一般解剖学

系統解剖学



最終更新日: 12/06/01

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Nervous system(神経系)Systema nervosum

Central nervous system(中枢神経系;神経系中枢部) Systema nervosum centrale

Myelencephalon; Medulla oblongata; Bulb(髄脳;延髄;脊髄球)Myelencephalon; Medula oblongata; bulbus rachidicus ずいのう;えんずい;せきずいきゅう Feneis: 274 17

[A14_1_03_003] →(Mylencephalonは、「脊髄」を意味するギリシャ語のmyelosと、「脳」を意味するencephalonを結合してつくられた言葉で、脳の中で一番脊髄側にある部分を指す。Medulla oblongataという語は、元来脊髄の吻側への延長部、すなわち脳全体を指す言葉であったが、後に脳のなかで脊髄に隣接した領域だけを指すようになった。延髄は、脊髄に比べやや膨らんでいるので、bulus「球」とよばれることがある。 脳幹の最尾部で尾方は第一頚神経の根を境として、脊髄に、吻側は橋に移行する。①外表面:外表面には脊髄の前正中裂、前外側溝、後外側溝および後正中溝につづく溝がみられる。前正中裂と前外側溝との間の隆まりは(延髄)錐体ととよばれ、錐体路に相当する。錐体交叉は前正中裂を横切って走る線維として外表面からも認められる。前外側溝と後外側溝との間には背側と腹側に隆起がある。腹側の楕円形の隆起はオリーブで、中にはオリーブ核がある。背側の隆起は灰白結節で、三叉神経脊髄路と脊髄路核に相当する。後中間溝と後外側溝の間には楔状束核と薄束核に一致して、外側には楔状束結節と内側には薄束結節とがみられる。さらに上外方には下小脳脚が存在する。②横断面:脊髄との移行部の高さでは、中心管の背側には後索核(楔状束核と薄束核)がある。これらの核からの線維は内弓状線維となり腹内側に向かい交叉する(これを毛帯交叉とよぶ)。交叉後は錐体の背側に集まり内側毛帯を形成する。一方、腹側では錐体交叉をした線維が背外側の側索に入るのがみられる。オリーブ核の高さでは、一般に延髄背側部には基板および翼板由来の脳神経核が配列されている。内側から外側にかけて体性運動性の舌下神経核、一般内臓遠心性迷走神経背側核(内側核)と唾液核がある。同じく基板由来の特殊内臓遠心性の舌咽、迷走、副神経の疑核は腹外方に位置している。さらに、これらの外側には翼板由来の一般内臓感覚性の迷走神経背側核(外側核)、特殊内臓感覚性の孤束と孤束核があり、一般体性感覚性の三叉神経脊髄路核は延髄の最も外側に位置している。その他、副楔状束核が楔状束核の外側に、介在核が舌下神経核の外側にある。これらの神経核の腹側には網様体とよばれる。ここには縫線核がある。延髄背側部で縫線の両側には内側縦束が通り、その腹側には三角形の内側毛帯がある。腹側部には錐体とその背側から外側にオリーブ核がある。なお第四脳室底の中心灰白質の内側部を背側縦束が通る。延髄も上・下行性伝導路を通過させる。また、延髄には第8~12脳神経の諸核、呼吸中枢、循環中枢などが存在し、これらへの圧力(ヘルニア、頭蓋内圧亢進、などによるもの)は昏睡と死をまねく。延髄とはいうのは脊髄の延長部という意味で名づけられたらしい。このラテン名を最初に使ったのはハイステルLorenz Heister(1740)であるが、橋と脊髄の間の部位に限局して使いだしたのはハレルAlbrecht von Haller(1750)である。延髄はその膨らんだ感じから球とも呼ばれる。 延髄の発生 development of the medulla oblongata:菱脳の尾側半である菱脳は全体として延髄となる。 延髄の頭側約2/3は菱脳窩の尾側半を形成し、舌咽、迷走、副および舌下神経の諸核を生ずる。尾側約1/3の範囲では、内腔は第四脳室の形成に参加せず、狭い裂隙状の中心管として脊髄中心管につづく。この範囲では発生様式も内部構造も脊髄に類似するが、特別な者として翼板から後索核(薄束核と楔状束核)が生ずる。この核は脊髄後索に接続する中継核で、この核から出る神経線維は腹内方に走り、底板の縁帯で交叉した後、正中線の両側を上行する著明な線維束(内側毛帯)をつくり、視床に達する。 翼板と蓋板の移行部である菱脳唇から発生した細胞は腹内方に遊走して、基板の縁帯の中にはなはだ大きい神経核(オリーブ核)を形成する。この核から出る神経線維も基板の縁帯において交叉し、反対側の小脳に達する。このおうに底伴音縁帯は交叉線維で満たされて厚くなり正中縫線となる。 延髄においても上行および下行線維は、はじめは縁帯を通っている。しかし発生が進んで上行およびとくに下行線維が増えると、これらは外套層にも親友するようになる。また上述のように外套層の中には横走線維も多くなるので、はじめ比較的明瞭であった灰白質と白質の区別は次第に不明瞭となる。 胎生4ヶ月において延髄の腹側面で正中線の両側に接する部位の縁帯は、大脳皮質からの下行線維(錐体路線維)によって埋められ、これを延髄錐体と言うが、これは大脳皮質に属するもので、延髄固有の構造物ではない。)

 

External features(表面の形状(延髄の))Morphologia externa ひょうめんのけいじょう(えんずいの) [A14_1_03_003_1]

Anterior median fissure of medulla; Ventral median fissure of medulla(前正中裂;腹側正中裂(延髄の))Fissura mediana anterior medullae oblongatae ぜんせいちゅうれつ;ふくそくせいちゅうれつ(えんずいの) Feneis: 274 18

[A14_1_04_001] →(延髄の前正中裂は延髄前面の正中部にある縦溝で脊髄の前正中裂と連続し、後盲孔で終わる。錐体交叉が横断する。)

Foramen caecum of medulla oblongata; Foramen cecum of medulla oblongata(延髄盲孔;盲孔(延髄の))Foramen caecum medullae oblongatae えんずいもうこう;もうこう(えんずいの)Vicq d'Azyr's foramen

[A14_1_04_002] →(延髄盲孔は延髄の上端、橋の下端にあり、延髄の前正中裂の上限を示す錐体の間にある小さい三角形の陥凹。)

Pyramid of medulla(延髄錐体;延髄の錐体)Pyramis medullae oblongatae えんずいすいたい;えんずいのすいたい Feneis: 274 19

[A14_1_04_003] →(延髄錐体は前正中裂両側にある隆起。第一脊髄神経根を越え、錐体交叉で終わる。皮質脊髄路が通る。皮質脊髄路は延髄下端で、外側皮質脊髄路と前皮質脊髄路に分かれる。錐体路の線維の85%以上は錐体交叉により外側皮質脊髄路に入る。)

Decussation of pyramids; Motor decussation of pyramids(錐体交叉)Decussatio pyramidum すいたいこうさ Feneis: 274 20

[A14_1_04_004] →(錐体交叉は延髄の端部つまり脊髄延髄移行部に大きな特徴として見られる。この神経線維は中心灰白質の前方で大きい神経束を作って交叉し、前角の基部を通って後外方へ投射する。互いに入り組んだ神経線維は、時には非常に太く、後下方に向かって走るので横断切片では大部分の神経交叉が斜めに切断される。外側皮質脊髄路の交叉線維は側索の後部を下行し、一方前皮質脊髄路の非交叉性線維は前索を下行する。上方に向かって連続的に見ると皮質脊髄路の交叉は逆の順序で認められる。身体半側の随意運動は反対側の大脳皮質からくるインパルスによって支配される。その解剖学的な証拠として、錐体交叉がある。)

Anterolateral sulcus of medulla; Ventrolateral sulcus of medulla(前外側溝;腹側外側溝(延髄の))Sulcus anterolateralis medullae oblongatae ぜんがいそくこう;ふくそくがいそくこう(えんずいの) Feneis: 274 21

[A14_1_04_005] →(延髄の前外側溝は錐体の外側にある溝。舌下神経根がでる。)

Retro-olivary groove(オリーブ後溝;後オリーブ溝)Sulcus retroolivaris おりーぶこうこう;こうおりーぶこう Feneis: 274 25

[A14_1_04_010] →(後オリーブ溝はオリーブの後方にある溝。前外側溝と後外側溝との間にある浅い溝で舌咽神経、迷走神経、副神経がでる。)

Pre-olivary groove(オリーブ前溝;前オリーブ溝)Sulcus preolivaris おりーぶぜんこう;おりーぶぜんこう

[A14_1_04_006] →(前オリーブ溝は舌下神経が出る延髄の前外側溝に相当する浅い陥凹で、オリーブと錐体を分ける。)

Lateral funiculus of medulla(側索(延髄の))Funiculus lateralis (Medullae oblongatae) そくさく(えんずいの) Feneis: 274 22

[A14_1_04_007] →(脊髄の側索のつづき。オリーブまで達す。(Feneis))

Olive; Inferior olive(オリーブ)Oliva おりーぶ Feneis: 274 23

[A14_1_04_008] →(オリーブは延髄の外形で迷走神経(Ⅹ)および舌下神経(ⅩⅡ)根の間にある前外側溝と後外側溝の間にある側索には錐体の上部の外側に接して長卵円形の著しいオリーブ状の塊。長さ約1.5cm。オリーブ核によってできた膨隆である。)

Anterior external arcuate fibres of medulla; Ventral external arcuate fibres of medulla(前外弓状線維;腹側外弓状線維(延髄の))Fibrae arcuatae externae anteriores ぜんがいきゅうじょうせんい;ふくそくがいきゅうじょうせんい(えんずいの) Feneis: 274 24

[A14_1_04_009] →(延髄の前外弓状線維は延髄基部の弓状核から出て延髄の外側表面に沿って走っているもの。後外側弓状線維とともに下小脳脚の索状体として小脳にはいる。)

Retro-olivary area(オリーブ後野)Area retroolivaris おりーぶこうや Feneis: 274 26

[A14_1_04_011] →(オリーブ後野はオリーブ後方にある。)

Posterolateral sulcus of medulla; Dorsolateral sulcus of medulla(後外側溝;背外側溝(延髄の))Sulcus posterolateralis medullae oblongatae こうがいそくこう;はいがいそくこう(えんずいの) Feneis: 276 01

[A14_1_04_012] →(延髄の後外側溝は第四脳室外側陥凹にいたる溝。舌咽神経(Ⅸ)、迷走神経(Ⅹ)および副神経(ⅩⅠ)の脳神経根がでる。)

Inferior cerebellar peduncle(下小脳脚)Pedunculus cerebellaris inferior かしょうのうきゃく Feneis: 276 02

[A14_1_04_013] →(下小脳脚は複合線維束であり、脊髄と延髄の細胞群から起こり小脳へ投射する線維で構成されている。この線維は副楔状束核の外側、および三叉神経脊髄路の背側の延髄後外側縁に沿って集まり下小脳脚に入る。索状体という外側の大きな束と索状体傍体という内側の小さな束とからなる脊髄ニューロンと延髄中継核からの線維の複合体である。この線維束は上部延髄ではさらに多くの線維が加わることによって急速に増大し、小脳に入る。交叉性のオリーブ小脳路の線維は下小脳脚の最大の構成成分をなしている。下小脳脚を通る求心路には後脊髄小脳路、副楔状束核小脳路、オリーブ小脳路などがある。前庭小脳路、網様体小脳路、三叉神経小脳路などの求心路や小脳皮質前庭路、室頂核前庭路(鈎状束)などの遠心路は下小脳脚内側部、すなわちMeynertのIAK(innere Abteilung des uteren Kleinhirnstiels, Corpus juxtarestifome)とよばれるところを通る。下小脳脚を経由して小脳にインパルスを中継するその他の延髄の核は、①延髄の外側網様核、②副楔状束核、③傍正中網様核、④弓状核、⑤舌下神経周囲核である。外側網様核と副楔状束核からの投射は非交叉性であるが、他の延髄中継核からくるものは交叉性、非交叉性の両方がある。非交叉性の後脊髄小脳路もこの脚を経由して小脳に投射する。)

Restiform body(索状体;髄小脳脚)Corpus restiforme; Corpus medullocerebellare さくじょうたい;ずいしょうのうきゃく

[A14_1_04_014] →(索状体は下小脳脚の大部分を占める外側部の純求心性線維束である。脊髄から小脳への脊髄小脳線維と延髄から小脳への楔状束小脳線維・網様体小脳線維を含む。)

Trigeminal tubercle(三叉神経結節;灰白結節;三叉神経隆起)Tuberculum trigeminale さんさしんけいけっせつ;さかいはくけっせつ;さんさしんけいりゅうき Feneis: 276 03

[A14_1_04_015] →(三叉神経隆起は延髄の背側面に見られる三叉神経脊髄路の表面の縦の小隆起である。楔状束結節の外側縁にある。)

Cuneate fasciculus(楔状束)Fasciculus cuneatus けつじょうそく Feneis: 276 04

[A14_1_04_016] →(楔状束はブルダッハ束ともよばれる。以前に同部についての報告はあったが、ブルダッハの正確な報告で知られるようになった。楔状束は最初、およそ第六胸髄の高さで出現し、上位の6胸神経と前頚神経の後根の長い上行枝を含む。薄束と楔状束の神経線維は同側を上行し、後索の延髄中継核、すなわち薄束核と楔状束核に終わる。後索系には2部があり、薄束(Goll束)および楔状束(Burdach束)として脊髄の後索を上行する。これらの線維束は太い後根線維の直接の続きであって、延髄の後索核にまで達してシナプス結合する。後索系は主として四肢から起こる線維からなり、系統発生的に新しくて、ヒトでもっとも発達している。ヒトではこの線維の長さは長いもので約150cmである。楔状束は後索の外側部。身体の上半分から起こる線維を含む。ドイツの解剖・生理学者Karl Friedrich Burdach (1776-1847)の名を冠する。)

Cuneate tubercle(楔状束結節;楔状束核結節)Tuberculum cuneatum; Tuberculum nuclei cuneati けつじょうそくけつせつ;けつじょうそくかくけっせつ Feneis: 276 05

[A14_1_04_017] →(楔状束結節は楔状束の延髄の上端にある細長い隆起、薄束結節の外側にある。また、後外側溝によって外側にある側索と隔てられている。内部に楔状束核をいれる。)

Gracile fasciculus(薄束)Fasciculus gracilis はくそくGoll's tract Feneis: 276 06

[A14_1_04_018] →(薄束はゴル束ともよばれる。楔状束(ブルダッハ束)とともに脊髄後索をなす。両側の後索は胸髄上部と頚髄において後中間中隔によって2分される。この中隔はおよそ第六胸髄の高さで認められ、薄束(内側)と楔状束(外側)を分ける。薄束は脊髄全長にわたって存在し、仙髄部、腰髄部、下位6胸髄部の後根由来の長い上行枝を含む。薄束は後索の内側部にある。体の下半分から線維を含む。触覚と深部知覚を伝える。Goll, Frindrich (1829-1903)スイスの解剖学者、チューリヒ大学の教授。脊髄後索の内側部(薄束)について1860年に記述(「Beitrage zur feineren Anatomie・・・」, Denk. Medchir. Ges. Kanton Zurich, 1860, 130-171).)

