背側三叉神経毛帯)が出る。前者は反対側の内側毛帯に加わり、後者は同側の中脳中心灰白質の傍を上行する。

 三叉神経視床路線維は視床の後内側腹側核でシナプス結合するが、尾側核からの線維の多くは髄板内核や内側膝状体大細胞部に終止するといわれる。

 「中脳路核から起こるProbstの神経路は咀嚼筋、歯根膜、外眼筋などからの固有感覚性入力を橋、延髄、頚髄の書部へ伝達する。また、主感覚核や脊髄路核から小脳へ達する線維は主として小脳虫部に分布する。」

 脊髄路核から視床へ向かう線維からは軸索側枝が出て脳幹網様体に分布すると考えられる。

 

F.三叉神経群の臨床的側面

 三叉神経脊髄路または脊髄路核が損傷されると頭顔部の痛覚と温度覚の消失ないし減弱が起こるが、触覚と圧覚は正常に保たれる。痛覚と温度覚は主として主感覚核へ伝達されるからである。また、咀嚼や言語の障害(下位運動ニューロン損傷によるもの)も生じる。三叉神経運動核が大脳皮質からの両側性支配を受けている関係で、三叉神経系の上位運動ニューロン損傷は極めて稀にしか症状をもたらさない。

 三叉神経が関与する多くの反射のうちで、角膜反射はとくに重要である。角膜が刺激されると外輪筋が収縮して眼が閉じる。この効果は同側の顔面神経核に伝達インパルスに基づく。したがって、三叉神経感覚核群から出るインパルスが顔面神経核に投射しているのは明らかである。眼神経を損傷すると同側の角膜の触覚と痛覚が消失するが、この場合でも反射弓の出力部が健常であれば、反対側の角膜の刺激によって両眼が閉じる。しかし顔面神経が損傷されると、角膜の感覚は健常であっても角膜反射は障害される。

 

解剖学用語(三叉神経)

1. 三叉神経 [V] ラ:Nervus trigeminus [V] 英:Trigeminal nerve [V]

 →二つの線維束で橋をでる第V脳神経。咬筋の運動および顔面の近くを司る。第一鰓弓の神経。

 

2. 知覚根(感覚根) ラ:Radix sensoria 英:Sensory root

 →橋をでる際下方にある知覚性の部分。

 

3.  三叉神経節;半月神経節 ラ:Ganglion trigeminale 英:Trigeminal ganglion

 →裂口の上方、錐体の前表面の三叉神経腔中にある半月状の、脊髄神経節に相同の神経節。

 

4. 運動根 ラ:Radix motoria 英:Motor root

 →三叉神経出口では上方、ついで三叉神経節の下方に位置する咬筋への運動性線維。

 

5. 眼神経 [Va; V1] ラ:Nervus ophthalmicus [Va; V1] 英:Ophthalmic nerve; Ophthalamic division [Va; V1]

 →上眼窩裂より入る三叉神経第一枝。蝶形骨体上の海綿静脈洞の外側に沿って前方にすすみ、上眼窩裂を通って眼窩に入る。つぎの諸枝があり、また眼筋にいたる動眼、滑車、外転の3神経および交感神経との間に交通がある。

 

6. テント枝 ラ:R. meningeus recurrens; R. tentorii 英:Tentorial nerve

 →頭蓋内で分かれて後方に走り、小脳テント(横静脈洞、直静脈洞、上錐体静脈洞)および大脳鎌に分布する知覚枝で、三叉神経の他の硬膜枝および迷走神経の硬膜枝などとともに、頭痛の発生に関係を持つといわれる。

 

7. 涙腺神経 ラ:N. lacrimalis 英:Lacrimal nerve

 →上眼窩裂外側を通り、涙腺、結膜および上眼瞼側方部へ分布する。頬骨神経との交通枝を出す。

 

8. 頬骨神経との交通枝 ラ:R. communicans cum nervo zygomatico 英:Communicating branch with zygomatic nerve

 →頬骨神経との結合。涙腺へいたる翼口蓋神経節よりの自律性線維を含む。

 

9. 前頭神経 ラ:N. frontalis 英:Frontal nerve

 →上眼窩裂を通り、上眼瞼挙筋の上を通り、額に分布。眼窩上壁に沿って前進し、眼窩上神経と滑車上神経の2枝に分かれる。眼窩上神経はもまく外側枝および内側枝に分かれ、それぞれ切痕および前頭切痕(または孔)を通って前頭部に現われ、また滑車上神経は滑車の上を通って皮下に現われ、いずれもその付近の前頭部、上眼瞼、結膜および鼻背皮膚に分布する。なお滑車上神経の1枝は鼻毛様体神経から出る滑車下神経と交通する。

 

10. 眼窩上神経 ラ:N. supraorbitalis 英:Supra-orbital nerve

 →結膜、上眼瞼、前頭洞および前額の皮膚に分布する前頭神経の太い枝。

 

11. 外側枝 ラ:R. lateralis 英:Lateral branch

 →眼窩上切痕を通り内側方へいたる枝。

 

12. 内側枝 ラ:R. medialis 英:Medial branch

 →眼窩上切痕を通り内側方へいたる枝。

 

13. 滑車上神経 ラ:N. supratrochlelearis 英:Supratrochlear nerve

 →細い内側の枝。内眼角より上下方向に分かれる。

 

14. 鼻毛様体神経 ラ:N. nasociliaris 英:Nasociliary nerve

 →眼神経の最も太い内側枝。はじめは上直筋の下に、ついで上斜筋と内側直筋の間に位置する。

 

15. 毛様体神経節との交通枝;(毛様体神経節感覚根;毛様体神経節;毛様体神経節の鼻毛様体根) ラ:R. communicans cum ganglio ciliari; Radix sensoria ganglii cilaris; Radix nasociliaris ganglii ciliaris 英:Communicating branch with ciliary ganglion; Sensory root of cliary ganglion; Nasociliary root of ciliary ganglion

 →知覚性線維。毛様体神経節を通って眼窩からでる。眼神経に付属する神経節で、眼窩の後部において視神経と外側直筋との間に位置し、ほぼ扁平四角形で直径約2mmである。通常3根を区別するが、そのなかで短根は動眼神経からの根とよばれ、副交感神経性で動眼神経から来たり、長根は知覚性で鼻毛様体神経から来たり、鼻毛様体神経節との交通枝と呼ばれ、交感根は海綿静脈洞にある内頚動脈神経叢から来たり、毛様体神経節への交感神経枝と呼ばれる。この神経節から出る神経としては短毛様体神経があり、6~7本で、前記の長毛様体神経とともに眼球に入る。知覚性、交感神経性および副交感神経性で毛様体、虹彩および瞳孔括約筋に分布する。

 

16.  長毛様体神経 ラ:Nn. ciliares longi 英:Long ciliary nerves

 →毛様体神経節から出る短毛様体神経とともに視神経の付近で眼球に入り、強膜を貫いて、これと脈絡膜の間を前にすすみ、瞳孔散大筋への交感性線維と虹彩、毛様体および角膜からの求心性線維を含む2本の神経。

 

17. 後篩骨神経 ラ:Nervus ethmoidalis posterior 英:Posterior ethmoidal nerve

 →眼窩の後端を通り、蝶形骨洞および後篩骨洞に分布する。

 

18.  (前硬膜枝) ラ:R. meningeus anterior 英:Anterior meningeal branch

 

19. 前篩骨神経 ラ:Nervus ethmoidalis anterior 英:Anterior ethmoidal nerve

 →前篩骨孔をへて頭蓋腔へ入り、篩板の上を前進し、さらに鼻孔に入って内鼻枝と外鼻枝とに分かれる。前者は鼻粘膜の前上部に分布し、後者は鼻骨後面の篩骨神経溝を通り、鼻骨と鼻軟骨の間で鼻背に出て皮膚に分布する。

 

20.  内鼻枝 ラ:Rr. nasales interni 英:Internal nasal branches

 →鼻粘膜の前部および鼻中隔の前部へ分布する。

 