Gracile tubercle(薄束結節;薄束核結節;槌子)Tuberculum gracile;Clava; Tuberculum nuclei gracilis はくそくけっせつ;はくそくかくけっせつ;ついし Feneis: 276 07

[A14_1_04_019] →(薄束結節は薄束のいくぶん肥厚した上端部で薄束核上にできる細長い隆起。)

Posterior median sulcus of medulla; Dorsal median sulcus of medulla(後正中溝;背側正中溝(延髄の))Sulcus medianus posterior medullae oblongatae こうせいちゅうこう;はいそくせいちゅうこう(えんずいの) Feneis: 276 08

[A14_1_04_020] →(延髄の後正中溝は脊髄より続く溝で、上方はカンヌキで終わる。)

Obex(閂;カンヌキ)Obex かんぬき Feneis: 284 08

[A14_1_04_021] →(閂は延髄の背側面の尾側レベルの正中線上の点で菱形窩または第四脳室の後角の境をなしている。すなわち横走する有髄神経線維を含む薄板によって閉じられている。閂には第四脳室脈絡組織が付着している。)

Internal features(内部の特徴(延髄の))Morphologia interna ないぶのとくちょう(えんずいの) Feneis: 276 09 [A14_1_04_021_2]

延髄の横断面I(その高さについては図459を参照). 錐体交叉のおよそ中央の高さで,後索内側部核と後索外側部核の下端の高さ.有髄神経線維は黒,神経細胞は赤.

延髄の横断面II(その高さについては図459を参照). 毛帯交叉および灰白翼核の下端の高さ. 有髄神経線維は黒,神経細胞は赤.

延髄の横断面III(そめ高さについては図459を参照). オリーブ核および疑核の下端がみえる. 有髄神経線維は黒,神経細胞は赤.

延髄の横断面IV(その高さについては図459を参照). オリーブの下1/3をとおる断面. 有髄神経線維は黒,神経細胞は赤.

延髄,橋および中脳の各横断図の高さを示す.

延髄の横断面V(その高さについては図459参照). オリーブの中央を通る断面.矢印は菱形窩正中溝Sulcus medianus fossae rhomboidisを示す.有髄神経線維は黒,神経細胞は赤.

延髄の横断面VI(その高さについては図459参照). オリーブの上方1/3をとおる断面. 有髄神経線維は黒,神経細胞は赤.

延髄の横断面VII (その高さについては図459参照). この断面は,左側は第四脳室外側陥凹Recessus lateralis ventriculi quartiを通り,右側ではこの陥凹の上方の壁が切線状に切られている. 有髄神経線維は黒,神経細胞は赤.

White matter of medulla; White substance of medulla(白質(延髄の))Substantia alba medullae oblongatae はくしつ(えんずいの) [A14_1_04_101]

Pyramidal tract(錐体路)Tractus pyramidalis すいたいろ Feneis: 276 10

[A14_1_04_102] →(錐体路本来の定義に従えば、起始領域、終枝部位に関係なく延髄の錐体(pyramis)を通るすべての神経線維群をいう。鳥類以下には見られず、哺乳類とくにヒトでよく発達しており意識的運動を司る。これらの大部分の線維は大脳皮質からおこり脊髄におわる皮質脊髄線維(または路)からなるが、若干の線維は錐体の経過中またはそれよりも前方のレベルでの神経路から離れて脳幹にある反対側の運動性の脳神経核および付近の毛様体(皮質網様体線維)におわる。これらの皮質核線維とよばれるものは厳密には錐体路に含まれないが、しばしば両者(皮質脊髄線維と皮質核線維)を一緒にして錐体路とよばれる。錐体路の起始細胞は、昔からの考えによれば起始細胞は、運動領皮質(4野)の第5層の巨大錐体細胞(Betz)で、その経路は、終脳の内包、中脳の大脳脚、橋の橋縦束、さらに延髄の錐体を下行し、脊髄前角にいたる有髄線維の集まりの長下行路である。その経路中、橋核、脳幹の網様体や運動核、またおそらく大脳基底核などに一部側枝を与え、延髄下端で大部分(91~97%)の線維が交叉し(これを錐体交叉という)これらは対側の脊髄側索(錐体側索路、外側皮質脊髄路)を下るが、小部分はそのまま同側の前索(錐体前索路、前皮質脊髄路)を下行する。しかし、錐体路の大脳皮質の起始領野をみれば、運動領(4野)のみでなく知覚領や連合領を含む他の領野まで包括される。起始ニューロンもBetzの巨大細胞のみならず、第5層に、みられる中型・小型の錐体細胞も証明されている。さらに脊髄の終枝部位についても前角の運動ニューロンに直接おわるものは動物による実験的研究で判明した限りではむしろ少なく、大部分は中間帯や後核基部におわり、介在ニューロンを介して運動ニューロンに影響を与えると思われる(間接皮質運動路)。錐体路の起始・終枝の問題だけでなく、錐体を構成する軸索には、古典的な錐体路以外の錐体外路系の線維も少量ながら含まれており、厳密には、延髄の錐体を通る線維群(錐体路)とそれ以外の運動系(錐体外路)とに分けることはむずかしい。)

錐体路 側方よりみる.(Bechterewによる)  Nn 黒核;Np 橋核;Pv 錐体前索路;Pl錐体側索路;Rv 前根;Tpc 橋[核]小脳路.

錐体路,三叉神経と顔面神経の運動性の部分の中心伝導路 前方からみる.(Bechterewによる)  Dp 錐体交叉;Fc 交叉して三叉神経核にいたる線維Fibrae cruciantes;Fd 直接線維Fibrae directae;Fp 錐体束;NV 三叉神経起始核;NVII顔面神経核;Pl 外側皮質脊髄路(錐体側索路); Pv 前皮質脊髄路(錐体前索路);Rv 前根;Tcb 皮質延髄路;Tcsp 皮質脊髄路.

運動性の脳神経の伝導路,核および根 皮質延髄路Tractus corticobulbares(BechterewおよびR. Richterによる) a, b 眼球回転“Augendrehung”に対する皮質の中枢とそこから眼筋の運動を支配する神経(N. III, N. IV, N. VI)の核にいたる伝導路;c 肩部挙上“Schulterhochziehen”に対する皮質の中枢とそこから副神経(N. XI)の核に達する伝導路;fロと眼瞼の筋に対する皮質の中枢とそこから起こって顔面神経(N. VII)の核にいたる伝導路;h “舌”に対する皮質の中枢と舌下神経の核への伝導路;k“咀嚼”に対する皮質の中枢と三叉神経の運動性の核に達する伝導路;s “喉頭”“咽頭”に対する皮質の中枢およびそこから舌咽神経と迷走神経の筋運動性の核(=疑核)に達する伝導路; N. III, N. IV, N. V, N. VI, N. VII, N. XI, N. XII=動眼神経核,滑車神経核など以下これにならう.

大脳基底核Stammganglienのあいだの伝導路(緑);錐体路(赤);錐体外路(緑);大脳皮質と視床とのあいだの結合=黒;錐体外路系に直接あるいは間接に入ってくるニューロン群=青.(H. Spatzによる.技術的に少しく変えてある.)a, a視床から出て線条体に達する線維;b, b線条体から出て淡蒼球に達する線維;c 淡蒼球から出て視床に達する線維;d 淡蒼球から出て同側の視床下核と反対側のそれ(e)とに達する線維;f 淡蒼球から出て赤核に達する線維;g 淡蒼球から出て視床下核に達する線維;h, h 淡蒼球から出て黒核に達する線維とその逆の方向のもの;t 大脳皮質から出て赤核に達する線維;k 大脳皮質から出て視床に達する線維;P 皮質脊髄路;m 中心被蓋束zentrale Haabenbahn;n オリーブ脊髄路;o 赤核脊髄路;*一*終脳と間脳との境界.

Corticospinal fibres(皮質脊髄線維)Fibrae corticospinales ひしつせきずいせんい Feneis: 276 11

[A14_1_04_103] →(皮質脊髄線維は大脳皮質の一次運動野(中心前回の中央部と上部)から起こり、内包に向かって集まり、内包の後脚を通って下行する。内包では、上肢に対する線維は線維は後脚の前部を、下肢に対する線維は後部を走る。ついで、大脳脚に入り、その中央2/3部を下行し、橋・延髄に至る。延髄では、その下部の腹側中央部にあつまり、錐体(実際はその一部)を形成する。それで皮質脊髄線維は錐体路ともいわれる。延髄の下端(大後頭孔のすぐ上方)で、線維は反対側に交叉して錐体交叉をつくる。錐体をつくる下行性線維の大部分は錐体交叉で反対側に交叉し、脊髄側索を外側皮質脊髄路(錐体前索路)として下行する。交叉する線維の割合は個人差が大きい。また、約75%の人で交叉する割合が左右非対称で、左側の錐体路の方が交叉する割合が大きい。外側皮質脊髄路の線維は脊髄を下行しつつ、脊髄灰白質に入り、前角の運動ニューロンに接属する。前角の運動ニューロンに直接に終わる線維と、介在ニューロンを経て関節に連絡するものとがある。前皮質脊髄路の線維は脊髄を下行し、前交連を通って交叉し、反対側に終わるが、一部は非交叉性で同側に終わる。このように皮質脊髄路は大脳皮質からおこり、脊髄前角に達し、その運動ニューロンへ運動指令を伝え、骨格筋の運動を起こさせる。延髄の錐体を通る伝導路のうちで、中心前回の一次運動野から起こる線維は約40%で、頭頂葉とくに中心後回や傍中心小葉などから起こる線維が約30%、前頭葉の運動前野などから発する線維が約30%を占めるといわれる。頭頂葉から発する線維は後索核や脊髄後角の膠様質などに達し、知覚性インパルスの流入に対して調整的な働きをするともいわれる。)

Bulbar corticonuclear fibres(延髄の皮質核線維;皮質核線維)Fibrae corticonucleares bulbi えんずいのひしつかくせんい;ひしつかくせんいろ Feneis: 276 12

[A14_1_04_104] →(延髄の皮質核線維は大脳皮質の運動知覚中枢から延髄の中継核(舌下核、副核、薄束核、楔状束核など)に投射する神経線維。)

Corticoreticular fibres(皮質網様体線維;皮質網様体路)Fibrae corticoreticulares ひしつもうようたいせんい;ひしつもうようたいろ

[A14_1_04_105] →(下位脳幹に投射する皮質網様体路は主として大脳皮質の運動野、前運動野および体性知覚野より起こる。線維は皮質脊髄線維と共に下行し、種々の高さで伝導路からわかれて、網様体路に入る。大部分の線維はかなり限局した2箇所、すなわち延髄と橋に入る。延髄ではこの線維は巨大細胞性網様核に終わる。皮質網様体路線維わずかに対側性優位であるが両側性に分布している。皮質遠心性線維を受ける網様体の領域からは①長い上行・下行投射線維、②小脳への投射線維、③脳神経核への投射などが出ている。)

Decussation of pyramids; Motor decussation(錐体交叉)Decussatio pyramidum すいたいこうさ Feneis: 276 13

[A14_1_04_106] →(脊髄延髄移行部に見られる大きな特徴は錐体交叉である。この神経線維は中心灰白質の前方で大きい神経束を作って交叉し、前角の基部を通って後外方へ投射する。互いに入り組んだ神経線維は、時には非常に太く、後下方に向かって走るので横断切片では大部分の神経交叉が斜めに切断される。外側皮質脊髄路の交叉線維は側索の後部を下行し、一方前皮質脊髄路の非交叉性線維は前索を下行する。上方に向かって連続的に見ると皮質脊髄路の交叉は逆の順序で認められる。身体半側の随意運動は反対側の大脳皮質からくるインパルスによって支配される。その解剖学的な証拠として、錐体交叉がある。)