21.  外側鼻枝 ラ:Rr. nasales laterales 英:Lateral nasal branches

 →鼻腔壁外側の前部へ分布する。

 

22.  内側鼻枝 ラ:Rr. nasales mediales 英:Medial nasal branches

 →鼻中隔前部への枝。

 

23.  外鼻枝 ラ:R. nasalis externus 英:External nasal nerve

 →鼻の先端部および鼻翼へ分布する。尾骨の篩骨溝を通る。

 

24. 滑車下神経 ラ:N. infratrochlearis 英:Infratrochlear nerve

 →内眼角のところで上斜筋の下を前進し、滑車上神経内側枝と結合して神経弓を作り、これから眼瞼枝を出し上、下眼瞼および内眼角の皮膚と涙嚢に分布する。

 

25.  眼瞼枝 ラ:Rr. palpebrales 英:Palpebral branches

 →上および下眼瞼へ分布する。

 

26. 上顎神経 [Vb; V2] ラ:Nervus maxillaris [Vb; V2] 英:Maxillary nerve; Maxillary division [Vb; V2]

 →三叉神経第2枝。蝶形骨大翼の正円孔を通って頭蓋腔を去り、翼口蓋窩へいたり、頬骨神経および翼口蓋神経を出した後、眼窩下神経となって眼窩下裂を経て眼窩に入り、顔面まで達する。

 

27. 硬膜枝 ラ:R. meningeus 英:Meningeal nerve

 →正円孔の手前で分かれ、中硬膜動脈とともに分布して脳硬膜にいたる知覚枝で、下顎神経の硬膜枝と交通する。

 

28. 翼口蓋神経節への翼口蓋神経;(翼口蓋神経節感覚枝) ラ:Rr. ganglionares ad ganglion pterygopalatium; Radix sensoria ganglii pterygopalatini 英:Ganglionic branches to pterygopalatine ganglion; Sensory root of pterygopalatine ganglion

 →主に翼口蓋神経節よりでる枝。涙腺への自律性線維および眼窩後部よりの知覚線維を含む。

 

29. 眼窩枝 ラ:Rr. orbitales 英:Orbital branches

 →2~3本の細い神経。下眼窩裂を経て眼窩へ入り、さらに後篩骨孔を通って篩骨洞および蝶形骨洞の粘膜に分布する。

 

30. 外側上後鼻枝 ラ:Rr. nasales posteriores superiores laterales 英:Posterior superior lateral nasal branches

 →蝶口蓋孔を通り上および中鼻甲介と後篩骨洞へ分布する。約10本程度の細い線維。

 

31. 内側上後鼻枝 ラ:Rr. nasales posteriores superiores mediales 英:Posterior superior medial nasal branches

 →蝶口蓋孔をでて鼻中隔の上部へいたる2ないし3本の枝。

 

32. 鼻口蓋神経 ラ:N. nasopalatinus 英:Nasopalatine nerve

 →鼻中隔の骨膜と粘膜の間を通り、さらに切歯管を通り口腔粘膜前部および上切歯の歯肉へ分布する。

 

33. 咽頭枝 ラ:N. pharyngeus 英:Pharyngeal nerve

 →咽頭粘膜への小枝。

 

34. 大口蓋神経 ラ:N. palatinus major 英:Greater palatine nerve

 →大口蓋管をへて同名の孔よりでて、硬口蓋粘膜および腺へ分布する。

 

35. [外側]下後鼻枝 ラ:Rr. nasales posteriores inferiores 英:Posterior inferior nasal nerves

 →中および下鼻道と下鼻甲介へ分布する。

 

36. 小口蓋神経 ラ:Nn. palatini minores 英:Lesser palatine nerves

 →同名の管を通り、小口蓋孔よりでて、軟口蓋へ分布する。

 

37. (扁桃枝) ラ:Rr. tonsillares 英:Tonsillar branches

 