Gracile fasciculus(薄束)Fasciculus gracilis はくそく Feneis: 276 14

[A14_1_04_107] →(ゴル束ともよばれる。スイスの解剖学者Frindrich Goll (1829-1903)の名を冠する。楔状束(ブルダッハ束)とともに脊髄後索をなす。両側の後索は胸髄上部と頚髄において後中間中隔によって2分される。この中隔はおよそ第六胸髄の高さで認められ、薄束(内側)と楔状束(外側)を分ける。薄束は脊髄全長にわたって存在し、仙髄部、腰髄部、下位6胸髄部の後根由来の長い上行枝を含む。薄束は後索の内側部にある。体の下半分から線維を含む。触覚と深部知覚を伝える。)

Cuneate fasciculus(楔状束)Fasciculus cuneatus けつじょうそく Feneis: 276 16

[A14_1_04_108] →(ブルダッハ束ともよばれる。ドイツの解剖・生理学者Karl Friedrich Burdach (1776-1847)の名を冠する。以前に同部についての報告はあったが、ブルダッハの正確な報告で知られるようになった。楔状束は最初、およそ第六胸髄の高さで出現し、上位の6胸神経と前頚神経の後根の長い上行枝を含む。薄束と楔状束の神経線維は同側を上行し、後索の延髄中継核、すなわち薄束核と楔状束核に終わる。後索系には2部があり、薄束(Goll束)および楔状束(Burdach束)として脊髄の後索を上行する。これらの線維束は太い後根線維の直接の続きであって、延髄の後索核にまで達してシナプス結合する。後索系は主として四肢から起こる線維からなり、系統発生的に新しくて、ヒトでもっとも発達している。ヒトではこの線維の長さは長いもので約150cmである。楔状束は後索の外側部。身体の上半分から起こる線維を含む。)

Internal arcuate fibres(内弓状線維)Fibrae arcuatae internae ないきゅうじょうせんい Feneis: 276 19

[A14_1_04_109] →(内弓状線維は薄束核と楔状束核から起こる有髄神経線維は内弓状線維となり中心灰白質をまわって前内方へ移動する。これらの線維は完全に交叉し、内側毛帯とよばれる明瞭な上行束を形成する。)

Decussation of medial lemniscus; Sensory decussation(内側毛帯交叉;毛帯交叉;感覚交叉)Decussatio lemnisci medialis; Decussatio lemniscorum ないそくもうたいこうさ;もうたいこうさ;かんかくこうさ Feneis: 276 20

[A14_1_04_110] →(内側毛帯は感覚性の神経路で、交叉線維でできる。この交叉を内側毛帯交叉(感覚交叉)という。)

Medial lemniscus(内側毛帯)Lemniscus medialis ないそくもうたい Feneis: 276 21

[A14_1_04_111] →(延髄の後索(薄束および楔状束)を通過する伝導路は圧覚と触覚や固有知覚の興奮を後索核(薄束核および楔状束核)や視床を経て大脳皮質に伝達する神経路である。薄束核および楔状束核から起こる二次ニューロンは延髄視床路(内側毛帯)となり正中縫線近く延髄の中心を通り上行する。橋にはいると外側に広がり、橋核の背側縁を越えて上行する扁平な帯になる。中脳内では、黒質の背側縁を越えて赤核で外側に移る。内側膝状体まで内側を通り視床の後腹側核に入り、そこで終わる。視床を出た第3ニューロンの線維は、上行して大脳皮質におもむく。内側毛帯系は脊髄から上行する識別性感覚路の最初の一環を形成するのは後根を通って入ってくる太い有髄神経の枝であり、後索を上行する。後索を上行するこれらの神経線維は身体部位対応配列を示す。すなわち、仙骨神経根や腰神経塊を通って入ってくる上行枝は後索の内側部を占めて薄束を形成する。一方、頚神経根を通って入ってくる上行枝は後索の外側部を占めて楔状束を形成する。また、胸神経根を通って入ってくる少数の上行枝は、薄束と楔状束との間に位置する。薄束と楔状束は、延髄の尾側端でそれぞれ対応する神経核、すなわち、薄束核と[内側]楔状束核に終止する。ある後根が支配する皮膚領域は、同時にその後根の上下の後根からも支配されている。このように一定の皮膚領域を支配する隣接後根の神経線維群は、後根から後索、さらに後索核へと向かう経過のうちに、一つの神経束にまとまる。このような集束の結果として、隣接する皮節(dermatome)間の重なり合いは解消されるのであるが(一つの皮節からの情報を伝道する神経線維が集合して一つにまとまる)、後索で最初にみられたような層構造は次第に不明瞭になる。薄束核の背側部と[内側]楔状束核の背側部にはニューロンが幾つかの小群をつくって分布する。超す悪を上行する神経線維の中で、四肢の遠位部を支配するものがこれらのニューロン小群に終止して身体部位対応配列を示す。後索核の腹側部と吻側部では身体部位対応配列はあまり精細でない。後索には後核固有核から起こる内在性神経線維も含まれている。これらの内在性神経線維は後索核の腹側部と吻側部に終止する。その他、後側索(側索後部)を上行する神経線維は両側の後索核の腹側部と吻側部、およびZ群(group Z)に終止する。Z群は薄束核の吻側端に位置するニューロン群であり、下肢の筋からの入力を視床に中継する。上枝からの固有感覚性入力を中継するのは外側楔状束核である。この核から起こる投射神経線維は主として下小脳脚を通って小脳へ入る。後索核の腹側部と吻側部から起こる投射神経線維は、後索核背側部(ニューロンの小群の集合から成る)から起こる投射神経線維に比べて、分布範囲が広い。すなわち、前者も後者も反対側の視床へ向かうのであるが、前者はさらに小脳や下オリーブ核に投射し、脊髄の後角へ向かうものもある。薄束核と[内側]楔状束核からは内弓状線維が起こり、正中部で交叉してのち、内側毛帯を形成して上行枝、視床の後外側腹側核、後核群、内側膝状体大細胞部、および不確帯に終止する。後索核から後外側腹側核への投射は”核と殻(core-and-shell)”の様式を示す。すなわち、後索核背側部から起こる皮膚感覚の投射線維は後外側腹側核の中心部(すなわちcoreの部分)に終止し、後索核腹側部と吻側部から起こる固有感覚の投射線維は後外側腹側核の辺縁部(すわなち、shellの部分)に終止する。内側毛帯線維は後外側腹側核において一連の平行な層板をなして終止する。これらの層板は核のcoreの部分とshellの部分を通じて前後方向に伸びており、それぞれの層板が身体の特定の部位に対応している。また、各層板の前後軸に沿って、種々の感覚要素に対応する投射線維の終末が次々と配列分布する。)

知覚性脊髄神経の中心径路(BechterewおよびR. Richterによる) 内側毛帯(=内側および外側延髄視床路+脊髄視床路)をで示す.bc視床を通りぬける延髄皮質線維;l後索外側部(楔状束);m 後索内側部(薄束);Ncd後柱核;Ncr上丘核;Nld後索外側部核(楔状束核);Nlt視床外側核;Nmd 後索内側部核(薄束核);Rd後根;spt脊髄視床路;tc視床皮質路.

Tectospinal tract(視蓋脊髄路)Tractus tectospinalis しがいせきずいろHeld's bundle Feneis: 276 22

[A14_1_04_112] →(視蓋脊髄路は四丘体と脊髄をむすぶ交叉性線維。顔面神経核と三叉神経核との間にある。 視蓋脊髄路および視蓋延髄線維は中脳の背側被蓋交叉で交叉して縫線の近くを下行し、延髄では内側縦束と共に走る。頚髄まで下行する視蓋脊髄路は主にⅦおよびⅧ層内に枝分かれする。)

Medial longitudinal fasciculus; MLF(内側縦束)Fasciculus longitudinalis medialis ないそくじゅうそく Feneis: 276 23

[A14_1_04_113] →(前索の後部には脳幹のいろいろなレベルにある種々な神経核からでる複雑な下行線維束がある。この複雑な神経線維束は内側縦束として知られている。この神経束の脊髄部は同じ名称で呼ばれる脳幹にある伝導路の一部にすぎない。内側縦束の上行線維は主として前庭神経内側核および上核から起こり、同側性および対側性に主として外眼筋支配の神経核(外転、滑車、動眼神経核)に投射する。内側核からの上行線維は主に交叉をし、両側の外転神経核と左右の動眼神経核に非対称性に終わるが、滑車神経核へは対側性に投射する。上核の中心部にある大形細胞は非交叉性上行線維を内側縦束に出し、これは滑車神経核および動眼神経核に終わる。同核の周辺部にある周辺部にある小型細胞は交叉性の腹側被蓋束(内側縦束の外側にある)を経て動眼神経核に投射するが、これは主として対側の上直筋を支配する細胞に作用する。生理学的には、前庭神経核から外眼筋支配核から外眼筋支配核への上行性投射のうち、交叉性線維は促進的に働くが、非交叉性線維は抑制的に働く。内側縦束にはこのほかに、左右の外転神経核の間にある神経細胞から起こり、交叉して上行し、動眼神経核の内側直筋支配部に終わる明瞭な線維が含まれる。この経路は一方の外転神経核の活動を対側の動眼神経核内側直筋支配部へ連絡する物で、外側視の場合に、外側直筋が収縮すると同時に対側の内側直筋が共同して収縮するための神経機構を形成している。内側縦束の上行線維の一部は、動眼神経核を回ってCajal間質核に終わる。これは内側縦束内にうまっている小さい神経細胞群である。前庭神経内側核は対側性に間質核へ投射するが、上核は同側性に終わる。前庭神経二次線維は両側性に視床の中継核へ投射し、その数は中等度で、後外側腹側核に終止する。前庭からの入力を受ける視床の細胞は体性感覚情報にも対応するが、これは視床には特定の前庭感覚中継核がないことを示唆している。)

Posterior longitudinal fasciculus; Dorsal longitudinal fasciculus(後縦束;背側縦束)Fasciculus longitudinalis posterior; Fasciculus longitudinalis dorsalis こうじゅうそく;はいそくじゅうそくSchütz, Fasciculus of, Bundle of Feneis: 276 24

[A14_1_04_114] →(背側縦束は中脳から延髄にかけて中心灰白質の腹内側部にみれれる小さい神経線維束で、細い有髄線維を含む。上行性および下行性の比較的短い神経線維の連鎖であり、吻側では視床下部の室周線維に連絡する。自律性または内臓性情報の中枢伝導系の一つとされる。)

Spinal tract of trigeminal nerve; Spinal tract of CN V(三叉神経脊髄路)Tractus spinalis nervi trigemini さんさしんけいせきずいろ Feneis: 276 25

[A14_1_04_115] →(三叉神経脊髄路は延髄から橋の横断面上にコンマ状に明確に認められる線維束。脊髄路核の各部の第Ⅰ層と第Ⅲ層細胞から起こる。これらのうち、下部と中間部からの線維は同側性であるが、上部からのものは両側性に下行し、後柱に入る感覚性情報を調節し、種々の反射に関係し、さらに三叉神経支配の受容器と脊髄の体性および内臓性効果器を連絡している。)

Amiculum of olive(オリーブ核外套;オリーブ外套;オリーブ小包)Amiculum olivare おりーぶかくがいとう;おりーぶがいとう;おりーぶしょうほう Feneis: 276 29

[A14_1_04_116] →(オリーブ外套はオリーブ周囲の線維包被。オリーブ諸核の求心性および遠心性線維。 赤核から主オリーブ核への線維は小細胞性赤核から起こり、同側の中心被蓋束(路)を通って主オリーブ核の背側板に終止する。これらの線維は背側板に終止知る前に主オリーブ核のまわりに線維包を作る(オリーブ外套)。オリーブ外套は主オリーブ核の外側を取り巻く有髄線維層であって、そのすべてが赤核オリーブ核線維ではない。)

Spino-olivary tract(脊髄オリーブ核路;脊髄オリーブ路)Tractus spinoolivaris せきずいおりーぶかくろ;せきずいおりーぶろ Feneis: 278 02

[A14_1_04_117] →(脊髄オリーブ路は脊髄小脳回路のもう一つの系路であり、脊髄からのインパルスを下オリーブ核の一部を経て小脳に中継する。これには2つの最も明瞭な伝導路、すなわち後脊髄オリーブ小脳路と前脊髄オリーブ小脳路がある。後脊髄オリーブ路の線維は後索を上行して楔状束核と薄束核の細胞にシナプス結合し、ここから副オリーブ核にインパルスが伝えられる。複数の前脊髄小脳路の線維は反対側の前索を上行し、背側および内側副オリーブ核の種々な部位に終始する。脊髄オリーブ路を形成する線維は脊髄のあらゆるレベルから起こり、皮膚とⅠb群受容器の興奮によって活動する。副オリーブ核は主に小脳の前葉に投射する交叉性のオリーブ小脳路の起始となる。)

Olivocerebellar tract(オリーブ核小脳路;オリーブ小脳路)Tractus olivocerebellaris おりーぶかくしょうのうろ;おりーぶしょうのうろ Feneis: 278 03

[A14_1_04_118] →(オリーブ核小脳路は下オリーブ核から小脳に投射する経路である。交叉性で下小脳脚を通り小脳皮質のほぼ前域とすべての小脳核に投射する。皮質では登上線維となりPurkinje細胞と結合する。下オリーブ核の主オリーブ核と背側および内側副オリーブ核内の尾状な領域と小脳皮質との間に明瞭な投射の局在関係が認められる。大きく分けて虫部皮質は内側副オリーブ核から、虫部傍皮質は内側および背側副オリーブ核から、半球皮質は主オリーブ核からの線維を受ける。)

Inferior cerebellar peduncle(下小脳脚)Pedunculus cerebellaris inferior かしょうのうきゃく Feneis: 278 04

[A14_1_04_013] →(下小脳脚は複合線維束であり、脊髄と延髄の細胞群から起こり小脳へ投射する線維で構成されている。この線維は副楔状束核の外側、および三叉神経脊髄路の背側の延髄後外側縁に沿って集まり下小脳脚に入る。索状体という外側の大きな束と索状体傍体という内側の小さな束とからなる脊髄ニューロンと延髄中継核からの線維の複合体である。この線維束は上部延髄ではさらに多くの線維が加わることによって急速に増大し、小脳に入る。交叉性のオリーブ小脳路の線維は下小脳脚の最大の構成成分をなしている。下小脳脚を通る求心路には後脊髄小脳路、副楔状束核小脳路、オリーブ小脳路などがある。前庭小脳路、網様体小脳路、三叉神経小脳路などの求心路や小脳皮質前庭路、室頂核前庭路(鈎状束)などの遠心路は下小脳脚内側部、すなわちMeynertのIAK(innere Abteilung des uteren Kleinhirnstiels, Corpus juxtarestifome)とよばれるところを通る。下小脳脚を経由して小脳にインパルスを中継するその他の延髄の核は、①延髄の外側網様核、②副楔状束核、③傍正中網様核、④弓状核、⑤舌下神経周囲核である。外側網様核と副楔状束核からの投射は非交叉性であるが、他の延髄中継核からくるものは交叉性、非交叉性の両方がある。非交叉性の後脊髄小脳路もこの脚を経由して小脳に投射する。)

Juxtarestiform body(傍索状体;索状傍体)Corpus juxtarestiforme ぼうさくじょうたい;さくじょうぼうたい

[A14_1_04_119] →(傍索状体は索状体の内側にあり、前庭小脳路の一次入力線維は傍索状体を通って小脳に入り、小節の全域と中部垂の腹側の小葉とに広く終止する。)

Restiform body(索状体)Corpus restiforme さくじょうたい

[A14_1_04_014] →(索状体は下小脳脚の大部分を占める外側部の純求心性線維束である。脊髄から小脳への脊髄小脳線維と延髄から小脳への楔状束小脳線維・網様体小脳線維を含む。)

Solitary tract(孤束)Tractus solitarius こそくGierke, Respiratory bundle of Feneis: 278 09

[A14_1_04_120] →(孤束は被蓋背側部を縦走する細いが明瞭な線維束。孤束核で囲まれ、閂の下方で左右のものが中心管の背側で交叉し、ある距離上を下り頚髄上部へと入る。迷走神経、舌咽神経および顔面神経(中間神経)に由来する内臓求心性線維によって形成されている。下の前2/3の味覚を伝道する神経(鼓索神経)と下の後1/3部の味覚伝導神経(舌咽神経)は主として孤束核の吻側に部に終わる。迷走神経が入る高さとその尾方の孤束は主として一般内臓求心性線維を含み、大部分は迷走神経からくる。)

Anterior external arcuate fibres of medulla; Ventral external arcuate fibres of medulla(前外弓状線維;腹側外弓状線維(延髄の))Fibrae arcuatae externae anteriores ぜんがいきゅうじょうせんい;ふくそくがいきゅうじょうせんい(えんずいの) Feneis: 278 23

[A14_1_04_009] →(延髄の前外弓状線維は弓状核よりでる。オリーブの外を斜行し、小脳脚へいたる。)

Posterior external arcuate fibres; Dorsal external arcuate fibres(後外弓状線維;背側外弓状線維)Fibrae arcuatae externae posteriores はいそくがいきゅうじょうせんい;がいきゅうじょうせんい Feneis: 278 24

[A14_1_04_121] →(後外弓状線維は弓状核の外側部よりでて下小脳脚にいたる線維。内耳神経(Ⅷ)核領域ではこの線維は後脊髄小脳路の代わりをなす。この部分では胸髄核を欠く。)

Raphe of medulla oblongata(延髄縫線)Raphe medullae oblongatae えんずいのほうせん Feneis: 278 25

[A14_1_04_122] →(延髄の縫線は毛帯交叉のなかの正中線。間に神経細胞体が分散している線維束の交叉が特徴。)

Anterior raphespinal tract(前縫線脊髄路;前縫線核脊髄路)Tractus raphespinalis anterior ぜんほうせんかくせきずいろ;ぜんほうせんせきずいろ

[A14_1_04_123] →(前縫線核脊髄路は主として延髄および橋尾側部から起こり前索の中を下行する神経線維束)

Anterior reticulospinal tract; Ventral reticulospinal tract(前網様体脊髄路;腹側網様体脊髄路)Tractus reticulospinalis anterior ぜんもうようたいせきずいろ;ふくそくもうようたいせきずいろ [A14_1_04_124]

Anterior spinocerebellar tract; Ventral spinocerebellar tract(前脊髄小脳路;腹側脊髄小脳路)Tractus spinocerebellaris anterior ぜんせきずいしょうのうろ;ふくそくせきずいしょうのうろGower's tract

[A14_1_04_125] →(ガワーズ路ともよばれる。前脊髄小脳路は発育が悪い。この伝導路は後脊髄小脳路の前方で脊髄の外側辺縁部に沿って上行する。これは最初下部胸髄にあらわれるが、その起始細胞は胸髄核ほどには、はっきりと分離していない。線維は第Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ層の一部の細胞から起こる。この伝導路の起始となる細胞は、尾髄と仙髄から上方へ第一腰髄まで広がっている。前脊髄小脳路の線維は後脊髄小脳路より数が少なく、均一に太く、また、結局すべて交叉する。後脊髄小脳路のように、主として下肢からのインパルスの伝達に関与する。前脊髄小脳路を出す細胞はGolgi腱器官由来のⅠb群求心性線維からの単シナプス性興奮を受けるが、そのGolgi腱器官の受容範囲はしばしば下肢の各関節における一つの協力筋群を包含している。小脳へのこの経路は2個のニューロンで構成されている。すなわち①脊髄神経節のニューロンⅠおよび②腰髄、仙髄および尾髄の前角と後角の基部の散在性の細胞群のニューロンⅡである。ニューロンⅡの線維は脊髄内で交叉し外脊髄視床路の線維の辺縁部を上行する。その線維は橋上位の高さで上小脳脚の背側面を通って小脳に入る。この伝導路の大部分の線維はは対側の小脳虫部の前部のⅠからⅣ小葉に終わる。おの伝導路線維は下肢全体の協調運動や姿勢に関係するインパルスを伝達する。臨床的には、他の脊髄伝導路が混在するために、脊髄小脳路の損傷に対する影響を決めることは結局不可能である。小脳へ投射されるインパルスは意識の領野には入らないから、このような損傷によって触覚や運動覚が失われることはない。Gowers, Sir William Richard(1845-1915)イギリスの神経科医、病理学者。ロンドン大学の教授。ヘモグロビン測定器の発明(1878年)、検眼鏡の活用に尽力し、ブライト病での眼底所見を示す(1876年)。脊髄疾患について記し、このときガワーズ路を記述(「The diagnosis of disease of the spinal cord」, 1880)。彼はまた速記術に興味を持ち、医学表音速記者協会を創設した。)

Hypothalamospinal fibres(視床下部脊髄線維)Fibrae hypothalamospinales ししょうかぶせきずいせんい

[A14_1_04_126] →(視床下部脊髄線維は室傍核および視床下部の後部・外側部領域より起こり、同側脳幹の腹外側部を通り脊髄の側索にはいり中間外側核に終わる線維。)

Interstitiospinal tract(間質核脊髄路;介在核脊髄路)Tractus interstitiospinalis かんしつかくせきずいろ;かいざいかくせきずいろ

[A14_1_04_127] →(間質核脊髄路は中脳の間質核から起こり同側を下行してRexedの脊髄節Ⅶ層とⅧ層に終わる線維束。)

Lateral raphespinal tract(外側縫線核脊髄路)Tractus raphespinalis lateralis がいそくほうせんかくせきずいろ

[A14_1_04_128] →(外側縫線核脊髄路は大縫線核から起こり側索後部を下行して脊髄後核に終わる線維束。このセロトニン性線維は後角で痛覚上方の抑制にかかわっている。)

Lateral bulboreticulospinal tract(外側延髄網様体脊髄路)Tractus bulboreticulospinalis lateralis がいそくえんずいもうようたいせきずいろ

[A14_1_04_129] →(延髄網様体脊髄路は延髄の巨大細胞網様体核から起こり同側を下行してRexedの脊髄節Ⅶ層とⅧ層に終わる。)

Medullary reticulospinal fibres(延髄網様体脊髄線維)Fibrae medulloreticulospinales えんずいもうようたいせきずいせんい [A14_1_04_130]

Lateral vestibulospinal tract(外側前庭脊髄路;外側前庭神経核脊髄路)Tractus vestibulospinalis lateralis がいそくぜんていせきずいろ;がいそくぜんていしんけいかくせきずいろ

[A14_1_04_131] →(外側前庭脊髄路は延髄の外側前庭核(Deiters核)から起こり交叉せず、前正中裂外側の脊髄前索を下行する線維束。この伝導路は脊髄の全長にわたっており、それぞれの高さで前角内側部に線維を送っている。この神経路の運動興奮によって心筋群の活動が強まる。)

Posterior spinocerebellar tract; Dorsal spinocerebellar tract(後脊髄小脳路;背側脊髄小脳路)Tractus spinocerebellaris posterior こうせきずいしょうのうろ;はいそくせきずいしょうのうろ

[A14_1_04_132] →(後脊髄小脳路は胸髄核から出て交叉せずにすぐ側索周辺部の背側部を上行し、下小脳脚を通って同側の小脳の前葉、一部は虫部錐体、虫部垂などの皮膚に達する。)

Cuneocerebellar fibres(副楔状束核小脳路線維;楔状束核小脳路線維)Fibrae cuneocerebellares ふくけつじょうそくかくしょうのうろせんい;けつじょうそくかくしょうのうろせんい

[A14_1_04_133] →(楔状束を上行する非交叉性後根線維は筋の求心性線維(Ia群)とGolgi腱器官の求心性線維(Ib群)のインパルスを伝え、副楔状束核の細胞に体部位局在性に終わる。この線維は、胸髄核が第八頚髄より上方には存在しないから、この経路を通るものと考えられる。延髄の背外側にある副楔状束核は胸髄核と相同のものと考えられる。副楔状束核の細胞は、下小脳脚を経由して小脳に入る(副)楔状束核小脳路繊維をだす。この繊維は同側性に小脳皮質のV小葉に終わる。(副)楔状束小脳路は相同もので上肢に関与すると考えられる。)

Rubrobulbar tract(赤核延髄路)Tractus rubrobulbaris せきかくえんずいろ

[A14_1_04_134] →(赤核延髄路と赤核脊髄路の下行性線維は反対側の小細胞性網様体や脊髄中間体背外側核に終止し、また顔面神経核運動ニューロンに直接シナプスする。ネコでは脊髄C8とT1の前核背外側部に存在する運動ニューロンの小群にも直接終枝すると報告されている。赤核延髄路と赤核脊髄路には身体部位対応配列がみらえる。顔面神経核に投射する赤核ニューロンは赤核の背側部に分布し、頚膨大または腰膨大に投射する赤核ニューロンは、それぞれ赤核の中間部または腹外側部に分布する。単一の赤核脊髄路線維で頚膨大と腰膨大の両方に分枝を送るものはほとんどない。赤核は反対側の屈筋支配運動ニューロンに興奮性の入力を与え、版tないそくの伸筋支配運動ニューロンを興奮性の入力を与え、反対側の伸筋支配運動ニューロンに興奮性の入力を与え、反対側の伸筋支配運動ニューロンを抑制する。赤核脊髄路を損傷すると、四肢、特にその遠位部を独立に動かすのが困難になる。)

Rubro-olivary tract(赤核オリーブ核路;赤核オリーブ路)Tractus rubroolivaris せきかくおりーぶかくろ;せきかくおりーぶろ

[A14_1_04_135] →(赤核の小細胞部から非交叉性の線維束が中心被蓋路に入り、オリーブ核主核の背側板に終わる。これを赤核オリーブ路といい、小脳へのフィールドバック系の一部をなす。)

Rubrospinal tract(赤核脊髄路)Tractus rubrospinalis せきかくせきずいろMonakow's tract Feneis: 272 29