38. 上歯槽神経 ラ:Nn. alveolares superiores 英:Superior alveolar nerve

 →上顎歯への枝。中上歯槽枝および前上歯槽枝の2枝は後上歯槽枝とともに上歯槽神経と総称され、これらは合して歯槽管の中で上歯槽神経叢を作り、これから出る上歯枝は上顎歯の歯根尖孔から歯髄中に分布し、上歯肉枝は歯槽の槽間中隔を通じて歯肉、歯根膜に分布する。

 

39. 後上歯槽枝 ラ:Rr. alveolares superiores posteriores 英:Posterior superior alveolar branches

 →歯槽孔をへて上顎内面へいたる2~3本の枝。上顎洞、大臼歯およびその頬側の歯肉へ分布する。ほか、歯槽管を通じて上顎洞の外側壁に達する。

 

40. 中上歯槽枝 ラ:R. alveolaris superior medius 英:Middle superior alveolar branch

 →上顎骨の眼窩下溝へ入り、上顎洞側壁中を走り上歯神経叢へいたる。

 

41. 前上歯槽枝 ラ:Rr. alveolares superiores anteriores 英:Anterior superior alveolar branches

 →前上歯槽管を通り、上歯神経叢の上を通り、切歯、犬歯、小臼歯および大臼歯へいたる。

 

42.  上歯神経叢 ラ:Plexus dentalis superior 英:Superior dental plexus

 →上歯槽枝のつくる歯根上、歯槽骨中にある神経叢。

 

43.   上歯枝 ラ:Rr. dentales superiores 英:Superior dental branches

 →おのおのの歯根へいたる枝。

 

44.   上歯肉枝 ラ:Rr. gingivales superiores 英:Superior gingival branches

 →歯肉への枝。

 

45. 頬骨神経 ラ:N. zygomaticus 英:Zygomatic nerve

 →翼口蓋窩中で二分する。眼窩側壁で下眼窩裂を通り眼窩に入り、その外側壁で涙腺神経との交通枝を出し、のちに次の2枝分かれる。涙腺神経との結合により翼口蓋神経節よりの副交感神経線維が涙腺にいくことなる。

 

46. 頬骨側頭枝 ラ:R. zygomaticotemporalis 英:Zygomaticotemporal branch

 →頬骨側頭孔を通って側頭窩に出て付近の皮膚に分布する。

 

47. 頬骨顔面枝 ラ:R. zygomaticofacialis 英:Zygomaticofacial branch

 →頬骨顔面孔を通って頬部の皮膚に分布する。

 

48. 眼窩下神経 ラ:N. infraorbitalis 英:Infra-orbital nerve

 →下眼窩裂を通り、眼窩下溝および管、さらに同名の孔をへて下眼瞼、鼻、上口唇および頬に分布する。

 

49. 下眼瞼枝 ラ:Rr. palpebrales inferiores 英:Inferior palpebral branches

 →眼窩下孔の外側で、下眼瞼の皮膚へ分布する。

 

50. 外鼻枝 ラ:Rr. nasales externi 英:External nasal branches

 →鼻翼の外側へ分布する。

 

51. 内鼻枝 ラ:Rr. nasales interni 英:Internal nasal branches

 →鼻の皮膚に分布。

 

52. 上唇枝 ラ:Rr. labiales superiores 英:Superior labial branches

 →上唇の皮膚および粘膜に分布。

 

53. 下顎神経[Vc; V3] ラ:Nervus mandibularis [Vc; V3] 英:Mandibular nerve; Mandibular division [Vc; V3]

 →知覚性線維のほかに咬筋へいたる運動枝を含む。三叉神経の第3枝で最も太く、その中に知覚神経線維の外に三叉神経の運動根からくる全ての運動神経線維を含む。この神経は三叉神経節から出てただちに蝶形骨大翼の卵円孔を通って側頭下窩に出て硬膜、咀嚼筋、頬粘膜、耳介、外耳道付近その他へ枝を与えた後、舌神経、下歯槽神経の2終枝に分かれる。

 