[A14_1_04_136] →(『モナコフ束』ともよばれる。この伝導路の線維は、中脳被蓋の中心部にある卵円形の細胞集団である赤核からおこる。赤核は普通、吻側の小細胞群と尾側の大細胞群に分けられ、それらは動物によって大きさに差がある。赤核脊髄路は赤核の大細胞部から起こる。赤核脊髄路の線維は腹側被蓋交叉で完全に交叉し、脊髄各髄節を側索の皮質脊髄路の前側および一部それと混在して下行する。赤核脊髄路の線維は体部位局在性に構成されており、核の特定の部分の細胞はきめられた脊髄のレベルに選択的に投射する。頚髄へ投射する線維は赤核の背側および背内側部からおこり、一方腰仙髄に投射する線維は赤核の腹側および腹外側から起こる。胸髄は赤核の中間部から起こる線維を受ける。赤核脊髄路は①脊髄全長を下行する、②第Ⅴ層の外側半分、第Ⅵ層、および第Ⅶ層の背側部および中央部に終止する。赤核は大脳皮質と小脳から線維を受ける。“運動野”皮質からの皮質赤核路線維は赤核の小細胞部には両側性に、大細胞部には同側性に投射する。これらの投射線維はその起始終止とも体部位局在性に配列する。このシナプス結合を通して、皮質赤核路と赤核脊髄路とは共同して体部位局在性に配列した非錐体外路系伝導路として大脳皮質運動領と特定の脊髄レベルの間に存在する。赤核のあらゆる部分が上小脳脚を経てくる交叉性の小脳遠心線維を受ける。歯状核からの線維は赤核の前1/3に投射し、中位核(ヒトの球状核と栓状核に相当する)からの線維は体部位局在的に小脳皮質の部分と赤核の大細胞部とを関係づけている。赤核の細胞を刺激すると対側の屈筋のα運動ニューロンに興奮性シナプス後電位が発生し、また、伸筋のα運動ニューロンに抑制的シナプス後電位が発生する。赤核脊髄路の最も重要な機能は屈筋群の筋緊張の制御に関与することである。 Monakow, Constantin von (1853-1930) スイスの神経学者。大脳皮質の機能局在を明示し(Die Lolcalisation in Grosshirn u. der Abbau der Funktion durch kortical Herde, 1914)、モナコフ束(赤核脊髄路)を記述(Der rote Kern, die Haube u. die Regio hypothalamica bei einigen Saeugetieren und beim Menschen, Arb. Hirnanat. Inst. Zuerich, 1909, 3, 51-267; 1910, 4, 103-225)。)

Spinal lemniscus; Anterolateral tracts; Anterolateral system(脊髄毛帯;前外側路;前外側系)Lemniscus spinalis; Tractus anterolaterales せきずいもうたい;ぜんがいそくろ;ぜんがいそくけい Feneis: 280 24

[A14_1_04_137] →(脊髄毛帯は前外側系ともよばれる。脊髄側索の腹外側部にある複合線維の束で、脊髄視床線維・脊髄視床下部線維・脊髄毛帯線維・脊髄被蓋線維および脊髄から中脳水道周辺灰白質への線維を含む。後索核におこり視床におわる線維束を内側毛帯(狭義)とよぶが、橋頭側半のレベルから先は、この内側毛帯に脊髄視床路と三叉神経視床路とが合流して上行する。この複合体を内側毛帯(広義)とよぶところから、脊髄視床路を脊髄毛帯、三叉神経視床路を三叉神経毛帯と呼ぶことがある。侵害刺激・温度感覚・識別力のない触覚の伝導路である。)

Spinothalamic fibres(脊髄視床線維)Fibrae spinothalamicae せきずいししょうせんい

[A14_1_04_138] →(脊髄視床線維は後角のかなり広い範囲から起こる。その領域はまだ確定されていないが、おそらくⅠ・Ⅵ・Ⅶ層より起こると思われる。これらの線維の大部分はその起始部よりも1ないし数節頭側のレベルで白前交連を通って正中線で交叉し、反対側の前側索(前索と側索の境界部)を外側脊髄視床路(痛覚、温度覚)および前脊髄視床路(触覚)として上行する。両神経路共にそれを構成する神経線維に身体部位対応的配列がみられる。前脊髄視床路線維の中には延髄網様体や延髄外側網様核に終止するものがある。その他の線維はほぼオリーブ核尾側端のレベルで外側脊髄視床路に加わる。外側脊髄視床路は痛覚受容に関与しており、脊髄では前脊髄視床路の背外側方に位置している。脊髄視床線維の多くが脳幹網様体に終止する。橋と中脳の境界レベルでは、残りの脊髄視床線維が内側毛帯に加わる。したがって後索系、内側毛帯、脊髄視床路を併せて、“毛帯系”という。)

Spinoreticular fibres(脊髄網様体線維)Fibrae spinoreticulares せきずいもうようたいせんい

[A14_1_04_139] →(後柱に局在する一部のニューロンが軸索を前側索に出し、それらが上行して脳幹網様体の広い領域に分布している。脊髄網様体線維はの多くは延髄に終止し、同側性であるが、橋まで上行する線維は少なく、両側性に連絡するものが多い。)

Spinomesencephalic fibres(脊髄中脳線維)Fibrae spinomesencephalicae せきずいちゅうのうせんい

[A14_1_04_140] →(脊髄中脳線維は脊髄毛帯に含まれて中脳に終わる神経線維の総称。視蓋脊髄線維から上丘線維・水道周囲脊髄線維の深層に続き水道周囲灰白質に終わる。)

Spinotectal fibres(脊髄視蓋線維)Fibrae spinotectales せきずいしがいせんい

[A14_1_04_141] →(脊髄視蓋線維は脊髄後核の神経細胞からおこり、前交連で対側に移り前外側索を上行して上丘深層に終わる神経線維。)

Spinoperiaqueductal fibres(脊髄中脳水道周囲灰白質線維)Fibrae spinoperiaqueductales せきずいちゅうのうすいどうしゅういかいはくしつせんい

[A14_1_04_142] →(脊髄中脳水道周囲線維は脊髄後角の神経細胞から起こり、対側の前外側索を上行して中脳の水道周囲灰白質に終わる神経線維。下行性痛覚抑制路を含む。)

Spinohypothalamic fibres(脊髄視床下部線維)Fibrae spinohypothalamicae せきずいししょうかぶせんい

[A14_1_04_143] →(脊髄視床下部線維は脊髄灰白質から起こり、前外側索の一部として上行し視床下部に終わる神経線維。)

Spinobulbar fibres(脊髄延髄線維)Fibrae spinobulbares せきずいえんずいせんい [A14_1_04_144]

Spino-olivary fibres(脊髄オリーブ核線維)Fibrae spinoolivares せきずいおりーぶかくせんい

[A14_1_04_145] →(脊髄オリーブ核線維は脊髄から起こり、同側を上行して下オリーブ核の副核に終わる神経線維。)

Spinovestibular tract(脊髄前庭神経核路;脊髄前庭路)Tractus spinovestibularis せきずいぜんていしんけいかくろ;せきずいぜんていろ

[A14_1_04_146] →(腰髄から後脊髄小脳路に混じって上行する線維が前庭神経核複合体に側副枝をだす。これを脊髄前庭路とよんでいる。)

Tectobulbar tract(視蓋延髄路)Tractus tectobulbaris しがいえんずいろ

[A14_1_04_147] →(視蓋延髄路は上丘から両側性に中脳網様体や反対側の橋および延髄網様体に終わる線維が出る。これらを一括して視蓋延髄路または線維とよぶ。この神経路に伴行して下行し、橋核、脳神経の背側核とくに眼筋支配の核に終末している。このことから眼球運動の反射に密接な関連をもつとみられる。)

Grey matter of medulla; Grey substance of medulla; Gray mater of medulla; Gray substance of medulla(灰白質(延髄の))Substantia grisea partis basilaris pontis かいはくしつ(えんずいの) [A14_1_04_201]

Gracile nucleus(薄束核;後索内側部核;後索内側核;槌子核)Nucleus gracilis; Nucleus partis medialis fasciculi dorsalis; Nucleus clavae はくそくかく;こうさくないそくぶかく;こうさくないそくかく;ついしかくGoll's nucleus Feneis: 276 15

[A14_1_04_202] →(薄束核はゴル核ともよばれる楔状束核の内側にある核で、細胞学上3つの領域に分けられる、薄束核のニューロンは、三角形、多角形ないし卵円形の中等大の細胞体をもっており、比較的短い、中等度に分岐した少数の樹状突起が各方向に伸びている。核は円形ないし楕円形の切口を示し、しばしば核膜の深い陥入をみる。粗面小胞体は体運動性の細胞のように斑状のニッスル小体をつくることなく、細胞全体に濔漫性に広がり、神経細糸、微細管と入り混じる。遊離のポリゾームも多い。ゴルジ装置はとくによく発達し、核の周りを取り囲み、太い樹状突起のかなり遠位部にまで達している。軸索は、細胞体ないし、むしろしばしば大きな樹状突起の基部から出て神経網に入り、他の薄束核ニューロンの軸索と共に内側弓状線維を形成して内側毛帯に入るのであるが、神経網にはいると間もなく通常1本、時にそれ以上の側副枝を出して、おのれ自身の細胞、ないし同じ薄束核の他の細胞の樹状突起に、自己抑制系(もしかすると促進形)のシナプスるを形成する。薄束を上行してくる後根線維はしばしば糸球体を形成して樹状突起に終わるが、これより数の少ない軸索細胞体終末の中には、錐体路の側副枝が含まれていることが知られている。)

Central part of gracile nucleus; Cell nest region of gracile nucleus(中心部;細胞巣領域(薄束核の))Pars centralis nuclei gracilis ちゅうしんぶ;さいぼうそうりょういき(はくそくかくの)

[A14_1_04_203] →(中央の「細胞集団」域、数個の細胞群からなる。)

Rostral part of gracile nucleus; Shell region of gracile nucleus(吻側部;殻領域(薄束核の))Pars rostralis nuclei gracilis ふんそくぶ;からりょういき(はくそくかくの)

[A14_1_04_204] →(吻側の網様部、散在性の細胞配列が特徴である。)

Rostrodorsal subnucleus of gracile nucleus; Cell group Z(吻背側亜核;Z細胞群(薄束核の))Subnucleus rostrodorsalis nuclei gracilis ふんはいそくあかく;Zさいぼうぐん(はくそくかくの)

[A14_1_04_205] →(Z細胞群は薄束核の吻側端に位置するニューロン群であり、下肢の筋からの入力を視床に中継する。)

Cuneate nucleus(楔状束核;後索外側部核;後索外側核;内側楔状束核)Nucleus cuneatus けつじょうそくかく;こうさくがいそくぶかく;こうさくがいそくかくBurdach's nucleus Feneis: 276 17

[A14_1_04_206] →(楔状束核はブルダッハ核とも呼ばれる。脊髄の後索の3核の中の1つ。閂の高さから下方にかけて延髄の背面近くに位置する。楔状束核は薄束核の外側にある核で細胞構築上、部位的差異を示す。楔状束核の背側部には灌木上の樹状突起をもった円い細胞集団の集団があり、腹側部には三角形、多極性、紡錘形の細胞がみられる。円形細胞群は上肢の遠位部から来る一次求心線維を受け、小さな皮膚受容野に関係すると考えられている。Burdach, Karl Friedrich (1776-1847) ドイツの解剖学者、生理学者、ブルダッハ索(脊髄楔状束)を記述(「Vom Baue u. Leben des Gehirns」, 1819-1826))

Central part of cuneate nucleus; Cell nest region of cuneate nucleus(中心部;細胞巣領域(楔状束核の))Pars centralis nuclei cuneati ちゅうしんぶ;さいぼうそうりょういき(けつじょうそくかくの) [A14_1_04_207]

Rostral part of cuneate nucleus; Shell region of cuneate nucleus(吻側部;殻領域(楔状束核の))Pars rostralis nuclei cuneati ふんそくぶ;からりょういき(けつじょうそくかくの) [A14_1_04_208]

Lateral cuneate nucleus; Accessory cuneate nucleus(副楔状束核;外側楔状束核)Nucleus cuneatus accessorius; Nucleus cuneatus lateralis ふくけつじょうそくかく;がいそくけつじょうそくかく Feneis: 276 18

[A14_1_04_209] →(副楔状束核は楔状束核のわずかに吻側の高さでその外側にあり、Clarkeの背核(胸髄核)に類似した大きな細胞核とClarkeの背核に類似した大きな細胞からなる。副楔状束核とClarkeの背側核は形態学的に類似しており(大形細胞で核は中心からずれている)、次のような特徴をもつ。①脊髄神経節から求心性線維を受けている。②同側の小脳へ投射線維を出している。③筋紡錘、Golgi腱器官、および皮膚からの情報を中継している。副楔状束核に終止する神経線維は楔状束核に投射する線維と同じ脊髄神経節、すなわち頚及び上部胸神経の神経節に由来する。楔状束を上行する線維は体部位局在性配列をもって副楔状束核に終わる。副楔状束核の細胞は下小脳脚を経て小脳に入る非交叉性の(副)楔状束核小脳路線維をだす。副楔状束核の主な小脳投射は同側性で、前葉の傍正中部に終止する。楔状束確証の迂路は後脊髄小脳路と相同の神経路で、上肢に関与している。)

Preaccessory cuneate nucleus; Cell group X(副楔状束前核;X細胞群)Nucleus precuneatus accessorius ふくけつじょうそくぜんかく;Xさいぼうぐん [A14_1_04_210]

Spinal tract nucleus of trigeminal nerve; Spinal nucleus of trigeminal nerve; Spinal tract nucleus of CN V(三叉神経脊髄路核;三叉神経脊髄核)Nucleus tractus spinalis tractus nervi trigeminalis; Nucleus spinalis nervi trigeminalis さんさしんけいせきずいろかく;さんさしんけいせきずいかく Feneis: 276 26

[A14_1_04_211] →(三叉神経脊髄路核は三叉神経脊髄路の内側に沿ってあり、橋の三叉神経根のレベルから第二頚髄まで存在する知覚性神経核 。三叉神経脊髄路の線維は全域にわたってこの神経核の細胞に終止する。細胞構築上三叉神経脊髄核は①吻側部、②中間部、③尾側部に分けられる。)

Caudal part of spinal tract nucleus of trigeminal nerve; Caudal part of spinal nucleus of trigeminal nerve(尾側亜核;尾部;尾側部(三叉神経脊髄路核の))Pars caudais nuclei tractus spinalis nervi trigemini; Pars caudais nuclei spinalis nervi trigemini びそくあかく;ぶぶ;びそくぶ(さんさしんけいせきずいろかくの)

[A14_1_04_212] →(三叉神経脊髄路の尾側部(下部)の層構造は4つからなり、脊髄後柱の層に類似する。第Ⅰ層の細胞は侵害刺激と温度刺激に反応し、第Ⅱ層および第Ⅳ層(大細胞層)三叉神経脊髄核の尾側部(下部)は前額部、頬および下顎と広い部位からの感覚を受ける。)

Zonal subnucleus of spinal tract nucleus of trigeminal nerve; Zonal subnucleus of spinal nucleus of trigeminal nerve(帯状層;辺縁部(三叉神経脊髄路核の尾側亜核の))Subnucleus zonalis nuclei tractus spinalis nervi trigemini; Subnucleus zonalis nuclei spinalis nervi trigemini たいじょうそう;へんえんぶ(さんさしんけいせきずいろかくのびそくあかくの)

[A14_1_04_213] →(三叉神経脊髄核の帯状亜核(第Ⅰ層)の細胞は侵害刺激と温度刺激に反応する。P物質を含む線維は下部の第Ⅰ層と第Ⅱ層の外部に終わる。)

Gelatinous subnucleus of spinal tract nucleus of trigeminal nerve; Gelatinous subnucleus of spinal nucleus of trigeminal nerve(膠様層;膠様質(三叉神経脊髄路核の尾側亜核の))Subnucleus gelatinosus nuclei spinalis nervi trigemini; Subnucleus gelatinosus nuclei tractus spinalis nervi trigemini こうようそう;こうようしつぶ(さんさしんけいせきずいろかくのびそくあかくの)

[A14_1_04_214] →(三叉神経脊髄路核の膠様質部(第Ⅱ層)の細胞は膠様質に対応する。ロイシン-エンケファリン陽性細胞は第Ⅱ層の深部に認められる。)

Magnocellular subnucleus of spinal tract nucleus of trigeminal nerve; Magnocellular subnucleus of spinal nucleus of trigeminal nerve(大細胞層(三叉神経脊髄路核の);三叉神経脊髄路核の大細胞部)Subnucleus magnocellularis nuclei spinalis nervi trigemini; Subnucleus magnocellularis nuclei tractus spinalis nervi trigemini だいさいぼうそう(さんさしんけいせきずいろかくの);さんさしんけいせきずいろかくのだいさいぼうぶ

[A14_1_04_215] →(三叉神経脊髄核の大細胞性亜核(第Ⅲ層および第Ⅳ層)は後柱固有核に相当する。)

Interpolar part of spinal tract nucleus of trigeminal nerve; Interpolar part of spinal nucleus of trigeminal nerve(中間亜核;中間部;両極間部(三叉神経脊髄路核の))Pars interpolaris nuclei tractus spinalis nervi trigemini; Pars interpolaris nuclei spinalis nervi trigemini ちゅうかんあかく;ちゅうかんぶ;りょうきょくかんぶ(さんさしんけいせきずいろかくの)

[A14_1_04_216] →(三叉神経脊髄路核の中間部(両極間部)は主として顔面皮膚から感覚を受ける。)

Retrotrigeminal nucleus(三叉神経核後核)Nucleus retrotrigeminalis さんさしんけいかくこうかく [A14_1_04_217]

Retrofacial nucleus(顔面神経核後核)Nucleus retrofacialis がんめんしんけいかくこうかく [A14_1_04_218]

Inferior olivary complex(下オリーブ核群;下オリーブ複合体;オリーブ核)Complexus olivaris inferior; Nuclei olivares inferiores; Nucleus olivaris かおりーぶかくぐん;かおりーぶふくごうたい Feneis: 276 28

[A14_1_04_219] →(下オリーブ核は延髄腹側部にあり、①主オリーブ核(主核)、②内側副オリーブ核(内側副核)、③背側副オリーブ核(背側副核)の三つの部分から成る。主オリーブ核は系統発生的に新しく、ヒトおよびサルなどの高等哺乳類では発育がよい。その形はしわのある袋状をなし、その内側に向けられた袋の口はオリーブ核門とよばれる。そこにはオリーブ核の細胞の軸索が集まって出るところである。オリーブ核からの遠心路はオリーブ小脳路となる。主オリーブ核は系統発生的に新しい小脳の半球皮質と結合し、副オリーブ核は虫部および中位核(栓状核、球状核)と結合する。オリーブ核は非常に広汎な領域からの求心線維を受け、その終枝には局在性が認められる。その起源は大脳皮質運動野、赤核、視蓋前域、不確帯、Cajal間質核、後索核、三叉神経脊髄路核、小脳核(歯状核と中位核)および脊髄などである。)

Principal olivary nucleus(主オリーブ核;オリーブ主核)Nucleus olivaris principalis; Nucleus olivae しゅおりーぶかく;おりーぶしゅかく

[A14_1_04_220] →(主オリーブ核は下オリーブ核複合体の最大部分で、波形の細胞層からなり背側層板・腹側層板とこれらを連結する外側層板からなる。この細胞層の内側に向いた開口がオリーブ核門である。系統発生的に新しく、ヒトおよびサルなどの高等哺乳類では発育がよい。その形はシワの多い袋状をなし、内側に向かう開口部、すなわち門を持つ。)

Dorsal lamella of principal olivary nucleus(背側板;背側層板(主オリーブ核の))Lamella posterior nuclei olivaris はいそくばん;はいそくそうばん(しゅおりーぶかくの) [A14_1_04_221]
Ventral lamella of principal olivary nucleus(腹側板;腹側層板(主オリーブ核の))Lamella anterior nuclei olivaris principalis ふくそくばん;ふくそくそうばん(しゅおりーぶかくの) [A14_1_04_222]
Lateral lamella of principal olivary nucleus(外側板;外側層板(主オリーブ核の))Lamella lateralis nuclei olivaris principalis がいそくばん;がいそくそうばん(しゅおりーぶかくの) [A14_1_04_223]

Hilum of inferior olivary nucleus(下オリーブ核門;オリーブ核門)Hilum nuclei olivaris inferioris; Hilus nuclei olivaris かおりーぶかくもん;おりーぶかくもん Feneis: 276 30

[A14_1_04_224] →(下オリーブ核はヒダの多い袋のような形状を示し、袋の口にあたるところは内側に向かい下オリーブ核門と呼ばれる。)

Posterior accessory olivary nucleus; Dorsal accessory olivary nucleus(後副オリーブ核;背側副オリーブ核)Nucleus olivaris accessorius posterior; Nucleus olivaris accessorius dorsalis こうふくおりーぶかく;はいそくふくおりーぶかく Feneis: 276 32

[A14_1_04_225] →(背側副オリーブ核は主オリーブ核の背側にある下オリーブ核の副核。)

Medial accessory olivary nucleus(内側副オリーブ核)Nucleus olivaris accessorius medialis ないそくふくおりーぶかく Feneis: 276 31

[A14_1_04_226] →(内側副オリーブ核は内側毛帯の外側縁に沿って存在する下オリーブ核の副核。)

Nucleus of hypoglossal nerve; Hypoglossal nucleus; Nucleus of CN XII(舌下神経核)Nucleus nervi hypoglossi ぜっかしんけいかく Feneis: 278 05

[A14_1_04_227] →(舌下神経核は第12脳神経、すなわち舌下神経の起始核である。脊髄前角の運動神経細胞群の頭側延長部として、延髄において第四脳室底の直下で正中線背側部の両側に存在し、オリーブ核下端部より内耳神経核のレベルにわたる細胞柱(約2cm)を形成する。内舌筋および5個のうち4個の外舌筋を支配している運動神経核。)

Posterior paramedian nucleus of medulla; Dorsal paramedian nucleus(後正中傍核;背側正中傍核(延髄の))Nucleus paramedianus posterior こうせいちゅうぼうかく;はいそくせいちゅうぼうかく(えんずいの) Feneis: 278 06

[A14_1_04_228] →(延髄の背側正中傍核は延髄から橋下部のあいだにみられ、舌下神経核の背内側に位置する。延髄網様体に連なる。)

Posterior nucleus of vagus nerve; Dorsal nucleus of vagas nerve(迷走神経背側核;迷走神経後核)Nucleus posterior nervi vagi; Nucleus dorsalis nervi vagi めいそうしんけいはいそくかく;めいそうしんけいこうかく Feneis: 278 07

[A14_1_04_229] →(迷走神経背側核はさらに内側核と外側核とに分けられる。内側核(背側運動核dorsal motor nucleus)は一般内臓遠心性である副交感性線維を出す。外側核は迷走神経支配の領域から一般内臓求心線維が終止する。この核はまた孤束核に含められ、孤束核の内側核として取り扱われることが多い。迷走神経背側運動核は舌下神経核の背外側で第四脳室底に位置する。比較的小さい紡錘形の細胞からなるこの細胞柱は、吻側および尾側共にわずかに舌下神経核を越えて広がっている。この神経核の一部の大きい細胞は粗大なNissl小体と散在性のメラニン色素を含む。迷走神経背側運動核の細胞は副交感神経節前線維(GVE)をだし、軸索は軸索は三叉神経脊髄路およびその核を貫いて延髄外側面より外にでる。迷走神経背側運動核迷走神経性の分泌運動中枢である。迷走神経背側運動核の細胞はコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)に強く免疫陽性を示す。この核を破壊すると、インスリンによって誘発される胃液分泌が大きく減弱する。)

Nuclei of solitary tract; Solitary nuclei(孤束核)Nuclei tractus solitarii こそくかく Feneis: 278 10

[A14_1_04_230] →(孤束核は延髄背側を矢状方向に走る細い細胞柱で、菱形窩底の下で境界溝のすぐ外側にある。小さい独立核の集まりで一括して言えば脳幹の内臓求心性の核であって迷走神経、舌咽神経、顔面神経からの線維が孤束を経てはいってくる。孤束核は次の数個の部分に分けられる。すなわち、①内側部、迷走神経背側運動核の背外側にある、②背内側、背外側および腹外側亜核、孤束を取り巻く、および③小細胞性亜核、最後野の腹側にある。内側部の細胞は迷走神経背側運動核を吻側にわずかに越え、また、第四脳室より下方へ広がり、反対側の同じ細胞性と合一して迷走神経交連核をつくる。外側の諸核は大細胞性の細胞柱をなし、孤束を一部あるいは完全に取り巻いている。この外側部は孤束のほぼ全長にわたって平行に存在する。吻側では橋下部まで広がり、一方尾側ではその細胞数が減少し、網様体との区別が難しくなる。孤束核の膨大した吻側部(すなわち外側部)は主として特殊内臓求心性(味覚)線維を顔面神経(中間神経)と一部の顔面神経と舌咽神経からくる一般内臓求心性線維を受ける。孤束核の内側部の細胞は多数のニューロペプチドを含有している。すなわち、エンケファリン、ソマトスタチン、サブスタンスP、およびコレシストキニンなどである。同部位にはサブスタンスP含有線維も豊富に存在する。孤束核から起こる二次路系は次の部位に同側性に投射する。すなわち、①疑核とその周辺の網様体、②橋上部の傍腕核、および③味覚に関与する視床の核、すなわち後内側腹側核(小細胞部)である。孤束核から起こるその他の二次線には舌下神経核と唾液核に投射し、舌の運動と唾液の分泌反射を仲介する。孤束核からの迷走神経背側運動核、横隔神経核(第三(C3)・第四(C4)・第五(C5)頚髄の高さ)、および胸髄の前角細胞への投射はせきと嘔吐反射に関与する。孤束核は生理学的に同定された延髄の呼吸“中枢”と同一の広がりをもち、この中枢は疑核とその周辺の網様体を包含する。延髄“呼吸中枢”の細胞は迷走神経のインパルス、および直接の化学的環境変化(CO2蓄積)によって賦活される。別個の昇圧帯と減圧帯からなる延髄の血管運動“中枢”は十分明らかにされていない。最近、心臓血管系の調節に関する神経回路網が重視されてきた。ノルアドレナリン作働性ニューロンの1集団(グループA5と呼ばれる)が橋の下部で上オリーブ核と顔面神経の根線維の間にあり、軸索を孤束核、疑核、迷走神経背側運動核および胸髄の交感神経節前線維のニューロンに投射しており、上記神経回路網の一部と思われる。)

Parasolitary nucleus(孤束傍核)Nucleus parasolitarius こそくぼうかく Feneis: 278 11 [A14_1_04_231]

Commissural nucleus of solitary nuclei(交連核;孤束交連核(孤束核の))Nucleus commissuralis こうれんかく;こそくこうれんかく(こそくかくの) Feneis: 278 19