54. 硬膜枝 ラ:R. meningeus; N. spinosus 英:Meningeal branch; Nervus spinosus

 →頭蓋を出るとすぐ分かれて棘孔を通って再び頭蓋腔に入り、上顎神経の硬膜枝とともに、中硬膜動脈に沿って脳硬膜に分布する知覚枝で、なお蝶形骨大翼乳突峰巣の内部にも線維を与える。

 

55. 内側翼突筋神経 ラ:N. pterygoideus medialis 英:Nerve to medial pterygoid

 →内側翼突筋への運動枝。口蓋帆張筋および鼓膜張筋への小枝を伴う。

 

56. (耳神経節枝、耳神経節感覚根) ラ:Rr. ganglionares ad ganglion oticum; Radix sensoria ganglii otici 英:Branches to otic ganglion; Sensory root of otic ganglion

 →下顎神経の内側。卵円孔の下にある副交感性の神経節。舌咽神経から小錐体神経を介し線維の流入があり、耳下腺へ分泌線維を送る。

 

57. 口蓋帆張筋神経 ラ:N. musculi tensoris veli palatini 英:Nerve to tensor veli palatini

 →口蓋帆張筋へいたる枝。ときに内側翼突筋神経より起こる。

 

58. 鼓膜張筋神経 ラ:N. musculi tensoris tympani 英:Nerve to tensor tympani

 →鼓膜張筋へいたる。ときに内側翼突筋へもいたる。

 

59. 咬筋神経 ラ:N. massetericus 英:Masseteric nerve

 →外側翼突筋の上で下顎切痕中を通り咬筋へいたる運動枝。

 

60. 深側頭神経 ラ:Nn. temporales profundi 英:Deep temporal nerves

 →外側翼突筋の内側を下顎骨に接しながら上方に走り、側頭筋へいたる運動枝。

 

61. 外側翼突筋神経 ラ:N. pterygoideus lateralis 英:Nerve to lateral pterygoid

 →外側翼突筋への運動枝。しばしば頬神経とともに起こる。

 

62. 頬神経 ラ:N. buccalis 英:Buccal nerve

 →知覚神経で、外側翼突筋を貫き、またはその下を通り頬筋の外側に出て前にすすみ口角に至る。この間に一部は頬粘膜に分布するとともに、頬の皮膚と第一大臼歯の頬側歯肉に分布。

 

63. 耳介側頭神経 ラ:N. auriculotemporalis 英:Auriculotemporal nerve

 →中硬膜動脈を囲み、下顎骨の関節突起の内側を通って後に向い、つぎに弓状をえがいて外上方に曲がり、耳下腺の下で浅側頭動脈の後側に達し、つぎに多くの枝に分かれて耳介前側および側頭部の皮膚に分布する。

 

64. 外耳道神経 ラ:N. meatus acustici externi 英:Nerve to external acoustic meatus

 →外耳道の皮膚へいたる2本の小枝。その鼓膜枝は鼓膜外面に至る。

 

65. 鼓膜枝 ラ:Rr. membranae tympani 英:Branches to tympanic membrane

 →鼓膜へいたる小枝。

 

66. 耳下腺枝 ラ:Rr. parotidei 英:Parotid branches

 →耳下腺への小枝。耳神経節からくる耳下腺の分泌神経を受ける。

 

67. 顔面神経との交通枝 ラ:Rr. communicantes cum nervo faciali 英:Communicating branches with facial nerve

 →耳神経節よりでる副交感性の線維を顔面神経を通り耳下腺へ送る。

 

68. 前耳介神経 ラ:Nn. auriculares anteriores 英:Anterior auricular nerves

 →耳介前面への枝。

 

69. 浅側頭枝 ラ:Rr. temporales superficiales 英:Superficial temporal branches

 →耳の前および上方の側頭皮膚へ分布する。

 