[A14_1_04_232] →(孤束核の交連核は延髄では明らかでない核。孤束核の尾側部は、尾内方に向かって伸びており、尾側端では、左右の孤束核はつながって交連核となっている。孤束核の尾側部からの上行性線維は、脳幹網様体、視床下部、視床などに終止している。)

Gelatinous solitary nucleus(孤束膠様核)Nucleus gelatinosus solitarius こそくこうようかく [A14_1_04_233]

Intermediate solitary nucleus(孤束中間核)Nucleus intermedius solitarius こそくちゅうかんかく [A14_1_04_234]

Interstitial solitary nucleus(孤束間質核)Nucleus interstitialis solitarius こそくかんしつかく [A14_1_04_235]

Medial solitary nucleus(孤束内側核)Nucleus medialis solitarius こそくないそくかく [A14_1_04_236]

Paracommissural solitary nucleus(孤束交連傍核)Nucleus paracommissuralis solitarius こそくこうれんぼうかく [A14_1_04_237]

Posterior solitary nucleus; Dorsal solitary nucleus(後孤束核;背側孤束核)Nucleus solitarius posterior こうこそくかく;はいそくこそくかく [A14_1_04_238]

Posterolateral solitary nucleus; Dorsolateral solitary nucleus(後外側孤束核;背外側孤束核)Nucleus solitarius posterolateralis こうがいそくこそくかく;はいがいそくこそくかく [A14_1_04_239]

Anterior solitary nucleus; Ventral solitary nucleus(前孤束核;腹側孤束核)Nucleus solitarius anterior ぜんこそくかく;ふくこそくそくかく [A14_1_04_240]

Anterolateral solitary nucleus; Ventrolateral solitary nucleus(前外側孤束核;腹外側孤束核)Nucleus solitarius anterolateralis ぜんがいそくこそくかく;ふくがいそくこそくかく [A14_1_04_241]

Vestibular nuclei in medulla oblongata(前庭神経核;前庭神経核群)Nuclei vestibulares in medulla oblongata ぜんていしんけいかく;ぜんていしんけいかくぐん Feneis: 278 12

[A14_1_04_242] →(前庭神経核群は第四脳室底外側部の深部に位置しており、下前庭核、内側前庭核(Schwalbe核)、外側前庭核(Deiters核)、上前庭核(Bechterew核)である。下前庭核には大きな細胞からなる大細胞部またはF群細胞が尾方にある。中間の大きさの神経細胞が外側前庭核の外側部にあって貧細胞部またはⅠ群細胞といわれる。前庭神経からの入力線維を受けており、室頂核および小脳の片葉小節葉と相互に結合し、また、内側縦束を経て、外側神経核、滑車神経核と動眼神経核、脊髄の前角へ線維を出す。前庭神経外側核は前庭脊髄路を介して、脊髄の前角へ同側性に線維を出す。)

Inferior vestibular nucleus(前庭神経下核;下前庭神経核)Nucleus vestibularis inferior ぜんていしんけいかかく;かぜんていしんけいかく Feneis: 278 13

[A14_1_04_243] →(前庭神経核群のうち、前庭神経下核は延髄において副楔状束核の内側から上方へ前庭神経が脳幹に入るまでの高さにあり、主として小型および中型の細胞溶離成る。ただし、その最も吻側部は前庭神経外側核に似た大型細胞から成る。神経線維染色標本で縦走する線維束の認められるのがこの核の特徴である。)

Magnocellular part of inferior vestibular nucleus; Cell group F(前庭神経下核の大細胞部;F細胞群;Fグループ細胞)Pars magnocellularis nuclei vestibularis inferioris ぜんていしんけいかかくのだいさいぼうぶ;Fさいぼうぐん;FぐるーぷさいぼうSchwalbe's nucleus [A14_1_04_244]

Medial vestibular nucleus in medulla oblongata(前庭神経内側核;内側前庭神経核)Nucleus vestibularis medialis in medulla oblongata ぜんていしんけいないそくかく;ないそくぜんていしんけいかく Feneis: 278 14

[A14_1_04_245] →(前庭神経内側核は小型および中型細胞からなり、比較的線維が少ない。これは前庭神経核のうちで最も大きく、舌下神経核の吻側端の高さから外転神経核の高さまで伸び、上方は前庭神経上核と融合する。前庭神経内側核から起こり内側前庭神経核脊髄路を下行する神経線維は反対側の中心頚髄核にも終止する。)

Marginal nucleus of restiform body; Cell group Y(索状体辺縁核;Y細胞群)Nucleus marginalis corporis restiformis さくじょうわいへんえんかく;Yさいぼうぐん [A14_1_04_246]

Cochlear nuclei in medulla oblongata and pontile tegmentum(蝸牛神経核(延髄と橋被蓋の))Nuclei cochleares in medulla oblongata かぎゅうしんけいかく(えんずいときょうひがいの) Feneis: 278 16

[A14_1_04_247] →(第8脳神経のうち蝸牛神経の線維を受けるこの核は、延髄上部の高さから延髄中央部の高さで下小脳脚を背側および外側から包んで存在する。これは一般に背側部と腹側部に分かれ、それぞれ蝸牛神経背側核および腹側核といわれる。ラセン神経節内の双極細胞の注す右枝はすべてこの核におわるが、それらの線維は分枝して背側核と腹側核のそれぞれに規則正しく配列しておわる。すなわちラセン管の基底部からの線維はそれぞれの核の背側部に、またラセン管尖部からのものは腹側部におわる。したがって機能的には両核内で背側部は高周波の、また腹側部は低周波の音波の刺激を最もよく受けることになる。これらの音に対する局在(tontopical localization)は上位の聴覚路にも受け継がれていく。)

Posterior cochlear nucleus; Dorsal cochlear nucleus(蝸牛神経後核;蝸牛神経背側核;背側蝸牛神経核)Nucleus cochlearis posterior かぎゅうしんけいこうかく;かぎゅうしんけいはいそくかく;はいそくかぎゅうしんけいかく Feneis: 278 18

[A14_1_04_248] →(蝸牛神経背側核は腹側核よりやや下方の高さで下小脳脚の背外側に接し、菱形窩の聴結節にある。この核は多くの動物では層構造を示すが、ヒトでも多少その傾向が認められる。)

Anterior cochlear nucleus; Ventral cochlear nucleus(蝸牛神経前核;蝸牛神経腹側核;腹側蝸牛神経核)Nucleus cochlearis anterior かぎゅうしんけいぜんかく;かぎゅうしんけいふくそくかく;ふくそくかぎゅうしんけいかく Feneis: 278 17

[A14_1_04_249] →(蝸牛神経腹側核は発育がよく、下小脳脚の腹外側で、蝸牛神経の根の外側にある。蝸牛神経腹側核はその部位と細胞構築によって、前腹側核と後腹側核の2亜核に分けられる。蝸牛神経腹側前核anteroventral cochlear nucleusは吻側で卵円形細胞が密につまっており、また蝸牛神経腹側後核posteroventral cochlear nucleusは蝸牛神経の脳内侵入部近くにあって種々の形の神経細胞よりなるが、そのうちの主な物は多極性である。これらの亜核には音階的配列があり、音階に応じて連続的に対応している。蝸牛神経の線維は脳幹内に入ったのち、規則正しく順番に分岐して蝸牛神経背側核および腹側核の両方に音快的配列をもって終止する。蝸牛神経核内で線維が次々と規則正しく分岐と分布を行うので全ての亜核内で重なりあった周波数配列が認められる。蝸牛神経核では高い周波数に反応する細胞が背側に、低い周波数に反応する細胞が腹側に位置するが、これは蝸牛とは反対の配列である。)

Anterior part of anterior cochlear nucleus(前部(蝸牛神経前核の))Pars anterior nuclei cochlearis anterior ぜんぶ(かぎゅうしんけいぜんかくの) [A14_1_04_250]
Posterior part of anterior cochlear nucleus(後部(蝸牛神経前核の))Pars posterior nuclei cochlearis anterior こうぶ(かぎゅうしんけいぜんかくの) [A14_1_04_251]

Commissural nucleus of vagus nerve(迷走神経交連核)Nucleus commissuralis nervi vagi めいそうしんけいこうれんかく [A14_1_04_252]

Nucleus ambiguus(疑核)Nucleus ambiguus ぎかく Feneis: 278 20

[A14_1_04_253] →(疑核はオリーブの背側にある核。舌咽神経(IX)、迷走神経(X)および副神経(XI)延髄根の起始核。疑核は三叉神経脊髄路核と下オリーブ核群のほぼ中間で、網様体内にある細胞柱である。この核は毛帯交叉の高さより下オリーブ核群の吻側1/3部の高さまで広がり多極性のコリン作働性の下位運動ニューロンからなる。この核より出た線維は背側に弧を描き、迷走神経背側運動核からの遠心線維と一緒になり下オリーブ核群の背側の延髄外側面から外にでる。疑核の尾方部は副神経の延髄根をだし、吻側部は舌咽神経の特殊内臓遠心性線維をだす(茎突咽頭筋を支配する)。迷走神経の特殊内臓遠心性線維(迷走神経に結合する副神経延髄根からの線維を含めて)は咽頭と喉頭の筋を支配する。疑核の細胞はNissl染色標本では同定が困難であり、この細胞は線維を出し、副神経脊髄根の一部を構成する。疑核の細胞はコリン作働性であるので、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)により免疫細胞化学反応を行えば、容易に見ることができる。舌下神経核と迷走神経背側運動核の細胞もChAT免疫反応陽性である。)

Retro-ambiguus nucleus(疑核後核)Nucleus retroambiguus ぎかくこうかく

[A14_1_04_254] →(疑核後核はOlszewski and Baxterの外側巨大細胞性網様体傍核lateral paragigantocellular nucleusの尾側部にあたる。疑核後核はおそらく咽頭筋支配運動ニューロンの集合領域である。)

Inferior salivary nucleus; Inferior salivatory nucleus(下唾液核;下唾液分泌核;延髄の唾液核)Nucleus salivarius inferior; Nucleus originis salivatorius medullae oblongatae かだえきかく;かだえきぶんぴつかく;えんずいのだえきかく Feneis: 278 21

[A14_1_04_255] →(下唾液核は延髄の網様体中に位置する副交感神経節前ニューロン群で、疑核の背側にある。この核の軸索は舌咽神経を通って脳を出て、耳神経節を介して耳下腺の分泌を支配している。上下唾液核の細胞は放散していて網様体の外側部では混ざり合っている。)

Arcuate nucleus of medulla oblongata(弓状核(延髄の))Nucleus arcuatus きゅうじょうかく(えんずいの) Feneis: 278 22

[A14_1_04_256] →(延髄の弓状核は錐体の腹側部に、大きさ、位置、高さがさまざまな小さい細胞集団により構成される。この核はしばしば上部で橋核と連続する。入力線維は大脳皮質に由来し、遠心性線維は外弓状線維となって小脳に投射する。弓状核からの線維の一部は延髄の正中線を背側に走って第四脳室髄条を形成して外側方に走り、下小脳脚を通って小脳に達する。)

Raphe nuclei of medulla oblongata(縫線核;縫線核群(延髄の))Nuclei raphes in medulla oblongata ほうせんかく;ほうせんかくぐん(えんずいの) Feneis: 278 26

[A14_1_04_257] →(延髄の縫線核は網様体中の細胞群。正中部にある。)

Area postrema(最後野)Area postrema さいこうや Feneis: 282 34

[A14_1_04_258] →(最後野は人では延髄の背内側部にあって、第四脳室の尾側端野側壁から隆起する一対のゼラチン様の組織塊として認められる。第四脳室の尾部は、中心管へ向かって筆先状に狭くなるので、最後野も吻側から尾方にせばまるV字状の、縦に長い構造物として観察される。吻側の最も開いた部分では、左右に1.5-2mmに開き、尾側端では中心管開口部の側壁に位置している。最後野は吻側に向かうほど背側へ移動し、その側方は第四脳室底に移行している。最後野の側縁は、多くの場合第四脳室ヒモの尾に当たり、第四脳室天蓋と脈絡組織を形成する軟膜に付着している。最後野は星状膠芽細胞に似た細胞、小動脈、類洞および、若干の無極あるいは単極ニューロンを有する。最後野は特殊な上衣層域のひとつで、血液脳関門外にあり、脳室周囲器官として総称されている。最後野を除くすべての脳室周囲器官は無対であり、間脳の特定部位に関係している。孤束核と脊髄から来る線維は最後野に投射する。最後野周辺の終止域はニューロフィジン、オキシトシン、バゾプレッシンを含有する。しかしこれらのペプチドは最後野内には検出できない。最後野は化学的嘔吐受容器で、アポモルフィンや静脈内に投与されたジキタリス配糖体に感受性をもっている。)

Endolemniscal nucleus(毛帯内核)Nucleus endolemniscalis もうたいないかく [A14_1_04_259]

Medial pericuneate nucleus(内側楔状束周囲核;内側楔状束核周囲核)Nucleus pericuneatus medialis ないそくけつじょうそくしゅういかく;ないそくけつじょうそくかくしゅういかく

[A14_1_04_260] →(内側楔状束周囲核は閂の高さで、楔状束核の内側(基底部)をOlszewski and Baxter (1954)はこの核のmedial or basal pericuneate zoneとよび、小細胞によって構成される領域と規定した。閂より尾方では細胞はより小型になり、分布は粗になるが、吻側で最後野のレベルになると細胞は密になると同時に多型性を呈する。位置としては、この部は孤束核の外側で、三叉神経脊髄路核の内側にあたる。Paxinos et al (Paxinos G, Tork I, Halliday G and Mehler W: Human homologs to brain stem nuclei identified in ot her animals as revealed by acetylcholinesterase activity. In: The Human Nervous System. Ed by G Paxinos. Academic Press, San Diego, pp149-202, 1990)は、この部を内側楔状束周囲核と命名し、楔状束核と分離した核として取り扱い、アセチルコリンエステラーゼ陽性の小型、中型、ときに大型ニューロンを含む領域として記載している。)

Lateral pericuneate nucleus(外側楔状束周囲核;外側楔状束核周囲核)Nucleus pericuneatus lateralis がいそくけつじょうそくしゅういかく;がいそくけつじょうそくかくしゅういかく

[A14_1_04_261] →(外側楔状束周囲核は外側楔状束核の腹側から腹外側で、下小脳脚の起始部の内側縁に食い込んだ部分に当たる。この核がもっとも広がりを増している領域では、この核は外側頚髄核を取り囲む頚神経の後根由来の線維群と、三叉神経脊髄路の線維群の間に介在して両者を分けている。この核の吻側は閂の領域から外側頚髄核の吻側端まで伸び、舌下神経核の細胞柱とほぼ同じ長さに達する。)

Perihypoglossal nuclei(舌下神経周囲核)Nuclei perihypoglossales ぜっかしんけいしゅういかく

[A14_1_04_262] →(舌下神経核を囲む灰白質はいくつかの独立した核群を形成し、まとめて舌下神経周囲核という。このなかには介在核、前位核、Roller核(舌下神経下核)がある。)

Subhypoglossal nucleus; Nucleus of Roller(舌下神経下核;ローレル核)Nucleus subhypoglossalis ぜっかしんけいかかくRoller's nucleus

[A14_1_04_263] →(舌下神経下核はローレル核とよばれている。舌下神経下核はヒトでは明瞭にみらえるが他の動物では発達が悪く認めにくい。Roller, Christian Friedrich Wilhelm (1802-1872) ドイツの神経学者。バーデンの有名な精神医学者。延髄のローレル中心核、舌下神経核の腹側方にある「小細胞性の舌下神経核」として記述。また、1844年にAllgem, Zeitschr. Fur Psychiatrieを創刊。そこに彼の多くの論文を発表している。)

Intercalated nucleus(介在核)Nucleus intercalatus かいざいかくStaderini's nucleus Feneis: 278 08

[A14_1_04_264] →(介在核は舌下神経前位核、Roller核とともに舌下神経周囲核と総称される一群に含まれる。前庭小脳の皮質、室頂核、脳幹網様体、Cajal間質核および脊髄からの線維を受ける。中でも重要なのは、両側の前庭神経内側核、下核、舌下神経前位核、同側の前庭神経上核からのものである。介在核からの遠心性線維は小脳の前葉、後葉虫部、片葉、室頂核および外眼筋の運動核などに投射し、眼球運動の調節に役立っている。)

Prepositus nucleus(前位核;舌下神経前位核)Nucleus prepositus ぜんいかく;ぜっかしんけいぜんいかく

[A14_1_04_265] →(舌下神経前位核は舌下神経核の吻側端と直接に続いて存在し、第四脳室底の直下で、内側縦束の背外方に位置する。この核は外眼筋支配運動神経核のすべてに両側性に投射線維を送っており、重要な「眼球運動核前中枢preoculomotor center)である。反対側の外転神経核と同側の内直筋支配運動ニューロン(動眼神経核内の一領域)に対しては、特に密に投射線維を送る。舌下神経前位核は両側の前頭眼野(frontal eye field)、同側のカハール間質核、内側縦束吻側間質核、および視索核から入力線維を受け、また、両側の前庭神経核群(特に内側核、下核、腹外側核)、橋網様体正中傍部、および小脳と相互に連絡し合っている。舌下神経前位核は、外眼筋支配運動神経核へ投射線維を送るほか、反対側の下オリーブ核、反対側の上丘と視蓋前域、およびいくつかの視床核(髄板内核と外側腹側核を含む)にもインパルスを送る。舌下神経前位核が投射線維を送る視床核には前庭神経核も投射線維を送る。前庭神経核群から舌下神経前位核への投射様式は、その興奮性投射と抑制性投射のパターンについて、前庭神経核から外眼筋支配運動神経核への投射様式に似ている。また、舌下神経前位核のここのニューロンの活動は、そのほとんどのニューロンについて、眼球の位置や運動と相関している。舌下神経前位核の機能的な意味に関して次のような指摘がなされている。すなわち、舌下神経前位核はその主な入力を眼球と頭部の運動のコントロールに直接的に関わる部位から受け、その眼球運動に関係して活動するニューロンを含む部位に送るが、この事実から見て、舌下神経前位核は眼球運動に関わる出力上方のコピーをつくり出し、その信号を「注視」のコントロール(gaze control)に関わる脳幹の中枢へ配給するものと考えられる。)

Peritrigeminal nucleus(三叉神経周囲核)Nucleus peritrigeminalis さんさしんけいしゅういかく

[A14_1_04_266] →(三叉神経周囲核は三叉神経脊髄路核の外側、腹側および内側に分布し、外側楔状束周囲核に連なる部分を三叉神経周囲核とよぶ。この核は吻側は舌下神経核の吻側端の高さ、尾方は背側副オリーブ核の尾側端にまで伸びている。Olszewski and Baxter(1954)はこの核の外側部を彼らのinsula cuneati lateralisに含めている。この核の腹側部は三叉神経脊髄路と外側毛様体のsubterigeminal regionの間に位置している。しかし時にsubtrigeminal nucleusの腹側や外側にも観察される。三叉神経周囲核の領域は、三叉神経脊髄路核と外側網様核の間を内側へ伸び出している。)

Pontobulbar nucleus(橋延髄核)Nucleus pontobulbaris きょうえんずいかく

[A14_1_04_267] →(橋延髄核は延髄中位から吻側の索状体背外側にある不規則に散在する細胞群で、延髄橋移行部で索状体腹内側に近付くにつれて広がる。)

Supraspinal nucleus(脊髄上核)Nucleus supraspinalis せきずいじょうかく

[A14_1_04_268] →(脊髄上核とは脊髄の前角内にあった運動核は下部延髄の背内方に続き脊髄上核と呼ばれている。さらに吻方に追っていくと延髄の中心管のすぐ腹外側にある舌下神経核に続いている。)

 

Reticular nuclei of medulla oblongata(網様核群;網様核(延髄の))Nuclei reticulares in medulla oblongata もうようかくぐん;もうようかく(えんずいの) [A14_1_04_301]

Gigantocellular reticular nucleus(巨細胞性網様核)Nucleus gigantocellularis きょさいぼうせいもうようかく

[A14_1_04_302] →(巨大細胞性網様核は下オリーブ核群の背側で、傍正中部の外側にある。この核はその名前が示すように、特徴的な大きい細胞から構成されるが、加えて、この領域には多数の中等大の細胞と小細胞が存在する。延髄網様体脊髄路の神経線維は脊髄のレベルへ両側性に投射し(交叉性と非交叉性)、主に側索の前部を下行する。)

Pars alpha of gigantocellular reticular nucleus(アルファ部(巨細胞網様核の))Pars alpha nuclei gigantocellularis あるふぁぶ(きょうさいぼうもうようかくの) [A14_1_04_303]

Anterior gigantocellular reticular nucleus; Ventral gigantocellular reticular nucleus(前巨細胞性網様核;腹側巨細胞網様核)Nucleus gigantocellularis anterior ぜんきょさいぼうせいもうようかく;ふくそくきょすあいぼうもうようかく [A14_1_04_304]

Lateral paragigantocellular reticular nucleus(外側巨細胞性傍核;外側巨細胞性網様体傍核)Nucleus paragigantocellularis lateralis がいそくきょさいぼうせいぼうかく;がいそくきょさいぼうせいもうようたいぼうかく [A14_1_04_305]

Interfascicular nucleus of hypoglossal nerve(舌下神経束間核)Nucleus interfascicularis nervi hypoglossi ぜっかしんけいそくかんかく [A14_1_04_306]

Intermediate reticular nucleus(中間網様核)Nucleus reticularis intermedius ちゅうかんもうようかく [A14_1_04_307]

Lateral reticular nucleus(外側網様核;側索核)Nucleus reticularis lateralis; Nucleus funiculi lateralis がいそくもうようかく;そくさくかく

[A14_1_04_308] →(外側網様体核、外側核ともよぶ。延髄網様体に属する核である。この神経核はオリーブ核群の尾方で始まり、オリーブ中央に分けられる。すなわち、大細胞部、小細胞部、および三叉神経下部である。大細胞部は下オリーブ核の背側方にあるが、小細胞部は網様体格の背外側部にある。外側毛様体核は小脳への中継核であり、脊髄から求心性線維(すなわち脊髄網様体路、および脊髄視床路の側枝)と赤核からの下行線維(赤核延髄路)を受けている。脊髄求心性神経は体部位局在性配列をもって外側毛様体核へ投射している。外側毛様体核の全亜核からきた線維は下小脳脚を通って小脳前葉、半球内側部および小脳核に投射する。その主要な求心性線維は脊髄から両側性にくる両側性腹側屈筋反射路(Bilateral ventral flexor reflex tract)である。その他、大脳皮質運動野などからも線維を受ける。)

Magnocellular part of lateral reticular nucleus(大細胞部(外側網様核の))Pars magnocellularis nuclei reticularis lateralis だいさいぼうぶ(がいそくもうようたいかくの) [A14_1_04_309]

Parvocellular part of lateral reticular nucleus(小細胞部(外側網様核の))Pars parvocellularis nuclei reticularis lateralis しょうさいぼうぶ(がいそくもうようたいかくの) [A14_1_04_310]

Subtrigeminal part of lateral reticular nucleus(三叉神経下部(外側網様核の))Pars subtrigeminalis nuclei reticularis lateralis さんさしんけいかぶ(がいそくもうようかくの) [A14_1_04_311]

Parvocellular reticular nucleus(小細胞性網様核)Nucleus reticularis parvocellularis しょうさいぼうせいもうようかく

[A14_1_04_312] →(小細胞性網様核は網様体の背外側部にあり、三叉神経脊髄路核の内側で、千手神経核の腹側に位置するちいさい細胞の集団である。この核は延髄網様体のほぼ外側1/3部を占めており、二次感覚路より側枝をうけているため“感覚”部とみなされてきた。)

Posterior paragigantocellular reticular nucleus; Dorsal paragigantocellular reticular nucleus(後巨細胞性傍核;後巨細胞性網様体傍核)Nucleus paragigantocellularis posterior こうきょさいぼうせいぼうかく;こうきょさいぼうせいもうようたいぼうかく [A14_1_04_313]

Central reticular nucleus(中心網様核)Nucleus reticularis centralis ちゅうしんもうようかく [A14_1_04_314]

Dorsal part of central reticular nucleus(中心網様核の背側部)Pars dorsalis nuclei reticularis centralis ちゅうしんもうようかくのはいそくぶ [A14_1_04_315]

Ventral part of central reticular nucleus(腹側部(中心網様核の))Pars ventralis nuclei reticularis centralis ふくそくぶ(ちゅうしんもうようかくの) [A14_1_04_316]

Medial reticular nucleus(内側網様核;内側網様体核)Nucleus reticularis medialis ないそくもようたいかく;ないそくもうようたいかく [A14_1_04_317]

 

Raphe nuclei of medulla oblongata(縫線核;縫線核群(延髄の))Nuclei raphes in basilari ponti ほうせんかく;ほうせんかくぐん(えんずいの) Feneis: 278 26

[A14_1_04_318] →(この正中面にある細胞群、すなわち縫線核群は通常他の被蓋の核群とは密な線維束によって隔てられている。主な縫線核群では延髄では不確縫線核、淡蒼縫線核、橋では大縫線核、橋縫線核、中脳では背側縫線核、上中心核、腹側被蓋核である。縫線核群の特徴は高濃度のセロトニン(5-hydroxytryptamine)を含む点である。セロトニン合成ニューロンは全て縫線核群に存在すると考えられているが、縫線核群のニューロンのすべてがセロトニンを合成する物ではない。縫線核群からの上行性線維は大脳辺縁系の種々の要素に投射し、下行性線維は小脳、脊髄、脳幹の諸核へ達する。)

Obscurus raphe nucleus(不確縫線核)Nucleus raphes obscurus ふかくほうせんかく [A14_1_04_319]

Pallidal raphe nucleus(淡蒼球縫線核)Nucleus raphes pallidus たんそうほうせんかく [A14_1_04_320]

Magnus raphe nucleus(大縫線核)Nucleus raphes magnus だいほうせんかく

[A14_1_04_321] →(大縫線核はヒトでは比較的発達が悪いが、下オリーブ核の上極の高さからおこり、顔面神経核の上極の高さで橋縫線核につづくまでの4~5mmにわたって、延髄上部から橋下部の被蓋放線の腹側よりにある。腹側には、尾側端部を除いて台形体があり、尾側背方には、不確縫線核がある。側方は脳底動脈から腹背方向に弓状に走る血管によって境され、この血管に近接して神経細胞が多い。)

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