70. 舌神経 ラ:N. lingualis 英:Lingual nerve

 →下顎神経の枝として外側および内側翼突筋の間を弓状に前方へ走り口腔底に沿って顎下腺および顎舌骨筋の上を前に走ってしたの外側縁に至り、下顎骨体中央部の内側で多くの枝に分かれて舌の中に入り、舌体に分布して、その知覚および味覚を司る。舌神経はその基部の近くで顔面神経の枝である鼓索神経と結合して、これから味覚神経線維および顎下腺と舌下腺への分泌線維を受け、また末端で舌下神経の枝と結合する。智歯近くの粘膜直下に位置する。

 

71. 口峡枝 ラ:Rr. isthmi faucium 英:Branches to isthmus of fauces

 →咽頭および扁桃への枝。

 

72. 舌下神経との交通枝 ラ:Rr. communicantes cum nervo hypoglosso 英:Communicating branches with hypoglossal nerve

 →舌骨舌筋上での舌下神経との連絡。

 

73. 鼓索神経 ラ:Chorda tympani 英:Chorda tympani

 →顎下神経節へいたる副交感性線維および舌の前2/3の味蕾よりの知覚性線維を有する。鼓索中のチツ骨とキヌタ骨の間を後走し、錐体鼓索裂を通り舌神経へ合する。

 

74. 舌下部神経 ラ:N. sublingualis 英:Sublingual nerve

 →舌神経が舌に入る際に出て舌下腺およびそ口腔底の粘膜および下顎前面の歯肉へ分布する。し舌下腺中では舌下神経節を形成する。

 

75. 舌枝 ラ:Rr. linguales 英:Lingual branches

 →味覚および味覚線維を有する舌前2/3へ分布する。多数の枝。

 

76. (顎下神経節の神経節枝;顎下神経節感覚根) ラ:Rr. ganglionares ad ganglion submandibulare; Radix sensoria ganglii submandibularis 英:Ganglionic branches to submandibular ganglion; Sensory root of submandibular ganglion

 →顎下腺の上または前にある副交感性の神経節。鼓索からの節前線維をうけ、節後線維を舌下腺および顎下腺へ与える。

 

77. (舌下神経節の神経節枝;舌下神経節感覚根) ラ:Rr. ganglionares ad ganglion sublinguale; Radix sensoria ganglii sublingualis 英:Ganglionic branches to sublinngual ganglion; Sensory root of sublingual ganglion

 

78. 下歯槽神経 ラ:N. alveolaris inferior 英:Inferior alveolar nerve

 →知覚および運動枝をもつ下顎神経最大の枝。舌神経の1cm後方で下歯槽動脈に伴って下顎孔を通って下顎管に入るが、その直前に顎舌骨筋神経を出す。下顎管内では数枝に分かれ、これが歯槽下で結合して下歯神経叢を作り、下顎の歯および歯肉に分布する。

 

79. 顎舌骨筋神経 ラ:N. mylohyoideus 英:Nerve to mylohyoid

 →顎舌骨筋溝中を、ついで顎舌骨筋下を通る運動性線維。顎舌骨筋と顎二腹筋前腹に運動神経を与えた後、オトガイおよび顎下部に皮神経を送る。

 

80. 下歯神経叢 ラ:Plexus dentalis inferior 英:Inferior dental plexus

 →下顎管中の神経叢。これから出る下歯枝は下顎歯の歯根尖孔から入り歯髄に分布歯、下歯肉枝は槽間中隔を通って歯肉および歯根膜に至る。

 

81.  下歯枝 ラ:Rr. dentales inferiores 英:Inferior dental branches

 →下顎枝への枝。

 

82.  下歯肉枝 ラ:Rr. gingivales inferiores 英:Inferior gingival branches

 →下顎枝の頬側歯肉へ分布する。(第一大臼歯は除く)。

 

83. オトガイ神経 ラ:N. mentalis 英:Mental nerve

 →第二小臼歯下でオトガイ孔をでる知覚枝で下顎の前面に出て、オトガイ枝と下唇枝とに分かれて付近の皮膚に分布する。

 

84. オトガイ枝 ラ:Rr. mentales 英:Mental branches

 

85. 下唇枝 ラ:Rr. labiales 英:Labial branches

 

86. (歯肉枝) ラ:Rr. gingivales 英:Gingival branches

   
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